五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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第21話 積み上げたもの

~オリ主サイド~

 

 

~学校にて~

 

「来週から中間試験が始まります。念のために言っておきますが今回も赤点は30点未満とします。各自復習を怠らないように」

 

 ついに来ましたねー中間テスト!

 

 休み時間になり次の時間の小テストの勉強をしていると上杉と五月が話している声が聞こえて来た。

 

「……同じクラスだからわかる。お前は姉妹の中で一番真面目だ」

 

 口説いてんのかな。

 

「ただ馬鹿なだけなんだ!」

 

 ……フラれたな。

 

「意地張ってないで白羽だけじゃなく俺にも聞いて来いよ」

 

「そうですね。白羽君にも悪いですし、この問題を教えてもらってもいいですか?」

 

 上杉にではなく教師に教えを請いに行った五月。僕のところに来てほしかったな。

 

「わかりました。あとで職員室まで来なさい」

 

「ありがとうございます先生」

 

 あーあまた拗れちゃった。拗れすぎてそのうち関係が千切れちゃうぞ。

 

 

 

~放課後図書館にて~

 

 頬に紅い紅葉型を作っている上杉と、二乃以外の中野姉妹たちと勉強会をしている。

 

「上杉、随分とお洒落なマークを頬につけてんな。どこでつけたんだ?」

 

「二乃にやられた」

 

「へー、どうせなんかやらかしたんだろうな」

 

「上杉さん、白羽さん、今日の私はいつもとどこが違うでしょーか?」

 

 四葉のことを無視して話を進める上杉。

 

「お前らもうすぐ何があるか知ってるか?」

 

「無視!!」

 

「はいはい、リボンでしょ。新しいリボン買ったんだね」

 

「白羽さん、正解です! 今はチェックがトレンドだと教えてもらいました!」

 

 そうなんだー。エッヘンっと胸を張る四葉のチェック柄のリボンを上杉が鷲掴みする。

 

「お前の答案用紙もチェックが流行だよかったな」

 

「わ~~~、最先端~~~」

 

「そこは最先端にしなくていいから。中間が危ういのが目に浮かぶ」

 

「白羽の言うとおりだ。このままでは試験を乗り切れない! だからこそ、この1週間で国数英理社を徹底的に叩き込むぞ。だから三玖も日本史ばかりやってな……み、三玖自ら苦手な英語を勉強している、……熱でもあるのか? 勉強なんていいから休め?」

 

 三玖に失礼だな。

 

 ちなみに三玖は日本史ではなく英語をやっていた。

 

「平気。少し頑張ろうと思っただけ」

 

 成長したな三玖。このままガンバレ!

 あと、そこの英単語間違えてるよ。

 

 

~放課後~

 

 

「あー疲れた!」

 

「一刻も早く帰りたい……」

 

 僕も疲れた。なんだかとても眠い。

 

「不味いぞどうする白羽。放課後だけでは時間が足りない。週末にどれだけ詰め込めれるか……」

 

「……落ち着け上杉。僕らの目的は中間テストで赤点回避する事じゃない。卒業させる事だろ?」

 

「確かにそうだが………」

 

「ユキト君の言うとおり、そんなに根詰めなくていいんじゃない?中間試験で退学になる訳じゃないんだし、私達も頑張るからさじっくり付き合ってよ」

 

(……2人の言う通りそんなに焦らなくていいのかもな)

 

 一花からの助言もあり、上杉の肩の力が抜けたことを感じる。

 

「ご褒美くれればもっと頑張るけどね」

 

「あ、駅前のフルーツパフェが良いです!」

 

「私は抹茶パフェ」

 

「僕も食べたくなってきたよ」

 

「じゃあ、今から行きましょう!」

 

「一刻も早く帰りたいんじゃなかったのか?」

 

 甘いものが食べられるのなら元気も出てくる。

 

「上杉さん!置いてっちゃいますよー!」

 

「早く来いよー」

 

 

~スイーツ店にて~

 

「……上杉が勉強するからと、僕と四葉の誘いを断って帰るとは驚きだね!」

 

 あの流れで普通帰るか?

 

「それよりも注文しちゃいましょー!」

 

 パフェが来るまで雑談をしながら時間をつぶす。

 

「こちらお品物です。ごゆっくりどうぞ」

 

「ありがとうございます。うわー美味しそう!」

 

 『いただきまーす!』

 

 食べようとしたその時、僕のスマホから電話が鳴る。3人に断ってから僕は電話に出る。

 

 全くもー誰だよ。これからだってときに電話してくる輩は。人の食事前に電話をかけてきてはいけないって親に教わらなかったのか? 広辞苑にも載ってることだぞ。(嘘)

 

「はいもしもし、白羽です」

 

『……白羽君。娘が世話になっているね』

 

「……ど、どうも。こんにちは……」

 

 中野さんちのお父さんかーい!

 

『なかなか顔を出せなくて済まないね。家庭教師の調子はどうだい?』

 

「ちゃんとやってますよ。娘さんの個性が強くてしばしば困るときもありますが……」

 

『そうか順調そうで何よりだ。ところで、近々中間試験があると聞いてね』

 

「……はいありますね」

 

 そのための電話じゃないだろうな。

 

『少々酷だが、ここで君達の成果を見させて貰いたい。一週間後の中間試験、五人のうち一人でも赤点を取ったら、君には家庭教師を辞めてもらう』

 

 ……マジ? ジーマーで?

