口から大量の砂糖を吐かされると言う酷い目に遭いましたが、私はまだ諦めません。提督の秘密を掴むまでは!絶対にやめられないのです!
そう言うわけで、金剛さんの次に取材をしに来たのは危険度の低そうな……正確に言えば『最悪の状況になっても命の危険はないだろう』と思える人である扶桑さん。この人ならきっと色々教えてくれると思います!
「そう言うわけで、取材させてもらえませんか?」
「構わないわ」
扶桑さんはにっこりと笑いながらお茶を飲んでいる。
戦艦だった頃の扶桑さんはともかく、航空戦艦になった扶桑さんはこうしてのんびりしている姿を見ることが多い。縁側に座って湯飲みでお茶を楽しみながら日向ぼっこをしているその姿は、なんと言うか……『暇な時間をもて余しているお婆ちゃん』って言う感じがしてしまう。
「……今、私のことを『お婆ちゃんみたいな感じがする』って思ったでしょう?」
一瞬呼吸が止まりかけたのを無理矢理に平静の状態に戻し、無理矢理に張り付けた笑みを崩さないように表情を固定する。
ここで動揺を表に出してしまったら……最悪、殺される!
思い出すのは鳳翔さんのこと。禁句に当たる言葉を言われ、数々の狂気的な性能を持つ艦載機を操って一方的に長門さんを……ヒィ!
なんですかあの艦載機!『天界シリーズ』と呼ばれてるあれには確か甲乙丙丁四種類があって、それぞれ対空・雷撃・爆装・偵察の4つに特化している。
『特化している』とは言ってもその他の3つの能力値に+8、命中に+2と言うあり得ないほどの強化値を持つ装備。それとほぼ同等と言われるような装備を扶桑さんは所有している。
……扶桑さんの爆撃は非常に痛い。深海棲艦レ級相手に制空権を確保した挙げ句に重巡洋艦フラグシップ以下を拡散弾頭で四体まとめて粉々にしたとか、相手の主砲から撃たれた弾に機銃を撃ち込んで粉々にしたとか、鳳翔さんの武勇伝に負けないものを持っている。
「ふふふ……大丈夫よ。私は鳳翔さんほど年齢に対しての思い入れは無いから」
「そ……そうですか……あははは…………」
「ええ。……けど」
瞬きの間に、にっこり笑顔を全く崩さず私の眼前まで近付いてきた扶桑さんが暗く笑う。
「とある王は言いました。『目には目を。歯には歯を』。暴言で傷付けられた心の痛みには、同じだけの痛みを与えましょう」
「……あの、なんだか嫌な予感がするんですが」
「気のせいよ」
私の声は震えていなかっただろうか。ちょっと不安になりながらもそう返すと、扶桑さんはあっさりと引いていった。
……金剛さんと言い扶桑さんと言い、なんだか凄く二面性が激しいような気がするのは私だけ?
「それよりも、何を聞きたいのかしら?」
その声で私は現実に引き戻される。私の前には元の位置に戻って湯飲みでお茶を啜る扶桑さんが私をじっくりと眺めているだけで、幻視してしまったような無数の水上偵察爆撃機が追いかけてくるような光景はどこにも存在しなかった。
「あ……えっと、それじゃあまず、提督ってどう言う方なんでしょう?」
内心で慌てながらもそれを表には出さずに聞いた……つもりなのだけれど、扶桑さんの笑みが深まったところを見ると何となくバレてしまっているような気がしてならない。
しかし、扶桑さんは気付いていないかのように悩んだように見せ、それから口を開いた。
「そうね……提督は……とても優しくて、とても面倒臭がりで、とても魅力的で、とても強くて、そしてとても酷い人よ」
「……また『酷い人』ですか」
「金剛からも聞いたのね? そう、あの人……提督はとても酷い人なの。知っているのに知らないふりをしたり、釣り上げたお魚に餌をあげなかったりね」
「それはつまり、扶桑さんもまた……」
「ふふふっ……そこは、ひ・み・つ」
悪戯っぽく右手の人差し指を唇の前に立ててウインクをする扶桑さん。その頬は少しだけ朱色に染まっているように見えたけれど、それを指摘するようなことはしない。私はまだまだ死にたくはないからね。
必要ないことは言わない。知っていても知らないことにして押し通す。知っていること自体が私の危険に繋がるようなこともあるのだから、情報をつかんでおきながらもそれを黙っておくと言うのはまた一つの『必要なこと』だ。
いやぁ、それにしてもまさか提督のことを聞いて回るだけの簡単な取材だったはずなのに、どうしてこんなに疲れるんですかね?
