五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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今回歌が二曲入っています。どうでもいい人はスクロールしてください。



第11話 今日はお休み ①

~オリ主side~

 カーテンの隙間から日光が差し込み,外から鳥のさえずりが聞こえる。

 

 ピピピピッ! ピピピピッ! ピピッ!

 

 アラームを止めて目をこする。

 

 ふぁ~よく寝た。今日は家庭教師としての仕事はないからゆっくりしようかな。

 

 ベッドから身を起こし洗面所まで行き,顔を洗う。

 

 くぅ~,冷水が顔にしみるね!

 

 目が覚めたのでキッチンに向かい朝ごはんの準備をする。

 

 やっぱり朝ごはんといえば玉子にベーコンだよね!

 

 さぁ! 始まりました! 白羽雪斗による〇分間クッキング!  パチパチパチパチ~!

 

 ♪テレテテテッ! テレテテテッ!テレテテテテテテッ! テッテッテ!♪

 

 頭の中で〇分間クッキングの音楽を流す。

 

 皆さんはベーコンはカリカリ派? それともそうでない派? 私はベーコンはカリカリ派です!

 

 「噛んだときのジューシーなうまみと、噛むほどに味が出てくるベーコン。ホテルの朝食ビュッフェなどでは、カリカリとした食感のベーコンをよく見かけますよね。そんなベーコンを家庭でも焼いてみたい! そう思った人も多いのではないのでしょうか。しかし、中々上手くいかない、そんな人もいるでしょう。ご安心ください! そんな人でも簡単にカリカリベーコンを作る方法を教えちゃいます!」(それっぽいボイス)

 

 まずフライパンでベーコンを焼くときは、油をひかずに焼きはじめるのがポイント。そのまま放置してしまうと焦げ目がついてしまうので適度に返しながら焼き上げる。

 

 また強火ではなく、弱火~中火でじっくり時間をかけて焼き上げることで、焦げ目をつけずにカリカリのベーコンを作ることができるのです!

 

 ある程度のところまで火が通ったら今度は卵を溶き入れます。もちろん目玉焼きでも構いません! ここでポイント。白身と黄身が完全に混ざるまでかき混ぜること! ただ腕が死んでしまいますので別に気にしない人はしなくても結構です。そして半熟になったら火を止め,余熱で残りは焼きます。自分お好みの焼き加減になったら米を盛った茶腕の上に直乗せします! 

 

 香ばしい匂い! そして完成!

 

 「こうすることによって洗い物も少なくできるんですよね!しかも卵を溶き入れることでフライパンにあるベーコンの油を取ってくれるので面倒な脂取りも楽々です!」(それっぽいボイス)

 

 これにて白羽雪斗による〇分間クッキングは終了です! 不定期開催ですが、また見てね~!

 

 と脳内にあるテレビスタジオでカメラに向かって手を振る。

 

 ということで

「いただきまーす!」

 

 

 

 

ーーー………

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 ふー満腹満腹。使った器具や食器は自動洗浄機にぶち込む。楽でいいわ~。

 

 再び洗面所に行き歯を磨く。磨き終わったらリビングに戻りお気に入りの椅子に行く。

 

 

 「どっこい正一」と言い椅子に腰かけて目をつぶる。

 

 ウィ~ン

 

 カチッ、カチッ

 

 ピーポーピーポー

 

 食洗器の動く音、壁時計の秒針の音、外を走る救急車の音などそれらの音を聞きながらゆっくりする。

 

 

 

 

ーーー………

 

 

 「ピンポーン!」

 

 来客を告げるインターホンの音で目を覚ます。いつの間にか眠っていたみたいだ。

 

 微睡ながらも時計に目を向けるとまだ30分しかたっていなかった。なにはともあれ誰かと思いながらインターホンを覗く。そこに立っていたのはアホ毛を揺らして立っている五月が立っていた。

 

 すこしふらつきながらも玄関のドアを開ける。

 

 ガチャッ

 

 

 「お「おはようございます!」はよう……」

 

 朝から元気だな。驚いて眠気が飛んだよ。

 

 「こんな朝からどうしたの? まだ7時だよ? 姉妹喧嘩したー? それとも朝ごはんでも食べに来たー? はたまたデートのお誘い?」

 

 多少ふざけながらも五月の返事を待つ。

 

