五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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 最近、バイト関係で帰るのが遅くなり、夜中の2:00頃に床に就くのが当たり前となってきて、昼夜逆転生活を送っています。今日も元気に働く働くぅ!
 さぁ唸れ! 私の働く細胞!! 



第35話 結びの伝説 3日目

 あの後、三玖と五月に『僕のミスで閉じ込められたしまっただけだ』と軽く説明し、詳しい話は明日にすると言いその場を退散。そして先生にも説明してからの説教(肝試しで怖がらせすぎたことも含めて)という名のありがたい言葉を貰い、散々な目に遭って解放された後、時計を見れば時間は22:00を越えていた。どおりで眠いわけだ。説教中も半分寝ていた気がするし、次の日のためにも、部屋に戻ったら泥のように寝た。

 

 いやー、色々あった濃い一日でした。

 

 

 

ーーー………

 

 

 翌日

 

 気持ちの良い良く晴れた天気とは裏腹に、起きて早々若干憂鬱な気分になってしまうのは無理もないだろう。

 

「…………はぁー、信頼の回復に努めないと」

 

 昨日は先生に怒られるし(肝試しの話で30分以上されるのはまいった)、三玖と五月からの信頼度は絶対下がった。これで勉強会に参加してこなくなったら上杉に何と言おう…………。

 

 今日は自由選択で『川釣り』、『山登り』、『スキー』の3つに分かれているのだが、一体2人はどれを選ぶのだろうか。僕個人としては全部参加したい。

 着替え終えてロビーに行くと、スキーウェア姿の四葉と上杉に出くわした。

 

「おはようございます、白羽さん!」

 

 四葉は今日も元気一杯。そんな四葉を見ていると元気を貰える。

 

「おはよー、四葉と上杉はスキーをやるんだね」

 

「はい! 二乃と三玖もスキーですよ! 残念なことに一花は体調を崩してしまい、五月はその看病をしてくれています」

 

 四葉は心底残念そうな顔をし、口元を歪ませた。

 

 ふむふむ。取り敢えずスキーを選べば三玖には説明できそうだな。五月は一花が説明してくれていることを願おう。

 

「なら僕もスキーにしよっと。といってもスノボーのほうだけどね」

 

 薬を飲んで小さくなった、年齢詐称の不良少年並のスノーボーテクニックを見せてやろう。

 

「いいですね! 二乃もスノボーにしたみたいですよ!」

 

 そんな訳でスノボー一式を借りてスキー場に向かう。

 

 

 

 さて、僕は今どこにいるでしょーか! 番組恒例ユキトを探せ!

 

 ……………………こっこでーす! こっこ、こっこー! 正解は集合写真を撮っている家族のカメラマンをしていましたー! 

 

「ありがとうございました」

「はやくいこー!」

 

「いえいえ、お互いに楽しんでいきましょう」

 

 父親の腰にしがみついて引っ張る子どもに小さく手を振って、一家の人たちと別れ四葉のところに行く。

 

「お待たせー」

 

 少し吹雪いているので視界は若干悪いが、お天道様が顔を出しているので雰囲気は最高。ちなみに僕の格好は白色で統一した。ここで寝そべったら間違いなく誰かに轢かれそう。やったらやったで、別の意味で引かれそう。

 

「やっと来ましたね! さぁ、滑り倒しますよー!」

 

 四葉の少し息が上がっている様子を見る限り、ちょうど準備体操を終えたところだったみたいだ。

 

「寒いし俺は滑れん、………俺は寝ていたいのだが……」

 

「せっかく遊びに来たのに寝るなんてもったいないですよ! どうしても無理なら私が手を引いて滑ってあげます!」

 

「何かやる気出てきたぞー!」

 

 四葉の言葉に上杉のやる気が引き出されたのはいいが、なんでやる気出た? それに二乃と三玖はいずこに? 四葉に聞いてみると、

 

「二乃はもう滑っていて、三玖は…………あ、来ました!」

 

 三玖は上の方からなめらかに滑って来て目の前で止まった。すぐに昨日の弁明をしようと口を開くのだが

 

「………おはよう。今日はいい天気だね」

 

「………おはよう。少し吹雪いてるけどね」

 

 ‥……話そうと思ったんだけど口をパクパクさせて出てきたのは当たり障りのない言葉。僕こんなに口回らなかったけ?