「内容が内容だもの。まさか『提督の顔も名前も声も知らないので教えてほしい』なんて、プラズマには言えないものね?」
「……なんの話です?」
私の返しに扶桑さんはくすくすと心底面白そうに笑い出す。いったいどうしてその事を知っているのか……は、あまり考えなくてもわかる。
噂があった。そして情報を集めて新聞にする事が好きな私が動いた。しかし私が提督の事を知っているのならわざわざこうして金剛さんや扶桑さんに取材をしたりしないで自分の知っていることを直接書くと言う行動に出ると言うのは、私の事を少し知っている人なら簡単に予想できることのはずだ。
そして、扶桑さんのことを私は少し知っていた。その性格から無下に扱われることはないと予想できる程度には。
ならば、扶桑さんが私の行動を知っていたとしてもおかしくはない。世界の誰か一人が知っていると言うことは、世界の誰もが知っている可能性があるということだ。それを忘れてしまってはいけない。
……無駄なことを急いで考えれば落ち着く。それを実践した結果私は落ち着いていた。
気付かれないように息を吸って、大きくゆっくりと吐き出す。
「安心して。プラズマにも誰にも言う気は無いわ」
「ですから、なんの話ですか」
ここで認めることはできない。絶対に。認めたりその素振りが少しでも見えてしまえば、私はいつでもどこでも存在しうるプラズマの手によって『解体』されてしまう。
あるいは長門さんのように来る日も来る日も絶対に勝てない相手達とひたすらに演習を繰り返され、耐えられないほどに痛め付けられてしまうかもしれない。
「私は仲間を傷つけたりはしないわ。後味が悪いもの」
「……ソウデスカ」
にっこりと言う笑顔と共に、まるで私の考えたことがわかっていたかのように答えを返してくれました。もしかしたら扶桑さんは、誰かの心を読むことができるのかもしれない。
「ちなみに私がさっきからやっているのは、別に心を読んでいる訳じゃなくて、貴女の顔色や呼吸の頻度や深さ、全身の筋肉の入り方や声の震え等から予想できる……と言うのを実行しているだけよ」
「読まれてる側からすればどっちにしろ似たようなものなんですけど……」
「実際に読んでいるのかいないのか……って言うのは大きな違いだと思うわ」
言葉面だけと実際やっていることにはあまり大きな違いに関わりはないようです。いったい扶桑さんはどこでこんなことをできるように?
「深海棲艦と同じような方法よ。プラズマがやってみたいって言い出して、それで私が色々やってみてできるようになったの」
「深海棲艦と同じって……大丈夫なんですかそれ?」
「不便はないわ」
扶桑さんはさらに笑みを深める。まあ、敵の技術だろうがなんだろうが、使えるなら使っておいた方がいいですもんね。
そう考えることで私は一応納得することに成功した。
「えっと、それでは次の質問をしても……」
「ええ、どうぞ」
深淵にまで引きずり込まれそうな物ではなく、太陽の光が降り注ぐ中に一輪だけ咲いた美しい花のような笑みを浮かべ、扶桑さんは私に続きを促した。
装備紹介
天界
鳳翔・天の所有する艦載機。甲乙丙丁の四種がある。今のところ開発不可能。鳳翔・天の専用装備。
天界・甲
対空+45
雷装+8
爆装+8
索敵+8
命中+2
天界・乙
対空+8
雷装+45
爆装+8
索敵+8
対潜+8
命中+2
天界・丙
対空+8
雷装+8
爆装+45
索敵+8
対潜+8
命中+2
天界・丁
対空+8
雷装+8
爆装+8
索敵+45
命中+3
これらの艦載機を、鳳翔さんは35・25・20・10の合計90機搭載している。頭おかしいね。