五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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やっとテストとレポートが終わり、自由な身になりました。
課題に追われないことのない、夢の時間の始まりだ!


第30話 結びの伝説 初日

 

~車内にて~

 

 暇になってきて何をやるかという話になり、中野姉妹がいつもやっているゲームをすることになった。

 

『五つ子ゲーム!』『イェーイ!』

 

 五つ子ゲームとは隠した手から伸びる指を当てるゲームで、親指=一花~小指=五月という感じである。

 

「私はだーれだ?」

 

 二乃が左手で右手を隠し、親指から小指までのどれかの指をニョキっと出した。

 

「二乃」「三玖かな」「四葉!」「二乃です」「三玖に一票」「………」

 

 唯一沈黙だった上杉が二乃の手に触れようとした。

 

「ちょっと触るの禁止! つーか触んな」

 

 二乃が中々にきつい言葉を上杉に浴びせる。

 

「くっ……二乃だ!」

 

 みんなの答えが出たので、二乃はにっこりしながら口を開く。

 

「残念。三玖でした」

 

 隠された手を見てみると二乃が上杉に対して中指を立てていた。

 

 ワーオ、ストレートなその表現には脱帽しちゃうね! そして上杉よ、安定に嫌われてるな。取り敢えずかわいそうな目を向けておこ。

 

「くそー!! 次、俺な!」

 

 僕の’かわいそうな奴’という暖かい視線には気づかず、上杉は高らかに声を上げた。

 

「やけにハイテンションですね」

 

 五月は生き生きとした上杉を白い目で見つめて不審がる。

 

「お前たちの家を除けば外泊なんて小学生ぶりだ。もうだれも俺を止められないぜ!」

 

 四葉がそんな上杉に一言。

 

「……まあ、もう一時間以上も足止め食らってるんですけどね」

 

 吹雪は止まらず、車の外は一面白銀の世界となっている。…………頑張ればかまくら作れるかな?

 

 

 

ーーー………

 

 

 運転手さんが午後から仕事があるみたいなので、急遽道の途中にあった旅館に泊まることにした。お忙しい中ありがとうございました。

 

 女将さんに案内され、早速部屋に入る。旅館とかホテルの部屋って無性に気になるよねー。

 

「ではごゆっくり」

 

 お互いに頭を下げ、女将さんが角を曲がった瞬間、一目散に部屋に駆け込む僕と上杉。やるじゃねえか。僕のこのスピードについてくるなんて。見所あるな。

 

 なお、「あんたらは子どもか!」という二乃の声は聞こえないふりをした。いるよね~こういうクラスに一人はいる厳しい女子。目の前に興味を引くものがあるんだから止まれるわけないじゃん。

 

「おお! なかなかいい部屋だな!」「そだねー」

 

 一通り部屋を満喫し、テンションが高い僕らを見て、二乃が集合と号令をかけて部屋の片隅に集まった。

 

「不本意だけど、ご覧のありさまよ。各自気をつけなさいよ」

 

 二乃は自分とよく似た顔を一人ひとり見ながら忠告した。

 

「気を付けるって何を……」

 

「それはあいつらも男だってことよ」

 

 各々の頭に浮かぶ狼の鳴き声。

 

「………そんなことはありえません」

 

『そうですよー上杉にそんな度胸があるわけないです!』

 

「…………」

 

「……誰!!?」

 

 いつの間にか混ざっていたのは、中野姉妹と同じ顔で白髪の女の子。

 

『六海だよ! 中野六海! 私のことを忘れるなんてひどいよ!』

 

 プンプンと私怒ってますオーラを出している。

 

「えっ? 私たち六人姉妹でしたっけ?」

 

 困惑し、つい胸の内を口にしてしまう五月。

 

『なんでそんなことを言うの五月ねぇ、いつも一緒にいたじゃん!』

 

 六海は涙を浮かべながら五月に上目遣いをする。

 

「! 私妹欲しかったんです! 認めちゃいましょう!」

 

 とうとう五月は妹認定をしてしまう、そこに上杉が真実を告げる。

 

「何言ってんだお前ら、そいつは白羽だぞ」

 

『え?』

 

 油を切らした機械の様にゆっくりと六海に振り返る姉妹たち。

 

