スーパーバトルシップ大戦   作:がんたんく

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プロローグ アムリッツァ事件

 宇宙暦796年もしくは帝国暦487年の10月、恒星アムリッツァ付近の宙域にて、自由惑星同盟軍と銀河帝国軍双方の艦隊が交戦していた。同盟軍艦隊の後方には、核融合弾頭を含む機雷原が設置され、帝国軍艦隊の後方からの襲撃を防いでいた。しかし、ジークフリード・キルヒアイス中将の指揮する帝国軍艦隊には同盟軍が未だ察知していない新兵器があった。

「閣下、前方空域に宇宙機雷群を確認しました。数およそ4000万」

「予想通りですね。指向性ゼッフル粒子を」

 レーザーなどの高温によって発火・炸裂する「ゼッフル粒子」に外部からの誘導が可能なナノマシンを混ぜ、粒子全体を移動させることができる「指向性ゼッフル粒子」。それを満載した散布装置が艦隊の前方に展開され、肉眼では視認できない粒子が機雷原へ向かう。

 キルヒアイスが座上する戦艦「バルバロッサ」の艦橋の機器が粒子の到達を知らせた。

「主砲、発射!」

 バルバロッサの主砲から飛び出た光芒が機雷原へ着弾すると、粒子の炸裂により機雷群が次々と誘爆し宇宙空間に巨大な爆炎が浮かんだ。

 爆炎が収まり、機雷原の中心に回廊が形成されたのをキルヒアイスは確認する。

「全艦全速、敵の背後を襲う」

 その指示を出した直後であった。キルヒアイスの脳裏に聞いたことのない声が語りかけた。

「遠い星の戦士たちよ、貴方達に全てが……」

 そして、バルバロッサとその周辺に展開していた戦艦や巡航艦を含む20隻程度の艦が眩い光に包まれたのち消滅した。ほぼ同時に、帝国軍と同盟軍の各艦隊の旗艦も光に飲まれた。

 指揮系統が崩壊した双方の艦隊は撤退。また多数の指揮官を失ったことにより戦争の継続が不可能であるとして、銀河帝国と自由惑星同盟は一時的に停戦することとなる。この一連の事件は「アムリッツァ事件」と名付けられた。

 

 

 

 西暦2202年の冬、地球連邦軍の宇宙戦艦ヤマトが旧乗組員の主導により独断で発進し叛乱艦として追撃されるも、ガミラス大使館の介入により叛乱の嫌疑は解消、独立部隊として外宇宙への探査へ旅立った。その数日後のことである。

 前衛武装宇宙艦「アンドロメダ」とその姉妹艦4隻をはじめとした艦隊は、演習を終えて地球への帰路へ着いていた。

「ヤマトの叛乱が収束したばかりだというのに、また大問題の発生か」

 アンドロメダの艦長、山南修は不機嫌そうに呟く。好物の紅茶を嗜んでいる最中に緊急事態であるとして艦橋に呼び出されたためだ。艦橋の天井に設置された大型液晶パネルには、地球と金星の間の宙域に浮かぶ小惑星ほどの巨大な黒い球体と、その周辺に展開しにらみ合っている2つの艦隊が映し出されていた。

「あの艦隊をデータベースと照合しましたが、どの国家のものとも一致しません。全て未知の艦艇です」

「球体を解析しましたが、液体金属で表面を覆った人工物と推測されます」

 艦橋のクルーたちが報告する。

「司令部は慎重に接触せよと言っているが……そう簡単に行くか……?」

 山南の心配をよそに、にらみ合っている艦隊の片方側から通信が入った。

「こちらは宇宙艦隊司令長官、ラザール・ロボス元帥だ。我々の事情を説明するために私ともう片方の艦隊の司令官がそれぞれ連絡艇でそちらへ向かうつもりだが、そちらの司令官と会うことはできるか?」

「こちら地球連邦軍艦隊総旗艦アンドロメダ、艦長の山南修だ。そちらの要望は理解した、連絡艇の受け入れを許可する」

 2隻の連絡艇がアンドロメダに収容されると、山南を始めとする乗組員は驚いた。連絡艇から降りてきた人間たちが、見る限り地球人と全く変わらなかったからだ。

「私は銀河帝国宇宙艦隊副司令長官、ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥だ……しかし何をそんなに驚いている?」

 

 

 

 山南は連絡艇に乗ってきた帝国軍・同盟軍双方の艦隊司令官と情報を交換した。双方の艦隊は停戦状態にあること、黒い球体は宇宙要塞「イゼルローン」であること、各艦隊の旗艦とその周辺の艦隊が光に包まれて気づいたらこの宙域に居たこと、光に包まれる直前に謎の声を聞いた者が多数居ることなどだ。

「しかし、地球を出て遠くの星系に入植ですか……考えられませんな」

 山南は彼らから聞かされた歴史を聞いてぼやく。山南の知る歴史では、人類がまともに入植したのは火星や第11番惑星など太陽系内の惑星だけだったからだ。

「こちらも驚きました。まさか地球が別の文明を持つ異星人と交戦していたとは」

 ロボス元帥も困惑しているようだった。互いに話した歴史が全く噛み合わないのである。

「平行世界……というやつでしょうな」

 山南が出した結論はこれであった。宇宙戦艦ヤマトが以前の大航海においてワープ航法の事故で次元断層やボイド空間に突入したことなどを受け、この宇宙とは別の宇宙が存在する可能性について地球連邦の発足直後より研究が行われているのだ。

「我々の用いるワープ航法と、波動エンジンとやらで行うワープ航法は性質が違うらしい。我々の宇宙に帰れるかは未知数といったところか」

 ラインハルトの言葉に同席していた帝国軍・同盟軍の軍人たちは俯いた。

 

 

 

 帝国軍と同盟軍はイゼルローン要塞内部のドックに入ることになったが、要塞の各設備だけでは乗組員の生活が維持できないとして、地球連邦政府からの援助が決定した。平行世界出身らしいとはいえ出自からして地球人に近いことや、アンドロメダ級4隻の進宙式でも大統領が発言した「宇宙の平和をもたらし護る」という地球連邦の目標を早速実行できることなどが援助の理由となったが、決定を強く後押ししたのはガミラス大使館であった。

「テレサの声を彼らも聞いた……か」

 ガミラス大使館の執務室で、ローレン・バレル大使が様々な書類に目を通している。帝国軍艦隊と同盟軍艦隊の乗組員たちが聞いた声が、ヤマトの乗組員たちが聞いたのと同じ外宇宙のテレザート星から放たれたコスモウェーブによるものである可能性が高いとされ、調査に乗り出したのだ。

「さて、これからどうなる……」

 大使は今後を案じるのだった。




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2021/03/26 話数を変更、本文の一部に加筆
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