艦これ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

7 / 28
那珂さんは崩れない

 

 

 

 

 こんにちはー!艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ!よっろしくぅ!

 え? 今日はいつにも増してテンションが高くないか、って?

 それはそうだよ!だって今日は那珂ちゃんの改造日なんだから!

 

 Lv48。那珂ちゃんの二回目の改造に必要なLvに到達したのは、本当につい最近のこと。沢山の駆逐艦達を連れて、何度も何度も遠征に行った甲斐があった。

 下積みは大事。地方でファンを作っておいて、そうしてできたファン達を基盤にしてアイドルとして上っていくべき。積み重ねた努力は、けして私を裏切ることはない。

 そういう事を何度も言われ、そして実行していけば間違いなくその通りだった。努力を重ねていけばファンのみんなは答えてくれるし、どんどんとできることも増えていった。

 そしてついに、二回目の改造に……!

 

「と言うわけで、那珂ちゃん!行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい」

 

 神通ちゃんに見送られて、来たのは改装用に使われている工厰の一つ。ここで私は今日、改二になる!

 

「すみませーん!那珂ちゃん、改装してもらいに来ましたー!」

「お待ちしていたのです」

 

 何故か、そこにはプラズマちゃんが妖精さん達と一緒に待ち構えていた。……うん、なんだか凄く嫌な予感がするけど……これも改二になるための試練みたいな物だって考えれば……大丈夫!

 

「安心してください。今回はプラズマはデザイン係なのです。機能に関係無い小物などのデザインを可愛らしく仕上げるための案を出すのがお仕事なのです」

「……デザインだけ?」

「プラズマには改装知識は無いのです。性能だけを突き詰めるのなら提督か妖精さんに任せてしまえばいいのですが、その場合は個性が消されてしまうのです」

「それは困るよ!那珂ちゃんアイドルなのに!」

「そうならないためのプラズマなのです」

 

 プラズマちゃんはそう言って胸を張る。そうしていると、雷ちゃんによく似ていると思う。やっぱり姉妹なんだね。

 

「それじゃあ、よろしくお願いしまーす!」

「承りました。期待しておいてくださいね?」

 

 そうしてちょっとした予想外の事態と少しの不安と共に始まった改装は、今のところ順調に進んでいっている。

 始めに今の身体に合った武器や装甲の雛形を作るために色々な数値を測る。身長や体重、3サイズ等も測ったけれど、これについては色々な意味で極秘情報として厳重に保管されることになるそうだ。

 破棄してしまうと、中破や大破した際に服を作り直すのにちょっと時間がかかってしまうのだとか。沢山お仕事をするために、できればそう言う何もできない時間は短い方がいいので……恥ずかしいけどとっておいてもらう。

 プラズマちゃんにも口止めをお願いしたけど、プラズマちゃんは初めから誰にも言う気はないのだとか。ああよかった。

 

 それから那珂ちゃんの身体に合った新しい装備を作り、装備してから那珂ちゃん自身の意見を取り入れて細かな調整を入れていく。プラズマちゃんはここではなく、ちょっとしたワンポイント等をつける方向でやるらしい。

 服は基本的に装甲としての役割を持つ。一部は物凄い薄着だったりするけれど、そう言う人達は大概紙装甲だったりするし……ああ、武蔵さんは別ね。

 だから服は大事。可愛さと実用性を併せ持つようにするのは大変だけど、アイドル活動のためなら苦ではない。

 

 なお、大雑把な形は妖精さん達が決め、細かな部分をプラズマちゃんが担当。那珂ちゃんは出来上がった服や装備にちょっとした意見を言うだけで、大体は妖精さんがやってくれている。妖精さんって本当に何でもできるんだね。

 

「何でもできる、と言うのは間違いですね。妖精さん達は全体で見れば確かに色々なことができますが、個体ごとに見てみればたった一つのことしかできないのです。ただ、その『一つだけのできること』と言うものの種類が多く、妖精さん達の数も非常に多いのでそう見えるだけなのです」

「へー……そうなんだ?」

「そうなのです。例えばあそこで金槌で真っ赤な鋼材を叩いている妖精さんですが、彼女は鋼材を均一の厚さを持つ綺麗な板として加工するのが得意なのですがそれ以外はからっきしですね。また、あっちで大きめの工具を弄っている妖精さんは出来上がった金属の板の適当な位置に穴を開けることができますし、その隣にいる妖精さんは板になった鋼材を図面通りの形に切るのが得意なのです」

「……プラズマちゃんは物知りだね」

「自分の身体や装備を任せる相手なのですよ? そんな相手をよく知ろうと思うのは当然だと思うのです」

 

 那珂ちゃんの言葉に、プラズマちゃんはきょとんとした表情でそう言った。うん、流石にその事については何も言い返せない。当たり前なことだった。

 言い訳をさせてもらえるなら、那珂ちゃん達は『妖精さん達』と言う一つのカテゴリの中に居る相手を信じているから、その中に居る誰か個人を見定めようとは思わなかったと言うことで……信じてなかったわけではないんだよ? ほんとだよ?