「いやー意外といけるもんだね。顔と声しか変えてないんだけど」

 

 すくっと立ち上がりベリベリと変装を解く。

 

 困惑している、もしくは何か別の事に気を取られていたら、変装の効果は抜群と…………。

 

「なんだーユキト君か、お姉さんびっくりしたよ」

 

「まったくよ、ホラーかと思っちゃったじゃない」

 

 あっさりとネタバラシをし、ホッとする姉妹たちだが、

 

「………私の妹は? どこに行ったんですか?」

 

 現実を認めない五月がいた。

 

「いやだから僕の変装だって」

 

 五月は二度目の告白に耐えられなかったのか崩れ落ちた。心なしかアホ毛も元気がなくなっている。

 

「…………お姉ちゃんになれると思ったのに」

 

 そんな呟きは小さくてもしっかりとほかの姉妹たちにも聞こえたが、何も言えない姉妹たち。虚しい言葉が部屋に響いた気がした。

 

 

 

「そんな事よりもトランプ持ってきた。やろうぜ!」

 

 上杉がそんな何とも言えない雰囲気を思いっきりぶった切る。

 

「き、気は利くねー」「なにやります?」「七並べっしょ」「マジック見せてあげるよー!」

 

 上杉の言葉に乗る僕たち。

 

「………ユキトのマジックには興味がある」

 

 三玖がそう言ってくれるのは嬉しいな。

 

「ではマジックやりまーす」

 

 みんなに机を囲んでもらうように座ってもらう。僕も机の一角に陣取る。

 

「んーっと見ての通り特に怪しいとか同じカードが入ってるだとかは無いよね」

 

 机の上にサーっと並べ、みんなが頷いたのを確認し回収する。

 

「じゃあ二乃、今からトランプを上から下まで弾いていくから好きなところでストップって言って」

 

 少しゆっくりめで弾いていく。

 

「ストップ」

 

「おっけー、じゃあこのトランプを渡すね」

 

 真ん中あたりのトランプを二乃に渡す。

 

「ではひっくり返してみてください」

 

 二乃はクルっと返しどんな数字なのかを確認する。

 

「なによこれ!」

 

 書いてあったのは数字でもなく絵札でもなく『見たな~、!Σ(ー口ー)』と書いてあるトランプだった。

 

「冗談、ジョーダン、マイケルジョーダン」

 

「うざいわ」

 

「ごめん二乃、じゃあもう一回ストップって言って」

 

 再びトランプを弾いていく。

 

「ストップ」

 

「はい、ではみんなにも見せてその数字を覚えて」

 

 二乃が引いたのは♠9だった。

 

「そしたらこのトランプの山に戻します」

 

 僕は二乃が引いたカードの表を見ないように、山の真ん中あたりに戻す。

 

「もし僕が指を鳴らすだけで一番上まで上がってきたらすごいよね?」

 

「そうね」

 

 パチンと指を鳴らし一番上のトランプをめくる。そこには、『無理で~す、(>_<)』と書いてあるトランプ。

 

「なんでよ!」

 

「ハイ無理ですね。というわけで探していきまーす。使うのは二枚のジョーカー、引いたカードが犯人で、二枚あるジョーカーが警察って感じで捕まえます」

 

 そう説明しながらトランプから二枚のジョーカーを取り出す。

 

「それぞれ一番上と一番下に置き、トランプの山を挟むような感じにします」

 

 トランプを右手で持ち、ちゃんと一番上と一番下にあることを見せる。

 

「ではほいっと!」

 

 掛け声と同時にトランプを右手から左手に飛ばす。そうすると右手には二枚のジョーカーに挟まれた一枚のカードがあった。

 

「お~!」

 

「これが二乃が選んだカードですか?」

 

 挟まれていたカードは♠Kでそのカードを見せる。

 

「違うわよ」

 

「ところがどっこい」

 

 ♠Kを軽く振ると変化し、♠9になった。

 

「これが二乃の選んだカードですね?」

 

「すげえ!」

 

 

 

「続いて一花その♠9にサインを書いてほしい」

 

 みんなの驚きが収まってきた頃にまた声をかける。

 

「なにー、ユキト君もサイン欲しくなっちゃった?」

 

