【P5Rその後】地獄の女神は笑う【二次創作】   作:KOMOREBI

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 前回も言ったけど遅くなって申し訳ない。

 本作品には以下の注意事項がございます。


・ATLAS様の「ペルソナ5ザ・ロイヤル」の二次創作作品です

・無印版ではなく、完全版の方のその後ですので、本編のネタバレが含まれています

・よく言えばスピーディー、悪く言えば展開が早すぎる

・稚拙な文章

 以上のことが許せる方はどうぞ楽しんでいってください。


 この作品はフィクションです。実在する人物、団体、事象、宗教とは一切関係ありません。


第6話 その先に潜む影

「大丈夫? すみれ、重くない?」

 大きなバッグを持って隣に立つすみれを気にかけ、蓮は声をかけた。

「はいっ、大丈夫です! 合宿の時に比べれば全然軽い方です」

 そう言って宿泊に必要なものが入った少々重そうなバッグを軽々と持ち上げて見せる。

 

 約1週間前、蓮の合格祝いと称して2人は初めての旅行に行くことを決めた。

 高校生の短い春休みの中で唯一取れた2日の休みに、すみれは惜しげも無く蓮との温泉旅行を置いたのだ。

 泊まりどころか遠出すら初めての2人。すみれは前日からおかしな汗が止まらないほどに緊張していた。

 

 昨日の夜考えに考えて決めたファッションもすみれを緊張させる一つの要因になっていた。

 自分の意思で選び、そして蓮に「可愛い、好きだ」と言われたすみれ色のワンピース。悩んだ末、結局それに落ち着いた。

 薄茶色の細いベルトを締め、襟は杏に今流行りなのだと教えてもらったレースの付いた大きな白いものに付け替えた。

 

 蓮は小さな変化にも敏感に気づき、爽やかな笑顔でさり気なく「可愛い」とそう伝えた。

 満更でもなさそうにハーフアップにした綺麗な赤みがかった髪の毛を弄りながら、すみれは頬を赤らめた。

「いつもと違う髪型も似合ってるよ。雰囲気変わって可愛い。でもこんなに可愛いと、変な奴が寄り付かないか心配だな」

 恥ずかしい誉め言葉を息をするように言う蓮を顔を赤く染めたまま「もう」と軽く叩く。

 

 周りを見ると家族連ればかりで、すみれはなぜだか悪いことをしている気がした。

 正体の分からない誰かに見つからないように辺りをきょろきょろと見回す。その誰かは学校の友人であったかもしれないし、先生であったかもしれない。

 ただそれが誰であろうと見つかればすぐに現実に引き戻されてしまいそうな、そんな気がした。

 

 

◇◆◇

 

 

 1分も違うことなく時間ぴったりに来た新幹線に乗って数十分が経過した。

「先輩っ!! 外見てみてください! すごく綺麗ですよ!!」

 車内販売で買ったじゃがりこを片手に、すみれが目を輝かせて蓮の肩を叩く。

 すみれの視線の先に広がる雄大な自然は、東京という都会を生活の拠点にしていれば目にすることはないような酷く美しいものだった。

 

 田舎出身である蓮でもあまり見ないようなその景色は車窓に縁どられて流れ、2人を異世界へと運んだ。

 すみれに言われ窓の方を向くが、蓮の目に入っていたのはそんな景色ではなくその景色を見て楽しそうに笑っているすみれだった。

「あぁ、綺麗だな」

 視線の先にある美しいそれを見て、蓮は思わずため息を漏らすようにそう言った。

 

 それから長い移動時間を様々に過ごした。

 まだまだ尽きることのない1年間の話をしたり、二人でも楽しめるちょっとしたカードゲームをしたり、旅先のガイドブックを見て計画を立てたり……。

 出発して1時間半が経とうとした頃。すみれが小さく欠伸をした。

 

「眠い?」

「はい、少し……」

 どこか虚ろな目でそう答える。

 

「そっか、楽しみで寝られなかった?」

「は、はい…………」

 少し頬を赤らめながらすみれは俯いて言った。

 

「着くまで30分以上あるし、もし起きなかったら俺が起こすから寝てていいよ」

 隣に座るすみれの頭を優しく撫でながら小さく笑って言う。

「ほんとですか? じ、じゃあ寝ちゃおうかな……」

 頭を撫でられ少し恥ずかしそうにはにかんで言った。

 

