五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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祝! 五千文字弱まで書くことが出来ました! 少しは成長したということで………。

やはりオリジナルストーリーのほうが文字量増えますね。




第27話 上映会

 

 今日はこの前出た映画の上映会に参加するため、イ〇ンまでやって来た。

 

「やっと着いたね! ユキト君!」

 

「そうだね」

 

 一花の溌剌とした声に賛同する。

 

 まだ開始まで30分くらいあるな。もう会場まで行ってしまうか。

 

 

 

 雪斗が上映会に来たのは理由がある。それは昨日のコロッケ騒動の日。

 

 

ーーー…………

 

 

 

 

「あ、そうだユキト君! この前の映画の上映会が明日やるらしいんだけど来るよね?」

 

 玄関で靴を履いていると一花が声を掛けてきた。

 

「は? ゴメン突発性難聴になっちゃったみたい。もう一回言ってくれる?」

 

「だから、明日上映会やるって!」

 

 聞き間違いじゃなかった。って言うかなんでそれを前日に言うの? 報連相って言葉知ってる? 高校生だけど、社会人と言ってもいい職業やってるんだよね? 大丈夫? そして決定事項なの?

 

「…………行かないよ」

 

 ヤダよそんなとこ行くなんて。絶対いちゃもんつけられるじゃん。ぽっと出の奴が~。とか、部外者が~とかさ。そんな見え見えの罠があるところに行くわけないじゃん。僕は冒険家じゃないんだ。リスクを背負ってまでは行きたくない。

 

「そういうと分かってたよ。そこでコレ。欲しい?」

 

 そう言って見せてきたのはスイーツ店の無料券。しかも期限が無制限だと! プラチナチケットじゃないか!! ……っく、欲しい。欲しいぞ! 僕の好みをよく分かっているじゃないか! だが僕はこれくらいじゃやられないぞ。

 

「ぼ、僕がそんなもんで釣れるとでも?」

 

「そんな欲しそうな顔して言っても説得力ないけど。目も泳いでるし」

 

 おっと、顔に出てしまっていたか。でも仕方ないよね。好物だもん。食欲は抑えられないよ。…………じゅるり。ヤバい涎が出てくる。

 

「あと、私たちがテストの日にユキト君、下野さんと遊んでその帰りに痴漢の冤罪を掛けられたんでしょ?」

 

 急に話が変わったな。

 

「そうだけど。何で知ってるの?」

 

 僕誰にも痴漢冤罪の話していないんだけど。いざって時の話題として大事に温めていたのに! ネタ帳にも書いてたのに!

 

 …………ほらワタクシ陰キャでございましょ。急に「何か面白い話をして」って言われた時のために、面白い話を一つでも多く持っていたほうがよろしいかと思いまして。ええ。至って真面目な理由でございます。決して上杉や中野姉妹のほかに親しい友達がいないとかそんな理由ではありませんから。勘違いしないように。…………どうしよう、何故か心の涙が止まらない。

 

「下野さんの妹さんが冤罪をかけてしまったことに謝りたいんだって」

 

「へー。別に気にしていないから謝罪は要らないって言っといて」

 

 あの人妹さんだったんだ。世の中狭いね。

 

 それに無事クズは捕まったわけだし。そのままコンクリに囲まれた部屋で生涯を暮らすといい。悔い改めろ!

 

「それが何としてでも謝りたいらしくて…………聞く耳を持ってくれないんだよね」

 

「ふ~ん。何とかしといて」

 

 なんとなく苦手な感じがするんだよね。あの人。

 

「妹さんが菓子折々持ってきてくれるって」

 

「それを早く言って!」

 

 もし行けばしばらくは甘いものに困らないのでは? だがしかし…………悩む~。

 

「更にさらに、上映会に来てくれたら社長が甘い物奢ってくれるって!」

「行くわ。時間と集合場所は? 早く教えて。いや~楽しみだなー。明日が待ち遠しいよ」

 

 もう行かないという考えはない! 待っていろ僕の理想郷(スイーツ) !食べ尽くしてやるからな!

 

「今までの問答が何だったのかというほどの手のひら返しだね。13:00にイ〇ンの映画館にて開催だって」

 

 少し呆れた様子の一花の言葉を心のメモにしっかりと赤字&大文字で記帳する。スイパラ♪スイパラ♪

 

「社長さんに財布を太らせといてって言っといて」

 

 なんだ髭のおっさんはいい奴だったのか。認識を改めないとな!

