五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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 この作品を投稿し始めて早一年が経ちました。早いですね~。
 それと、今回の話から再びオリ主視点に戻ります。

 書ききって思いました。それぞれの一人称視点を書くのやめとけばよかったなと。最初からオリ主視点でやめとけばよかった……。そうすればもっと話進められたのに……。




第60話 最後の試験が雪斗の場合そして告白

 今日も今日とて家庭教師としてやってきた僕たち。五月に玄関を開けてもらい中に入ると、姉妹たちが進路について話し合う声が聞こえて来た。

 

「冬休みも終わっちゃったね」

 

 そうだねー。

 

「あんたたちのクラスも進路希望調査もらった?」

 

 貰った貰ったー。

 

「何書けばいいかわからない」

 

 それなー。

 

「一花はすぐ書けるよね」

 

 一流女優って書いちゃいな。

 

「うーん、まだ学校には言ってないんだよね」

 

 じゃあいつ言うの? 今でしょ!

 

「よーし集まってるな」

 

「ちわー、さて今日も授業を……」

 

 聞こえて来た声にツッコミを入れつつ居間に踏み込む。

 

「やりましょう……ぜひやってください!」

 

 炬燵を囲んでいる姉妹たちに声を掛ければ、五月が僕の言葉を遮ぎってきた。やる気に満ちていてイイネ!!

 

「試験突破に必要なものが何か確かめてください!」

 

「ああ、乗り気なのは助かる………」

 

 僕らに詰め寄ってくるほど気合十分な五月の一声で周囲の目も自然と彼女に集まる。

 

「気合十分なのはいいけど、無理はいかんよ……およ?」

 

「わーー! 白羽君鼻血が出てます! まさかぶつけたんですか!? それとも具合でも……」

 

「エッチな本でも見たんじゃない?」

 

「読まないよ。原因は分かってるから落ち着け五月。だからスマホを置け」

 

 五月に気合を入れすぎないようにと、言い切る前に鼻からは赤い線が伸びて錆びた鉄の匂いがする。

 ペロッ、これは血!(コ〇ン風)

 

 それを見た五月は慌てふためきスマホを取り出し、『救急車を呼びましょう ! 117でしたね』違いますそれは時報です。そして鼻血で救急車は迷惑以外何物でもない。だから止めろ。

 

「最近三玖がやけに市販のチョコをくれるからさ。そのせいかな?」

 

 チョコを食べすぎると鼻血が出るというのは医学的根拠はないらしいけどね。血流は良くなるみたいだけど……。

 

「今日も持ってきたから、食べて感想教えて」

 

 と言った傍からチョコを差し出してきた。

 

「ありがと~。…………うん。わからん! そもそも僕は食べれればそれでオッケ! できれば甘いのが良し!」

 

 強いて言うならそれ位。 

 

 ここ最近来るたびにチョコを渡されて感想を言う日々が続いている。

 

 最初は何で渡してくるのか分からなかったがバレンタインのチョコなんだろうなと思ったので、気が済むまで付き合おうと思う。特に困ることもないし。食べられて幸せだし。ただ、最近味に飽きつつある。う~ん贅沢な悩みだこと。 

 

「あら、丁度甘いものが食べたかったの」

 

「二乃にはあげない」

 

「はぁ? 独り占めしないでよ」

 

「しないよ、まだ」

 

 一瞬不穏な雰囲気が流れたのはビビったが何もなくて何より。それよりチョコを僕の前にずーらっと並べ始める三玖は何がしたいのかな?

 

「ユキト、全部食べて感想聞かせて」

 

「さっきも言ったけど食べれれば大丈夫なんだけど……まあ頂くけど」

 

「わ、私も一つくらいは」

 

「だめ、五月は一つじゃ止まらない」

 

 もきゅもきゅと咀嚼していると五月が手を出してきたが、三玖の言葉で撃沈した。五月だったら全部食い尽くしそうだしね。

 

 手当たり次第にチョコを口に放り込み、捻りのない似たような感想を伝える中、一花が何やら神妙な面持ちで三玖の方をじっと眺めていた。………問題が起こりそうな気配はないからほっとこ。……ただ念のため気にはかけておくか。

 

 ……む、このチョコ懐かしい味がする。

 

 

 

 

 

 

 

 今日は学校で勉強会なのだが、四葉が参考書を家に忘れてしまったようで代わりに僕が取りに来た。三玖は今日来れないと言っていたし、二乃は途中で用事を思い出したとかで急に帰っちゃったし、一花は仕事で遅れてくるらしいし。そんな訳で学校にいるのは上杉と四葉、五月の三人となる。

 そして、勉強会はちゃんと進んでいるのだろうかと考えながらアパートの錆まくった階段を上がっていると、一花の背中が見えた。……ムフフ。

 

 抜き足差し足忍び足。こっそり近づいて~っと。

 

「わあ!」

 

「うわああっ!? 『ドンッ!』痛っ!」

 

「あ、ごめんごめん。そこまで驚くとは思わんだ」

 

 そんなに驚くとは思わなかったな……。飛び上がるくらいかと思ってた。

 

「ユキト君!?」

 

 僕の名前を呼んでちょっぴし固まる一花に再び謝っていれば、一花は少しため息をついた後口を開いた。

 

「どうしてここに?」

 

「四葉が参考書を家に忘れたっていうから僕が取りに来たんだよ」

 

 ふと思ったんだが、四葉が一花に連絡しておけば僕が取りに来る必要なかったんじゃね? 一花この後勉強会に参加する予定だったんだから。骨折り損じゃないか。

 

「……あー! それこの前私が捨てちゃったかも……」

 

「あらま」

 

 ちゃんと捨てる前に四葉に確認しようね。……あと、一花がキッチンが見える窓を一瞥したのは何か意味が? お腹でも減ってたのかな?

 

「今から買いに行くからついてきて!」

 

「え? あ、うん」

 

 僕の背中を押しながら急いで本屋へと向かおうとする一花の様子を見て、何か食べ物でも買っておこうかなと思う。そんなにお腹空いてたのか。

 

 

 

 

 さて無事に本屋に着いたことだし早速見つけに行くとしよう。

 

 参考書の棚を端から見ていくこと数分、早くも発見。だがしかし念のため中古を探す。一応四葉にメールで許可を取ってあるから大丈夫。

 中古にはたまに色々な書き込みがされており、重要な問題や公式がどれなのか分かりやすいのだ。何より安い。と言っても僕自身は新品が好き。………う~ん、新品しかないか……。一花に見つけたことを伝えて渡す。

 

「別に無理しなくていいから僕が払うよ」

 

 一花はむむむ、とどうやら参考書が思ったよりも高かかったのか、眉間に皺を寄せている。

 

「え、えっと……心配しなくて大丈夫だから! じゃあ買ってくるからね!」

 

「うん。行ってら~」

 

 そういうのならお言葉に甘えようではないか。一花が会計している間にコンビニで肉まん買っとこ。レジはさっきから混んでいる様子だったし、ここを離れても大丈夫だろ。

 

 本屋の隣に位置しているコンビニで肉まんを買った僕は、本屋に戻って在庫処分のセールがされているところで物色を始める。レジに近いここに居れば一花も気づくだろ。

 

