艦これ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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龍驤さんは育たない

 

 

 

 

 ウチは龍驤!空母の中でも独特なシルエットをしとるんや!

 いやぁ、ほんまに──────

 

「…………このシルエットどうにかならんかなぁ……」

 

 思うだけではどうにもならない。そんなことはわかっているけど、それでもつい考えてしまう。

 赤城や加賀程とは言わん。と言うか、この身長で加賀や赤城ほども胸があったら逆にキモいしな? せやけど、せめて胸を張って『ある』と言うことができるくらいには欲しい。

 具体的には……そうやなぁ……翔鳳はんはあれで結構あるし……蒼龍飛龍は論外やし……翔鶴瑞鶴も結構ある方やし…………鳳翔はんくらい?

 まあ、それも見た目的にっちゅーことで、実際に鳳翔はんと同じ数値まで胸囲が突然膨らませられたら見た目的にキモいしな。

 

「ちなみに、鳳翔さんの胸は確かにそこまで大きくはないのです。

 ただ、そもそも体格が小柄でかつ腰回りが非常に細いから相対的に胸が大きく見えてしまうだけで、実際の胸囲が某ぱんぱかぱーんな重巡洋艦さんや某チョコレートの材料とよく似た名前の重巡洋艦さんのように胸そのものが凄く大きいと言うわけでは無いのです。

 まあ、プラズマのような持たざる者から見れば実際に大きかろうが見た目だけしか大きくなかろうが関係無いのですが。

 プラズマも司令官さん好みの胸を手にいれたいのです!」

 

 すいっと現れてふいっと消えたプラズマが言っとった通り、大きく見えりゃそれでええ。

 ……もちろん、自前での話や。パッドとか入れても悲しくなるだけやしな。

 

 けど、ウチの力じゃどうにもならん。ウチには改二は無いし、これから先実装されるかもわからん。これじゃあどうにもならん。

 しかし、この鎮守府には本来実装されていない改造を行った艦がおる。さっき現れたプラズマに、鳳翔さんのことや。

 天龍や龍田、加賀あたりも怪しいけど……実際に改造した人に聞くんが一番やろ!

 

「そんなわけで、鳳翔さん。胸を大きくする方法を教えてはもらえんやろか」

「……人によっては二回目の改装をされると胸が大きくなることもあるそうだけど……基本的には艦娘である以上は体格は変わらないはずですよ? それに、改二は未だにできる子は少ないそうだし……」

「そこをなんとか!鳳翔さんは改二無いのに特殊改装してもらったんやろ!? ウチにもなんとか!」

「……その事については提督しか詳細を知らないの。どうしてもと言うなら、提督に話をした方が早いと思いますよ? あと、私と同じ改装をすると言うのは、肉体的にもそうですが精神的に非常によろしくないですよ?」

「覚悟の上や!」

 

 ウチがそう答えると、鳳翔さんはため息をついた。

 

「……『マゴットセラピー』と言うものを知っているかしら?」

「まごっ……なんやそれ?」

 

 話しづらそうに口を開いた鳳翔さんの言葉に、ウチは聞き返す。『セラピー』ってことは何らかの治療方法なんやろうけど……聞いたこと無いわ。

 

「マゴットセラピーって言うのはね……」

 

 それから続けられた鳳翔さんの話は悲鳴なしには聞けそうもなさそうなものだった。

 損傷し、壊死した傷に蛆虫を載せ、その壊死した細胞だけを食わせることでそれ以上壊死した場所を増やさないようにする。

 使われるのは医療用の蛆虫で、親の代から無菌室で育てられているため感染などは考慮しなくていいそうやけど、なにしろ自分の身体に蛆虫を這わせるんやから気分はよくない。

 それを使って修復場所を最低限にした上で、艦娘と相性のいい同種の深海棲艦の身体をパーツ単位にまで分解したものを継いでさらに修理時間を短縮した上で強化する。

 深海棲艦は基本的に非常に燃費がよく、さらに航空母艦等ならばほんの僅かなボーキサイトから自分のLvに合った艦載機を自動で生成補給することができるそうで、鳳翔さんも何度か繰り返しているうちに同じようなことができるようになってしまったそうや。

 

 ……あれ? 鳳翔さんってもしかして八割くらい深海棲艦なんじゃ……?

