五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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 追記にも書きましが、オリ主が原作主人公の言動を奪い、原作主人公の努力を無駄にしているような文が書かれます。気に入らないようでしたらブラウザバックをお願いいたします。



 ちょっとシリアス入ってます。


第6話 お宅訪問

~オリ主side~

 何時までもマンションの廊下で騒いでいるわけにも行かないので、不承不承(上杉が)と中に入れて貰った僕たちはリビングに集まった。

 

「おい、ホントにお前たちは五つ子なのか? まだ信じられないからお父さんに電話したいのだが……」

 

 上杉のやつ往生際が悪いな。現実を認めろよ。

 

 上杉が四葉から子機を借り、一旦ベランダに出て電話をかける。僕は気配を消して子機側にそっと立つ。

 

「プルプルプル、プルプルプル、プルプルプル ガチャ」(電○虫ボイス)

 

「あっ! 中野さんですか?」

 

「…………」

 

 返事がない。

 

「あれ?  まだ繋がってないじゃないか?」

 

 めっちゃおもしれー! 簡単に引っ掛かるな!

 

 ニヤニヤしながら上杉を見ていたらふざけてんじゃねぇ!って言われて殴られてしまった。痛い。

 

『暴力反対!』『言葉で解決を!!』『話し合えば分かり合える!!』等のプラカードを心の中で掲げて、目で訴え掛けているうちに、子機から人の声がした。

 

『何か用かね?私は忙しいのだが』

 

聴こえてくる声は低く、少し冷たい。

その声を受けて、咄嗟に真面目な雰囲気に変えた風太郎は、(失礼がないようにしないとな)と背筋を伸ばした。

 

「お忙しいところすみません。娘さんのことでお訊きしたいのですが、な……中野さん……娘さんたちが五つ子というのは本当なんですか?」

 

『ああ、彼女たちは正真正銘一卵性の五つ子だ。君には、五人を卒業まで導いてやってほしい。勿論、報酬は五人分払おう』

 

(やはりあいつらは五つ子だったか!)

 

「そ…それはちょっと自信ないかなー……とか言って」

 

(既に嫌われてるなんて言えない)

 

『そうかい、君のお父さんには押しきられてしまったが仕方ない。残念だかこの話はなかったことに「自信がみなぎってきました!!」』

 

「(借金返済のためにも、らいはにお腹一杯に食べさせるためにも)娘さん全員を無事、卒業させてみせます!!」

 

『期待しているよ。ところで娘たちはそこにいるのかい?』

 

 います、と伝えながらベランダから部屋に戻るとそこには蜘蛛の子一匹いない。

 

(あいつら逃げやがったな!)

 

思わず子機を握る手に力がこもる。

 

『どうかしたかい?』

 

「ま、全く問題ありません。おいおい、押すんじゃないよ。全く困った生徒たちだ! では失礼します!」ピッ

 

(ハァ、どうするか……幸先不安だ)

 

 何やら不安そうな顔をしている上杉に、僕は“声”を掛ける。

 

「もしも~し。大丈夫ですか~?(しの○さんボイス)」

 

 今度はどんな反応するかな? オラワクワクすっぞ!

 

「誰だ!? ……はぁ、お前か、声真似上手すぎるだろ。そいつ誰かは知らんが。止めてくれ。五月たちの母親でも来たのかと思ったじゃねぇか。ヒヤヒヤさせんな」

 

 もっといいリアクション欲しかったな。だがやめられない止まらない♪

 

「はぁ、あいつらは一体どこに行ったんだ?」

 

 「みんな自分の部屋に戻りましたよ!」そう言いながら上杉に声をかける四葉。

 

「誰?」

 

「わぉ!そういえば自己紹介してなかったですね! 私は四葉です! お父さんとは話せましたか?」

 

 ありがとうな、と子機を返す。

 

「っていうか、何でお前は逃げないの?」

 

「し、心外です! 上杉さんたちの授業を受けるために決まってるじゃないですか。

怖い先生が来るかと思って嫌だったんですが、同級生の上杉さんたちとなら楽しそうです!」

 

ニコニコと、心の底から思っているように言った四葉に、突然「抱きしめていいか?」なんて聞くなんて、頭いかれちゃったのかな?

