~オリ主サイド~
『ピンポンパンポーン……第14回秋の花火大会は終了いたしました。ご来場いただき誠にありがとうございました。』
あ~あ、終わっちゃった。早く一花出てこないかなー。待つの疲れてきたんだけど。ちなみに上杉はここにはいない。らいはちゃんのところにいる。
お!一花が出てきた。ついでに髭のおっさんも。
「どうだったー? 受かったでしょー? 受かったよね? 受かったって言って」
そうでないと僕がカードに書いた意味がないではないか! 恥ずかしいだけだわ。黒歴史なだけだわ。
「うーん、どうなんだろう………」
「どうも何も最高の演技だった。私は問題なく受かったと見ている。まさか一花ちゃんがあんな表情を出せるとは思わなかったよ……………それを引き出したのは恐らく君だ」
「そうかね? 上杉のおかげじゃね?」
「私も個人的に君に興味が湧いてきたよ」
「すみません。僕ノーマルなんでお断りします。」
やめてー!そんな目で見ないでー!男性恐怖症になっちゃうよー!
僕は後ろに下がりながら断る。
「とりあえず一花を貰っていきますね!」
一花の手を取り急いでその場から退散する。僕の純潔が奪われる前に!!
「ま、待ちたまえ! どこへ行くんだ!」
ーーー………
「よし、まけたね。……ここの近くの公園でみんな待ってるよ」
走っていたのをやめ、歩きながら言う。
「………ハァ、ハァ。つ、疲れた。走るの早いんだね」
「運動してますからこれくらいは余裕です」
フフンと胸を張る。
「………みんな怒ってるよね。花火を見られなかったこと謝らなくちゃ」
「ま、そうだけど花火をあきらめるのはまだ早いぞ」
公園に着き中に入っていくと既に花火を始めている姉妹たち。
「あ、一花に白羽さん」
「打ち上げ花火には見劣りするけどみんなで一緒に出来るからいいよね」
「白羽さん準備万端です。我慢できずにおっ始めちゃいました」
頭上に噴き出る花火を振り回す四葉。
「ブンブン振り回すなって危ないぞ。四葉が花火を買っていてくれたおかげだ。ありがとう。上杉もよく思いついたな」
ベンチで眠っているらいはちゃんのところにいる上杉に声をかける。
「ああ、花火を見るなら別にこれでもいいんじゃないかと思ってな」
上杉がらいはちゃんの頭を撫でながら答えた。
「みんな! ごめん、私の勝手でこんなことになっちゃって……本当にごめんね」
まっすぐ頭を下げる一花。
「全くよ。なんで連絡くれなかったのよ。今回の原因の一端はあんたにあるわ。……あと目的地を伝え忘れた私も悪い」
「私は自分の方向音痴に嫌気がさしました」「私も今回は失敗ばかり」「よくわかりませんが私も悪かったというわけで! 屋台ばかり見てしまっていたので」
二乃に続けて言う姉妹たち。
「はい、あんたの分」
「お母さんがよく言ってましたね。誰かの悲しみは五人で乗り越えること。誰かの幸せは五人で分かち合うこと。喜びも。悲しみも。怒りも。慈しみも。私たち全員で五等分ですから」
いい話だ。ぜひお母さんに一目会ってみたかったな。
「ささ、仲直りもしたところでみんなで線香花火やろー? 一番長く残った人にはこの屋台で買った食べ物を上げちゃいまーす!」
「それもう冷めてるだろ」
「冷めてても食べられるのならやります!」
「レンチンすればいけるでしょ」
なんだかんだ言いながら線香花火を手に持つみんな。
みんなが準備が出来たのを見計らって今日買ったフリ〇ザのお面をつける。
「な、なんでお面付けたの?」
「ボケるため」
一花が僕の答えに呆れた様子を見せたが笑ってくれたので良しとしよう。
