【P5Rその後】地獄の女神は笑う【二次創作】   作:KOMOREBI

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 本作品には以下の注意事項がございます。

・ATLAS様の「ペルソナ5ザ・ロイヤル」の二次創作作品です

・無印版ではなく、完全版の方のその後ですので、本編のネタバレが含まれています

・よく言えばスピーディー、悪く言えば展開が早すぎる

・稚拙な文章

 以上のことが許せる方はどうぞ楽しんでいってください。


 この作品はフィクションです。実在する人物、団体、事象、宗教とは一切関係ありません。


第1話 再会

 カランコロンッ。

 

 軽快な入店音が鳴り響き、蓮は店内を見回した。

 四軒茶屋駅から徒歩1分。少し入り組んだ住宅街の隅にある純喫茶ルブランは、哀愁が漂いどこか懐かしいような空間の店だった。

 蓮とマスター以外に誰もいない小さな店内に、マスターの声が響く。

 

「……らっしゃい」

 小さなシンクで忙しく洗い物をしていたマスターが面倒くさそうにそう言い、水を止めてエプロンで手をふいた。

 時刻は午後2時。昼食のピークが終わり、丁度眠くなってくる時間だ。それと同時に、人々の気が最も緩む時間でもある。

「ご注も……ん───」

 振り返って客に注文を尋ねようとしたその時、マスターが蓮の存在に気づいた。

 

 カウンター席に座る蓮が目に入り、髭を蓄えた仏頂面を少し明るくした。

「……蓮! そうか、今日だったな。…………おかえり」

「ただいま」

 蓮が笑って答える。

 

 と、蓮のバッグがもぞもぞと動き出し、中から黒い生き物が飛び出した。

「プハッ! ワガハイもいるぞゴシュジン! 久しぶりだな!」

 何やらニャーニャーと鳴いている黒猫に目をやり、マスターは呆れた様子で言った。

「お前まだバッグに猫入れてたのかよ。かわいそうだぞ」

 

「猫じゃねぇよ!! …………いや猫だけど! ワガハイはここが一番居心地がいいんだ」

「相変わらずよく鳴く猫だな。蓮、ブレンドでいいか?」

 惣治郎はそう蓮に尋ね、店外へと出た。

 

 丁度ルブランに駄弁りに来た常連の老夫婦と鉢合わせ、老爺がマスターに話しかける。

「あれマスター、もう閉めちゃうのかい」

「あー悪いね、今日はもう閉店だ」

 そう言ってドアの札を掛け替え、さっさと店内に戻っていった。

 

 

◇◆◇

 

 

 惣治郎の淹れたコーヒーを飲み終わり、蓮は席を立った。

「双葉が帰ってくるのにもまだ時間がある。荷物は上に運んであるから、整理でもして来い」

 惣治郎が声をかけ、蓮が頷いた。

「あぁ、それと…………」

 

 階段を登りかけていた蓮を呼び止める。

「二階はそのままにしてある。ま、今更気にしねぇだろうが、自由に使え」

 

 1時間後、荷物の整理を終えた蓮はベッドの上に座り、モルガナと話していた。

 と、下から女の溌剌とした声が聞こえた。

「たっだいまー!」

 聞き覚えのある声が耳に入り、蓮はモルガナと共に階段を降りた。

 

「惣治郎、惣治郎! 聞いてくれ! 今日な───」

 満面の笑みで語りかける双葉に、惣治郎もまた穏やかで嬉しそうな表情を浮かべていた。

 1年前身にまとい波乱万丈の毎日を過ごしてきた、あの制服と同じものが双葉を包んでいる。

 

「双葉」

 双葉の話を遮り、惣治郎が声をかける。腕を組んだまま蓮の方に視線を移す。

 惣治郎につられ、双葉が階段を見た。

 

 キョトンとした顔がパッと明るくなった。ゆっくりと身体を蓮の方に向け、歩み寄る。

 まだ理解が追いついていないのか、少し怯えた様子で、確かめるように蓮に手を伸ばした。

 手と手が触れ、双葉はふわっと笑顔を浮かべた。そして一歩、二歩と歩を進め、蓮に抱き着いた。

 

「蓮っ……! 本物だ…………っ!」

「久しぶり、双葉」

 

 十分後、一度家に帰って着替えを済ませた双葉は、蓮と並んでカウンター席に座り楽しそうに話していた。

「ほんと久しぶりだなっ! 夏休み以来か?」

「こいつと杏殿は受験だったからな。先月とかヤバかったんだぜ。迂闊に話しかけられやしねぇ」

 退屈だったぜ───と、モルガナは愚痴を漏らす。

 

「今日はなんで帰ってこれたんだ?」

「大学の入学手続きだ」

 蓮が短く答える。双葉は待ってましたと言わんばかりに声を上げた。

 

「じゃあこっちの大学受かったのか!? すげー! おめでとう!!」

 礼を述べる隙も与えず、さらに続けた。

「なぁ! どこに住むんだ? ここからどれぐらい?」

 惣治郎と蓮が顔を見合わせ、何かを企んでいるような笑みを浮かべる。

 

「えっ? なになに? …………なんだよ!」

 ニヤニヤしながら惣治郎が答える。

「……ここだよ」

 

