~オリ主サイド~
昨日、花火大会の後に上杉を家まで送ったんだが、その時に泊めてもらったので、今日は上杉宅から登校している。らいはカレーは美味かった。また食べに行こう。ちなみに必要なものを取りに一旦家に帰った。
「2人ともおっはー」
一花が声をかけてきた。今日から冬服かー。
「おっはー」(一花ボイス)
「朝から何のようだ、一花」
「学校まですぐだけど一緒に登校しようと思って。冬服へのコメントはないの?」
「ない」
平然とそう言う上杉。
「僕もないね。強いて言うなら足は寒くないの?」
JKにとっては寒さよりファッションかな?
「寒いけどこれくらいなら大丈夫だよ。……昨日、皆に仕事の事を打ち明けたんだ。皆ビックリしてたなー」
「だろうな」
「でしょうね」
駆け出しとは言え女優だしね。金の卵だ。これから一花をテレビで見る機会が増えるかな。
「でも、スッキリした」
「そっか、それならよかった」
「俺はまだ反対だからな」
「留年しない程度に頑張るから大丈夫。放課後にまた連絡するね!」
まあ卒業できればいいんだしね。
「……………あ、そうだ。はい、これ」
突然、一花は僕達に向けてスマホを差し出す。
「くれるのか?」
んなわけないだろ。
「違う違うよー。2人とメアド交換しよってこと!」
「メアドか……」
ーーー………
~放課後~
「メアド交換、大賛成です!」
上杉が四葉にメアド交換について話した結果としては大賛成でした。うれぴー。
「その前に、これを終わらせちゃいますね」
来た時からずーっと千羽鶴を作っているが誰にあげるんだろうか。
「……一応聞くが何やってるんだ?」
腕を組みながら四葉に問いかける上杉。
「千羽鶴です! 友達の友達が入院したみたいで!」
それはもはや他人じゃね? 相手からしてもなんて反応すればいいか困るんじゃないか?
「勉強しろー!」
知らない人のために手間のかかる千羽鶴を折るなんてお人よしだねー。
「半分寄越せ、俺もやる!」
「僕もやる~」
千羽鶴を折るとか懐かしいな。いつぶりだろうか。折り方を覚えている自信はないので文明の利機を使おうではないか。
「Hey! s〇ri!」
「……」
反応しないな。反抗期か?
「白羽さんのスマホはAndr〇idだと思いますよ!」
僕のスマホAndr〇idだったんだ。あまり使わないから知らなかったよ。買うときはテキトーに選んだし。
「お、中野。ちょうど良いところにいた。ノートを皆の机に配っておいてくれ」
「はーい!」
通りかかった先生の頼み事にすぐに承諾する四葉。その事に上杉がイライラしてきてるのが目に見える。
「…………そもそも、俺は別にお前達の連絡先なんて…………」
そんなことを言う上杉に一花はスマホを操作する。数秒後、ガラケーの着信音が鳴って上杉が確認した瞬間、上杉に動揺の表情が浮かんだ。
「………みんなのメアド知りたいなー」
上杉が一花を睨みながらイライラとした口調を隠さずに言う。
「協力してあげる」
最初にメールアドレスを見せてくれたのは三玖だった。
「そういえばもう足は平気?」
「う、うん。もう痛くないよ」
良かったー。あとの残りは四葉と二乃と五月ですか。
「二乃と五月は食堂にいますよ!今の内に聞きに行きましょう!」
四葉、お前のメールアドレスはくれないのか……?
ーー………ー
「お断りよ。お・こ・と・わ・り!」
「私たちにあなたたちの連絡先を聞くメリットがありません」
即座に否定される。僕は五月に何もしていないはずなのに………。
「…………これならどうだ!俺と白羽のを交換すれば、らいはとの連絡先もセットでお値段据え置きお買い得だ!」
「…………背に腹は変えられません」
「身内を売るなんて卑怯よ!」
「二乃は教えてくれないのー?」
「当たり前よ」
ならば仕方がない。裏技を使おうではないか。
「あれー? 二乃はアドレス交換しないんだー。じゃあ二乃抜きで妹ちゃんたちと楽しくメールしようかなー」(一花ボイス)
「アドレス交換しないなんて二乃有罪、切腹。……私たちで楽しくやってるよ。二乃はすきにしたら」(三玖ボイス)
「私二乃さんとお話ししたいな」(らいはボイス)
この場にはいない一花と三玖、らいはちゃんの声で煽る。
「…………書くものを寄越しなさい」
やったー!
「生徒手帳に書いといて」
二乃に生徒手帳を渡す。よーし、これで後は1人だ。ジーーーっと四葉を見つめる。
「へ? なんですか?」
「………僕と上杉がアドレス交換した人物を言ってみ?」
「えーっと……一花、三玖、五月、二乃……あー! 四葉! 私です!」
上杉が『こいつアホだ』って思ってるのが目で分かる。僕もそう思うぞ。
「こちらが私のアドレスです!」
そう言って見せた瞬間、四葉のスマホ画面に着信表示とそれを知らせる音が出る。
「電話来てるぞ」
「………ああ、私もう1つ頼まれごとがあったんでした。失礼しますね」
「は?」「え?」
タタタと廊下を走って行っちゃった。一瞬見えた画面にはバスケ部部長とか書いてあったな。
「バスケ部ってまさか…………!」
「そのまさかかもね。……でも断ると思うよ。」
「悪い、ちょっと行ってくる!」
上杉も四葉の後を追って行ってしまった。僕はこれで帰ろ。
「じゃみんなバイビー、また明日ー」
ポンッと音を出して消える雪斗。
「あっ……ちょっと! メアド書いたんだけど……」
生徒手帳を掲げた状態で固まる二乃。
ーー………ー
その日の夜、食事をしている五つ子達。彼女らの携帯が一斉に鳴る。
「! ……ユキトからだ」
「私もです!」
「一斉送信でしょうか」
「白羽さんたちったらメアド交換したからといって浮かれちゃって~……」
様々な反応を見せる中野姉妹たち。中身を見てみると、
『ヤッホー! みんな大好き雪斗だよー! いや~まさか初めてのメールをこんなことに使うとは思わなかったよ~。というわけでこれ宿題でーす。頑張ってね! 文句は上杉に言って! 僕はじゃんけんで負けただけだからー。 追伸 後でヒントを送るので窓を開けといてね! よろ~』
本文に目を通すとズラーーーーーっと並んだ五教科の問題。
「……やっぱり断ったほうがよかったね」
「窓を開けとけばいいんでしょうか?」
「みたいだね。何するつもりなんだろう」
五月が窓を開けた瞬間に一羽の白い鳩が入って来て、その鳩は二乃の肩に止まりパンに目線を向けている。
「なんかこの鳩人懐っこいんだけど」
パンの切れ端を鳩にあげながら触っている二乃。
「あ! なんか紙が脚につけられてますよ」
鳩の脚に結び付けられていた紙を解き、中身を読んでみると、
『るんたった~! おまたせ! これがヒントだよ! その鳩は僕の鳩だから気が済んだら窓に近づけてやってねー二乃! P.S. 明日の朝にそちらに行くからよろしく』
「なんでアタシだとわかったのよ!」
「……二乃はかわいいものが好きだから」
「明日の朝に来るんですね。分かりました」
この紙にも先ほどの問題と同じくらいの文章が。
「二乃、気が済んだら私にも触らせてください!」
「私にも」
一時テンションが下がった中野姉妹だが、一羽の鳩のおかげで再び気分が上がる姉妹たち。
外から入って来た夜風が、姉妹たちを包みながらリビングに広がった。