前書き…………特に書くことないな。
オリ主side~
いや~昨日は危なかったな。答えられたからよかったが、もし答えられなかったら僕の信用は地に墜ちていただろう。
まさかあんなマニアックな問題を出して来るとは……原作知識様々だ。
太陽は南に差しかかり、空はからりと晴れ渡っている、暑さもこの前とは違い、まだそれほど強くはない。とても清々しい気候だ。
そんな夏の兆しを感じながら歩いていると人影が見えた。
ん? あそこにいるのは上杉じゃないか?
上杉の近くまで走っていき声をかける。
「なにやってんの?」
「おぉ白羽か…ゼェ…ゼェ…今三玖に認めさせる為に追っているんだお前も手伝ってくれ」
ふーん。へー。あの問題に答えられなかったのか。全く手間がかかるな。コイツは。というのを思い切り顔に出す。
「コミュニケーション能力がない俺でも分かるぞ。馬鹿にしてるだろ」
よくお分かりで。
「いや~、上杉ともあろう者があの程度の問題が分からないなんて、ビックリしたな~(棒)」
だから今日の朝にこっそり僕に答えを聞いてきたんだね。
「うるせぇ! マニアックすぎたんだよ! そんなことよりも三玖を捕まえるのを手伝ってくれ」
「やれやれ仕方ないな、コーヒーゼリー1つで手を打とう」(斉木楠○ボイス)
「じゃあ頼んだぞ!」
コーヒーゼリーのところ無視したな。
上杉は走り出して校舎の角を曲がると、ちょうど飛び出してきた女子生徒とぶつかった。
「うぉ!?」
「ワォ! 上杉さん!!」
その生徒は四葉(仮)で、あいつはその胸に顔から飛び込んだ。ナチュラルに痴漢してんじゃねぇ。
ここは通報すべきか? 上杉の自称友人として見逃すわけにはいくまい。だが、被害者である四葉(仮)が許すのなら目を瞑ろう。
「四葉!?」
「余所見は駄目ですよ」
「三玖は通らなかったか?」
「あっちに走っていきました!」
と四葉(仮)は明後日の方向を指差す。
「サンキュー!」
上杉は四葉(仮)の指す方向に走って行く。何をしている。目の前に居るじゃないか。
僕は事情聴取をするべく近づく。
「同行をお願いできますか?}
はい捕まえた。三玖ゲットだぜ!
「えっ!? どうしてわかったの…!」
「おっと逃げるのは駄目だぞ」
まぁ彼女が何処に居るかは原作でも知っていたが、観察眼と意識の波長を見れば使うまでもなくわかる。
「上杉を警察に突き出しますか? YES or NO?」
「ノ、ノーで」
三玖は優しいな。どれ、アメちゃんあげよう。
「あ、ありがとう」
あっ! 上杉が本物の四葉に出会ったな。どうやら四葉は先生からの頼み事をしているようだ。
「すまん……四葉…落ち着いて聞いてくれ……お前のドッペルゲンガーがそこにいる。お前死ぬぞ」
「えええええ死にたくないです~~! 本当だあそこにいる。最期に食べるご飯は何にしよう……」
お前ら落ち着け、この人が三玖だぞ。
「なんだと! 白羽! お前はわかったのか!?」
ドャァ。
「ユキト……今はごめん…」
あっ、逃げられた。まあ、逃がしたんですけども。
「待てー!」
『待ぁてぇぇ~~~』(銭〇警部ボイス)
いっけねとっつあんだ、とセルフツッコミをしてから僕もひっそりと追いかける。〇形警部の姿でな! 本日から変装解禁だ!
『今日という今日は逃がさんぞぉぉぉおお!!』
十手を片手に追いかける。なお、十手は某密林で手に入れた。ここの密林は割となんでもそろってんな。
『まぁぁあああてぇぇええいいい!!!』
「いやお前誰だよ」
すれ違った男子生徒にツッコミを入れられながら走る。
グランドが見える中庭まで走ったところ、倒れている三玖と上杉を発見。
どうやら武将しりとりをしてるみたいだ。僕は正直言って日本史の人間、特に徳川家なんて皆同じような顔に見える。名前も似てるし。なんだよ家康、家光、家茂とか一文字違いじゃないか。頭ぐちゃぐちゃになるわ!