 一花はキュッキュッとペンを鳴らしながら言う。………ほほう、その淀みない動き、書き慣れていますな。問題を解くときもそれくらい淀みなく書いてほしいと思うのは辛辣だろうか。

 

「そもそもこのトランプ上杉のだから」

 

 忘れちゃったのかな。

 

「そうだったね…………書いちゃったけど大丈夫かな?」

 

「これから大女優になる人のサインを嫌がるなんてことはしないよね?」

 

 嫌だって言った瞬間その首が飛ぶぞ? そもそももう書かれちゃったからどうこう出来ないんだけどね。

 

「…………仕方ねえ、これも思い出だ」

 

 上杉の許可もいただいたので再開する。一花のサインカードを貰いトランプの山に戻し、シャッフルをする。

 

「では今から行うのは数字の語呂合わせを使ったストーリーマジックです。39でサンキュー、428で四葉みたいな感じです」

 

 これはバーテンダーのイサムと言うストーリーマジックだ。ちなみに、途中で『あなたたちは兄弟ですか?』と尋ねるシーンがあるんだけど、《四つ子》に合わせてトランプを出した時に、三玖が「勝った」と言ったのは面白かった。

 

 

 

ーーー………

 

 

 女将さんが運んでくれた料理の数々を見て上杉が一言。

 

「すげぇ料理だな。タッパーに入れて持って帰りたい…………」

 

 もっと違うこと言えよ。

 

「…………家に帰って食ったら腹壊すぞ。それともおなか減った時用か?」

 

 僕が上杉に呆れていると二乃が三玖をからかっていた。

 

「三玖、あんたの班のカレーを楽しみにしてるわ」

 

「うるさい、この前練習したから」

 

 この前のアドバイス通りに作って欲しいな。間違えても抹茶は入れないように。名も顔も知らぬ班員の人よ。三玖をキチンと見張っておくんだぞ。

 

 三玖の班員の人にエールを送っていると四葉が口を開いた。

 

「そういえばキャンプファイヤーの伝説の詳細がわかりましたよ」

 

「そんなの関係ないわよ。そんな話したってしょうがないでしょ。どうせこの子たちに相手なんていないんだから。ま、伝説なんてどうでも良いけど」

 

 …………そういえば一花と踊る約束してた。伝説とかあまり興味ないし大丈夫でしょう。

 

「あ、そうそう。この宿、温泉があるらしいよ。えーっと、確かここら辺に書いてたような…………え、混浴…………?」

 

「はぁ!? 部屋だけじゃなくて風呂も同じなの!」

 

「言語道断です!」

 

「なんで一緒に入る前提?」

 

「よく見てみろよ。どうせ読み間違いでしょ」

 

 家族風呂とかならまだしも他人も入るような温泉で混浴はないでしょ。

 

「あ、ほんとだ。温浴だった」

 

「眼科いけ」

 

 その後心地よい満腹感に酔いしれながらも、上杉と温泉を満喫し部屋に戻ると5人はまだ戻って来てなかった。

 

 押し入れから布団一式を取り出し、敷き詰めていく。全員分並べ終わったところで、上杉は布団い潜り込み、「俺はもう寝る」と言って眠ってしまった。

 

 …………枕投げとかしたかったのだが、仕方がない。肝試しの下拵えをやっておこう。布団に座りいじり始める。

 

 一通りの準備が済んだので、立ち上がり伸びをしていると、ふと、布団が入っていた押し入れが目についた。

 

 そういえば今の家も、前の世の家でも押し入れはなかったな。どんな感じなのだろうか。ドラえも〇が寝床にしているくらいだから、落ち着ける空間なのだろうか。

 

 なんとなく気になり、押し入れの中の中板の上に入り、襖に手をかける。太い光の筋がだんだんと細くなり、真っ暗の世界となった。

 

 暫く目が暗闇になれるのを待つ、しかし、光がこちらに零れてきていないので、結局暗闇に目が慣れたのかは分からない。手持ち無沙汰なのでお尻付近の床板や、目の前の壁の板目を指先の感覚で味わいつつ、鼻を擽る木の匂いにどことなく懐かしさを覚える。

 

 目を開けているのか、閉じているのか、前も後ろも、上も下も分からない、何とも言い表せない感覚に身を包まれる中、評価を決める。

 

