艦これ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 連続投稿十二話目です。霧島さんかっこいいよ霧島さん。


霧島さんは怠けない

 

 私、霧島の朝は眼鏡の手入れから始まる。埃が付いたレンズを綺麗に磨き、そして眼鏡をかける。その頃には目が覚めてはいるが、顔を洗って歯を磨くことも忘れない。

 そして運動着に着替え、柔軟をたっぷりしてから毎朝のランニング。加賀さんや神通さん、島風ちゃん達と挨拶をしたり、ちょっとした話をしながら鎮守府の周りの道を暫く走る。

 最近加賀さんは気に入らないけれど優秀な弟子ができ、嬉しくも腹立たしい思いをしているらしい。その弟子は加賀さんの後を犬のように付いて回っていたが今は木陰ではひはひと息を荒げていた。

 可愛らしくも情けない……けれど、きっといつの日か私達の隣に立って戦うことができるようになるだろう。

 走り終わればクールダウンに柔軟をして、シャワーを浴びる。この鎮守府では各艦娘に一つのシャワーが用意され、順番待ちを考えなくていいため誰もが思い思いに鍛練を積み、シャワーを浴びることができる。

 私も毎日のトレーニングの後には必ず汗を流すためにシャワーを浴び、そして用意していた戦闘着である巫女服(を改造して原型が少し残っている程度の、敬虔な本職が見たらマジギレされそうな服)に袖を通す。色々と露出の多い格好ではあるが、艦娘としての装備である以上、霊力の籠っていない純粋な物理攻撃では傷一つ付かない優れものであり、布の無い部分にも霊力の膜を纏わせることで同じ効果を得ることができると言う物である。着ない理由はない。

 そしてその後は鎮守府のほぼ全員が集まる朝食である。基本的に同じ艦種は同じ場所に集まり、同じような量の食事をとる。私にしてもそれは変わらず、姉たちと同じようにかなりの量の料理を消費する。

 その先は日によって変わる。出撃があれば艤装を纏って海域に出撃するし、何もなければ姉である金剛お姉さまに付き合っての茶会を開いたり、趣味の一環である鍛練に精を出したりもする。年頃の少女らしく甘味をたしなむ事もあるし、時には何の意味もなく遊んでみることもある。

 だが、午前中に行うことの中で最も多いのは恐らく読書であった。

 

 私は頭脳派を自称している。かつてあったことを無かったことにしようとするかのように、知識を得て理論をもって行動しようとしていた。

 だが、この鎮守府に限らずネット回線などは深海棲艦によって切断されている。故にほぼ全ての情報は本に依るものであり、通信機器として扱えるものは艦娘による無線以外には存在しない。

 そんな中で正しい情報ばかりが在るわけがなく、当然ながらある程度の時期より後に発行された本、特に歴史や記録書などには多くの人間の思惑による改竄が施されていたりもしたが、それでも私は多くの本を読んでいた。

 

 昼になれば昼食を取り、腹ごなしの軽い運動に砲撃や水上移動などの訓練を行う。高速戦艦である霧島はかなりの速度を出すことが可能だが、そうした速度はこのような地道な訓練によって維持され、より精錬されていく。

 ……そうした高速戦艦の究極型の一つが、私の姉である金剛お姉さまであった。

 速力を活かした回避能力と、戦艦ならではの火力による殲滅。それは高速戦艦にのみ許された戦法であり、また、金剛型の妹たち、比叡、榛名、霧島の目標でもあった。

 砲撃訓練。速力訓練。航行訓練。機動訓練。それらの訓練が終われば当然シャワーを浴びるか風呂に入る。姉妹で風呂に入ったときには大概スキンシップと言うセクハラが行われるのだが、胸を触られるくらいでは動じることはない。同性であると言うこともあるし、悪意も無いとなれば慌てる理由もない。

 

 そして夜。夜になれば元気になる某夜戦馬k……軽巡洋艦を除けば、誰もが静かに眠る時間。早起きのお姉さまも眠っているし、艤装を装備し霊力を励起させた戦闘状態でもなければ、艦娘だろうと眠くはなる。

 ……夜の鎮守府は一部を除いて静かだ。

 けれど、私には用がある。布団を抜け出し、寝間着から戦闘服に着替えて、あの場所へ行く。

 私と提督、そして一部の妖精さんしか知らない───秘密の部屋。私は毎日その部屋に行き、そしてやりたいことをやる。

 

 鎮守府の地下。食糧庫の隣の空き部屋。簡素なベッドが一つあるだけのその部屋で、私はベッドに座って時を待つ。

 待つ時間はいつも数分程度。ゴトン!と言う鈍い音と共にベッドが床ごと落下し、目的の場所に到着する。

 

 そこは、私を除けば提督と一部の妖精さんしか知らない秘密の場所。私は特に名前をつけるつもりないのだが、提督がつけた名前を呼ぶことはある。

 この場所は───『マイクチェックルーム』と呼ばれている。簡単に言えば、砲撃や艦隊機動以外の艦娘の『人間としての性能』を上げるために用意されたトレーニングルーム。ここで私は毎日、人間としての能力の底上げをしている。

 

 例えば判断能力。敵の砲撃を回避すると言うゲームがあり、マイクチェックルームの壁一面に砲口が現れて弾が発射される。当たると服が汚れ、時に溶ける。流石の私も裸になるのは恥ずかしいので必死になり、結果的に回避能力や判断能力の向上が起こる。

 

 また、持久力と瞬発力の訓練としてラン&ジョグ……つまり全速力での走りとジョギングを交互に繰り返すと言う訓練もある。

 あまり長い間ジョギングばかり続けていると、突然床から現れるマシンアームにハリセンでお尻をはたかれたり、頭の上から水が満載された金盥が降ってきたり、水をぶっかけられてなぜか服が溶けたりするのでここでも気は抜けない。

 まあ、いくら服を溶かされてもこの部屋から出る際に全て修復されるので問題ないと言えば問題ないのだけれど……それでいいことにしてしまうのは女として少し……と言うか大分駄目な気がする。

 

 その他にも、砲撃を連発するための重心移動の訓練としてサンドバッグを思いきり殴り飛ばす訓練や、装甲用の霊力を一点に集めて敵の攻撃のダメージを大きく減らす技術など、このマイクチェックルームで学ぶことのできる内容は計り知れないものがある。

 

 そういう理由もあり、私は今日もサンドバッグに向けて拳を構え、渾身の力を掛け声と共に叩き付ける。

 

「マイクチェックの時間だオルァァァ!!」

 

 私の一撃で吹き飛び、中身がぶちまけられたサンドバッグは、新入りの妖精さんたちが技術を高めるためにその場で直されている。

 さあ、では次だ。

 

 

 

 

 

 艦娘紹介

 

 霧島改二

 

 マイクチェック・ナックルで岩を砕き、マイクチェック・キックは鋼材を切断し、マイクチェック・二ーは分厚い鉄板に穴を明け、マイクチェック・エルボーは敵の砲撃を無傷で打ち落とすと言う、鎮守府きっての武闘派である。頭脳派だと自称してはいるものの、信じてくれる人はあまりいない。しょうがないね。

 

 怠けず、傲らず、自らを鍛え上げるのが趣味。それに協力してくれている提督には感謝している。無論、恋心ではなく脳筋故の純粋な好意である。

 特技は戦闘。その継戦能力には目を見張るものがある。

 

 なお、マイクチェック室にいる妖精さんたちは基本的に新入り数人と監督のベテラン一人。回収や修復の腕を上げさせるためのスパルタ特訓室と言う扱いになっている。

 

 

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