~オリ主side~
意識が浮き上がってくるのを感じる。
「ん、……ここは?」
閉じている瞼をパチパチと開け、軽く周りを見渡す。整理整頓されていて清潔感がある部屋だ。
「起きたみたいですね。ここは私の部屋ですよ」
声が聞こえた方を見ると、椅子から立ち上がってきた女子がいた。
この声は五月か。目を擦りながらも五月の方を見る。
「おはよー。それとお休み」
そう言い二度寝の体制になる。
「いや寝ないでくださいよ!」
しょうがないじゃん。この毛布肌触りが良くて気持ちいいんだから。
「三玖や四葉が心配してましたよ。このまま起きなかったらどうしようかと」
そこまで気にする必要はないのにね。
時計を見ると既に、21:00を回っていた。どうやらかなりの時間気絶していたようだ。それなら、三玖達が心配するのも無理もないか。
「悪いことをしちゃったな。五月もごめんね……。見ててくれたんでしょ。後、手当てありがとう」
自身の頭に巻かれた包帯を触りながらそう言う。
「いえ、当然の事をしたまでです。痛みはありますか?」
心配そうにこちらを窺う五月
フム、頭痛もひどくないし、止血もされている。問題ないな。さすが医者の娘だ。
「あぁ問題ないよ。適切な処置をありがとね」
五月はホッとした表情を浮かべた後、「ではこれからリビングで中野姉妹による裁判を行います」
と言い手を差し伸べてきた。
「さんきゅ、ゆっくり行こう」
ゆっくりとリビングに向かい、暗い雰囲気が漂っているテーブルの四人に声をかける。
「おーい、もう大丈夫だぞ!この通りバッチシだ!」
「あー! 白羽さん!もう動いて大丈夫なんですか!?」
「あっ、ユキトもう大丈夫なの?すぐに裁判が始まるから座ってて」
一花も口を開こうとしたが気分はもう裁判長のようで、静かにすることに決めたみたいだ。二乃についてはただ黙って下を向いているのでどんな顔をしているかわからないが蚊が鳴くような小さな声で良かったと聞こえたので、良しとしよう。
「ではこれより中野裁判をぱじめます」
そう一花が口上を述べ、裁判が始まったが僕としては全く気にしてないので口を挟む。
「僕は全然問題ないから、二乃は無罪! という事で閉廷でお願いしま~す」
………
静寂がリビングを包む。
あれ? 僕何か変なこと言ったかな?
そう考えているとプルプルといつの間にか震えていた二乃が声をあげた。
「何でそんな事がいえるわけ!? この写真を見なさいよ!」
そう言われ写真を見てみると血を流して倒れている僕と尻餅をつき、体には血がついている二乃、そして僕のそばには血が付着している花瓶の欠片が写っていた。
うわ~見事に犯罪したところのシーンに見えるな。神のいたずらか? 思ったより血が出てたんだな。というか五月写真撮ってたんだ気がつかなかったな。
「すごいね~。まるで犯罪を犯したシーンみたいだね! でもそれは誤解だからね!真実は僕が二乃を花瓶から守っただけだから!」
そんなことを言いながら二乃の無罪を主張する僕。っていうか、こういうのを言うのは弁護人では? そんな事を考えていると二乃が再び声をあげる。
「何でそんな悠長な事が言えるの!? もしかしたら目が覚めなくなるかもしれなかったのよ! どうして………、どうして………、」
ポロポロと涙を流す二乃。
あぁ泣かないでくれよ。僕は誰も泣いているところなんて見たくないんだ。
僕はそっと二乃の涙を拭い、笑って言う。
「僕は大切な人を守れるなら傷ついたって構わないさ。笑顔が見られるならね! だからさ笑ってくれよ二乃。僕は笑った顔の二乃が好きなんだよ。泣いてる顔の二乃は見たくないんだよ。」
そう言い二乃の頭をそっと撫でる。僕が気にしてないことが伝わるように。泣き止むように。そんな気持ちを込めながら。
もう一押しかな。
「例えこの頭の傷が残っても気に病まないでよ。この傷は女の子を守った証なんだから! 女の子を守ってついた傷は男にとって勲章なんだよ!」
よくある言葉を口にし、ポンッと音を出してミムラスを二乃に差し出す。
「はい!これあげるから元気出して!!」
驚いたせいか涙が止まった二乃。
「あ、ありがと」
そう言って受け取る二乃だが、急に立ち上がり外に出ていってしまった。
「んーどうしたんだろう?急に外に行くなんて、というか何で誰もしゃべらないの?」
「い、いや~入るタイミングが掴めなくてねゴメンゴメン」
そんな一花の言葉に頷く他の3人。
「それにしても中々熱いセリフを言うね~。見ていて恥ずかしくなっちゃったよ」
この一花の言葉にも頷く3人。
仲いいね。
「そうかな?想ってることを伝えただけだよ。想ってるだけじゃ意味がない。ちゃんと言葉にしないとね。もちろん君たちのことも大切に思ってるよ」
ちょっと追いかけてくるね!そう言い部屋を出て二乃を探しに行く。
ハッ!そういえばこれって原作のところじゃん!何で本じゃなくて花瓶だったんだ?僕の影響かな?
