【P5Rその後】地獄の女神は笑う【二次創作】 作:KOMOREBI
本作品には以下の注意事項がございます。
・ATLAS様の「ペルソナ5ザ・ロイヤル」の二次創作作品です
・無印版ではなく、完全版の方のその後ですので、本編のネタバレが含まれています
・よく言えばスピーディー、悪く言えば展開が早すぎる
・稚拙な文章
以上のことが許せる方はどうぞ楽しんでいってください。
この作品はフィクションです。実在する人物、団体、事象、宗教とは一切関係ありません。
怪盗団のメンバーと別れ、蓮とすみれの2人は並んで歩いていた。
空港に近い道路ということもあり比較的交通量が多い。
スマホでマップを見ながら歩く蓮は、無意識に道路側に移動した。
そんな取るに足らない事でも、すみれは蓮の小さな優しさに胸をときめかせ、「この人を好きになってよかった」と感じていた。
一年前とは違いメガネをかけていない蓮の横顔に見惚れながら、手を繋ごうと蓮の右手に目をやった。
ただでさえ極度の照れ屋であるすみれが勇気を振り絞って自ら手を取ろうとしたにも関わらず、蓮の右の手はスマホに奪われていた。
中途半端に伸ばした左手を虚しく引っ込め、すみれは少々寂しそうな表情を浮かべる。
と、蓮が徐にスマホをポケットにしまった。
「すみれ、おいで」
少し下がって歩いていたすみれに呼びかけ、自分の右手を差し出す。
笑顔で手を出す蓮に、すみれは一気に顔を赤くさせた。
胸の高鳴りを抑えながら、「し、失礼します……!」と慌てて言い手を取る。
蓮の大きくてごつごつした男らしい手がすみれの手を包み込む。
と、不意に蓮がすみれの細い指に自分の指を絡めて繋ぎ方を変えた。
すみれは莫大な緊張と恥ずかしさで全身から汗が噴き出るのを感じた。
「せ、せせせ……先輩!!?」
すみれがあわあわしながら蓮に呼びかける。
「ん? どうした、すみれ」
蓮が笑顔で返す。
「あうぅ…………そ、そんな、笑顔で見つめるの、やめてください……。はず、恥ずかしいです……」
小さな声でぼそぼそと言う。
「ごめん、よく聞こえなかった。もう一回言って」
そう言って手を繋いだまま顔を近づける。
が、逆効果だったようで、すみれは余計に顔を赤くさせて俯いてしまった。
聞こえるか聞こえないかの小さな小さな声でぼそぼそと何かを繰り返している。
「せ、先輩……!」
やっと顔を上げたすみれが大声で蓮を呼ぶ。
「どうした?」
「そ、その…………そういうの、わ、私以外には……やらないで、欲しいです…………」
耳の先まで赤くさせながらすみれが言う。
今すぐにでも抱きしめたい衝動を抑え、余裕を持った様子を装いつつ短く答えた。
「うん。分かった」
すみれは蓮の返答を聞き、安心したような表情を浮かべた。
◇◆◇
「ふぉぉぉぉおおお…………凄いですねこれ……」
数分後、電車に乗って移動した2人はビュッフェ形式のレストランへと来ていた。
たくさんの料理を前にすみれは興奮した様子でいた。言わずもがな、すみれは大の食事好きで大食いであった。
店員に席を案内され、息をつく暇もなく、すみれは大量の料理を取ってきた。
大食いに慣れていた蓮と、慣れているはずの店員を引かせる程に。
テーブルを埋め尽くすほどに盛られた料理を前に、すみれは満面の笑顔を浮かべていた。
どんどん減っていく料理と、幸せそうに食べるすみれを前に、蓮は笑いながらそれを眺めている。
「蓮先輩! これ、すごくおいしいですよ!」
そう言ってすみれが料理の一つを箸でつかんで見せた。
不意打ちをするように、蓮はすみれが見せてきたそれを口にした。
咀嚼しながら口を押さえて言う。
「ん、ほんとだ。おいしいね」
「……あっ、あ…………はわ……わ…………………せ、せん……先輩…………」
すみれは顔を赤くさせ、口をパクパクさせながら何とか声を絞り出している。
「どうした?」
自分の分の料理を食べながら、すっとぼけたように尋ねる。
「ど、どど、どうしたって…………。どうしたもこうしたもないですよ!!」
そう言いながら、恥ずかしがりつつも食べることはやめていないところがすみれらしい。
少し時間が経ち、すみれは何も言わずに黙々と食事をしていた。
目の前の料理が減るスピードはどんどん加速していき、ビュッフェの料理を全て食べつくさん勢いだった。