 

「…しょ、承知致しました」

 

『この程度の条件を達成できなければ安心して娘たちを任せておけないよ。上杉君にもこの事はつい先程通達しておいた。それでは健闘を祈るよ』

 

 それだけ言い残して電話は切れた。

 

 ……あと1週間で全員赤点回避、……かなり厳しいな。せめて1か月前に言ってくれればよかった。……二乃が勉強をしてくれる確率ははるかに低い。それこそ宝くじに当たるようなもんだろう。……宝くじでも買っとこうかな。当たったら二乃が勉強すると願掛けて。

 

「……ユキト? 大丈夫?」

 

 二乃をどう勉強に引き込むかを考えていた僕は三玖の声に現実に引き戻された。

 

「どったん?」

 

「さっきの電話、多分お父さんからだよね?」

 

「そうだよー」

 

 なるべくいつも通りの感じで話す。

 

「何を話したの?」

 

「娘たちをよろしくって言われただけ」

 

 話をこれ以上広げられないようにと、先ほど届いたパフェを食べ「ピリリリ!!」

 

「はいはい何ですかどなたですか!!」

 

 好物を目の前にぶら下げられて、取り上げられた気分。僕が良識ある人物じゃなかったら、暴徒化してたぞ。 テメェの血は何色だァ~!! …………おっとアブナイアブナイ。つい意識がソッチに流れちゃうところだった。クールになるんだ。頑張れ僕!

 

 鋼の意思で衝動をなんとか押さえつけながらも席を外し、電話にでる。

 

「もしもし、白羽です」

 

『やぁ、皆大好き社長だよ!』

 

 ブツッ。

 

「間違い電話だったみたい」

 

 そう言い再びパフェを口に運ぼうとすると、また電話が鳴った。ハァ、とため息をついて電話に出る。

 

『切らないでくれよ。今日は大事な事を伝えに電話したんだから』

 

「いえ電波が悪かったみたいですよ」

 

『そうか、なら仕方ないな』

 

「それで何のご用でしょうか? 一花ならそばに居るので代わりましょうか?」

 

『いやいや君に用があるんだよ。先日君が出てくれた映画があるだろう』

 

 無理矢理出されたアレですね。

 

「それが何かありましたか?」

 

 やはりバッシングでも来たんだろうか?

 

『いや無事に全ての撮影を終えてね、近々上映会があるんだよ、それに出て欲しいんだ』

 

「すみませんが、お断りします。そもそも来週から中間テストがあるので無理です」

 

『中間テストが終わってからでかまわないよ。一花ちゃんも、他の高校生の女優もいるしね。そこは心配しなくても大丈夫だよ』

 

 言外に断っているんですよ。察して下さい。

 

『良い返事を期待しているよ。じゃあね、チュッ』

 

「ギニャァァァア!!!」

 

 尻尾を踏まれた猫のような声が喉から出た。

 

「猫?」「今の猫の声だよね?」「どこに居るんだろう」

 

 知らないお客さんたちに聞かれていたが、羞恥心が産まれない。羞恥心より吐き気が勝って引っ込んでいる。

 

 アノヤロウ最後に耳元でトンデモねぇもんブチかましやがった。お巡りさん是非とも捕まえて下さい。危険物取扱法でシバいて下さいお願いします。

 

「どうしたの?変な声出してたけど」

 

 席に戻った僕は、三者三様の視線を受けて顔を青くする。

 

「は、話したくない」

 

 脳裏で社長がカモ~ン! と手招いてるのが見える。もう末期かもしれない。

 えぇい! ここはやけ食いだ。ヤケクソララバイで忘れよう。例え腹が膨れても止まるんじゃねぇぞ僕。当たりメェだ僕。

 

「うまうまうまぁーい!」

 

 パクパク食べていると何か言いたげな3人。

 

「大丈夫?」「大丈夫雪斗?」「白羽さん、目が死んでますよ?」

 

「チーズケーキとモンブランをお願いしまーす!!」

 

 腹に甘いものを詰め込んで、頭をぶん回す。

 

「あ゛~~ブドウ糖が脳に染みるぅ゛脳が、脳が震えるぅ!!」

 

「ホントに何があったの?」「目が血走ってる……」「キャラ崩壊してません?」

 

 クビにされたら5人を卒業させるという約束が果たせなくなる。それだけは勘弁だ。上杉と協力して姉妹たちの学力アップを促進させなければ!

 

 それでも駄目だったら最終手段。ピッキングでテストのある金庫を開き、五人の筆跡を真似て書き直す。

 

 ヤバい、頭もイカれ始めた。このままだと犯罪に手を染めそう。クールになれ僕。ホットな心でクールな頭。……これって何だか上は氷河、下は大火事みたいななぞなぞだよねー!

 

 え? 上映会? 知らんな。何それ美味しいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたからは絶対に教わりません!」

 

 

 

「お前にだけは絶対教えねー!」

 

 

 

 そして、上杉が僕たちの首を自ら絞めていることを、後ほど知ることになった。

 

 


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