「いえどれも違います!ちゃんと朝ご飯は2回おかわりしてきました!今日は給料を渡しに来たんです!」

 

 え?朝から2回もご飯食べるの?大食いだなお兄さんびっくり。

 

「まぁ、立ち話もなんだし入って入って」

 

「いいんですか? ではお邪魔します」

 

 

 

ーーー………

 

 

 

 

~リビングにて~

 

 五月が鞄から茶色い封筒を取り出し、テーブルの上に置く。

 

「父から預かった白羽君のお給料です」

 

「あー、今まで碌に教えられていないからいらないよ。上杉もそう言うと思うぞ」

 

 強いて言うなら飯食いに行ったくらいだな。むしろ僕が払わないといけないのでは?

 

「ダメです! ただでさえ怪我を負わせてしまいましたし、何より返金は受けつけません!」

 

 まぁ、確かに怪我の跡が残ってしまったが髪で見えないし別にいいんだけどな。でも五月は納得しないだろうからありがたく貰っておこうか。

 

「じゃあありがたく懐に入れさせていただきます。……五月はこれからどうするの?」

 

 封筒を懐にしまいながら訊くと、

 

「これから上杉君の家に行きますがよろしければ一緒に来ますか?」

 

「えっいいの? じゃあ行くー! すぐ準備するからベランダで待ってて!」

 

「ベランダですか? 玄関ではなくてですか?」

 

 頭の上に"?"を浮かべた五月にそうだよと頷く。

 

「わかりました。ではベランダで待ってます」

 

 未だに"?"を浮かべている五月を尻目に部屋に戻り準備をする。

 

 

 

 

ーーー………

 

 

 

~ベランダにて~

 

「それでは行きますか!」そう言い小さな玉を床に打ち付ける。そうすると辺りが煙幕に包まれ前も後ろも見えない状況になる。

 

 煙が晴れると白いシルクハットにモノクル、白い格好をし、マントをはためかさせながら立つ雪斗が立っていた。

 

『ではお嬢さん、準備はよろしいですか? この大空を翔る準備は』(怪〇キッドボイス)

 

「え? え? え?」

 

 先ほどよりも多くの"?"を浮かべている。困惑しているうちに五月を横抱きにし、ベランダの縁に立つ。

 

『それではお嬢さん共に鳥となり、この空を舞いましょう』

 

 

 そう言いベランダから落ちる。耳元で聞こえる五月の悲鳴を聞きながら、ハンググライダーを開く。

 

 しばらくしてスィーという音が付きそうなほどの滑らかの滑空状態になった時、

 

 首元にしがみついている五月に声をかける。

 

『お嬢さんご覧ください。目下には多くの人たち、車が行きかっています』

 

 恐る恐るといった感じで下を見る五月。

 

「わぁ~! すごいです!!」

 

 普段、ベランダから見る景色とそこまで大差はないのだけれども空を飛んでいるといった非日常的な体験がいつもの風景をより鮮やかにしてくれている。

 

 近くに鳩が飛んできてしばらく一緒に飛ぶ。

 

『恐怖もなくなったみたいで何よりです。そろそろ尋ね人の巣を教えていただけますかな?』

 

「あ! そうでしたね! えーっと、あそこの家です!」

 

 彼女の指さした家は数百メートル向こうの家。これなら滑らかに止まれるな。

 

『ではもうそろそろ着陸いたしますので、またしがみついておいてください』

 

 上杉の家の前の道路で着地する。

 

『お嬢さん着きましたよ』そして五月を地面に降ろす。

 

『では私はこれにて』

 

 ポンッと再び煙を出し消える。

 

「あれ?白羽君も一緒に上杉君を訪ねると思いましたが……」

 

 ふと腕に違和感を感じ目を向けるとそこには先ほどの白い格好を模した時の顔のイラストが描かれた1枚のカードが

 

『本日は空を飛ぶタクシーをご利用いただきありがとうございます。

    時にはタクシー運転手のキッドより』

 

 

「フフフッ、白羽君は中々面白い人ですね」

 

 

 五月がカードを読み終わった頃を見計らい声をかける。五月の目の前に右手の拳を突き出し、ポンッと音を立てて今回で2本目のサネカズラの花を出す。

 

「よっ!僕の名前は白羽雪斗ってんだ。よろしくな!」

 

「あっ! 白羽君帰ったんだと思いましたよ!」

 

