最近なんだか記憶が消えることが多いような気がしますが、今のところ困ってはいないのでとりあえず提督の事についての取材を続けようと思う。
そのためには、まず相手を見つける事が必要。長門さんと陸奥さんにやったように追いかけ回したりはしないつもりだけれど……まあ、逃げられてしまうなら仕方がない。追いかけよう。
……ただ、次の相手は天龍さん。つまり軽巡洋艦だ。相手がいくらかなり古いとは言っても、どちらかと言えば火力を優先した結果として大口径の砲の反動に耐えられるように船体を大きくした重巡洋艦と、どちらかと言えば速度と雷撃力を重視した軽巡洋艦では速力が違いすぎる。要求されているものが違うのだからそうなるのは当たり前だけれど、それでも少し悔しいと思わないでもない。
まあ、何より嫌なのは、私の取材を受けてもらえない事なんですけど。
と言うわけで、天龍さんを探しに行きましょう!ちょっとタイミングを間違えると天龍さんも龍田さんも遠征で駆逐艦の皆さんを率いて行ってしまいますからね。
……ただ、できれば今回のタイミングは逃したくはありません。龍田さんが遠征中で、駆逐艦の皆さんは鎮守府近海でアップ中。天龍さんだけがこうして鎮守府に残っていて邪魔されない状況なんて、これから先に何度あるかわからない。このチャンスは掴まないと!
さて、それじゃあ天龍さんを探しに───
「お、居た居た。青葉ー」
「天龍さんじゃないですか、ちょうどいいところに来てくださいました」
「プラズマから『青葉が俺を探してる』って聞いてよ。なんなんだ?」
どうやらプラズマさんが手を回しておいてくれたようです。いったいどうやって次のターゲットを知ったのか……ああ、もしかしたら記憶にない長門さんと陸奥さんの取材の内容を見ていたのかもしれない。それならわかる。
そうだとするなら、メモに書く内容をぼやかしておいてよかった。はっきり書いていたら、今ごろ記憶だけじゃなくて命まで失っていそうだ。
「……おい、どうした?」
「あ、いえいえ、気にしないで大丈夫ですよ? えっと……こんなところで話すのもなんですし、食堂で何か食べながらでも……」
私がそう言うと、天龍さんは少し残念そうな表情を浮かべた。
「あー、すまん。今日の昼に駆逐艦のちび共と約束があってな。茶の一杯くらいしか付き合えないぞ」
「全然構いません!ささ、行きましょ行きましょ!」
「おいおい、そんな急がなくても……」
「急がなくてもいいけど急いでもいい時には急ぐものなんです!」
「……そうか。俺は休める時には休む派だからあんまり合わないな」
「……天龍さんって『休ませるな!死ぬまで戦わせろよ!』って提督に言ったことがあるって聞いたんですけど……」
「……プラズマか? それとも扶桑か? ……まあいい。確かに言ったが、その後に龍田と一緒に本当に死ぬほど演習させられてな。『10000000連戦しても疲れない丈夫な身体と、プラズマの全力砲撃を受けても傷付かない頑丈な装甲と、特殊装甲『シルバースキン』を抜ける絶大な火力と雷撃力と、全ての敵艦載機と敵本体にクリティカルで攻撃を当て続けられる精度と、敵に絶対に不意打ちを受けないようにする偵察力と、敵潜水艦を夜戦で一撃必殺できる対潜能力を全て併せ持つようになったら好きにしていい』って言われてな……刻んだ敗北はもう何回になったか覚えてねえよ。提督+プラズマ+扶桑+鳳翔+加賀+金剛のフルメンバー相手とか、
「……うわぁ……」
提督はともかくとして、やっぱり勝てないんだ……いや、ある意味じゃそれも当たり前だけど。プラズマさんは駆逐艦だけど先攻確定で三体に火力250越えの威力で攻撃してくるし、鳳翔さんも加賀さんも扶桑さんも開幕航空攻撃してくるし、金剛さんは戦艦だけあって固くて強いし……誰が相手でも軽巡洋艦二隻で勝てる相手じゃない。
当時の事を思い出しているのか虚ろな目をしている天龍さんの手を引いて、近くにあった間宮さんの甘味所に入る。
適当に席を取って天龍さんを座らせて、私は天龍さんと向き合うように座る。
「……あ、お茶って言ってましたけどなに頼みます? 玄米茶? 煎茶? ほうじ茶? 烏龍茶? 緑茶?」
「……そば茶で」
「私も天龍ちゃんと同じのかな~」
「はいわかりました。すみませーん、そば茶二つと冷たい烏龍茶を一つお願いしまーす」
間宮さんに頼んで持ってきてもらい、全員が口を潤したところで話を始める。
「えっと、今回天龍さんに聞きたいことはですね……その、恥ずかしながら提督についての話なんですよね」
「ほぉ……そりゃまたなんでだ?」
「ご存じだとは思いますが、今この鎮守府の中で提督の存在や顔を知らない艦娘が増えています。ですから、できれば提督についてこの鎮守府の中に広めておきたいと思いまして……ご協力いただけませんか?」