 …………うん、うん、なるほど、人の好みによるかな? ただ木の香りはとても良いと思う。それくらいかな。でも意外と快適。ドラえ〇んが押し入れに入る気持ちが分かった気がする。

 

 そんな判断を下し、出ようと思い襖に手を掛けたところで部屋の扉が開く音が聞こえた。

 

 パタパタと耳に入ってくるスリッパの音。五対分の音が重なると思いのほか煩く感じる。

 

「……上杉はもう寝てるわね」

 

「皆平等にしたけど、多分する必要なかったかもねー」

 

 どうやら温泉を満喫してきたみたいで何より。

 

「……あれ? ユキトは…?」

 

 視覚が閉ざされているせいか、いつもより三玖の声がはっきりと聞こえた。目をきょろきょろとさせているのが目に浮かぶ。

 

 そろそろ出ますかね。襖に手をかけ、喉を鳴らす。

 

「なんだい三玖くん。またジャ〇アンにいじめられたの?」(ドラえも〇ボイス)

 

 声真似をしながら押し入れを開けて顔を出す。部屋の明かりが眩しいな。眉間に皺が寄っているのを感じていると、三玖が首をかしげて話しかけてきた。

 

「……どうして押し入れに入ってるの?」

 

「なんとなく。強いて言うなら家に押し入れがないからどんな感じなのかなと思って。知的好奇心の追求ってやつよ」

 

 知的好奇心を満たしたことによる満足感に浸りながら、上杉の所に向かう。

 

「髪型変えたんだねー。じゃあ僕は上杉と同じ布団で寝るからおやす~」

 

 ゴソゴソと布団に入り込み、眠りにつく。スヤァ。

 

「眠るのはや!」

 

「……私たちもねよっか」

 

 それぞれが布団に入ったのを見計らって、暗くても周りが見える四葉がシーリングライトに手を伸ばし、カチカチと照明を切った。

 

 

 

 

ーーー………

 

 翌朝

 

 

 

「………んーもう朝?」

 

 都会のとはまた違う鳥のさえずりを聞きながら一花は寝返りをうって目を開くとそこには雪斗の寝顔があった。

 

「……ユキト君!? なんで……ってあははは……みんなぐちゃぐちゃ」

 

 誰も元いた布団から外れていて、雪斗に至っては上杉の布団を巻き取っていた。

 

(ユキト君の寝顔は初めて見るなー。結構かわいいじゃん)

 

 そう笑うと一花は胸に手を当てる。センサーは今のところ平常通りに動いている。

 

「………友達なんだから、これくらい平常心でいられなきゃ…………大丈夫だよね……………」

 

 言葉とは裏腹に心臓の鼓動が早まっていく。

 

「もう朝ですよ。朝食は食堂で」

 

 五月がそう言いながら部屋の扉を開けると、姉妹の誰かが雪斗に何かしようとしているのが目に入ってしまった。五月は反射的に扉を閉め、それに気付いた一花も反射的に寝たフリをする。

 

「さて、もう朝だから起きますか。…………おい一花、起きてるんだろ。僕の寝顔は面白かったかな? それと、朝ごはん食べに行こ」

 

「! 起きてたの?」

 

 床を流れるひんやりとした空気をほっぺたで味わいながら一花に目を向けた。

 

「うん、そもそも慣れた布団じゃないと深く眠れない体質だからね。眠りは浅いんだ。そのせいで少しねみぃ」

 

 東の空が白み始めた頃に、上杉から起こさないように徐々にはぎ取った布団を上杉に返して、今度は上杉を簀巻きにする。ミノムシの完成~。

 

 一花は僕が上杉を簀巻きにしている様子を苦笑しながら見ていた。

 

「もう、騙すなんてお姉さん傷ついちゃうな」

 

「騙してなんぼのマジシャンだろ? それは誉め言葉だよ」

 

 このセリフ前にも言った気がする、そう思いながら立ち上がり、扉に向かって歩き出す。…………う~ん歩きずらい。間違えて誰かの足を踏んじゃいそう。

 

 何とか扉にたどり着き、ガチャっと扉を開けると五月がいた。

 

「おはよう、五月。よく眠れた?」

 

「あっ、白羽君おは「中野、白羽ここで何やってるんだ!」よう……」

 

 五月の声に被せるように聞こえて来たその声の方に意識を向けると先生がいた。

 

「せ、先生………?」

 

「あ、先生おはようございます」

 

 どうやら猛吹雪のせいで学校の人たちも足止めを食らってたみたい。僕たちが来た時にはバスはなかったから引き返してきたのかな?