 そう言いながら花と先ほどのキッドカードをいそいそと鞄にしまう五月。そして上杉の玄関まで歩きながら話す。

 

「この花はサネカズラという花なんですよね!花言葉は『再会』でしたね」

 

「そうだよー。ちゃんと調べてくれたみたいで嬉しいよ」

 

 上杉の家の玄関に着き、"声"を上げる。

 

「フータロー君、開けてほしいな」(一花ボイス)

「上杉ィ! 開けなさいよ!」(二乃ボイス)

「フータロー、開けて」(三玖ボイス)

「うーえすーぎさーん!開けてくださーい!」(四葉ボイス)

「上杉君、開けて」(五月ボイス)

「上杉ー、ドア開けてー雪だるま作ろうぜ!」

 

 バタバタと足音が聞こえる。

 

 ガチャッ

 

「うるせーぞお前らー! 近所迷惑だろーが!」

 

 ドアを開けると同時に叫んできた上杉。そこで僕は言う。

 

「公害の呼吸 壱ノ型 近所迷惑 だ」

 

「知らねーよ! そんな呼吸! 何しに来たんだ! 俺の勉強の邪魔をするな!」

 

 ゼェゼェと肩で呼吸をする上杉にまた声をかける。

 

 「僕は五月の付き添いで来たんだよ」 ねー五月と空気となっていた五月に声をかける。

 

「え、えぇ、そうですね。白羽くんは付き添いで来てもらいました」

 

(白羽君の声真似に呑まれてしまいました)

 

「それで一体何の用だ。ドッキリじゃないだろうな」

 

「えぇ、あなたにお渡しするものが……」

 

「ただいまーって、あ!」

 

 声がしたほうを見ると帰って来た様子のらいはちゃんが立っていた。

 

「五月さんいらっしゃーい!あとどなたですか? 私はらいはです」

 

「おはよう、らいはちゃん。僕の名前は白羽雪斗と言います。よろしくね!」

 

 らいはちゃんの目の前に右手の拳を突き出し、ポンッと音を立ててオレンジ色の向日葵(未来を見つめて)の花を出す。

 

「わぁ~! ありがとうございます! あっそうだ!なかにどうぞ!」

 

 向日葵の花を優しく両手で持ち、ニコニコしながら言うらいはちゃん。

 

「お、おい」

 

 らいはちゃんが先に入ってから僕たちも入る。

 

「……そうですね、外で渡すようなものでもないので、お邪魔します」

 

「おじゃマップ」

 

 靴を脱ぎ、居間に向かうと先ほどあげた向日葵がコップに活けられていて机の真ん中に鎮座してあった。

 

 僕たちは机の四辺に座った。五月の左側に僕がいて五月の向かい側に上杉が座っている。らいはちゃんは上杉の左側に座っている。

 

「父から預かった上杉君の給料です」そう言い机の上に"給与"と書かれた封筒を置く。

 

「すごーい、がんばったねお兄ちゃん」

 

「と言っても今月は二回しか行ってないしあまり期待しない方が……」

 

 封筒を開けてみるとそこには諭吉さんが5人入っていた。

 

「一日五千円を五人分、計二回で五万円だそうです」

 

 上杉の汗で諭吉さんがしわしわになりかけている。

 

「すげぇ……これなら借金もあっという間に……いや、受け取れねぇ、確かにお前たちの家に二回行った。だが俺は何もしてねぇ」

 

「何もしてないことはないと思いますよ。あなたの存在は五人の何かを変え始めています」

 

そう上杉に微笑む五月。

 

「……五人って……」

 

「間違えました四人です! と、とにかく返金は受けつけません。どう使おうがあなたの自由です!」

 

 そう言われ腕を組み、悩む上杉。しばらくして答えを出したようでらいはに訊く上杉

 

「らいは、何か欲しいものはあるか?」

 

 

 

 

 

ーーー………

 

 

 

 

~ゲームセンターにて~

 

 ガヤガヤ

 

「わー! こんなところがあるんだ!」

 

 ルンルン気分のらいはちゃんを見守りながら上杉が切り出す。

 

「……なんでお前も来てんだよ。雪斗はまだしも」

 

「仕方ないでしょう」

 

 

 

 

 

 

~上杉の家での時~

 

『私、ゲームセンターに行ってみたい!』

 