私がそう言うと、天龍さんは面倒臭げにテーブルに肘をついた。
「……あのさぁ。そう言うのは普通は提督に直接持っていかないか?」
「行きましたけどどこにもいなかったんです」
「どこにもって……ああ、そう言えば提督って生身で光学ステルスかけてることが多いから慣れてないと見えないんだったか」
「え、なにそれこわい」
いやいや艦娘だろうが人間だろうが普通に考えて光学ステルスとか無理に決まってる。何がどうなってるのか。
「……まあ、慣れてないなら見付けられなかったのはしょうがねえか……よし、大体のことなら答えるぜ」
「ありがとうございます」
メモを開き、それから天龍さんへの質問をいくつか見繕う。
「それでは……天龍さんにとって提督はどんな方ですか?」
「あー……面倒臭がりで優しくて、乱暴だが妙なところでマメで、眠たがりで騒がしいのが嫌いだが賑やかなのは嫌いじゃない奴だな。個人的には色々と感謝してるよ」
「天龍ちゃんってばよく見てるわよね~?」
「えっと……全部本当のことだと判断しまして……感謝してるとはいったいどのような?」
「それについてはオフレコだ。流石の俺でもちょいとばかり恥ずかしい」
小さなポットと湯飲み茶碗で出てきたそば茶に追加でお湯を入れ、天龍さんはくつくつと笑って言った。隣に座っている龍田さんもそば茶を啜るだけで沈黙を保っている。
「まあ、少なくとも今じゃあ大分落ち着いたが……俺や龍田にもまだまだ青臭い頃があったってことだよ」
「詳しい内容は……」
「オフレコだ。龍田なら知ってるだろうが、あいつが一番気にしてるから聞いてやるなよ」
「……まあ、別にいいですけどね。それじゃあ、天龍さんって提督の事が好きだったりするんですか?」
「ド直球だなオイ……好きだよ。感謝してるし、色々恩もあるし、少なくとも嫌いな点は見つからねえな。金剛やプラズマみたく愛してる訳じゃねえが、とりあえず言えるのは間違いなく好きではあるってことか」
……正直に言って驚きました。天龍さんってこう言う話が苦手って言うイメージがあったんですが、実際にはそんなことは全然なかったみたいです。
それどころか色々と冷静に考えて言葉を返してくるその姿は、よく『脳筋』と言われていそうな天龍さんのイメージを大きく逸脱しています。提督云々と言う話は、もしかしたらこの状況にも多少の関係があるんじゃないかと思います。話を聞く限り、その可能性は極めて高そうですしね。
「それじゃあ、天龍さんはこれから御用事があるようなのでこの辺りで切り上げておきますね」
「お、急かしちまったようで悪いな」
「いえいえ、色々聞かせてもらいましたし、構わないですよ。それと、ここの支払いは任せてください。このくらいなら経費で落ちますからね」
「経費って……どこから出る経費だよ?」
「鎮守府新聞局情報収集部からですけど」
「あ、青葉の新聞って鎮守府公式だったのか」
「そうじゃなかったらもっとあることないこと面白おかしく書いてますって。趣味と仕事は一緒にしてもいいですけど、仕事でふざけて遊ぶのはやっちゃダメでしょ」
「同感だな」
天龍さんは温くなったそば茶を啜る。態度はあんなに乱暴なのに、一滴も溢してないし駆逐艦の皆さんとの約束のために本当に間宮さんの店でお茶だけにするなんて……思っていたよりずっと凄い方でした。
お会計で想定より大分安いお金を払って店を出る。
「おーい、青葉」
その時、天龍さんから声をかけられた。
「俺が聞いたところだと、扶桑と金剛、長門、陸奥が終わってて、俺達が今終わったからこれから多分加賀のところに行くんだろうが……気ぃつけろよ。聞き方を間違えると首から上が消し飛ぶぜ」
それは忠告だった。なるほど、確かに天龍さんはとても優しい。駆逐艦の皆さんから好かれているのもよくわかる話です。
私は右手の親指を上に向けたまま、拳を形作る。
ここまで来たんだ。引いてたまるものか!
装備紹介
探照灯(?)
那珂が持つ探照灯のようななにか。探照灯としても使えるが、本分はある程度集束した時にレーザーとして使うことができる点である。
そのレーザーが相手に当たれば僅かにダメージとなり、誰かが行動する度に相手の耐久は僅かに削れていく。それは時間が経てば経つほどに大きくなって行く。
なお、これが照射されているときに那珂に攻撃をしようとした場合、砲の内側で弾薬が誤爆して自爆する。航空機なら燃料に直接火が点く。死にます。
火力+5
対空+10
索敵+18
これもう探照灯じゃないね。探照灯と言う名前がついているだけの別物だね。うん。
※龍田さんがいるように見えるのは幻覚です?
※龍田さんがいるように見えるのは幻覚です? (重要なことなので二回(ry)