艦これ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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青葉さんは省みない その5

 

 

 

 

 走る走る走る走る。必死に走って必死に逃げて、なんとか命だけは助かろうと逃げる。

 そんな私を嘲笑うかのように、プロペラ機特有の爆音を響かせながら私の目の前に現れた。

 私のいる場所は十字路の中心部。前後左右から魚雷を装備した『天嵐・乙型』が。上空からは爆弾を抱えた『天嵐・丙型』が迫り、まさに絶体絶命と言える。

 

 ……って言うか、これは間違いなく詰んでませんか?

 まあ、私はこんなところで死ぬ気は無いので片手に7.7mm機銃を掴んで弾丸をばらまきながら二番目に数の多い場所に向けて突き進む。理由は、普通なら一番進みにくい場所だからだ。

 一番多い場所なら罠やら待ち伏せなども低いと思って進むかもしれないし、一番少ない場所は馬鹿なら確実にそちらに逃げる。残り二つは気分の問題なのだけれど、さっき言ったように基本的に逃げる者は少ない方に逃げたがるもの。だからここはあえて多い方に逃げていくというわけだ。

 私の撃ったいくつかの弾丸が『天嵐・甲型』の機銃に叩き落とされていくが、これでも私は重巡洋艦。たかが機銃程度で落とされるほど柔にはできていない。雷撃と爆弾にだけ気を付けていれば、逃げ切る事が

 

「捕まえた」

 

 できませんでした。加賀さん本当に正規空母ですか? 重巡洋艦である私に追い付くとか、空母の出せる速度じゃないと思うんですけどね?

 ……と言うか、なんと言うかあまりに必死すぎじゃ……

 

「貴女には三つの選択肢が用意されているわ。

 一つ。とりあえず今この場で跡形もなくなるほど壊されて死ぬ。

 一つ。見た光景を忘れるまで頭に衝撃を受け続ける。

 一つ。全てを忘れ、幼児に退行したくなる程の辱しめを受ける。

 ……選びなさい」

「どれもこれも私の被害が大きすぎるような気がするんですけど!?」

「問答無用です。その場で頭を踏み砕かれなかっただけ幸運だと思いなさい」

「加賀さん怖い!さっきはあんなに可愛か……あ」

 

 加賀さんの頬の赤みが更に増し、私の頭を掴む手に力が込められる。ちょっと……と言うか、かなりヤバい。死んじゃう死んじゃうほんとに死んじゃう!

 

 ……どうしてこうなったかと言いますと、それはほんの少し時間を巻き戻し、私が加賀さんを探しているその時間まで遡ることになります。

 加賀さんのことを探していた私は、赤城さんにお菓子をあげて居場所を聞き出して、プラズマさんの居るだろうこの執務室までやって来ていた。

 そこで崩れていた服装を最低限整えて……と言っても、元々が歩いて少し崩れたくらいなので大した時間はかからない。服と息を整えれば、それだけで準備は完了。

 ゆっくりと扉を開けて───

 

「んぅ……」

「ふふふ……♪ 加賀さんはやっぱり甘えん坊さんなのですね」

「……駄目……でしょうか?」

「駄目ではないですよ?」

 

 そこには、普段の彼女の姿からは考えられないような状況が広がっていた。

 ……だって、普通考えないでしょう? あの加賀さんが、まるで小さな子供のようにプラズマさんに膝枕をしてもらい、しかも頭を撫でてもらってふにゃりと蕩けた笑みを浮かべているだなんて……。

 ちなみに、加賀さんがしてもらっている膝枕は耳掃除をするときにしてもらうような方向が90゜ずれるものではなく、相手の顔を見ようとすると上下が逆になるように見える形です。あの形の方が頭の座りがいいんですよね。プラズマさんはよくわかっています。

 

「……プラズマさんは、いい匂いがしますね……」

「そうですか? プラズマにはよくわからないのですが……」

 

