五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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弟のチェックが入りました~!


気になる感想は~











続きは後書きで


第7話 屋上の告白

 

 ギラギラとした太陽が辺りを照らし、熱している。

 

 

 

~上杉side~

 

「ハァ……ハァ…ギリギリセーフ」

 

 家庭教師と自分の勉強の両立がこんなにきついとは……こんな生活続けられるのか……?

 

 

 

 ブォォオ キィィィイ

 

 と、音を立てて後ろから黒塗りの車が走ってきて、校門の少し奥の木陰で止まった。

 俺はいかにも高そうな車を覗く。

 

「おおっ、見たこともない外国の車だ。かっけー100万円はするだろうな(適当)」

 

 

 

~オリ主side~

 

「おーっす、おはよー、それはきっと、メルセデスベンツっていうか車じゃないか? そしたら値段は高いやつだと2300万円位まであるらしいよ。タブンネ~」

 

 よっ! と片手をあげて上杉に近づく。すると同時にガチャッとドアが開き、出てきたのは中野姉妹。

 

 

「あっ! お前ら! よくも一昨日は逃げてくれたな!」

 

 と声をかけるが既に脱兎の如く逃走をしている中野姉妹。

 

「待て! よく見ろ! 俺は手ぶらだ害はない!!」「僕も持ってないよ~」

 

(赤本を地面に落とすのは気が引けるが仕方ない)

 

「騙されないわよ!!」「参考書とか隠してない? ユキト君はマジシャンでしょ? 信用できないよ」「油断させて勉強教えてくるかも」

 

(こいつら俺をなんだと思ってるんだ)

 

 確かに隠し持ってるけど、そこまで言わなくてもいいじゃないか。

 

「というか、一昨日のテストの復習は当然したよな!」

 

「「「「「………」」」」」

 

 おい、してないのか。それでいいのか。

 

「問1 厳島の戦いで毛利元就が破った武将を答えよ」

 

 あっ、問題出すのネ。

 

「「「「「………」」」」」

 

 ですよね~! 期待通り! こんな期待は裏切って欲しかったなー。

 

 五月は答えられなかったのが恥ずかしかったのか、赤い顔してぷるぷる震えた。そして二乃が手を引っ張って校舎内へと入っていった。

 

「はぁ………」

 

 額に手を当て溜息を吐く上杉と僕は、早朝から気が重くなった。

 靴を靴箱に入れ、教室への道を歩きながら上杉に訊ねる。

 

「なぁなぁ、上杉のことだからノートに前回のテストについてまとめてあるんでしょ? 見してー」

 

「あぁ、よく分かったな。ほらよ」

 

 サンキューと言いながらノートを捲ると、三玖がさっきの問題を正解していたのでその事を上杉に伝える。

 

「三玖はさっきの問は正解してたみたいだよ」

 

「そうか。なら昼飯のタイミングにでも聞いてみるか」

 

 いいアイデアだけど………。

 

「…………だが、上杉。お前は何も言うな。僕が訊くね」 

 

「え? まぁ、別に良いがなんでだ?」

 

 キョトンとしたふうに返された。 

 

「だって上杉はコミュニケーション能力皆無でしょ。そのせいでさらに関係が拗れたら面倒でしょうが」

 

 ねぇコミュニケーション下級者(四葉ボイス)と言うと。

 

「うぐっ……心当たりが有りすぎてぐうの音も出ない………あと、四葉の声が心に沁みる」

 

 その場に立ち止まった上杉を置いて、僕は教室の中へと入った。

 

 

 

 

 

ーーー………

 

 

 

 

 

 

 

~お昼。食堂にて~

 

 

「あっ、おーい三玖、やっはろー!」(由比ヶ浜○衣ボイス)

 

「?」

 

 食堂で三玖を発見した僕は話し掛ける。一応僕の後ろには上杉がいる。

 

「ちょっと聞きたいことが………あっ! 抹茶ソーダ? 僕飲んでみたけど好きにはなれなかったな」

 

 三玖の手には独特の味わいのアレが。

 

「美味しいのに」

 

 上杉よ、後ろで逆に味が気になるとかボソッと言うな!