 

 

ーーー………

 

 バスに乗り込むまでの空いた時間で、雪だるまを作るために旅館の中庭に来た。もちろん上杉も連れて。ちなみに荷物は既にバスの中に置いてある。

 

「よし、やるか」

 

「高校生にもなって雪だるまかよ。俺はまだ寝ていたいのだが」

 

 肩を震わせる上杉は言ってはならない言葉を口にした。

 

「ほほう? そんなに雪だるまを作りたくないのか。なら仕方がない、雪合戦と行こうじゃないか」

 

 冷たい笑顔を浮かべながらこれ見よがしに雪玉の中に大粒の石を混ぜる。

 

「ほら、始めるぞ」

 

 そう言って上杉に向かって投げる。

 

「待て! それは不味い! そもそも石がはみ出てるじゃねえか!」

 

 上杉は僕の隠す気のない殺意を受けて踝を返す。

 

 そして僕に背を向けて逃げる上杉。あっれ~? クマに出会ったら背中を向けてはいけませんて先生言ってただろ? 追いかけられちゃうぞ!

 

 そんなことを思いつつ、既に作った多くの雪玉を抱え、走り去る上杉を追いかけ始める。

 

「待てやゴラァ!」

 

「やべぇ、殺される!」

 

 中庭を抜け、上杉は旅館の前にまで来た。

 

「ワイは警察じゃけぇ! 大人しく捕まらんかい!」

 

「そんな怖い警察官いるか! 俺は何の罪も犯してない!」

 

 上杉は次々と投げられる雪玉に被爆しながらも、数m先のバスに逃げ込もうとする。

 

「貴様の罪はデリカシー欠如じゃぁ! このワシが犯罪者をみすみす逃がすとでも思っとるんか!」

 

 言い切ると同時に最後の一発が見事に上杉の頭にヘッドショットし、上杉はバスの目前で倒れた。

 

 どっしりとした歩き方で上杉の側まで歩き、顔を覗き込んだ。

 

「逮捕じゃぁ、大人しく縄につけ! …………大丈夫?」

 

 上杉の顔が少し悪い。朝っぱらから走り回ったからかな?

 

「大丈夫に見えるか?」

 

 見えません。むしろ死にそうに見えます。でも、話せるうちは大丈夫! 死なないよ!

 

「…………いや~良い運動になったな! 目も冷めたんじゃないか?」

 

「…………お陰様でな」

 

 上杉はゼェ、ハァと、息を切らしつ立ち上がり、バスに乗り込もうとした。

 

「あ、ちゃんと雪を落とさなきゃダメだよ」

 

 僕がそう言って、自身の雪を叩き落していると、上杉も服に着いた雪を叩き落し始めた。

 

 隣で上杉がパンパンと雪を叩き落としているのを横目で見つつ、僕はバスに乗り込んだ。

 

「お先!」

 

「あぁ」

 

 疲れるの早いな~。体力つけなきゃダメだぞ!

 

 

 

「よろしくお願いします」「はい、どうも」

 

 運転手の方に挨拶をし、自分の席に目を向けると女子が僕の隣の席に座っていた。どうやら五月みたいだ。あの星飾りは五月しかいない。

 

 自分の席に座って一息ついてから五月に話しかける。

 

「まさかみんな同じ旅館にいたとはねー。よく会わなかったよね………五月どうしたの?」

 

 五月はどうやら思考の海に漂っている様子。

 

「いえ何でもありません。林間学校を楽しみましょう」

 

(よく見えませんでしたがあれは私たちの誰かが……白羽君を……)

 

 

 そんな五月の胸内とは違い、よく晴れた天気だった。

 




バーテンダーのイサムと言うストーリーマジックは検索していただければ見れると思いますので興味のある方はぜひ。

タイトルに奇術師と書いてあるのにマジックのシーンを削るという荒業。最初は書いていたんですが、なんだかなぁ、となったので削りました。

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