「うん、ほら、頭いいよ」

 そう言ってぽんぽんと自分の肩を叩く。

 一瞬理解できずに固まるが、蓮の意図に気づいてぼっと顔を赤くした。

 

「し、失礼しますっ!」

 恐る恐るゆっくりと自分の頭を傾け、それを蓮の肩に預ける。

 口から飛び出してしまいそうなほどバクバクと鳴る心臓の音が蓮に聞こえてしまわないかと少しの不安を覚えた。

 

 それと同時に、こんなに好きなのは自分だけなのではないかと必要のない下らない心配さえも頭を過ぎる。

「おやすみ、すみれ」

 すぐ耳元でそう囁かれて、すみれはさらに顔を赤らめた。

 先程自分を襲った懸念などもう頭の中にはこれっぽちも無かった。

 

 

◇◆◇

 

 

 約2時間後、目的地である温泉街に着いた蓮とすみれは荷物を旅館に預け、チェックインまでの数時間を観光に当てることにした。

「もう昼か……」

 左腕を持ち上げ、腕時計を覗いてすみれに伝えるように、はたまた独り言のようにそう言う。

 

「どうする? 色々食べたりもしたし、がっつりはやめとく?」

 そう言いながら、視線を時計から自分の右隣へ移す。

 さすがに海外からの観光客も多い温泉街なだけあって、道の脇にはお土産やら名物料理やら心惹かれるようなものが並んだ店がずっと奥まで建ち並んでいる。

 視線の先にいるすみれは幸せそうに団子を頬張っていた。

 

「ふぉうふぉんはひはんでふふぁ?」

 口に団子を含んだまま蓮を見上げ、そう問い返した。

 リスの様に頬を膨らませて自分を見つめるすみれに蓮は思わず笑みを零した。

 すみれの頭に手を置き、子供を相手取る様に言う。

「飲み込んでから喋りな」

 

 蓮に笑われて羞恥心を覚えたのか、少し焦った様子で団子を飲み込む。

「も、もうそんな時間、ですか? 私はどっちでもいいですけど……、先輩、全然食べてないじゃないですか」

 心配そうにそう言って、蓮の返事を待つ。

 

「いや、俺の事は気にしなくて大丈夫だよ。すみれの好きな方で」

「で、でも……!」

「じゃあほら、新幹線の中で見たガイドブックに載ってた蕎麦屋にしない? 美味しそうだねって話してたとこ」

 

 

 1時間半後、午後1時過ぎ。

 蕎麦屋にて昼食を済ませた蓮とすみれの2人は店員に勧められた足湯へ向かおうと2人並んで歩いていた。

 

 1年前いつもポケットにつっこまれていた蓮の右手は、すみれのために外に放り出されている。

 すみれが握ってくるのを待つようにぷらぷらと不自然に揺らす。

 それに誘われて、すみれは蓮の右手に自分の左手を絡ませた。

 何も言わずに蓮がきゅっと握り返すと、隣で歩くすみれはふわりとやわらかく笑った。

 

 そうして十数分歩いたとき、すみれは段々と蓮の足取りが、僅かだがおぼつかなくなっていることに気づいた。

「ごめんすみれ、ちょっと座って休んでもいい? 食べすぎちゃったみたいで」

 その取ってつけられたような理由が嘘であることはもちろんすみれには分かっていたが、それについてはあえて言及せずに、言われた通り蓮を休ませた。

 

 食べすぎが嘘であることは分かっていたが、本当の理由は全くと言っていいほど分かっていなかった。

 ただこの前のデートの夕方に起こったことが、僅かに脳裏にちらついた。

 だがこれと言った共通点もなく、やはり原因解明には至らなかった。

 

 蓮は少し苦しそうにして頭を抑える。

 隣に座るすみれは蓮にピタッとくっついて寄り添い、心配そうな表情を浮かべていた。

 

 と、自分たちの座るベンチの前にぬっと何かが立ち塞がった。

 その影に気づいて2人がパッと顔を上げる。

「あの、大丈夫ですか?」

 

 その影と声の主は、2人のよく知る男だった。




 お読みいただきありがとうございました。

 18禁バージョンはpixivにアップしております。許せる方はそちらもどうぞお読みください。(第4話デート回の続きがあります)

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