五等分の花嫁と七色の奇術師(マジシャン)   作:葉陽

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 読者の皆様には申し訳ありませんが、執筆していくうえでやる気をなくしました。
ですので、作品を更新停止して、「未完」状態にしようと考えています(既に「未完」状態ですが……)
 現時点で第76話まで下書きは書いてあるので、そこまでは投稿します。第77話以降も執筆するかどうかは考えていません。
 作品自体を削除しようかと考えていましたが、弟に更新停止で十分だと思うと言われたので、削除は今のところ考えていません。
 身勝手なことで申し訳ございませんが、ご了承ください。


第71話 家庭教師の危機一発

 今日は家庭教師の日なので姉妹たちのアパートにやってきた。

 

 五月に出迎えられてテーブルを囲めば一花の姿が見当たらない。どうやら仕事らしい。やりたい事を今まで以上に出来ることになったから、これから先もしかしたら出席率が下がっていくかもしれないな。

 

 取り敢えず今はこの六人で勉強を始めていこうか。月末の全国模試まであとわずかだし。少しでも学力向上を目指さないとね。

 

 今回は全国模試に向けて姉妹たちの学力が今どのくらいかを図るため、模擬試験を行っている。

 

「そう言えば五月はバイトの件はどうなってるの?」

 

 一通り終えた様子の五月に話しかける。

 

「うっ」

 

 五月はまだ働いていないのか、体を固めた。

 

「あんたまだ働いてなかったの?」

 

「もう少し考える時間を下さい」

 

 何をそんなに悩む必要があるのだろうか……。

 

「教育の現場に携わる人の伝手がないの?」

 

「いえ、あるにはあるのですが……お金になるとは思えず」

 

「あんたそんなことで悩んでいたの? それくらいだったらアタシたちが稼いであげるから頭下げて来なさいよ」

 

 五月はどうやらお金になるのかが不安だったらしい。

 

「うんうん、折角バイトするんだから将来の為になるのを選んだほうが良いよ」

 

 二乃の言葉を後押しするように言えば、五月は気持ちが付いたのか立ち上がって宣言する。

 

「ありがとうございます! では全国模試が終わったら話をしに行こうと思います!」

 

「お前ら! 口を動かす前に手を動かせ!」

 

 五月が立ち上がった時に机が揺れたせいで上杉がキレた。

 

「月末が全国模試だぞ! 白羽も採点を手伝え!」

 

「へ~い」

 

 今回は僕に非があるので素直に謝り、解答を終えた姉妹たちの採点を始める。

 

 黙々と採点して行けば五月から視線を感じる。

 

「五月、何か気になることでも?」

 

「…いえ、何でもありません。お気になさらず」

 

 ……採点に再び視線を向けたと思わせてでもう一度五月を見れば目が合った.

 

「……」

 

「……」

 

 う~ん。五月が何を求めているのかわからん。取り敢えず笑っとこ。

 

 にっこり。

 

 笑いかければ五月は慌てたように顔を伏せる……うん。僕の笑顔は見たくなかったらしい。悲しいぜ。

 

 罅の入ったガラスのハートを修繕しつつ、三玖と五月の解答を採点していく。

 

 さて、学年末試験を越えた姉妹たちなら、今回の模擬試験でもそれなりの成績を収められるだろう。

 

 ………あれ? 気のせいかな? 正解の数よりも不正解の数の方が多い気がしてきた……。

 

 気のせいで合ってくれと、採点を続けていく中で気のせいではなかったことを実感していく。

 

 上杉の唸る声を聞きながら採点を終える。

 

「嘘だろ…」

 

「……僕は夢の世界にいるのだろうか」

 

 夢かどうかを確かめるために上杉の頬を引っ張れば、上杉は自分の頬っぺたを引っ張れ! 喚く。ふむ……悲しいことにこれは現実だったらしい。

 

 悲しきかな。五月以外がほとんど赤点ぎりぎり…。

 

 今回の模擬試験の内容が学年末試験と比べて難易度が高いと言っても、十分赤点回避できたはず……だったんだけどなぁ。

 

「ふざけるなお前ら……あれか? 学年が上がると脳がリセットされる仕組みなのか?」

 

「なるほど道理で!」

 

 納得しちゃダメだろ。

 

「面目ないです……」

 

「できたと思ったのに…」

 

「言い訳になるかもだけど……ここ最近仕事ばかりであんまり自習できてないのよね」

 

「ほんとだ。五月の点はそこまで下がってない」

 

 アルバイトを始めたからと言ってここまで点数は下がる物だろうか……。時間が取れなくなったのなら休み時間などの隙間時間に勉強すればいい話だし、実際僕もそうしているのだが……。いや流石に求めすぎか。僕は僕、よそはよそ! 自分が出来るからと言って他人に押し付けてはならない――そんな考えを心の奥の方にペタペタ張り付ける。

 

「俺たちも模試勉強をしないといけないっていうのに……じゃあ間違った箇所を順番に確認しておくぞ!」

 

『お願いします!』

 

