艦これ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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天龍さんは挫けない

 

 

 

 

 俺の名は天龍。天龍型軽巡洋艦の一番艦だ。ここでは主に第二艦隊の旗艦を務めている。

 相棒は同型艦の龍田だが、基本的にあいつと俺は別行動。俺は第二艦隊、あいつは第三艦隊を率いていることが多いな。

 

 ……さて、簡単にだが自己紹介も終わったし、ちょっと俺の話を聞いてくれ。これは、この鎮守府で実際に起きた……起きている、不思議な出来事だ。俺の胃に多大なダメージを与え続けていることでもあるんだが……まあ、簡単な愚痴みたいなもんだ。

 ……いいか?

 

「ああ、かまわん」

「ありがとよ」

 

 私の前に座って話を聞いてくれているのは、私と同じ鎮守府に所属している戦艦『長門』。戦艦としては最強に近く、この鎮守府でも第一艦隊に所属している艦の一隻だ。

 

「……実は俺、この鎮守府に必要ないんじゃないかって思ってよ……」

「お前にいったい何があった」

 

 長門が俺に驚愕の視線を向けてくる。まあ、初めてこの鎮守府に来た時の俺の事を知っていれば、そんな反応が返ってきても何もおかしいことはない。

 だが、今の俺にはこういう風になっていても仕方のない理由がちゃんとある。

 

「実はな……プラズマ居るだろ……?」

「皆まで言うな」

 

 どうやら名前を出しただけで長門にはわかってもらえたらしい。と言うか、長門も同じように思ったことがあるんじゃないだろうか。

 

「……まあ、確かにあれは異常だ。それについて議論する余地すらない」

 

 私がそう思った原因について、長門は半ば諦めたように呟いた。

 

 ───プラズマ。正式名称は、『駆逐艦プラズマ改二』。俺の所属する艦隊でもっとも古く、そして最も強い駆逐艦だ。

 プラズマは色々とあって現在の形に落ち着いているが、元々の名を『(いなずま)』と言う……らしい。俺がこの鎮守府に来たときには既にプラズマとなっていたからその頃の事はよく知らないんだが、なんでも初めの頃に提督に色々と迷惑をかけていたそうだ。

 それで、電だった頃のプラズマは提督に釣り合いがとれるようにと頑張った結果……今のようになったそうだ。

 だからって、あれは駆逐艦のスペックじゃないだろ……。

 

「まあ、確かにその通りではあるが、実際にプラズマはあれだけの能力を持っているんだ」

「見たから知ってる」

 

 ……まあ、実際に一応見はした。だが、正直なところあり得ないと言う感想しか持てなかった事を覚えている。なにしろ、プラズマは入ってきたばかりでまだまだ弱かった頃の俺と龍田をつれて北方海域の奥にまで進み、正規空母二隻と戦艦一隻を各一撃で沈めて見せるほどだしな。実力についての不安はないが、実力についての問題ならいくらでもある。

 と言うか、俺が自分の存在価値を探しているのもプラズマの実力が原因だしな。

 駆逐艦の燃費をさらに向上させ、潜水艦並の低コストを実現。火力は駆逐艦どころか戦艦と比べてもちょっと意味がよくわからない領域で、雷装は重雷装巡洋艦を余裕で凌駕する。流石に艦載機は載せられないが、対空自体は最大まで近代化改装を繰り返した正規空母に烈風を四つ積んだそれより高い。装甲も非常に頑丈で、耐久値はもうあり得ないレベル。そして何より酷いのが、あの回避能力。探照灯を持っているのに一度も相手からの攻撃を受けず、一方的に相手を殲滅する。

 

「……もうさ、この鎮守府ってプラズマ一人居ればそれで回せるんじゃないかって思うとよ……」

「ああ、それはよくわかる。だが、数と言うのは重要だそうだ。少なくとも、第四艦隊まで編成した後にさらに一個艦隊分くらいは無いと、有事に即応できないから……だそうだ」

「……聞いたのか?」

「提督から直接な。深海棲艦を倒すために必要な資材集め用遠征係を三つと、主力の殲滅艦隊一つ。鎮守府の防衛に空母と戦艦と重巡軽巡駆逐潜水が一つずつの艦隊が一つ、できれば二つあって最低限の安心が得られる……だそうだ」

「……最近遠征が多いとは思ってたけどよ。そう言うことなのか?」

「さてな。世界に名だたるビッグ7とは言え、全てを知っているわけではない。ましてやあの提督の考えなど読めるわけもない」

 