 ふむふむ。『初心者でも簡単にトランプマジック!』か、懐かしいな。前世で買った本じゃないか。パラパラとめくり懐かしさに一通り浸った後、再び物色。…………お! これとか使えそう。『分かりやすく相手に伝えるには ~社会人に必要なコミュニケーション~』と謳われた本を手に取り目次を開き、そこから重要そうな部分と思われる章を読む。…………”相手が何を望んでいるのかを知ること”、”相槌を打つこと共感すること”などどいった当たり前なことが書かれていたりしたが、まぁ使えなくはないだろう。覚えておこう。

 

「お待たせ」

 

 一通り使えそうな部分を覚えたところで一花から声が掛かった。

 

「あ、終わった?」

 

「おや? その本らは?」

 

「あぁこれ? 別に気にしなくていいよ」

 

 一花が僕の持っていた二冊の本に興味を示してきたが、気にすることではない。

 

「ま、まさかエッチな本とか!?」

 

「違うわ。よく見ろ。マジックの本と、指導本だよ。……どちらかと言えばこれはビジネス本に分類されるのかな?」

 

 それに、人目がある所で18禁を売る店もどうかと思うし、仮に僕が読んでいたとしたらメンタル鋼過ぎるだろ。鋼通り越してダイヤモンドだな。

 

「良かったらそれも買ってあげようか?」

 

「いや、要らない。重要そうな部分は覚えたし、それに必要に駆られたら自分で買うよ」

 

 そこまで欲しいとは思わなかったし、自分の本くらい自分で買うさね。

 

「そっか、じゃあ行こ!」

 

「そうだね。………ん? 一花の手、腫れてない?」

 

 なんとなく一花の手に目を向けると赤く炎症を起こしていた。脅かした時に怪我してしまったのか。気づかなくて申し訳ない。

 

「全く、そういうのは早く言ってよね。湿布貼るから手を出して」

 

 懐を漁って医療キットを取り出し、湿布を取り出す。

 

「いや、大丈夫だって!」

 

「ダ~メ、一花は女優なんだから気にしなさい…………うん。これで良し。じゃあ今度こそ行こうか」

 

 ササっと湿布を張り付け、本屋の出口に向かって歩き出す。

 

 本屋さんの出入り口付近まで来た時、

 

「な、中野さん!」

 

「……あ、水澤君に谷田部君」

 

 一花と同じクラスの人か。たしかバスケ部の人だったな。二人ともスタメンではないが、それなりに実力がある。ユニフォームの番号はそれぞれ10番と13番。最近の悩みは一花のファンクラブ設営に先生が頷いてくれない事。……頑張れ。

 

「プライベートな中野さんだ」

 

「こんな所で会えるなんて! しかも名前まで覚えてくださってるなんて感激です!」

 

「……私服じゃないのが少し残念」

「お前失礼だぞ。中野さんはどんな格好でも美しい。そうだろ!?」

「そうだった。中野さんに失礼だった。すいませんでした!」

 

 二人はクラスのアイドル的な存在に会えるのが嬉しいと全身で表現している。

 

「ま、まぁ、気にしてないから別にいいよ。それに私ってクラスの皆んなのお誘いをほとんど断っちゃってるし。ごめんね」

 

「とんでもないむしろアリです!」

 

「中野さんは俺らみたいな下界の人間と別次元のお方ですから! 今日は何しに……」

 

「そんなの本買いに来たに決まってんだろ……って、中野さんの御手に湿布が!」

 

 一花の右手に気づいた二人は目を大きく見開き、あんぐりと口を開けた。

 ごめん。それ僕のせい。

 

「これ? さっきぶつけちゃってね、もう大丈夫なんだけど」

 

「い、一大事だ!」

 

「今すぐ救急車をお呼びします!」

 

「この店にお医者様はいませんかー!」

 

「もー! 大袈裟だって! じゃあまた学校で!」

 

 折角出会えたのだから邪魔しないように空気になっていたら一花が会話を強引に切り上げて手を繋いできた。

 

「な、中野さん!」

 

「その男は誰ぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ一花。あのクラスメイトにちゃんと弁解しといてよ」

 

 本屋から出てしばらくした後、一花に頼む。厄介事は勘弁だ。

 

「? あはは、そうだね。ちゃんと説明しとくよ」

 

 一瞬したり顔が見えた気がするが、まぁ説明してくれると言ってくれたから大丈夫だろう。そこで思考を一旦区切り、思ったことを口に出す。

 

「それと、一花は姉妹の中で1番器用で飲み込みも早い」

 

「え? そうかな?」

 

「うん。仕事と両立を保てているのが何よりの証拠でしょ? 今まで試験は散々だったけど、今度こそ合格できるだろう。頑張るぞ!」

 

 みんなで赤点合格した後のスイーツはきっと美味しいぞ!

 

「……うん! やるだけやってみるよ!」

 

 その意気や良し。期待しているよ。

 

「そんな頑張るあなたにプレゼント。肉まんだよ。ほい♪」

 

 コンビニの袋を鳴らしつつ一花に渡し、僕は自身の肉まんを食べようと口を開く。

 

「……急にどうしたの?」

 

 もう少しで食べられるといったところで一花が訊いてきた。

 

「……え? 一花がお腹空いてたのかと思って買ってきたんだけど……勘違い?」

 

「もう! 私は五月ちゃんじゃないよ!」

 

 名残惜しい気持ちでいっぱいになりながら一花に真意を教えれば、目尻を吊り上げて不機嫌ですという表情をしてきた。

 

「……むぅ、食べないなら僕が全部食べちゃうよ!」

 

 少し散漫な動きで腕を一花に伸ばして肉まんを奪おうとする。これで僕に奪われて(返して)くれるなら五月に上げよう。

 

「だめ、これはもう私のもの。……でもありがとね!」

 

 一花は僕の手を躱し感謝の言葉をくれた。そんな微笑みながら肉まんを齧る一花を見て思う。

 

 やっぱりお腹減ってたんじゃないか!

 

 ……まぁ、女の子がお腹減っただなんて言いずらいもんな。ここは問い詰めないという僕の男前な部分を見せてやろう。

 

 一口小さいな……と思考の隅でそんな事を考えながら肉まんを頬張る。すると口の中でほろりと解け、肉汁が口一杯に広がる。

 

 美味い!

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 冬の厳しさがまだ残る如月の初旬。

 

「………ここでは筆者の気持ちを答えるというより、お前たちがどう感じたのかを書くわけで……」

 

「……………」

 

 上杉が全体の説明をして、個人が解き、分からない場所や気になる個所を僕がサポートに入る。そんな形で進んでいたのだが、完全に行き詰まってしまった。

 う~ん………空気が重い。ちらりと上杉を見ると目と目が合った。この空気どうしよっか……。

 

「……えっと、私はどう感じたんだろう」

 

 意気消沈してしまっている姉妹たちを見て上杉が頭を抱えた。まぁその気持ちはわかる。僕たちはあくまで教師の真似事だからこそ、何が分からないのか分からないという問題に直面してしまった。

 

『授業は本来生徒にとってはつまらない物。それを面白くし、生徒の興味を引きつけ、いかに生徒に分かりやすく理解してもらえるか。それを追求し、実行していくのが教壇に立つ教員の義務であり、教師がいる理由だ。ただ教科書通りに授業を進めるのは、そんなの生徒たちだけでも出来る。そこに教師なんて必要ないし、むしろ勉学の邪魔だ』この言葉を胸に今までやって来ていたのだが、とうとう手詰まりとなってしまった。

 

「……上杉、お前今失礼なことを考えていただろ」

 

「よく分かったな」

 

 ……適当に言ったんだが、まさか本当に思っていたとは……。

 

「……だがこの状況どうする?」

 

「そうだな……そもそも問題を解く以前に集中力の限界だな……」

 

「最近勉強漬けですからね……」

 

「わ、私はまだできますよ!」

 

 そう言う四葉の顔には、限界が近づいているのが表れていた。うさちゃんリボンが萎びれているからよく分かる。

 

「……しゃあねえ、前々から考えていたことを実行するときが来たな」

 

『?』

 

 なんのことだか把握していない姉妹たちに、懐から紙切れを取り出し掲げる。これが目に入らぬか~!!