 

「普段教わってばかりの私が今日は教える側に立ちますよ!」

 

 三玖にどう話そうか悩んでいる僕とは反対に、四葉はやる気満々だ。これなら僕は側にいなくてもいいだろう。滑りに行こー。

 三玖に話しかけれないから逃げるのではない。これは現実逃避ではないのだ。戦略的撤退というものだ。未来の僕が素晴らしいアイデアを出すことを信じて、泣く泣く撤退するのだ。さらば三玖よ、近い将来また会おう!  アイルビーバック!

 

 心の中で旭日旗と日章旗を掲げて敬礼をしつつ、滑りに行く。…………ひゃっほ~う! 滑り倒すぜ!

 

 

 

 20分後

 

 一通り滑り倒し、再び上杉と四葉のところに行く。上杉は結局四葉に手を引かれて練習していた。

 

「ぎこちないな。膝は少し曲げたほうがいいぞ。膝を伸ばしていると怪我をしやすいからな」

 

 あと腰引けてるし。膝も震えてるし。生まれたての小鹿か何かか?

 

「お、フータロー君にユキト君だ……ゴホン。楽しんでる? 結構疲れるね~。お姉さん休憩しよっかな。ケホッ」

 

 上杉にアドバイスをしているとやって来たのは…………フードやマスク、ゴーグルで顔のほとんどを隠した、この場でなかったら通報間違いなしの女性。

 

「……その呼び方は………一花?」

 

 なんとな~~~~く違和感を感じる。些細だが。

 

「正解ー」

 

 休んでいたのでは? オロナ〇ンCでも飲んだ? それとも元気爆発薬?

 

「体調は良くなったの?」

 

「ゴホッゴホッ………まだ万全じゃないけど大丈夫。あと、五月ちゃんは顔を合わせづらいから1人で滑ってるってさ」

 

「そっかー」

 

 残念だ。とりあえず一花は、マダムポン〇リー先生に診てもらいな。ただ、患者への面会をなかなか受け入れてくれない人だから困っちゃうけど。医務室で騒いだ人には相当怒る人でもあるから、お見舞いするときは気をつけないと……。

 

「どうした白羽? 五月と喧嘩でもしたのか?」

 

 一体主人公であるハリーポ〇ターは何回お世話になったんだろうかと考えていると、仰向きで倒れている上杉が珍しい目で訊いてきた。

 

「似たようなものをね……」

 

 五月がこのスキー場内にいるのは分かった。見つけ次第ちゃんと弁解せねば。

 

「一花ー! 上杉さんが全然言ったとおりに覚えてくれないー!」

 

 顔を(><)にした四葉が叫んだ。四葉、それは僕たちが毎回思ってることだよ。僕たちの苦労がわかってくれたようで何よりだ。

 

「じゃあ、楽しく覚えようよ。おいかけっこしよう。上手な四葉が鬼ねー」

 

「はーい! いーち……」

 

 そう一花は言うなりすぐに滑って行き、四葉は数を数え始めた。

 

 おいかけっこかー、僕鬼がいいんだよね。追いかけられるのは好きじゃない。追いかけて必死に逃げている様子を楽しむ人間なんだよね。我ながら心が汚い。まぁいい、隠れよ。僕にとって鬼ごっこ=かくれんぼだから。

 

 滑りながら隠れられるような場所を探していると、先に滑っていたはずの一花が話しかけてきた。

 

「確認したいんだけど…………昨日の事は誰にも言ってないよね?」

 

 昨日の事? ………心当たりが多すぎてどれがどれだかわからないのだが。肝試しで腰を抜かしてマヌケズラを晒しかけたこと? それとも学校辞めようとしてること? はたまた倉庫で男子と閉じ込められ、二人っきりの短い夜を過ごしたこと? ………分からん。適当に話を合わせよ。

 

「誰にも言うわけないじゃん、まぁもしかしたら上杉や姉妹たちに言うかもしれないけど…………そんなわけでさいなら~」

 

 ボロが出る前に去るべし! 三十六計逃げるに如かず!