 

「用はそれだけだから、また明日」

 

「また明日! …………寝坊するなよ。したら一花のベッドの枕を固い奴にしてやる。寝つけなくて隈をこしらえるといい」

 

「それだけで済むんだ。…………大丈夫!ちゃんと起きるから!」

 

「……怪しいから起こしに来るよ。そして一緒に行こう」

 

「うん! じゃあよろしくね!」

 

「バイバーイ」

 

 しっかりとスイーツ店の無料券を握りしめ、中野家を後にする雪斗。

 

 

(これからユキト君を誘うときはスイーツで釣ろう。…………明日ちょっとした記者会見みたいなものもあるんだけど言わないのが幸だよね……。)

 

 

 

ーーー…………

 

 

 そんなわけで無事会場に到着。ちなみに一花は寝坊せず起きていたので一花の安眠は危機を脱した。どうやらがぶりんが起こしたらしい。目覚まし機能もついてるんだなアイツ。

 

 きょろきょろと辺りを見渡していると髭のおっさんが声を掛けてきた。

 

「やぁ雪斗君。元気にしてたかい?」

 

「元気にしてますよ」

 

「そうか.それならよかった。もうすぐ上映会が始まるから舞台裏に来てくれるかな?」

 

「? 分かりました」

 

 少し急いでいるのだろうか腕時計を見ながら言ってきた。

 

 少し歩き舞台裏に着くと、今度は爽やかな笑顔をした青年が声を掛けてきた。

 

「こんにちは。白羽さんですよね?」

 

「? ええ。そうです。貴方は?」

 

「貴方が代わりに務めてくれたスタントマンです」

 

「ああっ。怪我はもう平気なんですか?」

 

 どうやらこの青年は事故って映画に出られなかった、スタントマンの人らしい。

 

「ええもう平気です。それよりも凄いですね! 私の代わりに出られたと聞いて内心不安で一杯でしたが、映像を見てみたら演技も話し方も、戦闘シーンも上手で思わず引き込まれてしまいましたよ」

 

 私の立つ瀬がないと言ってきた青年。

 

「その、すみません。ぽっと出の奴が映画に出るなんてよく思われないですよね」

 

 本心で誉めてくれているのは分かっているがどうしても罪悪感を感じてしまう。

 

「いえそんな気持ちはこれっぽっちも思っていませんよ。この業界は実力主義ですからね。むしろやる気が出てきましたよ」

 

 ええ人や! こっちが気持ちの良くなる青年だ。今の時代でこんな考えを持った人はあまりいないんじゃないか?

 

「ありがとうございます。御蔭で気持ちが晴れました」

 

「そうだ! あの時の衣装があるんです! 着てもらっていいですか?」

 

 そう言って渡してきたのは僕が撮影時に着ていた白装束の衣装。

 

「分かりました」

 

「ではあそこで着替えてください」

 

 少し遠くにある更衣室を指さした青年。ここは一つ驚かせようか。

 

「いえ、大丈夫ですよ、着替えるのは一瞬ですから、ね?」

 

 言い終えるその瞬間には白装束を身に纏ってい、キチンと髪型も変えた。

 

「! あはは。まさかマジックまで出来るとは。驚きです」

 

 目を丸くして言ってくれた青年。またしばらく雑談していると上演が始まるみたいで、互いに頭を下げて急いで舞台裏から戻り、ステージ近くの空いている席に座った。

 

 

 

ーーー…………

 

 

 

 パチパチパチ…………と多くの人の拍手が響き渡る中、ステージに髭のおっさんが立ち、話し始めた。

 

「皆さん今日は来ていただきありがとうございます。では早速出演者の紹介に移りましょう。まずはこの映画の主人公役の~~~~~~」

 

 

 一人ひとり役と名前を呼び簡単な説明を行いながら、紹介するおっさん。呼ばれた役者さんが舞台袖から映画の時の格好をして現れ、舞台に並んでいく。あ、一花と下野さんだ。目と目が合ったので手を振ると何やら驚いた様子。下野さんが僕を見て舞台袖を見て、足元を見て。を繰り返している。…………もしかして僕呼ばれるの? 冷たい汗が背中を流れるのを感じつつ、身振り手振りで、「僕はそっちに行くのか?」と聞いてみると頷く下野さん。ヤバいヤバい。急がないと。

 

「最後の出演者です。敵の奇術師役を演じてもらいました。彼は本来出演する予定はなかったのですが、アクシデントにより出演して頂きました。ですのでここでは”シロ”と呼ばせていただきます。ではシロさんの登場です」

 

 その言葉と共に舞台上で煙幕が出て、晴れるとそこには奇術師が立っていた。

 

 今までにない登場の仕方で観客席のざわめきが大きくなる。

 

「奇術師役のシロです。私は役者ではないので個人情報の実名、性別等は勘弁してください。『そうしないと貴方たちの首が飛びますよ』」

 

 手を振り、剣を出現させる。どうやら出現させるこのシーンはCGだと思われていたらしく、再び観客席が揺れた。

 

「なんて、冗談です。楽しんでいただけたのなら幸いです」

 

 そう締めくくり、次に移れ! とおっさんに視線を飛ばす。

 

「以上、出演者とさせていただきます。続きまして、質問タイムとさせて頂きます。」

 