 

「大丈夫? 頭パーになった? 頭にヒールかける?」(アク○ボイス)

 

「今度は一体誰なんだよ! 俺はパーになってねぇ! なってるのは危機感のないお前の方だろ!」

 

 ナイスツッコミ!

 

「いややわぁ~、何でそんな冷たいこと言わはりまんにゃろ。ウチ涙脆いでっしゃろ?涙で前が霞んで見えへんわぁ~」

 

 目尻を擦りながら涙声で言うと、

 

「えぇー!? 白羽さん今泣いてるんですか!!?」

 

「いや冗談だよ?」

 

 四葉を騙すのは心が痛い。思わず素で返してしまった。

 

「そうでしたか! ならいいです! じゃぁ、他のみんなを呼びに行きましょー!!」

 

 階段を上り、一番奥の部屋の前に立つと、四葉が口を開く。

 

「手前から五月、私、三玖、二乃、そして一花の順ですね」

 

 へー、扉の模様と名前の数字が一致してるんだ~。縦に一本が一花って感じなんだね。

 にしてもこんな扉、うちでは見たことないな。まさか特注か? マンションに? 良いのかな? はっ! 金か! 金の力か! オラに(金の)力を分けてくれぇ~! まぁ、金はあるんだけどね。僕もいざとなったら金で頬叩いたろ。……あぁ、マンション買ったのか。なら別にいいのか。と上の空でいたらいつの間にか一花の部屋の前まで来ていた。

ちなみに振り返れば、五月しかついて来ていなかった。

 

「一花の部屋ですが……驚かないでくださいね」

 

 四葉がまるで覚悟を必要とするかのような雰囲気を出してきた。

 ガチャッと扉を開くと目の前には腐海の森が!?

 

「ここに人が住んでるのか?」

 

(足の踏み場もねぇじゃねぇか)

 

 腐海の森の奥にある毛布の塊がもぞもぞと動くと、眠そうな顔をした一花が顔を出した。

 

「人の部屋を未開の地扱いしてほしくないなぁ。ふぁ~、おはよ。まだ帰ってなかったんだね」

 

「うるせぇ、こんな部屋にしたやつがそんな事言ってんじゃねえ。いいからとりあえず居間に戻るぞ」

 

 グイッと毛布をひっぺがそうとする上杉に一花が続けて言う。

 

「私今服着てないから照れる」

 

「何でだよ!」

 

 上杉をからかってにやにやしていた一花が四葉に頼む。

 

「四葉ー、そこら辺に落ちてる服適当に頂戴」

 

 ええっ……と嫌そうな顔をした四葉に代わり、()が出る。

 

「失礼しますよ、お嬢さん」

 

 一花のそばまで行き、白色の布を取り出す。そして、一瞬白い布が一花を覆い隠したかとおもえば、次に一花が見えたときには淡いピンク色のシダーエイトを着ていた。

 

「わぁ! いつの間に! 綺麗!」

 

 喜んでくれて何よりだ。

 

「気に入って頂けましたな? お嬢さん。ただ、男の前で裸はいけませんね。あなたの真っ白いキャンパスを私の色に染めたくなってしまいます」(○盗キッドボイス)

 

 そう言い手の甲に唇を落とす。

 

(う……ちょっとキュンとしちゃった。彼は意外とこういうのに慣れてるのかな?)

 

「そんじゃ、服も着させたので居間に戻りますか!」

 

 居間に戻り上杉は話を切り出した。

 

「お前は何でも出来るんだな」

(俺は勉強しかできないからな。あいつが羨ましいぜ)

 

「まぁな、何が人生に役に立つかはその時になってからじゃなきゃわかんねぇ。だから手当たり次第に学んだんだよ」

 

「白羽君は大人ですね。私もそうなれるでしょうか?」(お母さんを真似て何年も経ちましたが、大人になれた気がしません)

 

「“大人になる“っていうのはそんなに大事なのか? 大切なのは心構えじゃないのか? 意思じゃないのか? 心構えがあれば、意思があれば、何度だって立ち上がれる。そんな強い人を“大人”っていうんじゃないか? 少なくとも僕はそう思うよ。だから僕は今は自分の能力が低くても向上しようとするやつは尊敬するし、馬鹿になんかしない」

 

 なんか空気がシリアスになってしまった。そんなつもりはなかったのに。明るくせねば!そう思った途端に何かが焼けた匂いが漂ってきた。

 

「お! なんかいい匂いがするな! 何かな?」

 

「これはクッキーの匂いですね! 二乃の作るクッキーは美味しいんですよ!」

(私の鼻がそうだと言っています!)