 

「遊園地でも行こうか。ここに遊園地のチケットがある。なんとピッタシ7人分。これを使わない手はない。ってことで行きたい人~?」

 

 この切り札をいつ切ろうか悩んでいたのだが、使うときが来たようだ。

 

『行く!!』

 

「お前たち落ち着け、ちゃんとみんなの分もあるから群がってくるな」

 

 

 

 次の日。電車に揺られる事1時間。遊園地に着き早速ジェットコースターを堪能。

 

 ああ゛~、胃が気持ち悪い。落ちる感覚だけは好きになれないな。ハンググライダーはそこまで顕著に胃にダイレクトアタックしてこないからましなんだが……。

 

「次はあれに乗りましょう! あれに!」

 

 お腹を摩りながら歩いていると、五月がゴーカート乗り場の看板を指さして言ってきた。

 

「あれはゴーカートかぁ……ぶつけまくっちゃいそう……」

 

「いいね! 面白そうじゃん。トゲゾー回避できるかなぁ~」

 

 インコース攻めまくれば1位になれるかな? 

 

「みんなも乗りましょうよ」

 

「私は嫌よ。怖いじゃないそれに運転免許持ってないわ」

 

「……二乃、それってジョーク? それともマジで言ってる?」

 

「冗談に決まってるでしょ!」

 

 冗談だったらもっと分かりやすい言葉と表情をしてくれ。反応に困るわ。

 

「……私も勘弁」

 

「うー……」

 

「みんなノリ悪いなー」

 

 僕と一花、五月以外乗ろうとしないので五月が唸り始めた。

 

「四葉は乗らないんですか? 乗りますよね? 乗りましょうよぉ……」

 

 とうとう五月は四葉に上目遣い攻撃をし、次第に四葉に縋り始めた。そんなに一緒にやりたいのか……。

 

「お願いです四葉……ダメですか……」

 

「うぅ……わかったよ……1回だけだからね?」

 

 効果は 抜群 だ!

 

 という訳で早着替えで赤い服と帽子を着用しゴーカートに乗り込む。前方良し、後方良し、サイドミラー良し、……じゃっ早速行きましょ~か! 出発点で待っている一花たちの所に並ぶ。 

 

 横一列に並んだところで係員が切り出してきた。

 

「では怪我がないようにお気をつけてください………それでは、スタート!」

 

 係員の人が大きく旗を振った瞬間に一斉に走り出す四台の車。先鋒を行くのは四葉、次に一花、そして僕。五月は最後。

 

 目前にカーブが差し掛かり、一花が大きくスピードを落とした。チャンス! ここぞとばかりにアクセルを踏み込む。……が、あと少しで追いつくというところで、一花に車体を当てられてしまい、抜かすことが出来なかった。

 

「ユキト君ゴメンね!」

 

「まだガキの走りだな」

 

 ニヒルな笑みを浮かべながら呟く。チラッと後ろを見ると五月が曲がり切れずクラッシュしていた。これで一名脱落。

 

 次々と襲い掛かってくるカーブを何とか捌き、ストレートの道になった瞬間一花と横に並んだ。

 

「先に行ってるぜ」

 

 言い切ると同時にアクセルを置くまで踏み込み、離しにかかる。しかし、一花も負けずにすぐ後ろをついてくる。そのままカーブに差し掛かる。出来る限りブレーキはかけず、慣性ドリフトを行う。タイヤとアスファルトの焦げる臭いがしてきたその時。一花の車がパンクし、走行不能になった。あとは四葉と僕だけ。

 

 元々コースは短いのだろう。もうゴールが見えてきた。四葉は車体一つ挟んで前にいる。詰めようとしてもこれが最速。結局車間距離を詰められないまま勝負は終わった。

 

「四葉なんでそんなに速いの?」

 

「ブレーキがどれか分からなかったのでずっとアクセルを踏んでました!」

 

 まじで? ってことはカーブをアクセル全開ですべて走ったの? 運動だけじゃなくてレーサーの才能もあるじゃん。

 

 四葉の衝撃発言に驚きながらも一言。

 

「おい、別れの言葉はなしか?」

 

「?」

 

 フルスピードで走るのが俺の人生だった。だから、お前と俺は兄弟だった。お前も同じだったから。

 

 ああーあーあ~♪ ああーあーああっあっあー♪ 

 

 話しかけておきながらも、四葉の何言ってるんだろうという表情を無視し、心の中で名曲を流す。

 

 車を元の位置に戻した後、係員さんにパンクさせてしまったのでタイヤ代を請求されるのかと思っていたが、元から寿命が来ていたのでタイヤを交換するつもりだったとか。御蔭で払わなくて済んだが、少なくとも寿命を減らしてとどめを刺したのは間違いないので、申し訳なく思いながらもその場を後にした。

 

 上杉たちと合流した後メリーゴーランドに乗ることになったが、僕はまだレースの熱が残っていたので、外から手を振っていた。う~ん、心が穏やかになるね。

 

 次に洋風のお化け屋敷。係員さんにお化け屋敷のテーマを聞きながら順番を待つ。テーマは猟奇殺人があった屋敷らしい。猟奇殺人事件があった屋敷は、事件が起きてから首から上がない人が歩く姿が見られたり、叫び声が聞こえるためお祓いをしに行くという形らしい。

 そうそう、ペアは上杉と二乃。一花と四葉。そして僕、三玖、五月の形となった。幸いなことに人は並んでいなかったため直ぐに僕らの番になった。

 

「……以上で説明を終わります。そうそう、因みに被害者の死亡時刻は17:42だとされています。……おっと、ちょうど先ほどのペアが終わったようですね。次のペアどうぞ~」

 

 係員さんに会釈をし、小さなライトを貰う。光が出てくるところに赤いセロハンが貼ってあるため、あまりライトには期待しないほうがいいみたいだ。使えないライトは三玖に渡し、足元を照らすように伝える。転んだら大変だしね。先に入っていった上杉と一花たちは大丈夫だろうか………。

 

 軋む音を響かせながら入り口の扉をくぐれば、生温かい風と共に血生臭い匂いがした。

 

「うぅ~、怖いです~」

 

「まだ入ったばっかなんだが……っていうか鼻にこびりつきそうな匂いだ」

 

「……本格的」

 

 僕らがいるのは玄関かな? 一先ず辺りを見渡せば、至る所に血飛沫の跡が見受けられる。

 興味本位でその血を手で触ってみれば、ぬるりとした触感と共に強い血の匂いがした。

 

 ……汚ね。手に着いた血を壁に擦り付けて取る。触らなければよかった。五感をめちゃめちゃ刺激するお化け屋敷だな。

 

 入ってから少し歩くと三玖と五月が腕にくっついてきた。両手に花な状態だが、身動き取れないので五月には服の裾を掴んでもらう。ごめんね。正直少なくとも片手を自由にしていないとヤバい気がする。

 

「ささっと出ようか。社にこの札を置けばいいんだよな」

 

 係員に貰った一枚のお札をひらひらさせて言う。

 

「そうですぅ。早く置いてここを出ましょう」

 

 社ってどこにあるんだ? まさか探しながら行かなきゃいけないのか? ならせめて見た目は分かりやすいようにしておいてくれよ。貰ったお札を五月に渡して、捜索を開始する。

 

 捜索してから5分程。少しの物音を聞き逃さないように最小限の会話だけをしながらリビングを捜索中。

 

 部屋の中には人ひとり入れそうなほど大きな振り子時計があったが動いておらず、見当違いな時間を示していた。

 

 こんなに大きいし、動いていたらアンティーク屋とかに売ったら結構な値段で売れるんじゃないかな?