『ホホホホホ…私はフリ〇ザと申します。』(〇リーザボイス)
「ど、どうも……」
(ユキト君の行動が読めないよ)
四葉が声を上げる。
「いくよー!」
みんな同時に火をつけ眺め始める。
「あー落ちちゃいましたー!」
最初に落ちたのはにししと笑いながら落ちたことを伝える四葉。
「振り回せばすぐに落ちるに決まってんでしょ」
「あ、落ちた」「私もだよー」
続いて落ちたのは三玖と一花。
『あら落ちてしまいましたね。仕方ありません今回は諦めてあげましょう』「あたしのもだわ」
僕と二乃の花火も落ちてしまい、7つあった小さな花火は残り二つとなった。
「負けられません! 歩き回って小腹がすいたんです。絶対勝ちます!」
「俺も負けねえぞ! 俺が勝ったら別の宿題をやってもらうからな」
それは嫌です! と答える五月だが突然強い風が吹き二人の花火を揺らす。
「「あ」」
落ちるのが先か、声が先か。まさかの同時敗退。
「ということで、今回の食べ物は上杉と五月に進呈します!」
おめでとーと言いながら手渡す。雪斗に上杉が話しかける。
「残念だったな雪斗。ありがたくいただいていくぜ」
にやりと話す上杉。
「『はじめてですよ……わたしをここまでコケにしたお馬鹿さんは』……とまあふざけるのはいったん置いといて次はなにすっかー」
「上杉さーん、白羽さーん見てください! 綺麗ですよー!」
四葉が噴き出る花火をコマのようにくるくると回りながら遊んでいる.
「だから危ないって!」
四葉がニコニコしてると本気で注意しずらい。
ーーー………
花火が残り五本となり中野姉妹たちがどれを選ぶかを決めている。僕と上杉はベンチに座って今日の疲れを取っている。
どれを選ぶか決めたみたいだな。
『せーの』
あ、暗くてよく見えないが誰かと三玖が同じ花火を取ったみたいだ。だけど三玖に譲ったみたいだ。
僕は暇なので500円玉を取り出しコインロールをして時間をつぶす。しばらくしていると一花がこちらに向かってきたので僕は席を外した。
「あはは、ユキト君にはかなわないな」
一花が上杉の前まで行き話しかける。
「まだお礼言ってなかったね。応援してもらった分私も君に協力しなきゃ。パートナーだもんね。私は一筋縄じゃいかないから覚悟しててよ」
上杉に感謝の言葉を伝える一花だが返事が来ない。よく見てみると上杉は目を開けたまま眠っていた。
その様子に気づいた一花が上杉の隣に座り、膝枕をする。
「頑張ったねありがとう。今日はおやすみ」
木の陰からコッソリ窺っていたが一段落着いたみたいなのでベンチに戻る。
「話は済んだ?」
「うん。……あと応援してくれてありがとね。そういえばこのカードはいつ仕込んだの?」
僕が一花の帯にくっつけていた応援カードを見せてきた。
「これはねータブレットを返す時に仕込んだんだよ!」
一花が手に持っているカードを一花の手ごと包み込むように握り、カウントダウンをする。
「スリー、トゥー、ワン!」
ポンッと音を出すと同時に手を放し一花の手に目を向ける。そこにはガーベラの花が。
「わ! きれー!……でもさっきのカードは返してほしいな」
一花はガーベラから目を放し、返してほしいと言う。
「くっ ……恥ずかしいからさり気なく回収しようと思ったのに」
「私はそこまで甘くないぞ~」
「……でも甘いのはどっちかな?」
僕は一花の太ももを指さした。
「あれ? いつのまに!」
一花の太ももには先ほどのカードが張り付いていた。
「マジシャンを甘く見ると痛い目にあうぞ♪」
「やられたー」
ふふふふとどちらとなく笑いだし、和やかな雰囲気が漂っていた。
ガーベラの花言葉:常に前進