艦これ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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青葉さんは省みない その6

 

 

 

 

 目は覚めた。でも記憶はない。頭が痛い。カメラがひしゃげて粉々になっている。あれじゃあきっともう使えないだろう。愛用してたのに……。

 それから周りを見渡す。どうやらここは鎮守府にある倉庫街のようで、私はここで倒れていたようだ。

 

 ……いったい私に何があったのか。どうしてカメラが壊れているのかを思い出そうとしたけれど、突然に頭の中に目の荒い紙やすりで頭蓋骨を内側から削り卸されているかのような激痛が走った。どうやらこの頭痛は私が何があったのかを思い出そうとすると強くなるようだったので、一度思考を放棄する。

 けれど、どうにもすぐにはこの頭痛はおさまらないようで、徐々に痛みは薄れてきてはいるけれどまだ痛みはある。

 

 ……この痛みが収まったら、次の人に取材に行こう。えっと、金剛さんと扶桑さん、長門さんと陸奥さん天龍さん、龍田さんが終わったから、次は加賀s

 

「ぃぎっ!?」

 

 突然頭痛が激しくなった。まるで、忘れてしまった自分の記憶が必死に警鐘を鳴らしているかのような激痛に、私は踞るどころかその場に倒れ伏してしまう。

 ぐわんぐわんと地面が回っているような気がする。平衡感覚がおかしくなっているのは間違いない。

 視界が真っ赤に染まっていく。眼球の中で出血しているのかもしれない。

 

 ……これは、少し不味いかもしれない。いや、不味い。

 

 一人称視点を凍結。他者が居ないことから自動的に三人称視点へと移行。

 

 青葉は十字路の中心で倒れ伏している。両手で頭を抱え、自分の服や肌が汚れ、傷付いていくのにも気付かずに悶え転げている。

 そのうちに少しずつ動きが大人しくなって行き、いつの間にかぐったりとその場に手足を投げ出していた。痛みはかなり良くなったらしく、一時的に泡さえ噴きそうだった青葉の呼吸は既に落ち着いている。

 その顔は涙と汗と涎にまみれ、土がこびりついていて見る影もない。瞳には意思の光は見えず、まるで心を壊された生き人形のようだ。

 

 青葉は考えた。痛みを感じたのは何故なのか。何が原因なのか。

 それを考えるだけでも肉体はじりじりと頭痛を発していたが、意識を身体の外に弾き出している青葉に物理的な激痛以外は効果を持たない。

 そして、その原因に思い至る。

 

 加賀。正規空母であり、先程取材しに行こうとした相手。恐らく、消えてしまった記憶の中で青葉は加賀と出会い、なんらかの危害を受けたのだろう。

 だとすれば、加賀の元に行っても取材ができるとは考えづらい。それどころか、今度も同じようにボロボロにされてしまう可能性が非常に高い。これについては反論する者は恐らくいないだろう。

 取材はできなかったが、命が間違いなく危険に曝されるならば潔く諦めよう。まだ自ら死を望むほど生きてはいないし、この世界に絶望してもいない。

 

 青葉は震える手でメモとペンを取りだし、加賀の名前に横線を二本引いた。これで、加賀を相手に取材することはなくなったわけだ。

 頭痛が収まるまでその場に倒れ伏しながら身体を休め、ゆっくりと呼吸を整える。

 そして、青葉は目を閉じてスイッチを切り替えた。

 

 ……ふぃ~、痛みで発狂するところでした。第三者視点に切り替えて肉体と精神を切り離してなかったら危ないところでしたよ。

 私は立ち上がり、服についた汚れを払い落とした。顔も酷いことになっているのを第三者視点から知っていたので、ポケットから取り出したハンカチで涙や涎を綺麗に拭う。これで多少は見れた顔になっただろう。

 けれど、どうにも汗くさいし埃っぽい。こんな状態で取材を頼んでも、受けてくれる人はかなり少ないだろう。

 

「……入渠してこよ」

 

 傷付いた身体と服を同時に直してくれる上に、汗を流してさっぱりできる。入渠にはいくつか種類があるが、今回はお風呂コース。金剛さんがよく使う軽食コース(量は軽食じゃないけど)とか、就寝コース(マッサージ付きの場合もある)とか、そう言うのよりも今はお風呂に入りたい。かつてはただの重巡洋艦と言えども、今となっては女でもあるのだ。こんな汚いままでご飯を食べたり布団に入ったりできるほど女をやめていない。長門さんじゃあるまいし。

 

 ……はい? 長門さんのだらしなさですか? 知ってますよ? 結構昔から。

 まあ、記事にはしませんけどね。あの戦艦長門がだらしなさ満載で妹である陸奥さんに迷惑かけっぱなしだとか、そんなことを記事にしたら間違いなく長門さんに憧れている駆逐艦の皆さんのモチベーションが下がりますから。鎮守府の得になることだったらともかく、害になることをわざわざ書いたりしませんよ。仕事ですしね。

 ……まあ、本人と陸奥さんは私に隠し通せてると思っているようですが、大分甘いです。サッカリンくらいに甘いです。

 ちなみにサッカリンとは、水溶液にして蔗糖の350倍と言う凄まじい甘味と痺れるような後味を持つ人工甘味料の一種で、一時期発癌性があると言う話で使用制限がかかったが今ではそれが間違いだったと認められ、大半の国では使用制限がなくなっている物である。

 その甘味に反して一切のカロリーとならず、ダイエットをしている時にどうしても甘いものを食べたい!と言う時に使われることもある。

 

 ……そう言うわけで私は知っているけれど、大人の都合でそういった物は記事にはしないようにしている。

 だから、例えば金剛さんが実は料理はそこそこできるけどキャラ作りのために料理下手なふりをしていることを知っていたりとか、龍田さんが天龍さんのことを本気で愛していることを知っていたりとか、鳳翔さんは年のことに敏感だけど実は本当はそこまで気にしてないことを知っていたりとかしても、それらの事を表に出すようなことはまずありえない。必要ないし、わざわざ広める理由も意味もない。そんなことにわざわざ労力を使うくらいなら、もっと有意義なことに使いたい。

 

 まあ、私が色々と他人に言えないことを知っていると言うのはどうでもいいとして……とりあえず、今はお風呂に行こう。軽く流して直してもらうだけだから、多分15分もかからないで出られるはず。誰かが帰ってくる前に、早く入って早く出てしまわないといけない。

 とりあえず、一度部屋に戻ってからお風呂の準備をしてから行かないと。高速修復材なんて無くてもいいけど、タオルがないと上がったときに身体が拭けなくて困るし。

 

 ……加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように加賀さんに鉢合わせしませんように……。

 

 ……そうそう、カメラも妖精さんに直してもらおう。今のままじゃ使えないしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 装備紹介

 

 カメラ

 

 青葉の持つ、フィルム式の普通のカメラ。

 

 しかしフィルムは無限だ。

 

 とてもレトロな手動巻き上げ式である。

 

 しかし手ぶれは補正される。

 

 三脚をつけるためのネジ穴が下に空いている。

 

 しかしタイマーをセットすれば宙に浮いたまま固定される。

 

 暗いところで使うと幽霊が写ることがある。

 

 ● ワ ●「しかし幽霊なんていないのです!みんなプラズマなのです!」

 

 時々写っていなくちゃいけない物がなぜか写らないことがある。

 

 ● ワ ●「しかしそれはプラズマなのです!」

 

 

 

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