 

「艦娘の中にも戦艦や空母、軽巡洋艦などといった種類があり、それぞれに得意分野と不得意分野があるのです。艦娘にそう言うものがあるのですから、妖精さんにだってあると考えるべきだと思うのです」

「……確かに、那珂ちゃんが戦艦みたいに凄い威力の攻撃をするのは無理だもんね」

「かわりに戦艦の皆さんは駆逐艦や巡洋艦、潜水艦のように雷撃を行うことはできません。魚雷も爆雷も使えないため、一部を除けば潜水艦に対しては無力と言えます。そんな欠点を補い合うために、プラズマ達は艦隊を編成して戦うのですよ」

「……考えてみれば簡単なことなんだね」

「考えることをやめることは停滞を生むのです。停滞は進化を抑え、進化をやめたモノは何であろうと衰退していき……やがては滅んでしまうのです。アイドルだって、新しい曲を出したりするでしょう? それと同じなのですよ」

 

 分かりやすい説明に那珂ちゃんびっくり。確かに、同じ歌ばかりを歌っているアイドルはいない。その事を考えれば理解することは容易い。

 

「……さあ、改装が終わったみたいなのです。プラズマはやることがあるのでこの辺りで失礼するのです」

「あ、お疲れさまでーす」

「はい、お疲れさまなのです。……そうそう、改装が終わったら食堂に来てほしいのです。すぐですよ」

「? 食堂にいけばいいの?」

「できるだけ早く、なのです。走らなくても構わないですが、急いでくださいね」

 

 プラズマちゃんはそう言って工廠から出ていってしまった。私もすぐに改装を終わらせて、それからプラズマちゃんに言われた通りに急いで歩いて食堂に向かう。

 

「お待ちしていたのです。それじゃあ、どうぞ」

 

 扉の前で待っていたプラズマちゃんが後ろに周り、背中を押す。それに逆らわずに扉を開けると───

 

『那珂ちゃん、改二おめでとう!』

 

 クラッカーの弾ける音と、鎮守府のみんなの声が合わさって、那珂ちゃんの心にぶつかってきた。

 周りを見てみると、綺麗に飾り付けられた食堂が目に入る。色とりどりの色紙で作られた手作り感溢れる飾り付けに、机を使って作られたものだろうステージ。探照灯を使って作られたスポットライトがステージにいくつも置かれ、キラキラと輝いている。

 

「主役がこんなところで立ち止まっていてはダメなのです。アイドルを自称するなら、サプライズの一つや二つくらい笑顔で受け入れるのです」

 

 プラズマちゃんにそう言われ、那珂ちゃんは笑顔を浮かべる。景色は少し歪んで見えるけど、大丈夫!

 

「それでは、まずは那珂さんから一言、なのです」

 

 プラズマちゃんに言われてすぐ、マイクを持ってステージに上がる。

 

 そう、私はアイドル、艦隊のアイドル!

 

「みんなー!改二になったばっかりの、那珂ちゃんだよー!今日は那珂ちゃんのためにこんな素敵なパーティーを開いてくれて、ありがとー!」

 

 拍手や歓声が広がり、那珂ちゃんの新曲『アイドル改二宣言』のイントロが流れ始める。

 さあ、今日も元気に……歌っちゃうよぉーっ!

 

 

 

 

 

 那珂ちゃんのコンサートが終わり、用意されていた料理をみんなで食べる。とっても嬉しいことがあったせいか、今日のご飯はいつもより美味しいような気がする。

 

 ……そこで、ふと気になった。一体、誰がこんなサプライズパーティーを計画したのか。

 誰かはわからないけど、お礼をしたい。そう思ってそう言うことをしそうな人……鳳翔さんに話を聞いてみた。

 

「今回のパーティーの発案ですか? でしたら、発案はプラズマちゃんですよ。

 それから、みんなに話をして協力してもらったのもプラズマちゃんですし、実際に那珂ちゃんが改装されている間に(・・・・・・・・・)飾り付けの陣頭指揮をとったのも、料理の半分を作ったのもプラズマちゃんですね」

 

 ……。

 

 …………?

 

 …………………………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 艦娘紹介

 

 那珂改二

 

 川内型軽巡洋艦の三番艦であり、艦隊のアイドルを自称している。

 今回ようやく改二になることができたが、何度も深海棲艦から剥ぎ取られた資材を扱い続けたベテラン妖精さん達とプラズマの手が入ることによって実は……これ以上は野暮ですね。

 

 アイドルとして、多くの駆逐艦から好かれている。一部の軽巡洋艦や重巡洋艦からも好かれている。地方巡業を繰り返した結果として、意外なほどに地方のどこにでもファンが居る。気になったならとりあえず遠征先に誰かが居たら声をかけてみるべき。少なくともそこに何人かは那珂ちゃんのファンが居たりする。

 

 今回若干ホラーな経験をしたせいか、現在のLvは49。48で改二になったばかりで出撃も演習もしていないのに、いったい何があったんだろうね?

 

 なお、鳳翔さんからの言葉を聞いても一瞬固まっただけですぐに再起動して何事もなかったかのようにプラズマにお礼を言いに行き、キャラ崩れをしっかりと防ぎましたとさ。

 

 

 

 




 
タイトルの『崩れない』はキャラ的な意味で、です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。