 質問タイムとなり、観客からの質問とそれに対する答えが飛び交う中、ニコニコしながら早く時間が過ぎないかなーと思っていると。

 

『シロさんに質問です。実名はまだしも性別まで隠す意味はありますか? 貴方は男ではないんですか』

 

 とキイィンとマイクを鳴らしながら質問してきた。こちらを照らすライトが眩しくてどこにいるのかよく見えないけど、それっぽいところに視線を向ける。

 

「その理由はですね。これです」

 

 そう言って一花の姿に瞬時に変装。

 

「私は女性にも男性にも変装が出来るので性別不明ということになります。『初めまして! 中野一花です!』」

 

 変装も変声もそっくりなので、観客席からは「面白い役者だ」とか、「これからが気になる」などと言った声が聞こえて来た。

 

「質問の答えはこれでいいですかね?」

 

 再び白装束の姿に戻り訊くと,質問してきた人は「は、はい」と言って席に座った。

 

 さっき青年と雑談した時に色々と仕込んで助かった。これで僕が色々と質問されるのはなくなるだろう。

 

 そのままボケーっと突っ立って、暇つぶしに会場のライトの数を数えているうちに、いつの間にか上映会は終わり、舞台袖に引っ込んだ。もう少しで数え終わったのに。…………目がチカチカする。ところで観客席の所にあった眩しい光を放つモノがあったな。何だったんだろ。…………あっ察し、すいません。失礼しました。決して髪の毛が寂しいことを指摘したい訳ではありませんので。ハイ。大変申し訳ございませんでした。

 

 心の中でその人にペコペコと頭を下げ、謝っていると、下野さんとその妹さんがやって来た。

 

「こんにち「あの時は申し訳ございませんでした!!」は……」

 

 僕まだ喋ってる途中なんだけど…………。熱血の炎タイプか何かかい?

 

「うん。気にしてないからこれにてその話は終了ね」

 

「いやしかし、迷惑をかけたのは事実なのだ。しっかりと謝罪しなければ私の気が済まない」

 

 ビシッと音が付きそうな勢いで頭を下げられてもね。気にしてないって言ってんだからそれでいいのに。

 

「………気の悪くするようなことを言うが、君のその何としてでも謝罪したいというのは自己満足に感じるよ。赦される、赦されないをおいといて、謝罪することに意識が向いているように僕は感じている。そこまで行くとただの迷惑になるよ。迷惑を掛けたくないのならもう止めなさい」

 

 そこまで言うと下げていた頭を上げ口を開いた。

 

「………そうか、私は自己満足に駆られていたのだな。済まない」

 

「はい。これで終わりね」

 

 パンっと手を叩き、意識を切り替える。

 

「! そうだ君は甘いものが好きなんだろう? 美味しいと評判なお店の商品を買ってきた。これを受け取ってくれ。」

 

 手に持っていた菓子折々を僕に差し出す妹さん。

 

「ありがたく受け取っておく」

 

 有名なロゴが書かれた紙袋を受け取ると、今まで黙っていた美穂さん(姉)が口を挟んできた。

 

「そうよ。ありがたく受け取ってよね! この子朝早くから並んで手に入れてたんだから。しかも男の子に贈り物するのが初めてだから手伝ってくれって言われたんだから」

 

 と裏話を意気揚々と暴露する美穂さん。

 

「ちょっと姉さん! それ言わないでって約束したじゃん!」

 

 耳まで顔を真っ赤にしながら姉に掴みかかる妹さん。

 

「えー、別にいいじゃん。春が来ない妹が初めて男の子に贈り物するっていうんだから舞い上がっちゃうのも仕方ないよね!…………ちょ、まって! ギブギブ!」

 

 恥ずかしさで一杯になったと思われる妹さんがとうとう意識を落としに掛かった。…………やっぱり格闘技経験者かな。的確に締めている。

 

「雪斗君! そんな温かい目で眺めてないで助けてよ!」

 

 顔色が若干変わってきたかな? と思いつつ、妹さんを剥がしにかかる。

 

「はいはい。そこまでにしてあげて」

 

「む、仕方ない。姉さん後で覚えておけ」

 

 終わったかと思えば後回しにされただけだった。

 

「や、優しくお願い」

 

「承知しかねる」

 

 このまま姉妹漫才を見ているのもいいが、それはさておき、

 

「まだ自己紹介をしていなかったよね。僕は白羽雪斗。旭高校だよ。よろしく」

 

「私は下野晴香。黒薔薇女子で生徒会長をやっている。こちらこそよろしく頼む」

 

 

  

 ちなみに上映会の後におっさんにスイーツ店に連れて行ってもらいご馳走になった。満たされた僕のお腹とは違い、おっさんの財布は空になったことだけは伝えておこう。

 





 髪の事をネタにした表現が一部含まれています。お気をつけてお読みください。また、作者はハゲてません。気のせいです。まだ若いですから。若年性脱毛症ではございません。

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