 あ、プラズマさんの膝の上で器用にくるりとうつ伏せになった加賀さんがプラズマさんに抱きつきました。お腹に鼻を埋めて匂いを嗅いでいるようです。

 

「くふふ……くすぐったいのです」

 

 それでもプラズマさんは優しげな笑顔を浮かべたまま加賀さんの髪を指で梳くようにして撫でている。それこそ、本当に甘えん坊の娘を甘やかす母親のように。

 

「……今日はこのまま、眠ってもいいですか?」

「お好きにどうぞ。ちゃんと起きる時まで一緒に居てあげるのです。……安心していいですよ?」

「……はい」

 

 加賀さんはまたプラズマさんに後頭部を預けるようにくるりと身体を半回転させ、それからゆるりと両目を閉じ……ようとして、私と目が合った。

 

「あ」

「あ」

 

 暫く沈黙が続く。なんと言うか、凄く……気まずいです。

 

「し……失礼しました~…………」

 

 ゆっくりと扉を閉めて、回れ右。天龍さんが言ってた事って、これかぁ……もうちょっと詳しく知りたかったなー……と考えつつ、腰を落として右膝を地面すれすれの位置まで下げ、左足の裏を壁と床の境界部に押し付ける。

 そのまま身体を前に倒して両手を床に着き、腰を持ち上げて重心を前に持っていく。はい3、2、1───

 

「GO!」

 

 全速力で走り出す。その直後に執務室の扉が吹き飛ばない程度に勢いよく開かれた音がして、更に風切り音が。

 私は即座に進行方向を変えて開いていた窓から外に飛び出し、壁を伝って別の階に移動する。

 外に行くとなると間違いなく正規空母である加賀さんが有利。ならば艦載機を飛ばすことのできない室内でなんとか逃げ切らないと……。

 

 しかし加賀さんは格が違った。室内で艦載機を平然と飛ばし、時折空中で移動させずにホバリングすらさせてくる始末。どう考えてもあれプロペラ機にできることじゃない。

 そうしているうちに追い詰められ、外に逃げるしかなくなった私をひたすら追いかけて来た結果……私は今こうして追い詰められて絶体絶命のピンチに陥っています。

 

「……とりあえず、そのカメラから壊させてもらいましょうか。それからレコーダーも一緒にね」

「なっ……!待ってください!私はあの状態の写真は撮ってませんし、レコーダーも今日のちゃんとした取材の内容しか入ってません!」

「それを信じる理由がないわ」

「だったら今すぐ確認してください!」

「必要ないわ。どうせあなたはすぐに何もわからなくなるのだから」

「ちょっ……私の身が危ない!? ワレアオバ!ワレアオバです!私は味方ですよ!」

 

 必死にそういい募るけれど、加賀さんの手は止まらない。私の頭は軋みを上げて行き、加賀さんの手に握られたカメラもひしゃげていく。

 

「大丈夫よ。フィルムはともかく、本体の方は弁償するわ。それだけのお給料は出てるもの。ちゃんとお墓に供えておいてあげるわ」

 

 それ私死んでるぅぅぅ!……と言うツッコミを残すこともできず、私はあまりの激痛に意識を失った。

 ただ、意識が消える寸前に加賀さんを止める声がしたような気がしたけれど……次に目が覚めることがあったら考えることにしようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……全く、鎮守府を壊しちゃ駄目なのです」

「……ごめんなさい……プラズマさん」

「罰として、今日1日はプラズマのことを『お母さん』と呼ぶのを禁止するのです!」

「!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 装備紹介

 

 天嵐

 

 加賀の専用装備。鳳翔のそれと同じく甲・乙・丙・丁の四つがあり、それぞれ対空、雷装、爆装、索敵に優れている。

 スペックは、鳳翔の持つ『天界』から命中以外のスペックを-2、命中を-1した物となっている。

 

 なお、加賀の搭載数は23/23/52/16の計114。圧倒的だね!

 

 

 

 

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