ワンドのA   作:夏野 雪

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◎№1 魔術師(THE MAGICIAN)
【正位置】
変化や新しい環境の中で自分の個性を活かし、自分の力で道を切り開いていくこと。
興味や関心のある分野で成功するための第一歩を踏み出せること。
新しい状況の中での成功と活躍。

【逆位置】
自分自身に自信が持てないことが原因で、目的や意識がはっきりしないこと。
新しい状況に対して消極的な姿勢や考え方や知識の偏りによる失敗や
個性が強すぎて場で浮いてしまい周辺環境に受け入れてもらえないこと。





Ⅺ

 夏芽が消えた後に残されていたカードを社は手に取った。

カードには右手を高々と掲げる人物。その人物が掲げた右手には何か棒のようなものが

握られており、頭上には『∞』のマークが浮かんでいた。

人物の前には木製のテーブルの様なものがあり、卓上にはトロフィーや剣が置かれていた。

カード上部には『Ⅰ』と、下部には『THE MAGICIAN』と書かれていた。

 

魔術師か。

本当に悪い魔法使いが魔法で皆を鼠やら馬やら鳥にでも変えられてしまったのだろうか。

そうだ。あのカウンターに置かれていた生肉の塊も魔法で姿を変えられた女の人なんじゃないか?

 

それとも、夏芽の残してくれたメモにも書かれていたが、今日は四月一日。

エイプリルフールってやつだ。これは大型ドッキリの企画か何かで最後に皆が出てきてくれて、

俺を驚かそうってことだろう?

 

もうこれ以上、ここに居たら頭がどうにかなってしまいそうだ。

もう出よう。門だって無理やり開ければ開くかもしれない。

塀だって乗り越えられない訳じゃない。

探せば梯子ぐらい何処かにあるかもしれない。

 

社は五枚目のタロットカードをその場に放り投げると部屋を早足で出ていった。

止まることなく、振り返ることなく、一直線に『Ⅵ』の部屋へと向かった。

部屋に入ると、自分の荷物を乱暴に纏めるとホテルの入口へと急いだ。

「あっ。」

外に出ようとした瞬間に社は何かを思い出し、無人のカウンターへと踵を返した。

荷物の中から財布を取り出すと、千円札二枚と五百円硬貨を一枚カウンターに置いた。

社は風で飛ばないように二枚の千円札の上に『Ⅵ』の鍵と五百円硬貨を重し代わりに乗せた。

「お釣りは取っておいてくれ。」

 

社がホテルを出ると、やはりと言うべきか、門が閉じているのが見えた。

しかし、何か様子がおかしい。

先ほど見た時と何かが違う。

社は誰かに導かれるように、門へと近づいて行く。

「嘘だろ。」

門へと一歩ずつ近づくにつれて、異変の正体が見えてきた。

ホテルを出た時には、もう見ることはないと確信していたのだが、確かにそれはそこにあった。

見間違うはすがない。あんなに何度も見ていたんだ。

今日初めて見たのに、既に見慣れてしまったブルーの細長いカード。

門(・)に(・)は(・)裏(・)向(・)き(・)の(・)タ(・)ロ(・)ッ(・)ト(・)カ(・)ー(・)ド(・)が(・)張(・)り(・)付(・)い(・)て(・)い(・)た(・)。

どんな原理で門に張り付いているのかは分からなかったが、カードは社の目線の高さに

合わせたかのように、とても見やすい位置に張り付いていた。

社は震える手でそれを手にした。絵柄を確認しようと、ゆっくりとカードを裏返そうとした。

だが、社にはタロットカードの絵柄を確認することが出来なかった。

なぜなら、社の目がカードの絵柄を認識しようとするのと同時に後ろから誰かが社の右肩に

そっと手を乗せてきたのだ。

驚きのあまり声を出すことが出来なかった。

誰もいないはずだ。

社以外は誰も。

それとも、この手の持ち主が全員を。

勢い良く振り返ると、そこにはどこかで見た覚えのある顔が笑顔で社を見つめていた。

 

ああ。そう言うことだったのかよ。夏芽。

 

社の脳裏に夏芽の残した手書きのメモが浮かんできた。

そのメモを更に自分なりに分かりやすく脳内で書き直してみた。

 

1→ユウキチヒロ

2→ドーラ

3→グンドウミレイ

4→シズカリン

5→クルスナツメ

6→ヤシロキズク

 

ホテル アレキサンダー

 

四月一日

 

そっか。最(・)初(・)か(・)ら(・)俺(・)た(・)ち(・)の(・)中(・)に(・)居(・)た(・)っ(・)て(・)か(・)。笑えねぇな。

 

 

 

チックタック...チックタック...。

人の気配のなくなったホテル内を時計の針の音だけが駆け回っていた。

二階のどの部屋にも灯りは点っていなかった。

一階も同じだった。

『Ⅳ』の部屋の床には誰かが書いた手書きのメモと綺麗に並んだ四枚のタロットカード。

そして、少し離れたところに一枚だけ投げ出されたように置かれるタロットカード。

入口前のカウンターの上には幾らかの現金とどこかの部屋の鍵が置かれていた。

高い塀と黒い門で閉ざされた建物。

その敷地内。門の前にも一枚のタロットカードが表向きに落ちていた。

そのカードの中央には体に細い布をらせん状に巻いているだけの人物が青空に浮いていた。

その人物を爬虫類の鱗のような、はたまた植物のようなものが円状に取り囲み、

絵柄の四隅には人、鳥、牛、獅子のような顔がそれぞれ描かれていた。

上部には『ⅩⅪ』と、下部には『THE WORLD』と書かれていた。

 

 




◎№21 世界(THE WORLD)
【正位置】
全ての制限や障害などを乗り越え、肯定的で成功が約束された状態。
夢や願望を達成し、成功と幸せを享受できること。
一連の流れが望む方向で完結し、望みが果たされ満足できること。

【逆位置】
目的達成の道半ばにして、状況が完結して前に進めなくなってしまうこと。
進行が途中で妨げられて投げ出されてしまったり、消化不足で完結してしまうこと。
これまでの状況が中途半端な状態で落ち着いてしまい先に進めなくなってしまうこと。


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