まずは前置きから…そして、あの壮絶な時間のことを…。
ねこには苦手なものがいくつかあります。もちろんそれはSCPにも。
いくらねこが「SCPを召喚、操作できる」と言っても、それはあくまで召喚した場合のみ。自然発生したSCPには、私の能力は適用されないのです。だから、ねこが普通にあのデパートに入ったら、彼は否応なく私の名前を呼び、ねこは多くの人から忘れ去られていくでしょうし、ねこの力ではクソとk…不死身の爬虫類を召喚して使役することは出来ても、不死身の爬虫類に勝つことは出来ないのです。あの太陽の下に出れば、ねこはスライムになりますし、あの塔に登れば、ねこはこの体を乗っ取られてしまいます。
…さて、色々なSCPの中にも、ねこにとって最大の天敵のSCPが一つだけ存在します。今回は、そんなSCPとの戦いの模様をお伝えしたいと思います。皆さんも予想しながら、今回の話を読んでください。
あれはそう、もうすぐ春になりそうな、暖かい陽気のある日。ユイレさんにパソコンで編集を任せて、ねこは料理の下拵えをしていました。今夜もウォルターのジビエと蒸しポテト…今日は奮発して、ザクロのワインでも飲みましょうか。
なんて、いつものように準備をしているとユイレさんが、
「ねぇねこちゃん?前に投稿した動画が削除されているんだけれど、消した覚えある?」
と問いかけてきました。いいえ、もちろんありません。ねこの大きな収にゅ……皆さんが楽しんで見られる動画を、わざわざ消すなんて有り得ません。とはいえ、運営様から何か通知が届いていた覚えもありません。それに今はウォルターの返り血で手も汚れていますし、ユイレさんも動画に関する知識は少し持っているはず。
「非公開という訳ではありませんか?」
「えぇ、違うみたい。完全に削除されているわ」
「なるほど、ねこには皆目見当が付きませんね。とりあえず、後で対処するので、今は今日上げる予定の動画をお願いします。」
「わかったわねこちゃん、もう少しで終わりそうだから待ってて」
ふむ、これは困りましたね。早急に下拵えを終わらせましょうか。
ウォルターをオーブンの中に入れてツマミを回したところで、ユイレさんから声がかかります。
「動画のアップロード、終わったよ、ねこちゃん!」
「お疲れ様です、ユイレさん。間もなく開店時間なので、そのままテーブルの準備をお願いします。」
「え〜…少し休みたいよ〜…」
「…仕方ありませんね、どうぞ、飲んでください。」
ねこはユイレさんに、今日取れたばかりの桃を使ったジュースを渡します。もちろん、臓器なんて増えませんよ?ねこが召喚した木から収穫したフルーツですからね。
「やったー!ありがとうねこちゃん!」
「飲んだらしっかりとお店の準備を手伝ってくださいね」
「もちろん!ゴクッ……ゴクッ……ぷはーーっ!!!美味しいっ!」
…やれやれ。と、言っている間に、Twit○erで今日の動画の宣伝をしましょうか。パソコンを立ち上げ、青い鳥のアイコンをタップし…………。
「ねこのアカウントが、ありません………」
普段なら、青い鳥のアイコンを押せば私のアカウントに飛ぶはずなのに、そこに表示されたのは初期のログイン画面。間違えてログアウトしてしまったのか、そう思い、ログインしてみますが、そもそもそんなアカウントは存在しないという表示が。
「一体なぜ…。ねこのアカウントを、誰かが消したのでしょうか…?」
「でもそんな事して、何の利益があるのかしら?あ!私のアカウントは残ってるわ!」
ユイレさんのアカウントが残っていたようです。そちらで検索をかけてみますが、アカウントは出てきません。エゴサをしてみると
「ねこのSCPレストラン、めちゃくちゃ面白いのになんでT○itterやってないんだろう?」
「速報!ねこのSCPレストランの新動画が今日の○時に投稿予定!」
などのコメントばかり。まるで、ねこがずっと前からTwi○terをやっていなかったかのようなものばかり。いいえ、有り得ません。ねこのアカウントは確かに存在していたはずです。その証拠に、ねこの端末のカメラロールにはスクリーンショットが……。