 

「クッキー作りすぎちゃった。食べる?」

 

ナイス二乃! すぐにテーブルに並べてくれ!

 

 

 

ーーー………

 

 

 

「よし全員揃ったな。では始めるぞ! まずは実力を測るためにも小テストをしよう!」

 

やっと本題に入れるぜ!っと、意気込む風太郎とは別に、()人が同時に手を合わす。

 

「「「「「「いただきまーす」」」」」」

 

サクサクと小気味良い音を奏でると、ほんのり甘い味が舌を楽しませる。舌触りもよろしく、初心者が作ったようなパサパサ感がないため、水分を欲することはない。

 

「おい、どうした? 上杉は食べないのか?」

 

 こんな美味しいクッキーは初めてだ!

 

「何でお前は食ってんだよ! 止める側だろ!」

(コイツ、本当に家庭教師として雇われてるのか?遊びに来ただけじゃないのか?)

「お前はどうして家庭教師として雇われたんだ?」

 

(これで録でもない理由だったら叩き出してやる!)

 

「あれ? 言っへなかっふぁっけ? いふきたちのお父さんからへんわがあって頼まれたんやよ」

 

「食べながら喋るな!」

 

 まったくもーしょうがないなぁ。ここはひとつ再現してやろうではないか。

 

「ん゛ん゛…… 『やぁ、君は白羽雪斗で合っているかな?』はいそうですが…『編入試験の話を聞いたよ。満点だったみたいじゃないか。その実力を見込んで娘たち五人に家庭教師として雇われて欲しい。勿論、報酬は5倍出す。頼まれてくれるか?』(その言い方だと返事は”はい“か、“yes”しかないじゃないかと思った)大丈夫です。喜んで引き受けます。『ありがとう。では頼んだよ』」

 

「って感じだよ!」

どうやって五月たちの家庭教師として雇われるかは悩みの種だったからな。向かいに船の話だった。

 

「お父さんの声そっくりです!」

 

「確かに声真似はスゴいけど、ぶっちゃけ家庭教師なんていらないんだよねー」

 

その言葉と共に、二乃はパキリとクッキーを噛み砕いた。

 

 

 

………

 

 

 

「なんてね、はいお水、ほらあんたにも」

「ありがとー」「お……おう……サンキュー……」

(くそ……こいつらからしたら当然の反応だが……どうにせよ、五人を卒業させるしか俺には道がない!)

 

 二乃が上杉が水を飲み干したのを見計らって立ち上がり声をかける。

 

「ばいばーい」

(これで懲りて来なくなればいいけど)

 

「っ、何であんたは眠ってないの!?」

(あいつのコップにも睡眠薬は入れたはず! どうして!?)

 

眠る筈の僕が起きていたため、二乃は目を見開いた。

 

「それはこっちのコップ。すり替えたんだよー。何かすると思ってたからね!」

 

起きている僕の代わりに、すり替えたコップの中身を飲んだ一花は眠ってしまった。ちなみに眠らせるのは一花を故意で選んだ。と言うのも顔の血色が少し悪く見えたからだ。見たところ疲労のようなので、ちゃんと睡眠を取れば良くなると思う。

 

「ここらで僕はお(いとま)するよ。上杉を送らなきゃいけないからね、バイビー」

 

悔しげな二乃を尻目に、上杉を背負った僕は家を出て、エレベーターが来るのを待つ。

 

(上杉大丈夫かな?)