 

 いくらで売れるんだろうと場違いな考えをしつつ部屋の隅に行けば、少し光が零れている部屋を見つけた。

 

 覗く前に興味本位で耳を当ててみれば、部屋から物音が聞こえた。

 

「三玖に五月少し来てみろ」

 

「何ですか?」

 

「何か見つけたの?」

 

 既に顔を青ざめている五月が希望を抱いたかのような目で見つめて来た。

 

「いや、この部屋から声が聞こえる」

 

 僕がそう言えば、二人は黙って耳を澄ました。すると、聞こえてきたのか目を見開いた。

 

「許さない……って言ってる?」

 

 三玖の言葉に頷いて、三人で部屋を覗き込めば頭がない人が床に何かをしていた。

 

 わお。これ見ちゃいけないやつだ。

 

 そう決めつけた僕らは直ぐに覗き込むのを止め、逃げるようにリビングの中央に集まれば、五月が机の上に置いてあった鏡を床に落とした。

 

 鈍い音を出しながら落下したそれを見て、油をさし忘れた人形のように締め切られた部屋を振り向けば、重低音の腹の底まで響くような、恐ろしい声が聞こえた。

 

「……私の頭を……」

 

 そう言いながら音もなくそいつがいたドアが開き、手が、足が見えた。ぬっと姿を現した幽霊は首から上がないのに僕よりも高かった。2mはあるんじゃないか?

 

 ごめんなさいと、壊れたレコーダーのように繰り返し呟く五月を慰める余裕はなく、その場に縫い合わされたかのように動けない僕らに向かってそいつは言った。

 

「返せ!」

 

 弾けるように三玖と五月の手を引いて廊下へと逃げて別の部屋に入った。

 

「……ハァハァ、おい、やべぇよ。マジやべぇ」

 

 あんな高身長な幽霊(?)初めて見たよ。いや、幽霊の平均身長なんて知らないけどさ。

 

「……雪斗君、リタイアしませんか?」

 

 浅い呼吸を繰り返しながら、五月がゲームの途中放棄を申し出た。

 

「……その気持ちは分からなくもないのだが、一つ気になる所があってね」

 

 喋りながら耳を澄ませば、こちらに来る足音は聞こえず僕らの息遣いしか聞こえなかった。

 

「どこが?」

 

 三玖は意外と平気なのか五月と比べて比較的冷静のようだ。

 

「あいつのいた部屋の床下が怪しいと思ってる。覗き込んだ時にあいつは床で何かしていただろ?」

 

 多分あの下に重要なアイテムかなんかあるんじゃないか? っていうかあいつ頭ないのにどこから喋ってるんだよ。腹話術か何かか?

 

「……行きたくないなぁ」

 

 そう零す三玖に同意したいが、行かなきゃクリアできそうにないんだよなぁ。

 

「……行きましょう」

 

 顔色が青から土気色に変わっている五月が意外なことに進もうと言ってくれた。

 

「だって、お札を落としてしまいましたから……」

 

 消え入りそうな声で話したその理由に、頭が痛くなるような気がするが無視。

 

「なら行くしかないか。準備は良い?」

 

 二人に突撃しに行く意思が固まっているか確認すれば、いやいやながらに頷いてくれた。

 

 出来得る限り息や足音を消しながらリビングに向かうと、先ほどの幽霊はいなくなっており、床にお札が落ちていた。

 幽霊が居なくなっていたことに、お札を無事に見つけられたことに安堵しつつ、さっきまで締め切られた部屋に入る。

 

 幽霊がいじっていたとみられる床を見るためにカーペットを退かし、はめ込まれた板をずらせば、地下へと続く階段を見つけた。

 

「……行くっきゃないか」

 

「……ですね」

 

「……この先に社ありそう」

 

 三者三様の反応を出した後、水が滴り落ちる音が響く階段を降りて行く。

 

 階段や壁は岩肌をくり抜いて作ったかのような歪な形をしていた。

 

 一番最後の階段を下りれば、少し広い空間に出た。

 

「ユキト、あれ」

 

 裾を引き、指を指す三玖のその方向へ目を向ければ社があった。

 もう少しでここから出られるという事実に気づいた僕らは、駆け足でその社に近づいた。どこに置けばいいのかと、社の周りを見れば、五月が口を開いた。

 

「……ここに置くんじゃないですか?」

 

 五月の示した先には丁度お札が収まりそうな木箱が置いてあった。

 

「っぽいな。……ほい」

 

 お札を木箱に入れた瞬間。目の前の社の中から生首が飛び出してきた。

 

「「キャーーー!!!」」

「! ………」

 

 びっくりした! 心臓バクバク言ってんだけど! 高血圧になったらどうしてくれるんだ! 悲鳴を上げた瞬間三玖は僕の手を思いっきり握り、五月はその場にへたり込んでしまった。

 

「早く戻ろ!」

 

 涙目な三玖が腕を引っ張った。五月が立ち上がらないので担ぐために社に背中を向けた刹那、階段からあのおどろおどろしい声が聞こえ、三玖の持つライトが切れた。

 

「やばいやばいやばいやばいやばいやばい」

 

 早口でそう言いながら急いで社から離れる。

 

「五月! ちゃんとしがみついとけ! 三玖は手を離すなよ!」

 

 後ろから追いかけてくるような足音と恨みがましい悲痛な声が鼓膜を震わす中、出口を見つけた。

 

「出口だ! このまま行くよ!」

 

 もうすぐそこまで来ているかのように聞こえる音に恐怖を感じつつ、外に出た。

 

「ハァハァ……ハァ………ハァ……ふぅ……三玖と五月大丈夫? 生きてる?」

 

「…………太陽が暖かい……」

 

「…………死ぬかと思いました……」

 

 うん。死にかけてるけど大丈夫そう。

 

「お! お前ら無事だったか」

 

「なんとかね。多分僕一人だったら死んでたね」

 

 人一人担いで走ったが、アドレナリンが出ていたのかそこまで重く感じなかった。五月が、体重について思ったからか鋭い目で見てきた。………違うね。五月は羽毛のように軽いもんね……。

 

「……お札置いてきたのになんで幽霊は祓えなかったんだ?」

 

 祓えていたのなら誰も追いかけてこなかった筈だよな。

 

「ああ。係員の人から貰ったあのお札はその幽霊の部屋に貼るんだよ。そして社にはまた別のお札を置いてくるんだ」

 

 上杉は僕の疑問に思い出したかのような口調で説明し始める。

 

「は?」

 

 なにそれ。つまり僕らはバッドエンドだってこと?

