正直まだまだ未熟者だと思っているので皆様の感想を見るとそんな自分でもうまくやっていけるかもなと思いながら書いています。
『だから、見たんですって!』
興奮したように昨日の出来事を語っているのは情報通と名乗る猫の紹介で来た宮廷によく忍び込むと言っていた猫だそうだ。
何でも、昨日の夜に宮廷で噂になっている幽霊の話を聞いて調べに行ったはいいものの、幽霊ではなく人間の女が後宮を囲うあの高い城壁の上で踊っているだけだったとの事だ。
残念に思いながらその辺を散策していると何やら奇妙な気配を感じたので行ってみると、そこにいたのは足首より下が無く向こう側がうっすらと見える女の姿だ。
噂の幽霊とは違うが見つけてしまったことに驚いて、その後は一目散に逃げてきたんだそうな。
そして、そんな話を聞いては情報通としては見てみたいのだそうで、どうせなら自分も一緒に行かないかと声をかけに来たらしい。
今は幽霊を見たらしい猫から必死に説得をされている所である。
『……どうでもいいけど、なんで自分を誘うんだ?』
『なんでって、姉御も心配じゃないんですか?いい機会だから一緒に後宮って所に潜り込みましょうよ!』
『………なるほど』
つまりこいつが言いたいのは幽霊なんてものはついでで、本命は
…まあ確かに、後宮へと忍び込む道なんぞ自分は知らんので彼女の所に行けていないのは本当の事だ。
自分で調べられる所は調べたが、後宮と呼ばれる場所は主に四か所の内外を繋ぐ門がある。
宮廷側から入る場所以外は深い堀があり行く事は出来ない。
かと言って、行った事も無い宮廷から忍び込もうにも内部について一切知らない自分では見つかり次第追い出されるかもしれない。
そんな風に考え侵入するのは諦めていたので、正直この話は自分にとっても悪くはない。
……ただ、幽霊を見たと騒ぐこの猫は大丈夫なのだろうかと少し心配ではある。
『…確かに、この機会を逃したら彼女に会いに行くのは難しくなるかもな』
『でしょう!だったらいつ行くんですか?今しかないでしょ!』
『お二人とも聞いているんですか?嘘ではなく本当に見たんですって!』
『『はいはい聞いてたよ』』
さてと、そうなると今夜は帰れそうに無いだろうしどうやってその事をおやじさんに伝えるかね?
「…
『あれ?どうしたんだおやじさん?』
「何やら今日は何処かへ出かけに行くのかい?」
『まあ、そのつもりだけど…』
「それなら気を付けて行ってくるんだよ」
『ああ…うん』
「…猫猫を探して無茶をしていた頃に比べればだいぶ落ち着いたようだけど、今はあの頃みたいに落ち着きがない感じだからね」
そうなのだろうか?自分では落ち着きがないなんてことは分からないのだが。
「もしあの子の所に行くのなら気を付けて行くんだよ」
『おやじさん…』
「こっちの事は気にしないでも大丈夫だから」
……そうか、そうだな。
『ちゃんと無事だって事を確認したいし…ちょっと行ってくるよ』
うん、何時までも待ってたってどうにもならないんだし、せっかくなら行ってみますか!
そうして、後宮にいるらしい幽霊を見に行くことになった……
その後、幽霊の出てくるであろう時間になるまで過ごした後、そろそろいい時間にもなってきたので後宮に忍び込むために宮廷に向かったのである。
既に来たことのある二匹について向かったのはいいものの、途中に何度か見つかりそうになったためにやり過ごしているうちに、どうやらはぐれてしまったようだ。
『…まいったな、遅れない様について行ったつもりが思いのほかギリギリで見つかっていなかっただけだったとは』
あいつ等、何で今まで見つからずにこれたんだよ……って。
「またこいつ等か何度も来るみたいだし困ったもんだ」
『ぐぬぬ、無念』
『せっかくここまで来たのに~』
あいつ等見つかってんじゃんか、って事は今から自分一人で向かわなくてはいけないのか。
「にしてもよく見かけるが、もしかしたら誰か餌付けでもしたんだろうか?」
『餌付けなんてされて無いよ』
『好奇心と探求心こそ原動力さ!』
「まあ、そんなことはどうでもいいか」
『『あ、待ってください連れて行かないでお願いします!』』
……とりあえず、危険は無いだろうし大丈夫だろう。
それよりも、此処からどうするかだ。
今の所、他に誰かいる様子も無いし行くか。
……とりあえず向かったはいいものの。
『どうやって向こうに行けばいいのかね…』
後宮に荷物を運んでいるらしい人の後を見つからない様についてきたはいいが、後宮への出入りはしっかり確認されているようだしどうしたものか……
「ん?こんなところに猫がいるなんてな?」
『!?』
しまった!見つかった!