すみれが何も言わない理由は一目瞭然であった。
リスのように頬を膨らませ、蓮と目を合わせない。
これ以上ないほど分かりやすく怒っている。
だが、怒っているのは確かであったが、蓮の方をちらちらと気にしたり、美味しい料理を見つけては黙って蓮の皿に移したりと、そこまで怒ってはいないようだ。
沈黙に耐えられなくなったのか、蓮が尋ねる。
「あの…………すみれさん……?」
なぜか敬語になってしまった。
すみれはこちらを一瞥し、直ぐに料理に視線を戻した。
あからさまに怒った様子で顔を逸らしながら答える。
「……何ですか」
箸を置き、すみれの目を見て言う。
「なんで……怒ってらっしゃるんですか?」
沈黙。
口に含んでいたものを飲み込み、すみれが答えた。
「…………………………せ、先輩が……恥ずかしい事す、する、から…………」
横を向いたまま、口を押さえて顔を真っ赤にさせる。
その様子を見て蓮もつられる様に顔を赤くした。
「ご、ごめん…………」
「ん……」
◇◆◇
約一時間半後───
昼飯を十分に食べ腹を満たした蓮は、まだまだ食べるスピードを落としていないすみれを見ながら幸せそうに微笑んでいた。
店員は度々蓮たちのテーブルを見に来て、すみれの食べた量を目で測っては青ざめている。
「すみれ」
「ん? なんですか?」
「おいし?」
「はい! とっても!!」
「そっか」
と、店員が少し怯えた様子で声をかけてきた。
「あ、あのぅ…………」
「何ですか?」
蓮が笑顔で答える。
「あ、その、食べ放題の時間が……あと10分です…………」
「んん!!? んっ! んぐ!! げほっげほっ……」
店員の発言に、すみれが喉を詰まらせる。
蓮が席を立ち、水を差しだしてすみれの背中をさすった。
「残り10分ですよね。分かりました」
すみれの背中をさすりながら蓮が答える。
「あと10分ですか……!!? あれとあれと……あっ、あれも食べてもない!!」
どこまでも食べることをやめないすみれに、蓮は苦笑いを浮かべた。
「ほら先輩! いきますよ!!」
俺はもうお腹いっぱいなんだけどなぁ、などと考えながら幸せそうな顔で自分を呼ぶ彼女の方へ歩み寄った。
少しの時間が経ち、蓮とすみれの2人は駅に向かって歩いていた。
通行人はあまり多くなく、カップルとなると蓮たちしかいなかった。
と、静かな街並みに少々賑わっている場所を見つけた。
女性中心に20人程度が並んでいる。おそらく何かのお店なのだろう。
「ねぇすみれ、あそこ何か、な……」
すみれに話しかけ隣を向くと、よだれを垂らしながらだらしない様子で店を見ていた。
「す、すみれ?」
蓮が呼びかけるが、すみれはどんどんと店の方に吸い寄せられていく。
手を繋いでいた蓮はすみれに引っ張られる形で店に近づいた。
「ん? あ、なるほど。クレープか。食べるの?」
再び蓮が声をかけると、すみれがハッとして足を止めた。
「ふぇっ? あ! いや! べ、別に……そんなことないです……。さっきの、で、お腹一杯です!!」
「嘘だ。分かるよ、我慢しなくていいのに」
すみれを少し咎めるような口調で蓮が言う。
「でも…………私……」
蓮はすみれの次の言葉を静かに待った。
「せ、先輩は…………その……は、恥ずかしくないんですか?」
他者には言い難い秘密でも暴露するかのように、すみれは言った。
「…………恥ずかしい? ごめん、どういうこと?」
蓮が尋ねると、すみれは少し考えてから呟くように言った。
「……私、って…………その、人より、食べる量が、かなり多い…………じゃないですか……」
「食べるのは、もちろん大好きです! …………だけど、あまり見ていて気持ちいいものでは、無いと思うんです……」
思いもよらぬ言葉を聞き、蓮は言葉を詰まらせてしまった。
少しだけ沈黙が訪れ、すみれが再び口を開いた。
「……この前も、友達とご飯に行ったときに、引かれてしまったんです…………」
「先輩は優しいから、何も言わないだけで……本当は一緒に食べるの、嫌なんじゃないかな……って…………」
蓮は少し驚いた様な表情を浮かべ、そしてすぐに笑顔に変えた。
すみれの頭に手を乗せ、優しく撫でながら言う。
「なんだ、そんなこと気にしてたのか。嫌なわけないだろ。俺はすみれが食べてる所見るの、大好きだよ」
俯いていたすみれが顔を上げ、かぁっと赤く染める。