『五月さんたちももちろん行くよね? ダメ?』

 

 

僕は上杉にこっそりと話しかける。

 

『おい、そのお金はとっておけ、僕がすべて出す。いつもからかっているお詫びとして受け取ってくれ』

『助かるがいいのか?』

『当たり前だ。友達だろう?』

『すまん、恩に着る』

 

~今に戻る~

 

「断れよ!」

「断れませんよ! 可愛すぎます!」

「わかる!」

 

 僕はいつまで空気になっていればいいのだろうか。このままではヘリウムとなって遠くに行っちゃうぞ。

 

「お兄ちゃん、これやろ!」

 

 らいはちゃんが指さしたのは射的のゲームだった。

 

「ふっ、こんなゲームで満足できるんだからまだまだ子供だな」

 

 

~数分後~

 

「おかしい、今の衝撃で落ちないのは物理の法則に反している。あと一回あれば……」

 

 あまりの意地汚さに見ているこっちが恥ずかしい。五月なんて白い目で見てるぞ。

 

「五月まだ玉残ってるだろ。あれを狙え! そして不正を暴くんだ!」

 

「そう言われてもあんな小さい物……」

 

 銃を構え狙いをつける五月に上杉がくっつきアドバイスする。

 

「だから、照星に合わせて飛距離を計算してだな」

 

「わぁっ!」

 

 上杉が近くに来たことで恥ずかしくなり、引き金を引いてしまった五月。

 

「全然ダメじゃねーか! なら次は雪斗、おまえが不正を暴くんだ!」

 

「おっけー!」

 

 銃を構え深呼吸をし、集中する。そして引き金を引く。

 

 パァン!

 

 

 

 ポトッ

 

「対象は沈黙、オールクリアです」(沖〇昴ボイス)

 

「やるじゃねぇか!これで不正は暴いたな!」

 

「白羽君すごいです!」

 

 まだ玉が残っているので五月に銃を構えるように言う。

 

「そうそう、そんな感じー」

 

 銃を構えた五月の後ろから抱きしめるように手をまわし更にアドバイスをする。

 

「この銃は微妙に銃身が曲がっているから少しだけ照星をずらしてあとはリラックスして撃つ」

 

(ちょ、近いです! 白羽君! リラックスなんて無理です!)

 

「ほら固まってないでリラックスして」

 

(うぅ~、空を飛んでいたときは気になりませんでしたが、白羽君はいい匂いがします。ってなんか私が変態みたいじゃないですか! そ、そんな事考えていないでリラックスしないと、リラックス、リラックス)

 

「お! いいね! 引き金引くよー」

 

 五月の指の上から一緒に引き金を引く。

 

 パァン!

 

 

 ポトッ

 

 

「ほら取れた。おめでとう五月」

 

「あ、ありがとうございます」

 

(正直嬉しさよりも恥ずかしさでいっぱいです///)

 

 

「五月さんと白羽さんは仲がいいんですね!」

 

「は、はい」

 

「でしょ~、次は何やりたい?」

 

「今度はクレーンゲームがやりたいです!」

 

 探すか! と言い辺りを見渡すとかわいくデフォルメされたジンベエザメのぬいぐるみがあるクレーンゲームを見つけた。

 

「じゃああれやろっか!」

 

「うん!」

 

 再び上杉が挑戦。

 

「おかしい、おかしいぞ! なぜしっかりとアームが食い込んだのに直ぐに落ちてしまうんだ! ここのゲームセンターは不正をしているに違いない!」

 

 上杉よ、なぜそこまで不正を推すんだ。親の仇か? 今度はらいはちゃんまで白い目で見てるぞ。

 

「白羽!行けぇ!」

 

 僕は上杉のポケモ〇ではないのだが。

 

「とりあえず、ぬいぐるみの中心にクレーンの中心がくるようにしてみるか」

 

 ガチャガチャ、ポチッとな。

 

 ウィーーン、ガシッ。

 

 お! 思い通りに行ったな。あとは取れるかどうかだな。落ちないでくれよ。

 

 

 ウィーーン、ガチャ、ガタン。

 

 あっ取れた。

 

「はいらいはちゃん。このぬいぐるみ手触りいいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「なぜ白羽には取れて、俺には取れないんだ!」

 

「普段の行いのせいでは?」

 

 五月辛辣~!