 

「そうそう、社には別の部屋から行けたのよ」

 

 二乃は上杉に継いで説明する。

 

「と言うと?」

 

「リビングに大きな振り子時計があったじゃない? その時計の時刻を死亡時刻に合わせると、その時計が動いて地下への階段が出てくるのよ」

 

 えぇ~、まじかよ。そういう仕掛けまであったのかよ。

 

「はい二乃先生。じゃあ社に置くお札は何処で手に入れるんですか?」

 

「答えを直ぐに得ようとするのは成長の妨げになるわよ。そこから先は自分で見つけなさい」

 

 は~い。っていうか、その言葉はブーメランだと思うぞ。

 

「もう一度挑戦してみたいものだ………ところで四葉は?」

 

 先ほどから見かけない四葉はトイレにでも行ったのだろうか?

 

「……四葉はトイレみたい」

 

 どうやら三玖にメールで伝えたみたいだ。さっきまで上杉と一緒にいたんだから口で言えばいいのに……。

 

「そっか~、じゃあ僕もトイレに行こうかな。………! 上杉も行こ~。連れションしようぜ~」

 

 トイレの場所はどこかと頭上にある道案内の札を見た時、観覧車の窓から見覚えのあるリボンが見えた。

 

「そうだな、俺も行こう」

 

「私たちも行きましょう」

 

「……うん。恐怖が尿意に来てる」

 

「じゃあ僕らはあっちだから終わったらまたここに集まろう」

 

『はーい』

 

 その場を後にして観覧車の近くまで向かい口を開く。

 

「さっき四葉が観覧車の中にいるのが見えたけど気づいた?」

 

「ああ、たまたまだが……」

 

「それじゃあ四葉の事頼んだぞ。気が済むまで付き合ってやれば?」

 

 どうせ中で勉強してるだろうし。今日は四葉だけ鞄を持ってたから多分だけどね……。前回の学校で四葉だけ落ちたんだから、今回もそうなってしまうのではないかという不安がある筈。もしそうでなければ鞄を持ってこないし、鞄を握る手が白くなったりしないはずだ。

 

「……お前も来ると思ってたんだが」

 

「僕が行ったら他の姉妹どうするんだよ……」

 

 あのお転婆姉妹たちの面倒を誰が見るというんだ……。

 

「それもそうだな。行ってくる」

 

「行ってら~」

 

 すんなりと納得した上杉は観覧車乗り場に向かって歩き出した。上杉が四葉の乗っているゴンドラに乗り込むところまで確認してから、踝を返した。

 

 

 最後に姉妹たちの集合写真を撮り、遊園地を後にした。そしてその日の夜。上杉からメールで全員家庭教師案をこれから行う。と来た。相談なしに勝手に方針決めやがって……とか思ったが、意外とありかもしれないと思ったので了承しておいた。いい方向に進むといいが……。

 

 

 

 

 

 全員家庭教師案が発足されてから時間が経ち、休憩を挟み次は理科の授業をやることになっている。理科担当は五月なので隣に立ち、サポートしながら見守る。五月は姉妹が苦戦している問題の解き方を四葉に教えている最中だ。

 

「わっ! 白羽さんよりわかりやすいよ! 五月ありがと!」

 

「くっ、五月に負けただと!? ……………あの本使えねぇ、流石売れ残りだっただけあるわ。折角覚えて実践していたというのに……もっと分かりやすい伝え方を勉強せねば……

 

 説明自体は僕とさほど変わらないのに、一体何がダメだというんだ! これが姉妹の絆か!? 床に膝をつき、こぶしを握りやるせなさを床にぶつける。近所迷惑? そんなん今更だろ。

 

「白羽さんの説明も分かりやすかったですよ。だから元気出してください」

 

 背中をさすり慰めてくれる四葉には申し訳ないが、そんなことを言っても君が裏切ったことには間違いないんだ。純粋なその言葉は僕のガラスのハートを見事に打ち砕いてくれたよ。

 

「……僕は所詮ナメクジだよ。もう僕は要らない子なんだ。きっと橋の下に無情に捨てられるんだ……」

 

「白羽さんのネガティブ化が止まらないよ~!!」

 

 

 雪斗のネガティブ事件が起きたが、勉強会は進み2月14日。

 

 今日は俗にいうバレンタインの日だ。きっと男子たちはそわそわしながら過ごすんだろう。勿論僕はそんなことはしない。なぜなら三玖から貰えることが確定しているからな。ウハウハだ。舞い上がりそうになる足を根性で押さえながらインターホンを押す。

 

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

 

「おはよ~五月。今日も頑張ろうね!」

 

「おはよう五月」

 

 軽く挨拶をしてリビングへ入ると、

 

「あ、上杉君、チョコです。妹さんと食べてくださいね」

 

 五月が鞄からチョコを取り出して上杉に渡していた。

 

「サンキューな、らいはも喜ぶ」

 

 チョコを懐にしまっているが、体温で溶けないように気を付けろよ。……上杉の懐のポケットってどれくらいの広さがあるんだ? よく懐にしまうところを見るが、パンパンになっているところを見たことは無いし……う~ん謎。

 

「どういたしまして………それで、………あの、……白羽君……一緒にチョコ食べませんか? 一花に協力してもらったんです」

 

 上杉のポケットは四次元ポケット説を提唱するべきか……と考えていると、五月がそう言いながらもじもじしつつチョコを差し出してきた。

 

「いいの!? わ~ありがと~! 嬉しいよ! 一緒に食べよう!」

 

 まさか五月からも貰えるなんて! 今日はいい日だ!

 

 腰を下ろして早速チョコを一口味わう。

 

「……美味(うま)し! ああ美味(うま)し! 口に入れた瞬間にほろりと溶ける雪のような舌触りに、鼻腔を擽るココアパウダーの匂い、そして極めつけは溢れ出る生チョコ。………僕生きててよかった~!」

 

 チョコの美味しさに感動に身を震わせていると上杉から変な目で見られた。いつもだったら気にするが今回は見逃してやろう。

 

「美味しいねぇ、美味しいねぇ。こんなに美味しいの食べたのは何時ぶりだろうか」

 

「大袈裟すぎませんか? ただのチョコですよ?」

 

 大袈裟なわけない。こうしてバレンタインにもらえるチョコだからこそより美味しく感じるんだよ。

 

 そのまま一つ一つ味わうように食べる。

 

 

「……ゴクン。……ごちそうさまでした。……ホワイトデーは楽しみにしててね!」

 

 腕によりをかけて作ろうではないか。口の中で広がる幸せを噛み締め、一旦お茶を飲みに冷蔵庫を覗けば中央に三玖が作ったと思われるチョコが鎮座していた。ついでに持って行こうか。

 

 僕が再び腰を下ろすと同時に寝室の襖が開かれ、三玖が出てきた。

 

「ふぁぁ……眠い」

 

「あっ、三玖おはようございます」

 

「お前も二乃も何時まで寝てんだよ」

 

「おはよ~三玖」

 

 五月との話も終えればタイミング良く三玖が起きて来た。まだ眠いのか欠伸もしている。……パジャマのボタンをかけ間違えているから、アブナイんだけど……下にもう一枚身に着けていないのか? 五月! 指摘してやれ! 

