“Stand” up PrettyDerby   作:靉靆 

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鈍間な踊り手(スローダンサー)

 

 

飢えなきゃ勝てない。ただしあんな“Dio”なんかよりずっとずっともっと気高く『飢え』なくては──』

 

 

──夢を見る。

どこまでも貪欲な瞳をした半身不随の青年の姿。自分の求める『結果』の為ならどんな非情な決断すらも下せる『漆黒の意思』をその魂に帯びさせた“ぼく”の相棒。

 

 

『ジョニィ!『Lesson5』だ……そう、確か次は──『Lesson5』だ』

 

 

──夢を見る。

『罪』を裁くものでありながら偽りの『罪』の為に命を懸けた男の姿。

ジョニィ……相棒と共に再び『歩き出す』為の道を駆け抜け先祖より『回転』を受け継いだ戦友。

 

 

『オレはこのS B R(スティール・ボール・ラン)レースでいつも近道を試みたが『一番の近道は遠回りだった』……『遠回りこそが俺の最短の道だった』… この大陸を渡ってくる間ずっとそうだった…そしておまえがいたからその道を渡って来れた…』

 

 

───夢を見る。

まるで生涯の最期に伝える言の葉のように想いを紡ぐ“ジャイロ”の姿を。

 

 

『これから行われるのは『生贄』だ…お前…“ジョニィ・ジョースター”──試練は、流される血で終わる』

 

 

──夢を見る。

大国の命運をその傷だらけの背に背負った男の姿。

どこまでも自分にとって、ひいては民の為に『正しい道』を進み続けた、相棒(ジョニィ)とは真逆の正義()

 

 

 

『ジャイロはこの為に…Lesson5はこの為に…ッ!

 本当に本当に……なんて遠い廻り道……

 ありがとう……ありがとうジャイロ。

 本当に……本当に…『ありがとう』……それしか言う言葉がみつからない───』

 

 

──夢を、見た。

動脈を切断され息絶え絶えな“ぼく”の瞳が映した『相棒』の姿。

親友の死に慟哭しながら感謝を伝え──このレースを駆けた自分にとっての回転(オリジン)を放つ。

 

 

 

 

あの日から一夜たりとも欠かすことなく…まるで“思い出す”かのように、そして『物語』を読み解くように“ぼく”はその夢を見る。

 

 

それは──本当に『奇妙』な記憶(ユメ)だった。

 

 

偏西風の彼方で、灼熱の荒野で、無謬の凍原(ツンドラ)で、数多もの山脈で──数えきれない程の難関を乗り越えてきた“ぼく”の記憶(ユメ)

 

総距離約6000kmに及ぶ、史上初の乗バによる北米大陸横断レース。

 

言葉にしてみれば本当にバ鹿バ鹿しいと思う。

十九世紀後半に行われた未曾有の祭典、不可能への『挑戦』とでも言うべき116日にも及ぶ無謀なレース。

更には聖人の遺体(ミイラ)を奪い合った壮絶な『闘争』の日々。

 

だけど“ぼく”は走った。二人の人間と一頭の『戦友』と共に、その不可能とも言える旅路を……といっても、ラスト数キロメートルで失格になっちゃったけどね。

 

 

だけど、そんな過酷な挑戦の中でも“ぼく”は最高の騎手(ジョッキー)に恵まれていたんだ。

 

 

『僕はまだ『マイナス』なんだッ!

 『ゼロ』に向かって行きたいッ!』

 

 

お世辞にも性格の良い聖人君子とは言えない半身不随の青年。諦めが悪くて、最後まで折れず、レースを通して『成長』した“彼”は───現世(いま)の“ぼく”にとって尊敬すべき人だと思う。

 

 

──“ぼく”の名前は『スローダンサー』

 

 

()()()の名バの名前と魂───そして記憶を引き継いだ、一匹の()()()だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

───ウマ娘。

 

それは()()()()に存在する新たな可能性。耳と尻尾の生えた、人間とちょっとだけ異なる神秘的な種族。

()()()の競走馬の“名前”と“魂”を受け継いで生まれてきた少女たちは、数奇で輝かしい歴史を受け継ぎ走ることを運命と定める──『奇妙』な存在だ。

 

ウマ娘は走ることに憧憬を抱く。勿論、ただ街道を走るなんてチャチなもんに引かれてるわけじゃあない。

『トゥインクルシリーズ』と呼ばれる国民的スポーツ・エンタテイメントで、超人的な走力を持つウマ娘たちが繰り広げるレースの総称。この世界の祭典だ。

GⅢ、GⅡと区別され、最後には頂点の『GⅠレース』が存在する。このレースに参加することはウマ娘にとって最大の栄誉と呼ばれ、“ぼく”達の多くはその『GⅠ』で勝利することを夢見ている。

他にも日本ダービーに代表される三冠レースなんてものもあるけど今は割愛しよう。

 

 

“ぼく”──『スローダンサー』は、一人のウマ娘としてこの世界に生を受けた。

 

そして“ぼく”には他のウマ娘とは違い『異世界の競争バとしての記憶』が存在している……と言っても、赤ん坊の頃からこの記憶があった訳ではない。

物心がついてから少しずつ…一夜一夜、物語を読むようにして思い出していったんだ。

 

最初は複雑な気分だった。異世界に存在していた四足で走る“スローダンサー(ぼく)”の姿や当時の年齢もそうだけど、自分の背中に“人”を乗せて走るなんてあまりにもバ鹿げてるって…でも、“彼ら”を観ていくうちに“ぼく”のそんな考えはとうに消えていた。

 

“彼ら”は……本当に素晴らしい人間だった。

 

いつだって遠廻りしながら最短の道を辿る戦友と、道を踏み越えていく中で『成長』していく最高の相棒……“ぼく”は本当に良い人間に巡り会えた。

多分“ヴァルキリー”も同じようなことを思ってたんじゃあないかな。

 

 

 

「そしてここから始まるんだ──現世(いま)のぼくの物語が」

 

 

そんな『奇妙』な冒険を記憶として持つちょっと変わったウマ娘である“ぼく”は今、新たな門出を迎えようとしている。

 

目の前には舌を巻くほどの大きな建物。

門の付近に立てかけられた『慶祝ッ!入学式』とやたら達筆な文字で書かれた立看板。

更には“ぼく”と同じようにこの“学園”へと足を踏み入れるウマ耳と尻尾の生えた女の子たち。

 

 

──トレセン学園

 

正式名称は“日本ウマ娘トレーニングセンター学園”。 そこは『トゥインクル・シリーズ』デビューを目指すため、ウマ娘たちが通う全寮制の学園。

そんな凄い学園の敷居を今“ぼく”は跨ごうとしている。

 

 

 

この『物語』は

“ぼく”が成長する『物語』だ

 

肉体が…と言う意味ではなく

青春から大人……という意味で。

 

もう一度自己紹介をしようか──“ぼく”の名前は『スローダンサー』

 

異世界の駿バの名前と魂、そして記憶を受け継いだ──少しばかり『奇妙』なウマ娘だ。

 

 

 

 

 




はい、ボクっ娘銀髪ウマ娘のスローダンサーちゃんです(精神年齢数十歳)
テイオーと一人称が被るので平仮名で区別して行きます。

※スタンドや波紋は一切登場しません。
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