蓮はそれに気づかないフリをしさらに続けた。
「すみれは凄くおいしそうに、幸せそうに食べるから。見てるだけでこっちも幸せになる」
「そ、そんな…………」
すみれは恥ずかしさに顔を俯かせた。
「食べる? クレープ」
蓮が尋ねると、すみれは何も言わずに小さく頷いた。
数分後、店の近くに置かれていたベンチに座りすみれはクレープを食べていた。
俺も食べるから、と言い蓮は代金を支払ったが、その実、蓮の腹にはもう水の一滴も入れられそうになかった。
クレープを包む紙を剥き、嬉しそうに口を大きく開けた。
一口、また一口、二口、三口、四口五口六七八九…………。
蓮が気づいたときには、既にクレープは残り半分以下になっていた。
と、何かに気づいた様にハッと食べるのをやめ、すみれは申し訳なさそうに蓮に言った。
「あの、蓮先輩、ごめんなさい……。美味しくて夢中になっちゃって……」
「た、食べますよね」
そう言ってすみれがクレープを蓮に差し出す。
正直匂いを嗅ぐだけでも腹が張るような感覚を覚えるが、すみれの好意を無碍にするわけにはいかない。
1つ大きく深呼吸をし、蓮はすみれの持つクレープをパクっと食べた。
すみれがまた顔を赤くさせる。
「ん? どうした?」
「…………もうっ、何でもないですっ!」
首を傾げながら、すみれの顔を見つめる。
蓮に見つめられてすみれがより顔を赤らめる。
突然蓮がすみれの顔に手を伸ばした。
すみれが認識する世界の、時の進みが遅くなる。
迫りくる恋人の手にすみれはただ見ているだけだった。
蓮の人差し指がすみれの鼻の頭を軽く撫でた。
そのまま人差し指を口に運び、ペロッと舐める。
「クリーム、鼻についてたよ」
自分の鼻を指差し、笑って言った。
すみれはそれを見て口をパクパクさせていた。
◇◆◇
クレープを食べ終わった私、芳澤すみれと蓮先輩の2人は電車で数十分移動し、動物園に向かっていた。
千葉にあるその動物園は、上野や旭山などに比べれば大きくはないがレッサーパンダが有名な比較的大きな場所。
蓮先輩も来たことは無いらしいが、先輩はいつも完璧に私をエスコートしてくれる。今回もきっとかっこよくリードしてくれるはずだ。
隣で歩く蓮先輩は大きな手で私の手を包み、時々私の方を見て気を使って歩くスピードも合わせてくれている。
近くを車や自転車が通るたびに、少し庇うように私の前に出る。
蓮先輩とお付き合いを初めてずっとこうだが、ここまで、か、彼女に気を使える彼氏は、世界に蓮先輩だけだと思う。
こちらを見て笑いかけてくれる度に、何度も恋に落ちる音がした。
ただ笑ってくれるだけでも一々ときめいてしまうのに、蓮先輩はいつも慣れた様子で色々と恥ずかしいことをしてくる。
先輩も私が初めての彼女だと言っているが、その余裕はいったいどこから出ているのだろう…………。
学校の話、友達の話、新体操の話、色々と他愛のない話をしながら歩いていると、いつの間にか動物園についていた。
よく考えればほとんど私の話で、蓮先輩はずっと楽しそうに相槌を打ちながら聞いてくれていたが、少し申し訳ない気持ちが浮かんできた。
先輩にそれを伝えると、「俺はすみれの話聞くの好きだから」と優しく言ってくれた。全く、一体どれほど私を恥ずかしがらせれば気が済むのだろうか。
チケットを買って動物園に入場した。
2人で揃って入場する訳にはいかないので、自然と先輩と手を離してしまった。少し悲しい…………。
園内のマップが貼られた看板の前で何かを考えている先輩のところまで駆けていく。
幸い、先輩の手は今フリーだ。私は勇気を出してえいっと先輩の手を握った。
先輩がそれに気づいてこちらを向き、ふっと笑顔を見せる。
ヤバい、イケメンすぎる…………。
一年前は顔を見られないために大きな伊達メガネをかけていた先輩だったが、今はその必要もなく、メガネもかけていなければ前髪もちょうどいい長さに切られている。
つまり、先輩の隠れていたご尊顔が露わになっているという事だ。
もちろん、蓮先輩のことは顔がいいから好きになった訳では無い。
まぁ少しはそれもあるけど……。
それでもこの笑顔を見せられては敵わない。正直、先輩にはメガネをかけてもらい、この素顔は私だけのものにしたい。
顔が熱くなるのを感じて、悶えるのをぎゅっと我慢する。
ここは公衆の面前。理性を保て、私!!