「おっと、驚かせてしまったな」
……ん?なんだこいつ…男……だよな?
………もしかして情報通の言っていた
おやじさんも確かそんな感じの事を前に教えてくれたような……詳しくは覚えていないんだよな。
「誰かが連れてきたのか?それでこの先に行ってしまって待っているのだろうか?」
『え、いや…』
…って分かりもしないのに否定しても意味ないか。
「仕方ないな、どれ」
『のわ!?』
何だいきなり!
……ってなんで自分は腕に抱え込まれてるんだ?
「この先に行っちまったやつを待つのならちょうどいい所があるぞ」
『ん?』
もしかして、後宮に入り込むチャンスか?
だとしたらこのままでいいか。
「はいどうぞ」
『どうも…』
先程の宦官が向かったのは宮官長と呼ばれた中年の女性の所だった。
どうやらまだ仕事があるらしく自分を預けた後は何処かへと向かって行ったようだ。
今は宮官長から水をもらっている所である。
まあ、確かにのどが渇いてきたとは感じてたからありがたいか。
「ふふ、こんな所までやって来るなんてね、誰か探してるのかね?」
『ん?なんでそう思ったんだ?』
誰かを探してるってさっきの人は言ってなかったはずだが?
「この場所に猫を連れてきた事のある人なんていないからね、もしかしたらと思ったのよ」
『あ~…なるほど』
それなら納得だ。
そんな話をしていると誰かがこちらに来たようで扉を叩く音が聞こえてきた。
「失礼、構わないだろうか?」
「これはこれは
『ん?』
扉を開け中に入ってきたのは壬氏と呼ばれた人物とどこか見覚えがある寡黙な顔立ちをしたがっしりした体つきの人物の二人だ。
どうやら宮官長に用事があって来たようだ。
「おや?そこにいるのは」
「ああ、この子はどうも誰かを探してここまで来たみたいでして」
「なるほど」
中に入るとどうやら自分の事も目に映ったらしくこちらを見て疑問を持った様子を見せた。
宮官長の説明を聞いて納得したらしくそれ程深くは考えなくていいと思ったようだ。
とは言え、どうやらもう一人の人物は何か疑問があるのかこちらを見て少し考えている様子だ。
「どうした
壬氏と呼ばれた人物もそれに気づいたのか声を掛けた。
「いえ、どうもこの猫をどこかで見かけたような気がして」
「そうなのか?」
どうやら向こうも自分の事を見かけた気がしていたようでそのことについて考えていたようだ。
……ってよく見たらこの人交易商の所で
『此処の人だったのか』
「この子もどこかで見かけた事を覚えているのでしょうか?」
『一応確認してみるか』
そうして自分は前足を曲げこっちだと示すように動かした。
「ん?どうしたんだろうか?」
『覚えてるかね?』
「む?…ああ、思い出しました」
おっと、覚えていたようだ。
「知っているのか?」
「ええ、おそらく前に話した
『小猫?』
え?誰それ?
「ああ、なるほど」
自分には分からないがどうやら壬氏とやらは知っているようだ。
何処か納得をした様な顔を見せながらこちらに向かって声を掛けてきた。
「お前、黒翠と呼ばれている猫か?」
『!?…何で知ってる?』
……って、よく考えたら交易商の所で店主の老夫婦が言っていたな。
おそらくその時に聞いた名を高順と呼ばれた者は伝えていたのだろう。
「ふむ…宮官長、この猫はこちらで預からせてもらってもいいだろうか?」
「え?ええ、構いませんが?」
ん?自分をどうする気だこいつは?