 長門はくつくつと笑いながら燃料を飲む。……やっぱ戦艦の補給量はすげえよな。どこにそんな入ってんだか。

 

「……まあ、そんなわけだ。もう本当にどうしていいかわからなくてな」

「まあ、気にすることはない。お前にはお前のやるべき事、やれることがあるだろう? いつかプラズマも見返してやればいいさ」

「……流石は第一艦隊、慣れてるな」

「……言うな。私も通った道だ」

「……ああ、なるほど」

 

 どうやら長門は長門で俺と同じようなことを考えたことがあるみたいだ。戦艦である長門は自分の役割を全うする道を選べたみたいだが……俺はどうするかね……。

 

 

 

 

 

「中々面白そうなことを話しているのですね。プラズマも混ぜてほしいのです」

 

 

 

 

 

 時が止まったような気がした。少なくとも、俺の呼吸は間違いなく何秒か止まっていたことだろう。

 後ろを振り向きたくないと言う気持ちを必死に押さえ、ゆっくりと後ろを向いていく。

 そして目に入るのは、深海のような深蒼のセーラー服を着た笑顔の少女。駆逐艦らしい小さな肢体に、不釣り合いなほどに優しげな笑顔を見せている。

 

 そう、これが『プラズマ』。最古にして最高にして最強。その強さは無類無双。感情の無い深海棲艦ですら、プラズマを視界に納めれば途端に逃げ出すことすらある程の実力を持つと言われている……駆逐艦だ。

 ある時は提督が言った何気ない一言から単独で戦艦棲姫の首を捻り折り、ある時は来たばかりで経験の少ない艦娘を最低限一人前と呼べる程度にまで育て上げ、またある時は資材を使って様々な装備を組み上げ、またある時には料理を作って振る舞う。

 苦手なことなど何もなく、できないことも殆ど無い。どうしても無理なのは開幕雷撃と艦載機による攻撃だと言うが、それまでできたら俺はプラズマを駆逐艦だとは認めない。今でさえ駆逐艦離れしているのに、そこまでぶっ飛んだらもう駆逐艦ではなくて航空駆逐戦艦とか言うごちゃ混ぜな新しい艦種でも作らなくちゃならなくなる。

 

 そんなことが頭の中をぐるぐると回っていくが、身体は言うことを聞こうとしない。身体は勝手にガタガタと震え、意味の無い途切れ途切れの声が口から溢れ、視界が滲んでいく。

 

「天龍さん、いったいどうしたのですか? そんなに震えて顔を青くして……寒いのですか?」

 

 プラズマの手が俺の首筋に触れ───俺は背筋を凍らせた。

 駆逐艦は基本的に見た目が子供だ。その見た目の通りに体温は高く、手先足先まで温かい。

 しかし、プラズマの手は冷えきっていた。まるで氷でできているかのような、死体のような……そんなイメージが俺の脳裏によぎる。

 

「……熱は無いようですね。ですが、体調が悪いのなら司令官に言ってお休みをした方がいいのです。無理をして多くの戦果を得る代わりに沈んでしまうよりも、無理せず小さな戦果を重ねる方が最後に得るものはずっと大きいですからね」

「あ……ああ……わかった」

「天龍さんは物分かりがいいのですね」

 

 にこにこと笑いながら、プラズマは私の頭を撫でた。

 

「……それで、さっきまで長門さんとなんの話をしてたのですか? なにやらプラズマの名前が出てきていたようですが」

 

 どうやらプラズマは忘れてはくれなかったようだ。俺は必死になって誤魔化すための策を考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 艦娘紹介

 

 天龍改

 

 天龍型一番艦にして、この鎮守府では大概第二艦隊の旗艦をやっている。

 多くの駆逐艦を率いた結果、駆逐艦に懐かれやすくなっている。駆逐艦娘から見た立ち位置的には『頼りになるお姉さん』と言うところ。なお、龍田は『優しそうだけどちょっと怖いお姉さん』である。

 基本的には直情型で気も強く、口調も乱暴。しかし非常に気配り上手で面倒見が良いため、第二艦隊に新入りの艦娘が入って遠征などに出掛ける姿を見て『天龍保育園』等と言われることも多い。

 ちなみに、現在のLvは85。このLvの高さも駆逐艦娘に懐かれる理由のひとつであることは間違いない。

 

 今作では主にツッコミ担当。時折凄まじい素ボケをかますこともあるが、基本的にはツッコミである。

 

 

 

 

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