来園者には見る限り家族連れが多い。私達のような男女2人組は見当たらない。
と、小さな男の子が私たちの所に走ってきた。
無邪気な笑顔を浮かべながら、私たちに指をさして言った。
「ねぇねぇぼく知ってるよ。おねーちゃんたち、かっぷるでしょ?」
「へっ……?」
突然の子供の発言に変な声が出てしまった。
カップル……。そっか、カップル、か…………。
なんだか凄く小恥ずか───
「うん。そうだよ」
「ふえっ?」
うわぁこれだからこのイケメンは…………。
笑顔で肯定する先輩を横目に、またもやおかしな声を上げてしまう。
「えっ違うの?」
私の声を聞いて、先輩が意地悪っぽく尋ねてきた。
「い、いやっ、違くてですね! あっ、違くはないんですけど! あの、その……」
自分の顔を見ることはできないが、恐らく真っ赤に染まっているだろう……。
「やっぱり!! ねぇ、おにーちゃんたちはちゅーするの?」
ちゅ、ちゅー!!? こ、この子は、なんてことを…………!?
「そうだね、するかもね」
ちょっ先輩!!!! 何を言ってるんですかそんな涼しい顔で!!
あぁ、ダメだ。私が、もたない……。
「コラ! 大智!! 何してるの!」
目の前の状況に追いつけずに目を回していた私に、救いの手が伸びた。
「すみません、うちの子が……。ほら大智!! あなたも謝りなさい」
あぁお母さん、そんなに怒らないであげて……。
◇◆◇
大智くんと別れた私たちは、園内へと入っていった。
園内にはたくさんの桜の木が生えていたが、まだ春と言っても始まったばかり。
桜はツボミばかりで綺麗な花は見ることができなかった。
先輩と手を繋いで歩き、ふれあい広場に入る。
ふれあい広場はその名の通り色々な動物と触れ合うことができるエリアで、なんと展望台やバーベキュー場もあるという。
バーベキューかぁ……。じゅるっ…………。
はっ! ヤバいヤバい! これ以上食いしん坊だと思われたら…………。
いやでも蓮先輩は、私が食べてる所……す、好き……って言ってくれたし…………。
「へぇ、バーベキュー場なんてあるんだ。キャンプとかも、楽しそうだね」
バーベキューを楽しんでいる人々を横目に先輩が言った。
蓮先輩と歩いているとどんどんやりたいことが増えてくる。
そう言えば、去年の夏はあんなことがあってプールにはいけなかったな……。
今年は、行けるといいな。
と、そんなことを考えているといつの間にやら目的の場所についていた。
ウサギやモルモットなどの小動物と触れ合える場所だ。
モフモフした可愛らしい生き物で溢れている。
私は表情を明るくさせ、先輩の腕を叩いて話しかける。
「見てください先輩! モフモフで可愛いですよ!」
「うん、可愛いね」
先輩がふわっと笑う。少し視線を上げると、先輩のくるくるした癖毛が目に入った。
わぁ、モフモフしてる。
私がふふっと笑うと、先輩は何が何だか分からない様子で首を傾げた。
数分後、私は膝の上にウサギを抱え、エサやり体験をしていた。
あまり高校生がやるようなことではないかもしれないが、初めての体験だし先輩と一緒ならなんでも楽しい。
先輩は隣に座り、スマホで撮影をしている。
「わっわっわっ、凄い! こんなに小さいのによく食べるんですね!」
ウサギが食べやすいようにカットされた野菜を食べさせる。
「こういう事だよ」
私の膝の上のウサギを優しく撫でながら、先輩がそう言った。どういう事だろう。
制限時間たっぷり動物との触れ合いを楽しみ、私たちは別のエリアに向かった。
カワウソやビーバーなどの小動物を見て、動物園一番の目玉のレッサーパンダの前まで来た。
私はよく知らないが、ネットでも有名なレッサーパンダがいるらしい。
私たちが見に行くと、丁度エサやりの時間だったようだ。
モフモフとした可愛いの具現化が木の上を元気よくかけている。
走りながら途中で後ろの仲間とじゃれ合ったりしている姿は何とも形容しがたい。
くりくりとしたつぶらな瞳でこちらを見つめられれば、誰しもが一瞬で落ちるだろう。
少し高い位置にあるエサを後ろ足だけで立って、前足でつかむ。
ただそれだけなのに何でこんなに可愛いのだろう。
カシャッ
うん? カシャッ? 何の音?