 

 そんな僕の思いは五月には届かず、そのまま三玖は話し始めた。

 

「ユキトたち…………来てたんだ。来るなら来るって言ってほしかった。でもちょうどよかった。実はユキトに渡したいものが……」

 

 そう言いながら三玖は冷蔵庫に足を運んだ。

 

「なんでっ!!? 冷蔵庫に入れておいたチョコは?」

 

「え? チョコ? ……もしかして五月か?」

 

「ちょっと! 何で真っ先に私を疑うんですか! 私じゃないですよ!」

 

 上杉の言及に、五月は手を目の前でブンブンと振り無罪を主張する。

 

「あぁーチョコ? ここにあるよ、これ三玖の手作りだろ? 早速食べて良い?」

 

 皿に乗った少し不格好なチョコを指さす。見た目にドクロは浮かんでいないからきっと美味しいはずだ。

 

「……そこにあったんだ良かった。是非食べてみて」

 

 三玖の許可も取れたことだし、少し歪な形のチョコを一口含み、味を堪能する。………! 美味しい。美味しいよ。それと、とても懐かしい。

 三玖のチョコは、かつて彼女に貰ったチョコと同じ味をしていた。

 

 これ以上味わっていたら涙が出てきてしまう。涙腺がまだ緩まぬうちに三玖へ感想を伝える。

 

「……驚いたよ。凄い上達したじゃないか。市販のものよりもうまかったよ」

 

 どこか心の何処かが暖かくなる感覚を覚えながらも、頭を切り替える。感傷に浸るのは後でいい。

 

「あ ありがと…そのチョコなんだけど……」

 

「何?」

 

「……ううん、やっぱり何でもない」

 

「そっか」

 

 三玖が何でもないというのなら流そうか。

 

「……そうそう三玖にはやっぱり伝えておくべきだね。三玖が1番だよ!」

 

「え? ……い、1番って……それはどう言う意味で?」

 

 三玖は何処か期待に満ちた目を僕に向ける。やっぱり模試の結果は気になるよね。

 

「それはね」

 

「それは……?」

 

「先日行った模擬試験の結果だよ! 見て三玖の点数! 65点だよ! 三玖が1番の成績だよ!!」

 

 ファイルから取り出した模擬試験の結果を掲げる。

 

「……あ……そう」

 

 ……なんか思っていた反応と違う。やった! 位言ってくれると思ってたんだけど……。

 

「……ユキト、私頑張るから見ててね」

 

「うん。刮目してるよ」

 

 ちゃんと見ておくから無理しないように赤点回避頑張るぞ!

 

 

 

 

 

 

 そして家庭教師が終わった後、上杉と一緒に五月のお母さんに挨拶をするため、墓地へと足を運んだ。ちゃんと来る途中でお供え物を買ってきた。

 

「どれが中野の墓なんだ?」

 

「五月を見つければいいでしょ」

 

 見渡す限りの墓墓墓。ここから中野家の墓を見つけるのは難しいだろうが、先に五月が来ているんだから五月を見つければ良いよね。

 墓地に足を踏み込んで探し始めること数分。五月を象徴しているアホ毛を見つけた。上杉と一緒に五月の元まで向かう。

 

「五月見つけた! また会ったね」

 

「本当に毎月いるんだな。墓なんて全部同じで見つからないと思ってたが……いい目印があったな」

 

「貴方たちはなぜここに……?」

 

 五月は目を丸くしながら訊いてきた。そんなに不思議なことかね。

 

「挨拶にしに来たんだよ。……線香と花と菓子類、供えて大丈夫?」

 

「はい。ぜひお願いします」

 

 線香と花、菓子類を供えて手を合わせる。……母親の名前は中野零奈……ね。

 

 ………初めまして。五月さんの友達をさせてもらっている白羽雪斗と申します。貴女のお子さんは手がかかって苦労することがしばしばありますが、ちゃんと卒業まで面倒を見ますので、見守っていてください。

 

 僕と上杉が手を合わせるのを止めると、見計らったように五月が話し始めた。

 

「……全員家庭教師案ですが、いい傾向にあります。教わる以上に教えることで咀嚼できることもあると実感しました。もっと早くにすべきでしたね」

 

「そうだな……って、俺らなんて必要ないと言いたいのか?」

 

「ふふふ、違いますよ。あなたたちに教わったことを噛んでいるんです。感謝してますよ」

 

「……そうか」

 

「そう言ってくれると嬉しいね」

 

 教えることで教えた側も知識の復習にもなるし、どう教えようかと試行錯誤をすることがより深く理解することに繋がるからね。

 

「教えた相手にお礼を言われるのはどんな気持ちですか?」

 

「なんだよ、恩着せがましいな」

 

「特段何も思わないけど……」

 

 感謝されて嬉しい位かな。僕はあくまで家庭教師その職務を全うしているからに過ぎないから別にお礼なんていらないけどな。上杉は知らんけど。

 

「私は……あの時の気持ちを大切にしたいです……………私は先生を目指します」

 

 ! そっか、先生になりたいのか……いい夢を持ったな。応援してるぞ。

 

 一先ず挨拶は終わったので出口へと向かう。

 

はい

 

「? 何か言った?」

 

 零奈さんのお墓から4、5程歩いた時、五月が急にお墓の方に振り向いて何か言ったように聞こえた。

 

「……いえ、何でもありませんよ」

 

 そう話す五月は何故か嬉しそうで、泣きそうな顔をしていた。

 

 

 月日は流れテスト返却日。今日は祝賀会を開くため、僕はみんなよりも一足先にRevivalにやってきた。

 

「今日は無理言ってすみません……」

 

 頭を下げて精一杯の感謝を述べる。

 

「いや、試験突破したんだろう? 私にもお祝いさせてくれ」

 

 グッドサインをしながら祝ってくれるという店長。器が大きい人だ。まだ姉妹たちが試験突破したかは定かではないというのに……。無論突破していると信じているがな。

 

「そう言ってくださると助かります」

 

「それじゃあ早速手伝ってもらうよ」

 

 今日お店の一部を借りる代わりに手伝いとしてお店に入ることになっている。と言ってもホールだけどね。Revivalの制服に腕を通し、鏡で身嗜みのチェックをする。アピアランスは大事だからね。……うんばっちし。

 

 カラン

 

 早速お客さんが来たみたいだ。

 

「いらっしゃいませ~」

 

 唸れ僕の表情筋! お前に休みなどない!

 

 

 

 

 

 

 

 働き始めて30分程経った頃、ドアベルが鳴り、上杉と四葉が入って来た。

 

「いらっしゃい。席に案内するまでちょっと待っててね」

 

 一言伝え再び定位置に戻ろうとすると四葉が話しかけてきた。

 

「白羽さん」

 

「なに~?」

 

「私、無事赤点回避出来ました。白羽さんの御蔭です。……本当にありがとうございました」

 

 そう言って四葉は頭を下げた。

 

「………頑張ったのは四葉自身。僕はそれの手助けをしたに過ぎないが、赤点突破おめでとう」

 

 それだけ言い残し今度こそホールに向かう。……やった! 四葉赤点回避だって! 嬉しいね!