 

「えっとね、今日の朝の問題についてなんだけど」

 

「上杉さん! 白羽さん! お昼一緒に食べませんか?」

 

 うわっ!! ビックリした!!

 振り返ると楽し気な四葉と一花がいた。

 

「な、なんだ四葉。それに一花もか。まったく、四葉。お前はいつも突然なんだよ」 

 

「四葉はいつも元気だね!」

 

「あはは、朝は逃げてすみません! それより見てください! 英語の宿題、全部間違ってました!」

 

 どや~んって感じで見せて来たけど、それ、笑いながら言うものか? 確かに全部間違えるのはある意味すごいけど。

 

「ごめんねー、邪魔しちゃって」

 

「一花も見て貰おうよ」

 

「うーん………パスかな。私たち、ほらバカだし。ね?」

 

「なら尚更勉強しないとダメだよ。大丈夫!」

 

 「いざとなったらこの一花お姉さんに相談するんだぞ!」と一花の声で言ったら声真似禁止! って言われた。残念。

 

「それにさ、高校生活勉強だけってどうなの? もっと青春をエンジョイしようよ!」

 

 例えば恋とか! って言った瞬間後ろから。

 

「恋?」

 

 あらら、上杉のスイッチ入れちゃったよ。 

 

「アレは学業から最も掛け離れた愚かな行為だ。したい奴はすればいい……だがそいつの人生のピークは学生時代となるだろう」

 

 めちゃくちゃ拗らせてるな。

 

「あはは……恋愛したくても相手がいないんですけどね。三玖はどう? 好きな男子とかできた?」

 

「えっ…………い、いないよ」

 

 妙に間が空いた上にほんのりと顔が赤いな。あ、行っちゃった。結局訊けなかったな。

 

「あの表情、姉妹の私には分かります! 三玖は恋をしています」

 

 うん、それは誰でも何かがあると分かると思うけど。恋とは限らないかもしれないぞ?

 

「恋と感ずいたってことは、四葉。君は恋したことがあるんだね?」

 

 耳元でコッソリと訊いたら、それは内緒です! って言われてしまった。信用が足りないのかね。

 

 

 

~教室にて~

 

 次の授業の支度をするために、机の中に手を突っ込めば何かが引っ掛かった。

 なんだと思いながらも取り出せば、二つ折りにされた紙。

 

「手紙? 誰から?」 

 

 開けば差出人の名前が書いてある。 

 

 それはまさかの三玖だった!!

 

 上杉のところに行くのかと思っていたんだが。 

 

『放課後に屋上に来て。ユキトにどうしても伝えたい事がある。どうしてもこの気持ちが抑えられないの』

 

 確かにこの文だと上杉も勘違いするよな。僕も知らなかったら勘違いしそうだよ。

 一通り読み終えた僕は思案する。

 

「この手紙どうしようか?」

 

 ほんとどうしようこれ。誰かに見られたら不味い。もし見られたら、ヒューヒューと囃し立てられること間違いない。男子女子問わず、どこの高校生も恋に関係する話は大好物なのだ。恋愛に飢えた獣に容易に餌を与える訳にはいかない。

 

「白羽君。それなに?」

 

 目ざとく目をつけた女子が指を指す。どうやら早速面白そうな匂いを嗅ぎ取ったらしい。爛々と目を光らせる女子に、その匂いを嗅ぎ取る機能を外して欲しいと言いたくなるのをグッと堪える。

 

「なんでもないよ。ただのゲームの攻略を書いた紙だよ」

 

 焦った表情は見せず、いつも通りの表情で返せば興味を失ったように去っていった。

 

「念のため生徒手帳に挟んでおこう」

 

 ここなら安心だろう。

 

 

 

 

ーーー………

 

 

 

 

 

~放課後~

 

 

 