音につられて横を見ると、蓮先輩がこちらにスマホを向けていた。
「楽しそうだったから」
先輩がスマホを向けたまま言う。
「急に撮らないでくださいよっ!」
わざと少し怒ったような口調で言って、先輩の方に寄った。
「でもほら、すみれもレッサーパンダもいい顔してる。ホーム画面の背景にしようかな」
嬉しそうにニコニコしながら先輩は写真を見せてきた。
「えっ? そ、それはちょっと…………///」
背景にしたいと言われ、思わず断ってしまった。
「ダメ? 可愛いのに」
「か、可愛い…………!? 別に、ダメ、じゃ、ないです、けど…………」
また、私の悪い癖だ。恥ずかしくて、自信が無くて、ぼそぼそと喋ってはっきりしない。
「…………すみれ、あそこに売店があるから行ってみようか」
私の心情を察してくれたのか、先輩が提案をしてくれた。
普通ならあんな私の考えを読み取るなんて無理だと思うだろうが、蓮先輩は怖いぐらい私の考えていることを的確に察して気を使ってくれる。
やっぱり、一緒にいて一番気を許せるのは蓮先輩だ。
蓮先輩に手を引かれ、売店に入った。
色々な可愛い動物たちをモチーフにしたストラップやら文房具やらが並ぶ中で、レッサーパンダのストラップが目に入った。
私の提案で蓮先輩とお揃いでストラップを購入した。
また先輩との思い出が一つ増え、私は自分の心が温かい何かで満たされていくのを感じた。
その後もライオンやトラなどがいる猛獣エリア、ペンギンなどがいる水系エリアなどを一通り見て回り、辺りは暗くなり始めて来ていた。
西日が自分たちを照らし、周りの風景は赤く染まっている。
そう言えば、日が沈み始めるこの時間帯は現世と異世界の境界が曖昧になると聞いたことがある。
オカルトっぽく聞こえるが、人の心の世界を経験してきた私たちからすれば意外と馬鹿にできるものではないのかもしれない。
とその時、先輩と繋がれていた手が突然離された。
何かあったのかと思い先輩の方を向く。
私の隣で蓮先輩は、苦しそうに頭を押さえていた。
「せ、先輩!!!? どうしたんですか!? 大丈夫ですか!!?」
おろおろしながらどうすればいいか分からず、とりあえず背中をさすってみることしかできなかった。
運の悪いことに周りにはスタッフどころか客もおらず、閑散としていた。
「ごめん、もう大丈夫だ。心配させてごめん」
数秒が経ち、蓮先輩は何事もなかったかのようにそう言った。
私を気遣っているのではなく、本当に何とも無さそうだ。
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
「うん、本当に大丈夫」
先輩はそう言って私の手を取り、再び歩き始めた。
まさかこの些細な出来事が、私たちを再びあの世界に招く始まりだったとは、この時は知る由もなかった───
お読みいただきありがとうございました。
18禁バージョンはpixivにアップしております。許せる方はそちらもどうぞお読みください。(第1話、3話は同じです)
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