 

 四葉の赤点回避の吉報を聞いてからより意欲が増した僕は、怒涛の勢いでお客さんを捌き切った。

 

「白羽君、助かったよ。もう大丈夫だからみんなの下に戻りなさい」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 一言感謝を述べ、上杉たちの下に向かう。

 

 僕が上杉の所に戻るとそこに四葉以外に一花と三玖、五月がいた。あと二乃だけだな。

 

「……ユキト……私赤点回避できたよ。238点だった」

 

「! そうかそうか。……みんなよく頑張ってくれた。特に三玖。君が一番成長したな」

 

 一花と五月は赤点回避したかは知らんが、表情を見る限り赤点回避したみたいだ。二乃もきっと合格しているだろう。早く来ないかな~。

 

「……ユキト、私……伝えたいことが……」

 

「? 何?」

 

 三玖は両手を胸の前で組み、頬を赤らめながらも意を決した表情で話しかけてきた。

 

「私、……ずっと前から「240点だったよ」」

 

 三玖の言葉を遮って聞こえて来たのは一花の総合点数。

 

「……ってことは」

 

「一花が一番ですね」

 

「すごいじゃないか! 仕事もあったろうにきちんと両立させたな!」

 

 三玖の言葉の続きを訊こうと目を向ければ、三玖は目を丸めて、はくはくと口を小さく開け閉めしていた。どうやら一花の点数に驚いて話す気は失せてしまったようだ。少し気になるが、相談事だったりするのならば改めて話してくるだろう。

 

「あ、そうなんだ。やった」

 

「本当にお仕事もあったのにすごいです! ………ところで私たちだけでなく貴方たちはどうだったんですか?」

 

 そう言って五月は机に上に置かれている上杉の試験結果を取ろうと手を伸ばした。

 

「あ! やめろ! 見るな!」

 

「はっ! 危なかったです。また罠にかかって自慢されるところでした……」

 

「ちっ! 無駄に賢くなりやがって……」

 

「やっぱり気に入ってたんですね」

 

 上杉はその下りどんだけ気に入ってるんだろうか……。というか珍しく試験結果が見られなかったことに安堵しているかのように見えなくもないが……後で聞こ。

 

「雪斗君はどうだったの?」

 

「ふっふっふ、勿論満点さ」

 

 五つも並ぶ100の文字と500の文字は見ていてキモチイイィーー! 暫くこの結果だけでご飯一杯いけそう。

 

「流石ですね……」

 

「試験突破おめでとう。今日はお祝いだ。白羽君が今日働いてくれた分の給料で引いておくから好きなだけ食べていきなさい。足りなくなったら上杉君からも引くから遠慮なくね」

 

「わー店長ったら冗談ばっかりー」

 

 五月が居る時点で上杉が自信の給料から引かれてしまうのは避けられないもんな。そもそも僕2、3時間しか今のところ働いてないから確実だな。

 

「そうそう、二つ結びの子は君たちより先に来てこの紙を置いて行ったよ」

 

 店長は懐から試験結果の紙を取り出して言った。

 

 二乃の奴僕より早く来ていたのか……。学校終わってすぐに来たつもりだったけど負けたか。

 

「それと彼女から君たちに伝言」

 

 そう前置きを置いて店長は僕と上杉の耳元で内容を伝える。

 

「おめでとう、あんたたちは用済みよ。だってさ」

 

 これで全員赤点回避。やったね! 

 

『やった~!』

 

「見事全員赤点回避しましたね!」

 

 テンション上がりまくっている姉妹たちをよそに上杉は店を出ようとする。

 

「どっか行くのか?」

 

「祝賀会は全員強制参加だ。連れてくる」

 

「もうすぐバイトの時間だ。バイクで行ってきなさい」

 

 そう言って店長は上杉にバイクの鍵を投げ渡した。

 

「! どうも」

 

 お、ナイスキャッチ。

 

「ヘルメット忘れるなよ」

 

 店を出て行く上杉に忠告しておく。ノーヘルは危ないぞ。

 

 ………姉妹たちの邪魔にならないように働いていようか………。折角気を利かせてくれた店長には悪いけどね。

 

 てんちょ~! 自分入りま~す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 お店に入って1時間くらい経った頃、ドアベルを鳴らして上杉と二乃がやってきた。

 

「いらっしゃ……なんだ上杉と二乃か。姉妹らは上杉の右側、奥のソファー席にいるぞ」

 

 ちゃんと二乃にもヘルメット渡したんだろうな? ノーヘルは捕まるぞ。まぁ無事ならいいけどさ。二乃の髪がまるで強風に靡かれたように少し散らかってるからノーヘルだったのは間違いないけど……。

 

「あ! 上杉さ~ん! こっちですよ~!」

 

 四葉が上杉と二乃が来たのを聞き取ったのか、客席から身を乗り出して自身の所在を教えた。

 

「今行く」

 

 あらら行っちゃった。あいつもうすぐバイトの時間じゃなかったっけ?……でも店長が言ってくれるからいっか。取り敢えず注文されるまでレジに立ってよ。幸いなことに五つ子以外のお客さんいないしね。

 

 上杉も入ってから少しした後、五つ子たちから注文を受けたのでキッチンに伝える。

 

 出来上がった注文の品をトレーに乗せてテーブルまで運んでいく。ケーキの数が人数に合わずプラスで二切れあるけど、どうせ五月のだろ。

 

「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」

 

 来ていない品がないか確認した後、姉妹たちの乾杯音頭を聞きながら自分のポジションに戻る。戻りながらもテーブルを拭いたり、トイレが汚れていないかを確認したりして、問題が起こっていないか確認しておく。テーブル良し、トイレ良し、フロア良し………大丈夫そうだね。最後に客席にあるくず入れを交換しておく。上杉がレジに立ってたから少し作業をしていても問題ないだろう。

 

「さて、一段落ついたね。じゃあ僕は少し休憩に入るからあとよろしくね」 

 

 僕がゴミを倉庫に持って行き、レジに戻れば店長さんが休憩する事を伝えにこちらに顔を出した。

 

「はい」

 

 ごゆっくり~。

 

「あ、店長。プリンを1つ取り置きしてもいいですか?」

 

「え? プリンかい? 別にいいけど好きだったかい?」

 

 え? 取り置きできるの? いいねそれ。僕も何か取り置きしよっかな。

 

「いえ、バレンタインのお返しと思って……」

 

「!? 君は仲間だと思っていたのに……この裏切り者……!」

 

 一番信用していた人に毒を盛られたかのように、’裏切り者’に感情が込められている。裏切られた憎しみ故か、店長の顔が般若の顔に変わった。

 

「いや、妹にあげるやつですけど……」

 

「な、なんだそういうことか……。僕はてっきりあの5人のお友達の誰かからだと思ったよ」

 

 バレンタインのお返しは妹のらいはのためだと聞いた店長は般若の顔から一転、人のと良さそうな顔になり、思わず握りしめていたエプロンの裾から手を離した。

 

「なんですかそれ。ありえませんよ」

 

 店長が休憩に入ったところで、上杉と雪斗はキッチンに入り食器と機材の洗い物をする。

 

「……店長には僕がチョコ貰ったって言わないでおいてね」

 

 バレたらなんかされそう。

 

「? ああ」

 

 それじゃあ早速洗っていきますか~!