「おそらくお前が探しているであろう相手を私は知っている」
『ふむ…』
「おとなしくついてきてくれるな?」
…本当かどうか怪しいが、小猫と呼ばれている相手が誰なのか確かめるのもいいか。
『わかった…で?どこに行けばいい?』
「ふむ、高順」
「は、かしこまりました」
そうして自分は高順と呼ばれた者に抱え込まれ何処かへと連れていかれた。
「さて、ここだ」
しばらくすると目的の場所についたのかそう声を掛けてきた。
ここが何処かなど自分にはさっぱりであるが、この二人は自分が探している相手とやらがこの場所にいると言っているみたいだ。
そうして壬氏と呼ばれた者は扉を叩き中にいる相手に声を掛けた。
「失礼します」
「どうぞ」
「本日はどのような…あら?その猫は?」
部屋の中に入り辺りを見回すととそこにいたのはこちらに声を掛けてきた赤毛の美女とその美女に抱かれて眠る柔らかい巻き毛の赤子と黒髪の女性の他に……
『「あ」』
どうやら向こうも自分に気づいたらしく驚いたように声を漏らした。
「やはり、この猫は薬屋の所のか?」
「あら?そうなの?」
そこには、驚いたような表情をした猫猫がいた。
その後、高順と呼ばれた者に降ろしてもらい自分は猫猫のもとへと向かった。
彼女の足元まで行くとそのまま抱きかかえられ彼女はこちらに声を掛けてきた。
「黒翠?何でここに?」
『まあ、色々とな…お前がここにいるってのは他の猫に聞いていたからな』
「…そうか」
久しぶりに会った彼女はどこか安心したように息を吐いた。
「ねえ猫猫」
「あ…はい、どうかなさいましたか?」
そんな風に話をしている所に先程見かけた赤毛の美女が声を掛けてきた。
「その子が前に言っていた黒翠という名の猫なのかしら?」
「ええ、そうですが」
どうやら自分の事を猫猫は話していたようで赤毛の美女はこちらを興味深そうに見てきた。
「ですがどうやってこの後宮に?」
自分がここにいる事が疑問に思ったのか黒髪の女性がそう言ってきた。
「宮官長の所へ行ったところでその猫を見かけたのですが、誰かを探しに来たようだと聞いたのでもしやと思い連れてきたのです」
「なるほど」
その疑問に対して高順と呼ばれた者が答えると黒髪の女性はその内容に納得したような声を漏らした。
「で、何でお前は此処に来たんだ?」
『ん?ああ、何でもここに幽霊がいるってんで見に行こうって誘われてな……ちょうどいい機会だからと思ってな』
「へえ…ん?」
猫猫がどうしてここに来たのかを聞いてきたので答えると彼女はその内容に中に疑問に思うところがあったのか首を傾げた。
「小猫はその猫の言っていることが分かるのですか?」
「あ、はい分かりますよ」
「そうなの?」
「ええ、と言っても黒翠自身も知性は高いのである程度は…」
本当は完全に理解できるがその理由は未だ分からないためどこか濁すような形で彼女は答えた。
「なら、今はどんな事を聞いたのだ?」
「えっと…」
猫猫は先程の話に疑問を持っていた様なのでもう一度詳しく説明をすることにした。
『まあ詳しく説明するとだな、何でもここで幽霊を見たって噂が流れたらしくてな』
「ああ、それで?」
『その話を聞いて見に来たって言ってた猫がいたんだが、どうにもそいつ見たらしいんだよ』
「その猫はなんと?」
「えっと…どうやら幽霊を見たと他の猫に聞いたらしくその幽霊を見に来た……って事でいいんだよな?」
「幽霊…もしや
「そんな話をしているのね」
「…というか、よくそんな事を言っていると分かりますね」
芙蓉妃?…ああ、なるほど。
『いや、そっちの事は既に分かってるんだが』
「ん?分かってるってどういうことだ?」
『城壁の上で踊っていた女の事なら既に幽霊じゃないって知っている』
「芙蓉妃の事じゃ無いのか?」
「そうなの?」
「みたいです」
『何でも城壁の上で踊る幽霊が生きた人間だったことを知ったそいつはがっかりしたらしくてな』
「ああ」
『その後辺りを散策していたら出会ったらしいんだよ』
「何にだ?」
『だから…幽霊に』
「?」
どうやらそこが疑問らしく怪訝そうな目で見られた。
「どうした?薬屋」
「いえ…どうも幽霊を見たと聞いたらしく」
「芙蓉妃では無く?」
「そうみたいです」
「「「??」」」
まあ、信じられないだろうけども。
「本当に見たって言っていたのか?」
『ああ…それを確かめに来たわけなんだが…』
「ああ、それでここに来たのか」
『まあな…』
「本当に幽霊を見たって聞いたのか?」
『まあな、そいつが言うには足首より下が無く向こう側が透けて見えるらしくてな』
「は?」
流石に今の話は信じられないのだろう、何言ってんだと思われたらしい。
「どうした?」
「いえ、何でも足首から下が無く向こう側が透けて見える幽霊がいるらしく」
「「「はい?」」」
まあ、疑問に思うわな………
きりが良いので今回の話は前後に分けます。
続きは次回。