んーっと二乃は確か外側のエントランス付近にいたな。
キョロキョロと辺りを見渡し二乃を探す。あっいたいた~
二乃めっけ!
二乃は涙は流れてはいなかったが、まだ暗い表情をしている。
僕があげたミムラスを手に座り込んでいた二乃の隣に座る。
「花瓶から私を助けてくれたことには感謝してるわ……。ありがとう」
二乃が座り込み、顔を下を向かせながら言う。
「さっきも言ったでしょ! 体が勝手に動いただけだから気にすんなって!」
僕は前に向けていた顔を二乃の方に向けて訊く。
「一つ聞いてもいい?」
なるべく穏やかな声でそう伝える。
「二乃は、言っていたよね。あいつらに私達の居場所を奪われたくないって、私達の家にあいつらには入る余地なんてないって」
「だ、だからなに……」
二乃は自分の言葉を思い出したのか、不意に体を強張らせる。
「確信したんだよ。今までの二乃を見て二乃はやっぱり、僕達が嫌いなだけじゃなくて……」
「もういいそれ以上言わないで、聞きたくない!」
二乃は真横を見て、僕の方を見ないようでいる。二乃の表情は見えないでいたが、なんとなく僕には分かった。
「姉妹が大好きだから、僕達が気に食わないんでしょ」
今までの行動を見る限り、そうとしか言いようがない。
「……なによ。それの何が悪いのよ」
二乃は顔をこちらに向け、先ほどより明るくはなっていた。
「そうよ、あんたの言う通りよ。だから、私はあんた達を拒むの。例え、あの子達に嫌われようともね」
あの子達に嫌われようとも……か。二乃、嘘をつくなよ顔を見れば誰だって分かるさ二乃が姉妹の誰よりも姉妹の事を大切にしている事をなと心の中で思っていた。
「それとごめんね。気がつかなかったとはいえ、人の居場所を奪うような真似して」
「いいわよ、別に……」
二乃は別に気にしていない様子であった。この様子なら、二乃は吹っ切れてくれた感じかな。良かった、良かった!
「話し合い終わった?」
オートロックの扉が開き、三玖たちがやって来る。
「ええ、こいつと話しててスッキリしたわよ」
そう言ってくれたらならなによりだ……。と思いながらも立ち上がり、一緒にマンションに入りエレベーターに乗る。
「それにしても白羽君が無事で良かったです! 安心したらお腹が空いてきました! 二乃! 今日の晩御飯は何ですか?」
「フフッ、雪斗が五月に変装したときの言葉と一緒じゃん」
クスクスと笑う二乃、どうやら元気になったみたいだな。しかも呼び方変わってるし。そんな事を考えていると僕が住んでいる階に着いた。
「じゃあ、また今度ね!」
そう言いエレベーターを降りようとすると、
「今日の事を白羽君のご両親に伝えて謝罪したいのですが、今ご両親は御在宅ですか?」
んーなんて答えようか。
「いや、居ないよ! 僕はずーっと独り暮らしだからね! おかげさまで部屋が広いのなんの」
そう誤魔化し、今度こそエレベーターを降りようとすると「待ちなさい、雪斗」
僕の腕を掴まれたのである。誰かと思って見ると、腕を掴んでいたのは二乃であった。
「今日は助けてくれてありがと」
顔を赤くし照れながらも僕に言い、その後いつもの二乃に戻りあっかんべーをエレベーターのドアが閉まるまでしていた。
「……あははは」
苦笑しつつも気分は何故か晴れ晴れとしており、動き出した足は何故かいつもより軽かった。今日は良い夢を見れそうだ。
ミムラスの花言葉
「笑顔を見せて」
です