 

「らいはちゃんお名前はどうするんですか?」

 

「お兄ちゃんはどんな名前がいい?」

 

「そんなもんジンベエザメなんだから"べぇ"でいいだろ」

 

 ……。

 

「五月さんは何がいい?」

 

 せめてなんか言ってあげて!

 

「そうですね、"フカヒレ"でどうでしょうか?」

 

 え? 食べる気?

 

「いい名前ですね! それにします!」

 

 いいんだ。何が良かったんだろうか。

 

 

「次こっちだよー!」

 

「らいはちゃん、前を見ないと危ないですよ」

 

「なんか付き合わせちゃって悪いな。らいはには家に事情でいつも不便かけてる。本当はやりたいことがもっとたくさんあるはずだ。あいつの望みはすべて叶えてあげたい」

 

 いいお兄ちゃんだな。

 

「お兄ちゃん、五月さん、白羽さん、最後に四人であれやってみたいな」

 

 らいはちゃんが指さしたほうを見るとそこにはJKが好む(偏見)プリクラの機械が。

 

「そ、それよりあっちのほうが楽しそうだぜ」

 

 何とかごまかそうとする上杉に五月が肩をたたいて言う。

 

「全て叶える……でしょう?」

 

 五月顔赤いよ。

 

 

 

 

 

ーーー………

 

 

 

 

 

 

『モードを選択してね』

 

 

 らいはちゃんがなんか慣れたような手つきで操作している。

 

「なぁ、らいはちゃんってプリクラって初めてじゃないのか?」

 

「あぁ、そのはずなんだが……」

 

 謎は深まるばかりだ。

 

 

『プリティモード。素敵な笑顔でキメちゃお☆』

 

「二人とも顔が硬いよー、白羽さんを見習ってよ」

 

 上杉と五月が雪斗のほうを見るとキラキラという音が付きそうな笑顔をした雪斗が。

 

「なぜそこまでできるんだよ」

 

「どうやってるんですか?」

 

「ただの開き直り、君たちも諦めなさい。そう、祈るのです。さすれば神が助けてくれるでしょう。」

 

「意外といつも通りだな」「そうですね」

 

『カメラを向いてね、3、2』

 

「なんかこれ家族写真みたいだね」

 

 パシャ!

 

 

 

 

ーーー………

 

 

「ぶはははは、お前なんて顔してんだ笑えるな」

 

「あなたの顔も負けず劣らずの酷さですよ」

 

 上杉の写真は笑みがひきつった顔をしている。五月のは口が波のようになっている。それどうやんだ?

 

 

「あれ? 僕にはなんかないの?」

 

「お前のは笑えるような要素はない!」

 

 変顔すればよかったかな?

 

「はい! 五月さんと白羽さんの分」

 

「い、一応貰っておきます」

 

「ありがとー、大切にするね!」

 

「お兄ちゃんもありがとう、一生の宝物にするね!」

 

 今日一番のらいはちゃんの笑顔。

 

「五月、白羽、今日は来てくれてありがとな」

 

 いつもそれくらい素直になればいいのに。

 

 

 

ーーー………

 

~外にて~

 

 ふっー、新鮮な空気が美味しいね! 空気を味わいながらキョロキョロ見渡すとストリートピアノが置いてあった。これはもう弾くっきゃない!

 

「おーいみんな!ちょっとピアノ弾いてくるー」

 

「ここら辺にピアノなんてあったんだな」

 

 ピアノの鍵盤を適当に押し、音がおかしくないか調べる。

 

 ん! 問題なし!

 

 では早速ちゃんと声も変えて。1曲目は米津玄〇の曲にしよう。

 

「それではお聴きください Lemo〇」(米津玄〇ボイス)

 

 少し緊張しながらも指を動かし確実に弾いていく。

 

 夢ならばどれほどよかったでしょう

 未だにあなたのことを夢にみる

 忘れた物を取りに帰るように

 古びた思い出の埃を払う

 

 戻らない幸せがあることを

 最後にあなたが教えてくれた

 言えずに隠してた昏い過去も

 あなたがいなきゃ永遠に昏いまま

 

 きっともうこれ以上 傷つくことなど

 ありはしないとわかっている

 

 あの日の悲しみさえ あの日の苦しみさえ

 そのすべてを愛してた あなたとともに

 胸に残り離れない 苦いレモンの匂い

 雨が降り止むまでは帰れない

 今でもあなたはわたしの光

 