 

「ねぇ、今回のテストで学年1位取れなかったんでしょ?」

 

「……まぁな」

 

 やっぱり……ここは慰めるべきか? ……いや、この学校に入学してから常に学年1位の上杉が逃すなんてきっとこの先拝めないぞ。うん。

 

 天使と悪魔が出てきたが、秒で悪魔が勝ち僕に上杉を揶揄えと囁いてくる。

 

 よし、揶揄うか。しばらくはこのネタでいじれそうだ。うへへへへ。

 

 雪斗はニヤニヤと笑いながら嬉しそうに、スキップでもしそうなテンションで話しかける。

 

 そして上杉をからかうように彼の前で軽快なステップを踏む。

 

「なあなあ、今どんな気持ち? 学年1位を逃した気持ちは今どんな気持ち?」

 

「~~~~~っっ!!」

 

 これは酷い。雪斗絶好調である。煽りながらも皿を洗う手はやめてはいないが……。

 

 一方上杉は少し涙目になって唸っている。

 

「次のテストでは1位を取り戻すから見ていろ!!」

 

「はっはっはっはっは! 頑張ってね~! 高みで待ってるぜ!」

 

「うっせぇ! いいから黙って手を動かせ!」

 

 あっはっはっは。おもしれ~。

 

 まだ悪魔が揶揄えと囁いてくるがその甘言に乗ることはしない。自分そこまで堕ちてないんで(キッパリ)。

 

「ねぇねぇ、一体どの問題が難しかったのかな? 僕に解りやすく教えて欲しいな~」

 

 堕ちてはないよ? うん。堕ちてはないけどさ、まぁ揶揄うよね。

 

 悪魔の誘惑ににべもなく頷いて上杉をいじりながらも皿洗いを続けること10分。洗い物も残りわずかになった頃に二乃が皿を持ってキッチンへと入って来た。

 

 お客様~! すいません。ここ関係者以外立ち入り禁止なんですよ~! ……は! もしかしてクレームですか~? でしたら店長にどうぞ~!!

 

「ご馳走様でした……って、雪斗もいたのね。……あら? 店長さんは?」

 

「やっほ二乃。店長は休憩に行ったよ」

 

 え? マジのクレーム? 止めてよ。

 

「そう……なら少し待とうかしら」

 

「そうか……」

 

「「「…………」」」

 

「ここって関係者以外立ち入り禁止じゃないの? それとも関係者(友だち)だから大丈夫?」

 

「なわけあるか、普通にアウトだろ。白羽お前が二乃に言ってここから追い出せよ。店長にバレたらどうすんだよ」

 

「あの店長は人が良いから許してくれそうだけどね……」

 

「……確かに」

 

「「じゃあいっか」」

 

「そ、そうだわ、待つついでだから洗い物、手伝ってあげるわよ」

 

 小声で話しながら二乃を見つめていたのだが、いたたまれなくなったのか二乃が手伝いを申しあげてきた。

 

「え? いや、別に手伝い要らねぇよ。姉妹の所で待ってろ。折角の祝賀会なんだから……」

 

「お客様を働かせるわけには……」

 

 友だちとは言え一応お客様だし……働かせるわけにはいかんよ。

 

「アタシがやるって言ってるんだから素直に甘えときなさいよ」

 

 二乃は止めようとする僕たちをよそに洗い物に手を付け始めた。

 

「お、おう……」

 

「ご、ゴリ押ししてきた……ならちょっと頼む。僕トイレ行ってくる」

 

 トイレ♪ トイレ♪ ……に行ってるから若いお二人はごゆっくりどうぞ~!

 

 立ち去るついでに写真をパシャリ。何かに使えるかも……。キッチンのドアを開け放して出て少し歩いてから、足音を殺してキッチンの入り口まで戻り腕を組んで聞き耳を立てる。

 

 皿洗いといっても残りわずかなのに手伝うだなんて何かあるに決まってるぅ~! いつもの二乃だったら皿を置いて席に戻ったろう。だがそれをしなかった!!(迫真) 一体二乃は何をしようとするのか! 気になるぅ~!

 

 

「? 二乃どうした?」

 

「……バイクで言ったこと、やっぱり忘れてちょうだい」

 

「!」

 

 おっと、早速気になるワードが飛び出てきたな。バイクでの短いひと時に何があったのだろうか。想像が止まらない。

 本格的に聞き耳を立てる。録音もしとこ。

 

「困らせちゃうのは当然だわ。突然すぎたもの。少しアクセルを踏みすぎたみたい。何やってんだろ私……」

 

「……」

 

 沈黙が立ち込めるキッチンの中、どっちが言葉を発するのか。ドキドキワクワクしながら事態を見守る。

 

「二乃」

 

「!」

 

「……すまん、二乃は何について話してるんだ?」

 

「……ええ!!?」

 

 っとここで上杉の会心の一撃。この一撃で二乃は言葉を失ったようだ。

 

「正直心当たりがないんだが……。ていうか、あの時は結構風強かったし……もしかしたら、聞き逃してたのかもしれん」

 

「な、何よそれー!」

 

「だから何について……」

 

 う~んこれは酷いな上杉よ。まさかの聞き逃して聞いてませんとはね。これは二乃の逆鱗に触れたのではないか?

 

「何でもないわ!」

 

 やっべこっち来た。取り敢えず何もしてませんよアピールしておこ。

 

「……何も言わずにいて後悔するなよ」

 

 二乃の事だ。ここで何も言わなかったら、ずっと心に残り続けるだろう。……これでうまくノッてくれれば嬉しいんだが……。そして続きを見せてくれ!!

 

「……ふん! 余計なお世話よ! 黙って見てなさい!」

 

 そう言って再びキッチンへと戻っていった。これで待望の続きが見れる!!

 

 おっと一花はここに居てね。入っちゃダメだよ。今良いところなんだから。

 

「店長、皿洗い、全部片付きましたよ」

 

「あんたを好きって言ったのよ」

 

 おお~! まさか告白とは思わなかった。上杉を嫌っていた二乃が上杉を嫌いになるなんて、世の中不思議で溢れているな~。

 内心テンション爆上がりの中、隣で告白を聞いていた一花は少し顔を赤くしていた。

 

「……は? え? 何……?」

 

「返事なんて求めてないわ。ホントムカつく。恋愛対象外なら……無理やりにでも意識させてやるわ! あんたみたいな男でも好きになる女子が地球上に1人くらいいるって話したことあるわよね?」

 

「あ、ああ」

 

「それが私よ! 残念だったわね!」

 

「……っ」

 

 二乃の有無を言わせない口調により上杉も何も言えなくなってしまった。一花は上杉がこの告白に肯定、否定どっちだと思う? そう思って一花を見たら、まだ回復していなかった。……意見を聴けなかったのがちょっと残念だが、一通り終わったみたいなので録音を切る。いや~実に良い物を手に入れてしまった。甘いものが無くなったらこれを聞こ。

 

 




 水澤君に谷田部君の所属部活については捏造です。
 なぜ雪斗が詳しく知っているのかというと、他人に変装するときに人間関係などを覚えておく必要があるからです。そのため色々と知っています。

 お化け屋敷を書くためにホラーゲームをいくつか目を通しました。恐ろしい、あな恐ろしい。こんなものを生み出すなんて人間は業が深い生き物よ。自ら恐怖を駆り立てるようなものを進んでプレイするなんてそなたは勇者か?

 最後の試験シリーズは私が納得するまで出さないという形を取らせて頂きましたが、これからもそうしようかと思います。
 
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