 上杉と共に大雑把に全体の説明を終えてから個人個人に詳しく説明していく。

 

ピーンポーン

 

 説明を始めててしばらくすれば、来客を示すインターホンの音が部屋に響いた。

 

 五月が誰なのでしょうかと首を傾げながらも、玄関に向かう。

 

「えっ…」

 

 玄関先で扉を開けたと同時に五月の驚いたような声が聞こえた。

 

「失礼するよ」

 

 誰が来たのだろうかと廊下に振り向けばマルオさんが立っていた。

 

「……こんにちは」

 

「もうすぐ全国模試だと聞いてね。彼を紹介しに来た。入りたまえ」

 

 僕の挨拶には一瞥しただけで返してはくれず、マルオさんは本題を話し始めた。 

 

「お邪魔します…申し訳ない突然押しかける形になって」

 

 武田がリビングに入る所で一礼し爽やかなオーラを纏って入ってきた。

 

「え…君って」

 

「どういうこと?」

 

「わ、私何がなんだか…。」

 

 戸惑う姉妹たちをよそにマルオさんは説明するために口を開く。

 

「今日からこの武田君が君たちの新しい家庭教師だ」

 

「!」

 

「はぁ!」

 

「どういうことでしょうか? 説明してください!」

 

 新たな家庭教師として公認された武田。僕は非公認だから口答えできないな。

 

「上杉君、白羽君。先の試験での君たちの功績は大きい…成績不良で手を焼いていた娘たちだが、優秀な同級生に教わる事で一定の効果を生むと君たちは教えてくれた」

 

「それならユキトもフータローも代える必要なんてない」

 

「あ……」

 

 二乃は上杉の点数知ってるからか、小さく呟いた.

 

「それは彼が未だ優秀ならの話だ」

 

 そう言うマルオさんは上杉に鋭い視線を向けた。

 

「え…」

 

「残念だが上杉君はどの科目も点数を落とし順位も落ちた。そして新たに学年1位の座に就いたのが彼だ。家庭教師に相応しいのは彼だろう…」

 

 あれ? 僕は? 僕に関しての話は何かないの? 上杉はしょうがないとしても僕も学年1位なんですけどー!

 

「ふっふっふっふ……ヤッター! 勝ったぞ! 勝ったんだ!」

 

 武田はイエスイエス! と普段は見られないテンション爆上がりな様子。そしてどうしてここまで自分が喜ぶのかその理由を話し始める。

 

 上杉の学年トップの座を奪いに日々勉強してきた武田だが、常に満点だった上杉にとってはどうでもいい存在らしく。誰だお前? とせっかくの喜びに水を差す発言をかました。この前トイレで会ったのに……水に流してしまったのか(個人的激上手ギャグ)……あ、名前聞いてなかったからか。

 そして何度か上杉ちょっかいだしていた理由がこれだったとは……。

 

「そして転校してきて以来上杉君と共に学年トップを取っていた白羽君! 君のお陰で僕は2位から3位になってしまった。この屈辱は君を1位から蹴落として叶えるとしよう」

 

 おう、ガンバレー。心の底から応援してるわー。

 

 温かい目で見守っていれば君は僕のライバルだ! と勝手に宣言されてしまった。クーリングオフ出来るだろうか……。

 

 話しの行き先を見守っていた五月が父の前まで歩み寄れば口を開く。

 

「わかりました…学年で一番優秀な生徒が家庭教師に相応しいというのなら構いません……恐らくそれだけが理由なのではないのでしょうが。しかしそれなら私にも考えがあります。私が…三年生で一番の成績を取ります!」

 

『え゛』

 

「ふむ…いいだろう」

 

 五月の唐突な1位宣言に言葉を失う。

 

 五月を見ればふんす! と鼻息荒くやってやったぜみたいなやりきった感を出していた。

 

 何やってんだ……。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 三玖は慌てて止めに入り満足気な五月を背中に回す。

 

「お父さんに何言われても関係ない…二人は私たちが雇ってるんだもん」

 

 え? 僕君たちに雇われてたの? 初耳なんですけど……。

 

「そうよ! ずっとほったらかしにしてたくせに今になって……」

 

 武田が文句を口にする二乃の言葉を遮る。

 

「いい加減気づいてくれ。上杉君が家庭教師を辞めるということ……それは他ならぬ上杉君のためだ。……君たちのせいだ……君たちが上杉君を凡人にした!」

 

「彼には彼の人生がある……解放してあげたらどうだい?」

 

「それは…」

 

「っ…」

 

 武田の言葉を後押しするように、マルオさんもそう口にすれば、姉妹たちは悔しそうに顔をゆがめる。

 

 部屋に流れる空気は最悪で沈黙が辺りを包むが、少し間をおいて上杉が口を開く。

 

「武田といったか、お前に言うことは間違ってない。だが俺はこの仕事を受けていなかったら凡人にもなれなかった。教科書だけの世界を生きてきた俺には知らなかったんだ。世の中にはこんなバカが居るということも、俺がこんなにバカだってこともな」

 

 上杉はそこで一旦言葉を区切り、正面からマルオさんを見つめる。

 

「俺は白羽と共にこいつらが望む限りは付き合います。解放してくださらなくて結構です」

 

 いいぞもっと言ったれー! この際言いたい事ぶちまけちゃえー!