 

「ちなみに、深海棲艦と艦娘の差は力の向きだけなんですよ? 艦娘が+で深海棲艦が-。絶対値をつければ同一です。

 ですから艦娘に深海棲艦を継ぐなんて言うことができるわけですしね?」

「いやいやいやいや軍のお偉いさんがそんなんを許すとは思えへんのやけど」

「提督は昔から型破りな方で……上官侮辱罪を適用されて殴られそうになると毎度避け、演習で痛め付けられそうになれば相手が教官であろうと何人居ようと関係無く再起不能一歩手前まで追い込み、食事を抜きにしようとすればどこからか将官用の料理より遥かに美味な料理を用意して食べていて、濡れ衣を着せて処刑しようとすれば処刑に使おうとした道具に何らかの不備が起きて爆発して処刑する側が死亡。最終手段として艦娘と戦わせてみれば、複数の提督たちが誇る最強艦隊を同時に200相手にして無傷で完勝して多くの艦娘が轟沈寸前の大破にまで追い込まれる大惨事に。そして嵌めようとした相手に何故か不祥事が連続して発生して、最終的に提督はこの鎮守府を与えられて隔離されたの。そんな相手が軍部に何を言われたところで聞くと思うかしら?」

「提督さんなにやっとんの!?」

 

 確かにこの鎮守府には提督以外の提督さんが来ることもなければ演習相手すら派遣されて来ないと思っとったけど、そういうことかいな!予想できるかそんなもん!

 

「それと、軍部はここの鎮守府を干すつもりでいるようだけれど、燃料も弾薬も鋼材もボーキサイトも普通の食べ物や施設設備まで提督が『無から有を生み出す程度の能力(笑)(かっこわらいかっことじる)』って言ってどこからか作り出しているのよ? びっくりした?」

「それ聞いてビックリせんやつおるんかい!?」

「プラズマちゃんは『流石プラズマの提督さんなのです!』って嬉しそうにするだけだったわよ?」

「プラズマはあらゆる意味でノーカンで頼むわ」

 

 クスクスと笑いながら鳳翔さんは提督のことを話している。

 

 ……そう言えばウチ、提督の顔知らんなぁ……艦隊を動かす命令を伝えに来るのって大半はプラズマやし……見たことないなやっぱり。

 

 ……いやいやそんなことより今は胸を大きくする話や。できればさっきのあれは勘弁してほしいけど……。

 

「ああ、それとさっきのマゴットセラピーで特殊改造への道が開けるって言うのは適当にそれらしいことを言っただけで、本当はそんなことをする必要はないですよ?」

「はぁ!?」

「いやですね、そんなことをあの面倒臭がりで中途半端に効率的なのが好きな提督がするわけないじゃないですか。どうしてもやりたいなら提督とひたすら演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→演習→高速修復→補給→……と言うループをしてLv上げをするのが一番早いですよ? なにしろ特殊改装は大概Lv99まで上げなければなりませんから」

「道は遠いわぁ……」

 

 ウチはがっくりとカウンターに突っ伏した。

 

「あーあ……鳳翔さんならおばあちゃんの知恵袋的な感じで色々教えてくれると思ったんや……けど…………な」

 

 空気が凍った。まるで、ダイヤモンドダストが吹き付けてできた細い細い氷の針が、呼吸と一緒に肺の隅々に侵入して突き刺さったかのようだ。

 ゆっくりと背を向けていた鳳翔さんがウチの方に振り向いてくる。

 そして───

 

「─────────あ゛?」

 

 ───そこから先? いや、それがどうしても思い出せんのよ。

 ただ、これだけは染み付いた。勝手に染み付いていた。

 

『鳳翔さんに、歳に繋がる話題はアウト』

 

 ……あかん、鳳翔さんのこと思い出しただけで震えが止まらんわぁ……あははははははは不思議やなぁ……。

 

「ちなみにプラズマは鳳翔さんよりちょっとだけ艦娘として目覚めたのは早かったのです。プラズマは別に聞かれても怒りませんが、ちょっとした計算をすることで鳳翔さんの年齢が出てきてしまうのでおすすめはしないのです!」

「ああ……まだ死にたないしな……」

 

 いつの間にかひょこっと出てきてすいっと消えていったプラズマに、聞こえない程度の音量でそう呟き返した。

 

 

 

 

 

 

 艦娘紹介

 

 龍驤改

 

 独特なシルエット(隠語)の軽空母。空母の中では珍しいフルフラットさん。コンプレックスなので弄るのはやめてあげよう。泣きます。子供のように泣きます。

 鳳翔・天のように装甲軽空母となることを目指しているが、装甲空母になったからと言って胸が大きくなると決まったわけではないのは、元祖装甲空母である大鳳を見れば一目瞭然。

 でもやっぱり装甲軽空母になりたい。そんな彼女を応援してあげましょう。

 

 現在のLvは64。それなりに育っているが、やっぱり胸は育っていない。ここまで来ても育たないのならもう諦めた方がいい……と言ったら泣くので言わないであげよう。

 

 

 

 

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