「…………へっ?」

 間の抜けた声を出し、そして目を輝かせて蓮の腕をつかんだ。

「ほ、ほほ、ほんとか!?」

 そう繰り返しながら、興奮した様子で蓮を揺さぶる。

 

「ま、ワガハイも住めるような部屋が見つかるまでだけどな。少なくとも春休みまではここに居るつもりだぜ」

「やったーーー!!!」

「聞いちゃいねぇ……」

 モルガナが呆れて言う。

 

「そう言えばすみれにはもう会ったのか?」

 双葉が冷やかすような口調で尋ねた。

「今日の練習、見に行こうと思ってる」

 

 

◇◆◇

 

 

 日が沈み始め、蓮は1人電車に揺られていた。

 半年ぶりの恋人との再会を前に、蓮は表情に出さずとも緊張していた。長い溜息を吐き、少し気持ちを落ち着ける。

 不安と期待で立っている事すら辛いほどに足が震えていた。つり革を掴む手に汗が滲み、より強く握り直す。

 

 目的地に到着したことを伝えるアナウンスが聞こえ、蓮は電車を降り、すみれが通う体育館へと向かった。

 モルガナは気を使っていつの間にかいなくなっていた。

 いつもより軽いバッグに不可思議な不安感を覚え歩いていると、気付いたときには体育館の目の前まで来ていた。

 

 ドアの前に立ち、深呼吸を何度か繰り返す。

 と、その時、突然ドアが開き見覚えのある女性が出てきた。

「あら、君は…………」

 蓮に気づき声をかける。

 

「雨宮蓮です。お久しぶりです」

「あぁ、すみれの。あの子なら中で練習しているわ。見に来たのでしょう? その様子だとあの子に内緒で」

 怖いほど自分の状況を見破る平口コーチに、蓮は脱帽した。

「入りなさい。案内してあげるわ」

 そう言われ、蓮は平口に連れられてガラス越しに練習風景を見ることのできる、観覧席に通された。

 

 レオタードを身にまとい、優雅に舞っているすみれに、蓮は目を奪われた。

 その場にあるすべてがすみれの演技のためだけにあるかのように、すみれは大胆で、尚且つ本人の繊細さが見て取れるような、美しい踊りを見せつけていた。

 演技が終わり、蓮は感動で身を震わせた。ただ見ているだけのはずなのに、鼓動はどんどん加速していく。

 

 平口の評価を聞くすみれはいつになく真剣で、恋人には見せないようなアスリートの顔をしていた。

 数十分間練習風景を観て、練習が終わり、蓮はすみれに会いに行こうと席を立った。

 すると、ガラス越しにある光景が目に入った。

 

 ベンチに座って休憩をしていたすみれの隣に、見知らぬ男が腰を据えた。女子の隣で同じく新体操の練習をし、先程演技するすみれを見てコーチに叱られていた男だ。

 蓮のいる観覧席からは何を話しているか分からなかったが、男は何やら楽しそうに話をしていた。

 男の発言に、すみれが笑う。

 

 蓮は苛立ちをぐっとこらえ、さっさと会いに行こうとその場を離れようとした。

 と、男が少し腰を浮かせ、不自然にすみれに近づき座り直した。

 次の刹那、蓮の中で何かがはじけた。

 

 自分でもなぜそんなに苛立っているのか理解できなかった。

 だが蓮は許せなかった。許すわけにはいかなかった。

 

 ゆっくりと観覧席を離れ、一歩一歩踏みしめて、すみれの所へ向かった。

 体育館の扉を静かに開き、あたりを見回す。

 ベンチに座るすみれと男が目に入った。男は先程よりもさらに身を近づけていた。

 

 別の生徒と話をしている平口を横目に、蓮はすみれに近づいた。

 後ろからすみれに声をかけると、すみれは酷く驚いた様子で振り返った。

 蓮の顔を見てすぐに表情を明るくさせ、喜びと疑問が入り混じったような形容しがたい様子で蓮に駆け寄る。

 男は困惑した表情を浮かべた後、面白くなさそうな顔をした。

 

「蓮先輩!? どうしてここに!!?」

 嬉しそうなすみれと対照的に、蓮を睨みつけていた男の顔が、少し穏やかになった。

 蓮とすみれの間には少し距離が空いていた。男は恐らくそれを見て、そしてすみれの呼び方を聞いて、恋人ではないと思ったのだろう。

 

 男の考えていることを察し、蓮はすみれとの距離を詰めた。

 少し近づいただけであるにも関わらず、すみれが頬を赤らめる。

 そして、半年ぶりに再開した愛おしい彼女を、蓮はきつく抱きしめた。

 

「えっ? ちょ、先輩!? みんな見てますよ…………!」

 今までにないほど顔を真っ赤にさせ、すみれが言う。だがそう言いながらも、すみれは抵抗することは無かった。

 気を使った平口が、すみれと蓮に気が向かないようにと、皆の注意を自分に集中させた。

 

 唯一その光景を見ていた男が怒りと悔しさで拳を震わせていた。

 激しい音を立ててベンチを立ち上がり、怒りに任せてさっさと体育館を去っていった。

 その音は注意していなければ驚いて飛び跳ねそうなほど大きかったが、すみれの耳にはもはや届いていなかった。




 お読みいただきありがとうございました。

 18禁バージョンはpixivにアップしております。許せる方はそちらもどうぞお読みください。(第1話は同じです)


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