お! 一段落ついたみたいだな。そろそろ声をかけよう。
『えー16時34分ギシャ逮捕』
上杉の手首を掴み、ワッパをかける。
「え?」
事情を吞み込めてない上杉に述べる。
『私の名は銭形幸一。貴様を痴漢で現行犯逮捕する……………ってのは冗談で』
コートのポケットから1枚の白い布を取り出し、全身が一瞬隠れるように動かす、そしてまたしまう。しまう頃には男子の制服に着替えて立つ。
「どうも白羽雪斗です」
三玖と上杉は揃ってほっと息を吐いた。
「はぁ………安心した。………変装まで出来るのかよ。逆に呆れてくるぜ」
「てっきり本当に警察を呼んだのかと思った」
「呼んでない。呼んでない。通報したとしても来るの早すぎでしょ」
上杉にかけた手錠を回収し、上杉を立たせる。
「ごめんね、驚かせて」
「お前コレは本当にやめてくれ。俺社会的に死ぬかと思ったぞ。心臓が破裂するかと思った」
「はわわわわわわ………救急車呼ばなきゃ」
「なにその天然」
「冗談だよ」
「………まぁいい、喉乾いたな。……どっかの誰かさんが買ってくれないかなー」
はいはい分かってますよ。そんなにちらちら見なくても。
「僕がおごらせて頂きます」
自動販売機の前まで移動し、僕はお財布を取り出す。
(あ! アレが売ってるじゃねぇか。これを買うか。白羽がな)
「おい、白羽これにするわ」
「ふふ………了解」
ゴトッと落ちたそれを上杉が取って、ベンチに座っていた三玖に差し出す。
「ほら三玖、これ好きなんだろ? 110円は手痛い出費だが、白羽の奢りだ。もちろん鼻水は入ってない」
「抹茶ソーダ………」
「その様子だとちゃんと調べたみたいだね」
「最終的には僕に意味を聞いてきたんだからね。あっそういえば四葉にも訊いてたね!」
「あぁ、いんたーねっとでも確認したくてな」
(いやぁ、いんたーねっとってのは凄いな)
「四葉? 私が武将好きって四葉に話したの?」
三玖の明るかった表情が変わり、暗くなった。
「言ってないが姉妹にも秘密にする必要あるのか? むしろ誇るべき特技だ」
うんうん
「姉妹だから言えないんだよ。だって、私が五人の中で一番落ちこぼれだから。それに私程度にできることは他の四人もできるに決まってる。五つ子だもん」
三玖は膝を抱えて沈み込んでしまった。
(待てよ……? 三玖の言うことが正しいとすれば……あの結果はもしかして…)
「だからフータローも、ユキトも私なんか諦めて……」
「「それはできない」」
「僕たちは五人の家庭教師だ。お前達五人に勉強をさせる。それが僕たちの役目であり、仕事だ。お前達には五人揃って笑顔で卒業してもらう。それが僕たちの最終目標だ」
「………勝手だね。でも無理だよ、この前のテストでわかったでしょ。五人合わせて100点だよ」
「それについては自信がある。三玖の言葉で確信したよ。なぁ上杉」
「あ、あぁ、自分に出来ることは他の4人にも出来る。なら、言い換えれば他の4人に出来ることは三玖にも出来る、ってことだろ?」
「yes!」
上杉も分かってたな! 以心伝心だ!
「そ、それは……そうかもしれないけど……」
まだ暗い表情をしているようので僕は三玖に実力テストの分析表を見せる。
「ほら、何かに気付かない?」
「……………あ。正解した問題が1問も被ってない………!」
「そゆこと。1人が出来ることは全員出来る。 一花も、二乃も、四葉も、五月も…………そして勿論三玖も! 皆には100点の潜在能力があるって事だよ」
「何それ。屁理屈……本当に…五つ子を過信しすぎ」
「でも信じたくなる屁理屈でしょ!」
三玖は抹茶ソーダを飲みながらクスッと笑った。
~翌日、図書室にて~
「ライスはLじゃなくてRだ! Liceはシラミだぞ! それにここ! be動詞が抜けてる!!」
「あわわわわ………」
翌日、図書室で上杉に四葉がしごかれている隣で僕は暇なので本の上下逆さまのやつを直していた。こういうのって目につくと気になるんだよね~。
「四葉、怒られてるのに何でニコニコしてるんだ?」
「家庭教師の日でもないのに上杉さんと白羽さんが宿題を見てくれてるのが嬉しくて」
「と言っても、四葉の宿題の面倒が上杉だけで余裕で出来ちゃってるから、僕やることないんだよね~。上杉でもからかおうかな~」
「なんでだよ!」
早く三玖来ないかな~? 五月も誘ったんだけど用事があるみたいなんだよね。
「一応みんなに声は掛けたんですけどね………あ! 白羽さん三玖が来ましたよ!」
お!! やっと来たか! 待ち過ぎて本棚2つ分のチェックが終わっちゃったよ。
「三玖、来てくれたのか……………って、あれ?」
声を掛ける上杉を盛大にスルーすると、三玖は僕の前に立つ。
「ユキトに言われてほんのちょっとだけ考えちゃった。私にも出来るんじゃないかって…………だから、責任取ってよね」
「勿論!」
上杉もあの場に居たのに無視するんだ……。
「フータローもありがとね!」
「ああ、どういたしまして」
うん良かった良かった。
「もしかして三玖の好きな人って…………白羽さん?」
「!…………ないない」
「?」
「じゃあ、上杉さん?」
「違うよ」
四葉と何の話してるのかはよく分からんが、僕がいるせいでズレが起きてしまったな。原作知識は使えなくなるかもしれない。気をつけないと、ただでさえ原作知識が薄れてきているというのに。
後書きも特にないかな。