 

「それって………ち、ちょっと! 白羽君!?」

 

 手を雪斗のほうに伸ばす一花だが、雪斗はスイスイと人混みをものともせずに滑っていき、遂には見えなくなってしまった。

 

 

 3分後

 

「とうとう下まで着いてしまった。隠れられるような場所はーっと、あそこにかまくらがあるな。そこに隠れるか」

 

 ゲレンデの麓にある食堂付近にかまくらを見つけた。作った人ナイス!

 

 まぁ隠れるんじゃなくて全く別の人に変装してしまえば楽なんだけどね…………。ゲームの趣旨から外れてしまうけど。

 

「お邪魔しまーす。………おー! 中は意外と暖かい。これならここにいるのも苦ではないな」

 

 ペタペタと自身を囲む雪の壁を触り、かまくら初体験! とテンションが上がっているとかまくらに誰かの足音が近づいてきた。入るつもりなのかな? あっ待てよ。もしかして製作者の方? やべ、なら早く出ないと。

 

「……ユキト?」

 

 転がるように外に出て、立ち上がる前にその人から僕の名前を呼ばれた。 

 見間違えのないその顔は、

 

「三玖? っとごめんその前に」

「うえっ!?」

 

(ち、近い!!)

 

 微かに四葉の声が聞こえたため、三玖の腕を引っ張りかまくらの中に引きずり込む。

 

「危ない、捕まるところだったぜ」

 

 ふぅと一息ついてから、僕にもたれかかるような体勢の三玖を隣に座らせる。が、狭い。肩と肩がくっついてしまうほどの狭さ。

 

 少し気まずいが、謝るなら今がチャンス!

 

「昨日の話をしたいんだけど良い?」

 

「……うん」

 

 三玖の了承も得たので僕は昨日の件について包み隠さず話した。

 

「………という訳だったの。なにも起こってないから怒らないで、お願いします」

 

 狭いかまくらの中で何とか頭を下げる。

 

「………閉じ込められたのは事故だったんだね。何もなかったならそれで良いよ。怒ったりもしてないから気にしないで」

 

 三玖はこんな畜生に聖母の微笑みを下さった。これからは三玖の事をマザー・テレサと呼ぼうか。

 

「ありがとう! 良かったぁ……あとは五月だな。三玖みたいにすんなりいけばいいんだけど………」

 

 話し掛けて無視されたらどうしよう。少なくとも僕は立ち直れない。

 

「五月ならきっと話せば分かってくれるよ」

 

「そっか! なら安心だ。あと抹茶ソーダ(あったか~い)をあげる」

 

 ホッと一息つき、供物を渡して気になっていたことを聞く。

 

「三玖から昨日の肝試しの感想とか聞いてなかったね。どうだった?」

 

「………やり過ぎ。あんな脅かし方はみんな泣く。同じ部屋の子も泣いてた」

 

「あはは………変装技術をフル活用したからね。それぐらい怖がってくれないとね」

 

 トラウマになったろうな。でも肝試しに参加するのは個人の意思だろうから、過去に選択した自分を恨みな。へっ。

 

「………みんなの姿に変装して脅かすなんてきっとユキトしかできないよ」

 

 ほかにも色々と話をしていると『あ、上杉さんみーっけ!』と四葉の声が聞こえて来た。

 

「多分上杉は捕まるからここにかくまってもいいけど、三玖はどうする?」

 

 上杉がつかまるのも秒読みだな。

 

「いい、さらに狭くなるし………フータローには犠牲になってもらう」

 

 だそうだ上杉。三玖に即答されたぞ。ドンマイ。だから安心して捕まれ。アイツは勇敢だったよ…………。安らかに眠れ。

 

 心の中で上杉に黙祷を行っていると、俺は死んでねー! と、イマジン上杉からのツッコミも頂いた。そのまま隠れていると四葉と上杉の声が遠ざかり緊張が解ける。

 

「ふー………四葉ってさ体力無尽蔵過ぎない? 全然息切れしている声しなかったけど」

 

 四葉のあははは! という笑い声が耳にまだ残ってるんだけど。

 

「うん。体力オバケ。私もかまくらが無かったら捕まってた」

 

「それはすごい。………どう逃げようかね」

 