 

 

ーーー………

 

 

 あの日の悲しみさえ あの日の苦しみさえ

 そのすべてを愛してた あなたとともに

 胸に残り離れない 苦いレモンの匂い

 雨が降り止むまでは帰れない

 切り分けた果実の片方の様に

 今でもあなたはわたしの光

 

 直ぐに2曲目に入る。今度はYOAS〇BIの曲

 

「夜に駆け〇」(幾田り〇ボイス)

 

 少し間を置き再び弾き始める。

 

 沈むように溶けてゆくように

 二人だけの空が広がる夜に

 

「さよなら」だけだった

 その一言で全てが分かった

 日が沈み出した空と君の姿

 フェンス越しに重なっていた

 

 初めて会った日から

 僕の心の全てを奪った

 どこか儚い空気を纏う君は

 寂しい目をしてたんだ

 

 いつだってチックタックと

 鳴る世界で何度だってさ

 触れる心無い言葉うるさい声に

 涙が零れそうでも

 ありきたりな喜び

 きっと二人なら見つけられる

 

ーーー………

 

 

 

 騒がしい日々に笑えなくなっていた

 僕の目に映る君は綺麗だ

 明けない夜に溢れた涙も

 君の笑顔に溶けていく

 

 変わらない日々に泣いていた僕を

 君は優しく終わりへと誘う

 沈むように溶けてゆくように

 染み付いた霧が晴れる

 忘れてしまいたくて閉じ込めた日々に

 差し伸べてくれた君の手を取る

 涼しい風が空を泳ぐように今吹き抜けていく

 繋いだ手を離さないでよ

 二人今、夜に駆け出していく

 

 

 パチパチパチパチ! と盛大な拍手の音が僕の鼓膜を揺らす。集中が途切れ、辺りを見渡すと多くの人々がスマホを片手にピアノの周りを囲んでいた。

 

「おい、あの青年声を変えて歌ってたな。」

「あぁ、最初は男性の声で次が女性の声だったな」

 

「ねぇ、彼が弾いていた曲知ってる?」

「え? あんた知らないの? 米津〇師のLem〇nって曲とY〇ASOBIの夜〇駆けるって曲だよ」

「いい曲だね。家に帰ったらまた聞こ」

 

 

「あれ?白羽さん。もう弾くのやめちゃうんですか?」

 

 そんな上目遣いで見ないでくれよらいはちゃん。心が揺れるだろ。だがここは心を鬼にして断ろう。

 

 「そうだね。2曲も弾けて満足したからね。」

 

 えーってまだ不服そうならいはちゃんの前に屈み、らいはちゃんの額を人差し指と中指でトンッとつく

 

「許せ、らいはちゃん……また今度だ」

 

 らいはちゃんは額をさすり、少し照れたかのように笑った。

 

 そんなやり取りを見ていた五月。

 

 ジーーーッ

(なんか羨ましいです)

 

 

 

 

ーーー………

 

 

 

 周りにいた人々が疎らになってきた頃、らいはちゃんがなにかに気づいた。

 

「あれ? お兄ちゃん五月さんが四人いる」

 

「え?」

 

 そこには浴衣に身を包んだ中野姉妹が立っていた。

 

 

「ユキトはピアノも弾けるんだね。これで5人集まったし早くお祭り行こうよ」

 

「デート中にごめんねー。ピアノすごかったよーおねえさん感動しちゃった」

 

「五月! なんでそいつらといるのよ!」

 

「白羽さん! ピアノすごかったです! わー上杉さんの妹ちゃんですか? これから一緒にお祭りに行きましょう!」

 

 急に賑やかになったな。

 

「だがお前らには宿題を出していただろう。やったのか?やってないのなら……」

 

「お兄ちゃんダメ?」

 

 おぉーっと! ここでらいはちゃんの上目遣い攻撃! この攻撃に上杉は耐えられるのかー?

 

「もちろんいいいさ……」

 

 耐えられなかったー! らいはちゃんの勝利です!

 

 

(あぁ、日曜日が潰れてしまった)

 

 




 オレンジ色の向日葵の花言葉:未来を見つめて


 書きながら思いました。雪斗! そこ代われ!

 
 私は中野姉妹推しです。みんな違ってみんないい……。

 
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