 一応放課後になってからすぐ屋上に来たがまだ三玖は来ていなかったので、鳩たちににエサでもやって時間を潰す。

 

 

 クルックー

 

 ゴロッポ、ゴロッポ

 

 ウーウー

 

 チュンチュン

 

 

 仲良く食えよー。

 

 

 

 和やかな気持ちでエサを与えていたら、ガチャッと扉の開く音が聞こえてきたのでエサやりをやめ、扉の前に意識を向ける。

 

「もう居たんだね」

 

「大丈夫だよ、そんなに待ってないし、鳩たちにエサやりをしてたからね」

 

 ここら辺の鳩は気性が大人しくて良かった。雀もいたけど……。

 

「さて、気を取り直してだ……あの手紙について、なんだけど……」 

 

「…………食堂で言えたら良かったんだけど、誰にも聞かれたくなかったから。あのね、ずっと言いたかったの………………す………す」

 

 “す”から始まる言葉が恥ずかしいのか、ここで息を整えた三玖は意を決して告げる。

 

「陶 晴賢!」

 

 パチパチと拍手を送りおめでとーと答える。

 

「えっ?」 

 

「だから正解だよー」

 

 よく言えました! 的な感じ。

 

「それ……だけ……?」

 

 それ以上あったら逆に僕が困るわ。

 

「なんとも思わないの……? わざわざそれだけの為にここに呼んだんだよ?」

 

(どういうこと? 普通だったらもっとびっくりすると思ったのに……)

 

 流石に動揺してるね。まぁ、ここまでは想定の範囲だけど。

 

「三玖の要件はあらかた予想がついていたからね。それに三玖は戦国武将が好きなんだろう?」 

 

「!? なっなんでそれを……!」

 

 まさか原作知識ですとは言えないからな……推測ということで納得して貰おう。

 

「理由は3つだ。1つは君の日本史の成績が高かったこと。2つ目は問題の解答を言う為に食堂ではなく人に聞かれない屋上まで呼び出したこと。3つはこの前上杉を通報しようとして警察に電話をかけようとしたでしょ。その時に武田菱が見えたからね。これらをまとめると君は歴史、特に戦国武将に興味があって日本史の点数が高かったが、恥ずかしくて言い出し辛いという推測が完成する。そうだろう? 三玖君?」(工藤新○ボイス) 

 

 我ながらかなり無理矢理まとめたがどうだろうか………。

 

「凄い……ユキトまるで探偵みたい……!!」

 

 あっさり納得してくれた。しかしそのキラキラした目はなんだか罪悪感を感じるな……。

 

「その通りだよ……私実は戦国武将が好きなんだ。誰にも言わないでね?」

 

「約束しよう」

 

「きっかけは四葉から借りたゲーム……野心溢れる武将達に惹かれて沢山本を読んだ……でもクラスの人が好きな人はイケメン俳優やモデルばかりで私は髭のおじさん……」

 

(やっぱり変だと思われるかな……)

 

 なるほど。そういう理由だったか。 

 

「別にいいんじゃないか?」

 

「え?」

 

「自分が好きなものを好きと言って何が悪いの? 趣味なんて人それぞれ十人十色。それが当たり前だし、周りがどうとかなんて気にしてたら生きづらいと思うぞ。人には好きなことを言わせておけ。そんなの気にしたら負けだ。三玖は自分が好きになったその趣味に対して自信と誇りだけ持っていれば良いんだよ。自分の趣味に対してよく知らないくせにあーだこーだ言ってくる奴なんて無視してしまえ。周りの目なんて気にしなくていい。ありのままでいいんだよ。ありのままの自分を殺して、人の目を気にして人生を生きていくなんて酷く勿体無いし、本来たった一度の人生なんだから正直に生きたほうがずっと良い」

 

 目を見開いている三玖に、そうしたら……と続ける。

 

「そうしたら?」

 

「そうしたらほら、胸が軽くなるでしょ!!」

 

「それに何より僕も芸能人とかモデルの人とかよく分からんしね!」

 

 無言になった三玖に、僕は何も言わず微笑む。

 

「………本当にそう思ってくれるの?」

 

 躊躇いがちに聞いてくる三玖に、僕は勢いよく頷く。

 

「あったりめぇよ!」

 

 

 

 

 

「………よかった。じゃあ私よりも戦国武将のこと詳しい?」

 

 

「ふっ……僕を誰だと思っている? 嘘だと思うならなんでも聞いてくるといい」

 

 嘘ですごめんなさい! 分かる問題にして下さい!