 僕はズルで身体能力諸々上がってるからいいけど、四葉はそういうのはないからすごいよね。

 

「………そうだ。四葉にはハンデを貰おうよ」

 

「ハンデ?」

 

「何か荷物を持ってもらって、足の早さを『平等』に!」

 

「なるほど。確かに一理あるしそちらの方が盛り上がるだろうね。…………僕が言えた事じゃないけど、僕は『公平』の方が好きだね。『平等』を嫌ってるわけではないけどさ、あそこまで四葉は努力してきたんだ。その努力を僕は無駄にはしたくない」

 

 偉そうに言うけどさ、『公平』なんて言葉は僕にはほど遠いな。2度目の人生を送っている時点で公平じゃないし。

 

「『公平』?」

 

「うん、『公平』。五つ子なんだから、元々の身体能力は一緒だったんだろう。なら、四葉の人並外れた身体能力は本人が後天的に身に付けたものだろ? 何度も走っては転んでまた走ってという感じでさ。つまりは『努力』して」

 

「それは……そうだけど……」

 

 それと、

 

「三玖のその歴史についての知識だって努力して身に着けたわけだ。三玖自身は努力だって思わないかもしれないけどさ、僕からすれば十分努力に見えるよ。その努力を『平等』と言う言葉で蔑ろにしてはいけない。だから『公平』。『公平』にいこうぜ」

 

「……うん」

 

「後で上杉にもこの質問をしてみな、きっと似たようなことを言うよ」

 

 ふとこのシーンを思い出した。もう原作知識は使えないな。ほとんど覚えてない。というか霞がかかっている感じだ。少し不安だが、この世界に馴染んできたんだと思うと仕方ないかと思う。

 

「そろそろ、みんな四葉に捕まったところだろうし外に出るか」

 

 冥福を祈りに行ってきますか。

 

「あ、じゃあ先に外に出てて。私も電話してから行く」

 

「分かった。じゃあ待ってるよ」

 

 

 

ーーー………

 

 

 ユキトが出て行ったの確認し、私は電話帳から一花の名前を選択して電話を掛ける。

 

(『平等』じゃなくて『公平』)

 

 先ほどの会話を思い出しながら電話がつながるのを待つ。

 

「……もしもし?」

 

『どうかしたの、三玖?』

 

「………一花。あのね話したいことがある」

 

 三玖はまだ熱が残っている隣の雪をさらりと撫で、意を決して語り始めた。 




 私はスキーよりもスノボー派です。スキーは最初の頃やっていたのですが、やたらと足を捻っては転び、転んでは足首がいかん方向へと曲がって悲鳴を上げて、このままじゃ足首が逝かれると察知し諦めました。転ぶ度に骨折れてないよな? と心配してました。そもそもスキー板が重いんだよ。転ぶと足が持っていかれるんだよ。あとストック邪魔。折れそうで使えない。しかしその点スノボーは素晴らしい!! 使うのは板だけ! 転んでも足を持っていかれない!! 使ってみれば初めからなめらかに滑ることが出来たので、神様の思し召しだ! と思いそこからスノボー派です。

 雪斗が最初から一花に違和感を感じた理由としては、咳が理由です。風邪を引いていると喉の調子が崩れ、普段の声よりも声のトーンが変わり、また、一定ではなくなります(かすれた音が入ったり、くぐもった音が出たり)。それなのに一花は咳をしていても声のトーンは変わらず、ずっと一定でした。その違和感に雪斗は無意識に感じました。
 ふつう気づかねえよ。どんな耳してんだ。


 ここからは日章旗と旭日旗についての説明なので興味のない人は読み飛ばしてください。

 日章旗は太陽の神を心から信仰する自然を愛した日本人が定めた旗。
 旭日旗は戦争の過ちは犯したけれど国を護るために掲げられた旗。

 この旭日旗は大日本帝国「海軍の軍旗」。そして現在でも海上自衛隊の軍艦旗として扱われています。
 海上自衛隊の護衛艦は日章旗を掲げることはありません。
 なぜならば護衛艦は武装した「軍艦」である目印のために旭日旗を利用しているのです。ですから今なお海上自衛隊の旗としてその役目を果たしているんですね。
 ちなみに海の無いオーストリアにも海軍は存在します。

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