猫と薬屋   作:夢空

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今回は短い?です。



猫と化粧

梨花妃(リファひ)という上級妃の治療を終え猫猫(マオマオ)翡翠宮(ひすいきゅう)に戻ってきてから帝どのが翡翠宮を訪れる頻度が一時期減った事があり、玉葉妃(ギョクヨウひ)どのが睡眠不足から解放されると皮肉交じりに行ったことについて猫猫が目を泳がせたなんて事もあった出来事から数日たった。

だいぶ風が冷えてきたと感じる今日この頃。

今日は緑青館(ろくしょうかん)に行き猫猫は元気にしていることをおやじさん達に伝えに行った後、情報通の猫にここ最近の噂などを聞いた。

その後後宮に戻ると何やら忙しそうにしている様子なので、自分は荷物を持って動きまわる人達の邪魔にならない様にしながら翡翠宮へと向かった。

翡翠宮についた所で猫猫を見つけた、彼女のもとへ行き周りが忙しそうな理由を聞いてみた所どうやら園遊会という年に二回あるらしい行事の準備で忙しくしているのだそうだ。

后のいない皇帝は、正一品の妃を連れてくることと妃の世話をする女官もついてくることとされているらしい。

後宮内では、玉葉妃どのが『貴妃』、梨花妃どのが『賢妃』を冠しているらしい。

他に二人、『徳妃』と『淑妃』を合わせて四夫人、それらが正一品となるのだそうだ。

本来、冬の園遊会は『徳妃』と『淑妃』のみの出席らしいのだが、前回は赤子を産んだばかりの玉葉妃どのと梨花妃どのは欠席したため、今回は四夫人揃って参加することになったのだそうだ。

春先の園遊会でもまいるくらいだと聞き、冬はどんなものになるかと思ったらしく今から対策としてできる物の準備をしようとしているらしく部屋に向かっているとのことだ。

 

 

 

その後、猫猫が翡翠宮の厨房で調理をしているところを見ていると紅娘(ホンニャン)どのがやって来た。

 

「あら甘くていい香り、何を作ってるの?」

「生姜と蜜柑の飴です」

『寒さ対策で作ってるとこだな』

「蜜柑の皮には血行を促進する効果が、熱を通した生姜には身体を温める効果があります」

『園遊会に持って行けば少しはましになるだろうしな』

 

他にも肌着に衣嚢(ポケット)を作り、中に温石(カイロ)入れられるようにした事を伝えた所紅娘どのは目を潤ませて全員分作ってほしいと猫猫に頼んできた。

頼みを受けた猫猫が紅娘どの達の肌着に衣嚢を作っている所、壬氏(じんし)どのが自分の分も作ってくれと言ってきた。

壬氏どのの従者である高順(ガオシュン)どのはどこか申し訳なさそうに自分の分も作ってほしいと言ってきたのだった。

また、夜の御通りの際に玉葉妃が帝どのに話している所を見て猫猫の負担が増えそうだと思ったので自分は猫猫の所に行き肌着を一つ借りに行った。

借りた肌着は壬氏どのの分らしいが自分からすればそれでもいいので借りることにして急いで玉葉妃どのと帝どのの所へと戻って行った。

二人の所に戻った自分は借りた肌着を見せこれを参考に作ればいいと肌着に作られた衣嚢の部分を前足で叩いた。

 

「急に肌着を持ってきたのには驚いたけど、もしかしてこれを参考にすればいいって事?」

『そ、これを参考にしてもらえば衣嚢についてはどうにかなるか?』

「ふむ」

「そう…作り終わったらこれは猫猫に返せばいいのかしら?」

『あー……うん…まあ、そうしてもらえるといい…のかな?』

 

とりあえず衣嚢については渡したものを参考にして作らせる事にしたらしく、翌日に来た皇帝直属の食事係に猫猫は飴の作り方を教えてあげていた。

……借りた肌着はその後しっかり返してもらい、衣嚢を作られた肌着はそれぞれの持ち主に渡された。

園遊会前夜になってようやく猫猫は手が空いたらしく、念のため当日に必要になるかもしれないと薬を作ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

園遊会当日、玉葉妃どのは紅の(スカート)と薄紅の着物を着ていた。上に羽織る大袖は裳と同じ紅で、金糸の刺繍が入っている。髪は大きく二つの輪に結わえられ、二つの花かんざしと真ん中に冠が乗せられている。花かんざしから銀の(こうがい)が伸び、先に赤い絹の房飾りと翡翠の玉が下がっていた。

意匠(デザイン)が派手なのに服に着られているようには見られないのは玉葉妃どのだからだろう。

猫猫達が玉葉妃どのから翡翠のついた首飾りや耳飾り、簪をそれぞれの髪や耳、首にかけられていた。

自分は鈴麗(リンリ―)公主(ひめ)の様子を見ていると今度は猫猫に化粧をさせようとしている様で猫猫は桜花(インファ)どのに羽交い絞めにされており、紅娘どのと貴園(グイエン)どのと愛藍(アイラン)どの達に囲まれていた。

 

「うふふ、可愛くなっていらっしゃい」

 

どうやらこの件に関しては玉葉妃どのも共犯らしくころころと鈴の鳴るような声で笑っていた。

動揺を隠せていない猫猫に四人の侍女は容赦はしないらしい。

 

「まず、顔を拭いて、香油を塗らなくてはね」

 

そしてがしがしと濡れた布で猫猫の顔を拭いた。

 

「「「「えっ?」」」」

 

桜花どの達の間抜けた声が重なって部屋に響いた。

 

『あー…まあそうなるよな』

 

猫猫は疲れた顔をして天井を仰いだ。

侍女達は顔と拭いた布を見比べながら驚いた様子を見せていた。

猫猫は化粧が嫌でも苦手でもない。

むしろ、得手不得手なら得意といえる。

自分からは見えないが、濡れた布には薄茶の汚れがついているのだろう。

周りの皆がすっぴんだと思っていた猫猫の顔は、実はそばかすの化粧(メイク)を施した後の顔だったのだ。

その様子を自分は鈴麗公主に尻尾を掴まれながら見ていたのだった。

 

 




園遊会どうしようかな…
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