 

「じゃあ問題ね! 信長が秀吉を猿って呼んでたけど、この逸話は間違いなの! 本当はなんて呼ばれてた?」

 

「剥げ鼠だ」

 

 関係ないけどド○えもんの場合だと禿げ猫じゃね?

 

 

 

「せっ……正解!」 

 

 それから火がついたように三玖のマシンガントークは続いた。

 

「謙信が女だったって説もあってね!」 

 

「昭和43年に小説家の八切止夫が提唱した説だったね」 

 

「三成は柿を食べなかったんだ」

 

「理由は体を冷やして腹を壊す可能性があったからだね」

 

「信長が頭蓋骨にお酒を入れたとか……」

 

「その頭蓋骨は討ち取った浅井久政と長政そして朝倉義景の頭蓋骨に漆を塗った物」

 

「はぁ……はぁ……驚いた……本当に詳しいんだね」

 

 あー良かった。原作と同じ問題で助かったよ。

 

 ……しかし言うだけあって三玖の知識はかなりのものだ。原作でもそうだったが、その知識さえ活かすことさえ出来れば更なる向上も見込めるな。上杉にも伝えておこう。

 

「これで話は終わりかな? 結構楽しかったよ!」

 

 彼女の隣を通り、帰ろうとすると袖を掴まれた。

 

「あっ! ユキト!」

 

 ん? なんぞや。

 

「その………よかったらまた話してくれる………?」

 

「もちろん! 僕の知ってる限りであれば幾らでも話すよ!」

 

 何故か顔を赤くしていたような気がしたがきっと気のせいだろう。

 

 さて、何はともあれこれで三玖、四葉、五月の3人の信頼を得ることが出来たな。あと2人はどうするかねぇ。

 

「待って!」

 

「今度はなに~?」

 

「これ………」

 

 三玖から差し出されたのは後で飲むつもりだったんだろう、少しぬるくなった抹茶ソーダだった。

 

「友好の印……大丈夫。鼻水なんて入って無いよ………! なんちゃって♪」

 

 

 確かこのエピソードは………ちょっと待ってね。すぐに思い出すから。

 

 目をつぶり、記憶を遡る。………あれか! 

 

「えーっと確か石田三成が大谷吉継の鼻水の入った茶を飲んだ話だっけ?」

 

「ふふっ流石だねはい」

 

 ありがとうとお礼を言い、プルタブを外してそっと口に入れる。

 

「うん。やっぱり何とも言えない味だ。しかし悪くないな」

 

「ふふっ♪」

 

 じゃぁまたねと伝え、雪斗は鳩を身に纏い指をならす。すると鳩は空へと飛んでいくがそこには雪斗の姿はなかった。 代わりに現れたのはマネッチアの花だった。

 

「わぁ! マジックの話は聞いてたけどここまでなんて思わなかったな。また見せてもらお」

 

 花を制服のポケットにしまう。

 

 

 

 日が半分地平線に沈み、夜が少しずつ顔を出す。

 その夕日に照らされている三玖は、心なしか体が軽くなったのを感じながら屋上を出て行った。 

 




良し悪しで言ったら、良しではない。かといって悪しという訳でもない。つまりわろしである。

意味は

良し悪しで言ったら、良くない。かといって悪いと言う訳でもない。つまり、良くはない。


良し(よし)  合格
良し(よろし) ギリギリ合格 
悪し(わろし) ギリギリ不合格
悪し(あし)  不合格

普通に言えや! 一回検索挟めんなよ!



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