 

男子高校生としては、上杉の体重はあまりにも軽い。その事に僕は心配になる。

ちょうどエレベーターが到着すると、五月が少し申し訳なさそうな顔をしてやって来た。

 

「待ってください。私が上杉君の家まで送ります」

 

「本当?サンキュー助かるよ」

 

来るまでにタクシーを呼んだらしく、僕はタクシーの後部座席に上杉を乗せる。

 

「じゃぁ、また明日。おやすみなさい」

 

「はい、おやすみなさい」

 

タクシーを見送ってから、僕は自分の部屋に帰った。

 

 

 

~翌日再びマンションにて~

 

テーブルの前に立つ上杉は、昨日と比べて雰囲気がオドロオドロしてる。

 

「昨日の悪行は心優しい俺がギリギリ、ほんっっとギリギリ許してやろう。許してやる俺に感謝しろよ」

 

((((((思ってたよりネチネチしてるし、根に持ってる!))))))

 

 「まったく、ほんとまったく」と、ぼやきながら鞄から何かを取り出すと、昨日出来なかったテストだと言い、スッとテーブルに紙を滑らせた。

 

「合格ラインは50点だ。それを越えたやつには金輪際近づかないと約束しよう。勝手に卒業していってくれ」

 

「わかりました、受けましょう。合格すればいいんです。これであなたの顔を見なくて済みます。っていうか私は白羽君に教えてもらいます!」

 

 お! 意外と皆やる気じゃないか。いいぞ!

 

「はぁ、別に受ける義理は無いんだけど。あんまり、アタシたちを侮らないでよね」

 

「暇潰しにするから僕にも頂戴!」

 

「ほらよ」

 

 中身に目を通してみれば、簡単な問題ばかりだな。

 

 しばらくカリカリと解く音が部屋に響く。

 

 

 

ーーー………

 

 

 

「採点終わったぞ! 凄ぇ、100点だ!! 全員合わせてな!! 白羽は100点だ」

 

 でしょうね。そして知ってたけどこれはヒドイな、進級すら危ういのでは?

 

「はっ……もしやお前ら………」

 

 何かを悟った上杉の、次の言葉が聞こえる前に、自分の部屋に逃げ始める姉妹達。

 

「あ!! 待て!」

(なんで四葉まで!)

 

 一番早く階段を上った二乃が声を溢す。

 

「あいつら知ってんのかな? 私たちが落第しかけて転校してきたって」

(今回はどうなるかな?)

 

 部屋の中に姉妹全員が引っ込み、静かになったリビングには僕と上杉だけ。

 

「こいつら…」

(五人揃って赤点候補かよ!)

 

 トントン、グサ。

 愕然としてる上杉にむかって肩を叩き、人差し指を出してままにするやつをやったら、引っかかってくれた。

 プー、クスクス、引っかかってやんの!

 

「お前は小学生か! 何でそんなに悠長としてるんだ!」

(コイツの頭の中どうなってんだ?)

 

「まぁまぁ、そんなに急ぐなって。僕らの目的は卒業させることだろ? まだ時間は十分ある。肩の力を抜いていこう。これから仲良くしていけばいいんだよ」

 

「そうだな」

(俺としたことが、衝撃の事実で目的を忘れていたぜ)

 

「五月は「白羽君に教えてもらいます!」(五月ボイス)って言ってたから僕が教えるね!」

 

「あ、あぁ」(コイツの声真似はマジで似ていやがる。そっくりじゃねぇか!)

 

「四葉は良いとして、問題は一花、二乃、三玖だな。こいつらは徐々に対処していこう。じゃ、今日は解散で! 下まで送るぞ」

 

 カエルが鳴くからかーえる♪ 鳴いてないけど、そもそも聞こえるはずないけど。

 

「そうだな。あいつらは今日はこれ以上やらないだろう。帰るか」

 

(家に帰って策を考えなければ!)

 

「じゃあ皆帰るね! 復習しとくんだよー!」

 

「……」

 

 僕の声が虚しく部屋に響く。

 

「うん……知ってた」

 

 五月まで何も言わないなんて悲しいぜ!

 

 中野家を出て上杉を下まで送る。

 

「じゃあね! また学校で!」

「あぁ、じゃあな」

 

 上杉の長く伸びた影が見えなくなるまで見送り、僕は踵を返した。




前話、前前話と!と?をつけた後に空白を一文字起きませんでしたがどちらが読みやすいでしょうかね。
今回は入れてあります。
よろしければ感想で教えて頂けるとありがたいです。

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