 

「君がそこまでする義理はないだろう」

 

「義理はありません…ですがこの仕事は俺たちにしかできない自負がある!! こいつらの成績を二度と落とす事はしません。俺の成績が落ちてしまったことに関してご心配おかけしました」

 

 義理なんて口に出したらきりがない。そもそも僕は義理で居るわけではないしね。

 

「俺はなって見せます。そいつに勝ち再び学年一位に……全国模試一位に! そして……」

 

「う、上杉さん!?」

 

「全国は無茶ですって!」

 

「フータローもう少し現実的に…」

 

 まだ何か言いかけていた上杉の口を姉妹全員で押さえる。

 

「あ!? 学年1位だと今まで通り変わらないだろ!」

 

 それについては一理ある。上杉が再び学年1位に返り咲いたとしてもマルオさんが納得するのは難しい気がする。ならば全国で一位になり実力を示す事でこれ以上とやかく言われないようにしようとしたのだろう。

 

 結局納得のいかない上杉を四葉や五月が卸し、全国10位以内でどうだと、少しランクダウン。それでも国内で10位以内となればマルオさんも納得するだろう。

 

 上杉がそこまで目指すというのならば僕も負けてはいられないな。

 

「では僕も宣言しましょう。上杉と共に全国10位以内を目指します。どうせ実力を示さなければ僕は何時まで経っても非正規雇用。ならここではっきりさせましょうか」

 

「白羽君まで……」

 

「さて武田とやら。勝手にライバル宣言したからには、君も宣言するのが筋ってものじゃないか?」

 

「……そうだね。なら僕は「そんな訳でマルオさんはよろしいですか?」…おい! 君は一体何がしたいんだ!」

 

 へっ、ライバル宣言されたときの苛立ちは揶揄うことで帳尻を合わせようではないか。

 

「わかった……もしこの全国模試でそのノルマをクリアできたのなら、改めて君たちが娘たちに相応しいと認めよう…」

 

「ありがとうございます」

 

「五人を教えながらなんて無理に決まってる……」

 

「では私はこれで帰らせてもらおう」

 

 マルオさんは、無謀だと小さく呟く武田を連れて外に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕はポケットからスマホを取り出し、目当ての人物に電話を掛ける。

 

 耳にスマホを当て数コール後、子ども特有の高い声が耳朶を打つ。

 

『もしもし、どうかしましたか? まさかお兄ちゃんが何かやらかしましたか?』

 

「もしもしらいはちゃん? そういう訳ではないんだけどさ、ちょっとお願いがあるんだけど良いかな?」

 

『なんですか?』

 

「かくかくしかじかで上杉を今月末の全国模試まで借りたいんだけど良い? もちろん誕生日の日は返すから」

 

『う~ん、お父さんにも相談したいので返事は保留でもいいですか?』

 

「全然かまわないよ。詳細は上杉に聞いてね」

 

『はい!』

 

『じゃあね~』

 

「じゃあ勉強再開しましょうかね」

 

 きっといい返事を頂けるだろう。そう思いながらいまだに突っ立っている姉妹たちに再開するように話しかける。

 

「……それでなんで俺の対応について話しているのに、俺は蚊帳の外なんだ?」

 

 自身に関係する事なのに、らいはちゃんとの会話に混じれなかった上杉が、にじり寄ってくる。

 

「近い。僕は男に詰め寄られて喜ぶ趣味は無いんだ。性転換して出直してこい」

 

 腕を突っ張って距離を取ろうとしても、上杉はまだ詰め寄ってくるので四葉の背に隠れる。

 

 いけ四葉! 君に決めた!

 

「どうして上杉さんを借りようとするんですか?」

 

 四葉を挟んで上杉を躱す遊びをしていると、四葉が? を浮かべて訊いてきた。

 

「ん? それはね。全国模試1位を目指す以上、上杉には僕と共同生活をしてもらって最高の環境を用意してやろうという粋の良い計らいじゃ。上杉よ平伏せぃ」

 

 控え~、控え~と水戸〇門ムーブをかます。

 

「えっ、いいのか?」

 

「うん。らいはちゃんと勇也さんの許可を取ってくるんだよ」

 

「ああ、捥ぎ取ってくる」

 

「……私たちも頑張るから二人も頑張って」

 

 三玖が小さく握り拳を作りながら、応援してくれる。

 

「さて、互いに全国1位を狙うんだ。どうせなら一緒に頂点取ろうぜ。そしてマルオさんの度肝を抜いてやろう」

 

 目指せ二人でナンバーワン!

 

「そりゃいいな。お互い頑張ろうぜ」

 

 決意も固まれば後は勉強あるのみ。武田が強敵であることに間違いないだろうが、正直眼中にない。彼に興味ないからな。でも全国模試を終えても関わり合いがあるというのならそれなりに迎え入れようじゃないか。

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