「……スクリーンショットも無い。本当に、ねこの○witterに関する情報が消えています」
「でも、私達は覚えているのよね?皆が忘れているだけ、これはどういうこと…?」
ねこは困ってしまいました。こんな事あるのでしょうか。必死になって頭を回転させます。何故…何故……と、その時。
「ねこちゃん!これみて!」
「……これは…」
ユイレさんの言葉に振り返ると、そこにはYou○ubeの「ねこのSCPレストラン」のチャンネルの画面。そこに書かれていた動画の本数が…
20。
「おかしいですね。今回の動画で、確か22本目のはず。」
「えぇ、そうよね、既に投稿が完了しているわ。…過去の動画を遡ってみるわね」
ユイレさんが過去の動画を遡ると、やはり古い動画が2本、消えてしまっていました。
「ユイレさん、消していませんよね?」
「もちろんよ、そんな事しても、何の得もないじゃない?」
「ですよね、では一体何故…」
考えを巡らせます。ハッキング?ウイルス?これは、私の力ではどうにもならない事態。
「見て!また一本動画が消えてる!」
19。
何故。何故。分からない…だけど、何かが引っかかっている。
18。
昔の動画を思い出してみよう。…そう、今動画で使っているこの饅頭を提供してもらって、「伊れない病」を解説したのが最初の動画でしたね…。
17。
確か動画の内容は、デートイベントを失敗するとデーモン閣下に変身するSCPの話…。
16。
1万年の時を生き抜いたヘンリー氏の話。霊夢さんが運動不足で太ってジムに行きましょうという話をした…。
15。
そんな、日本生類創研の評価ランキング動画の前編。
14。
「ねこちゃん、何を言っているの…?」
ユイレさんの言葉に顔を上げると、ユイレさんが心配そうに顔を覗き込んでいます。
「何か、変なことを言っていましたか?」
「だって、初めて投稿された動画に関して、変なことを言っていたから…。」
「変なこと、ですか?」
「だって、投稿された最初の動画は、日本生類創研の評価ランキングの後編動画なのに!ねこちゃん、伊れない病を解説した、デートに失敗するとデーモン閣下に変身する、1万年の時を生きたヘンリーさんの話を解説した、日本生類創研の評価ランキング動画の前編なんて言っていたのよ!?」
13。
…いや、おかしい。そもそもがおかしいのだ。ねこの最初の動画は、迷いの森の動画だったはず。そもそも、ユイレさんの言葉が正しいとしても、最初の動画で「後編」なんて有り得るのだろうか。
12。
…いや、そもそも。
霊夢とは誰だ?
「…………ねぇねこちゃん、これ、明らかにおかしいわよね。」
「えぇ、おかしいです。ユイレさん、ねことあなたで、いっせーので、このチャンネルの最初の動画を言ってみましょう。」
「……?わかったわ。せーの…」
「「如月工務店トップ5の前編」」
ユイレさんが取り乱す。
「おかしいわ!だって私、さっき自分で言ったもの!最初の動画は、日本生類創研の後編だって!」
「…………これは、記憶の改竄?記憶操作?…いいえ、このレストランが財団に見つかった可能性はありません。記憶処理……このレストランに?アンニュイ・プロトコルでも使われたのか…?それとも、PUNEUMA……。
そう考えを巡らせたところで、ねこの思考はあるひとつの可能性に辿り着きました。今日、さっき投稿された動画………。
「ユイレさん!!!」
「ひゃい!?」
「ユイレさん、ねこが開いたページ『だけ』を見て、動画を作りましたよね!?」
「え?そ、それはもちろん…」
「1度も!ページを消していませんよね!?そして、検索し直していませんね!?」
珍しくねこの声が荒くなっているのがわかります。あぁ、ユイレさん…その顔をしてはいけないのです……。
11。
「え、えぇ…1度だけ。ページが消えてしまったから、検索し直したわ。」
考えを巡らせる。あぁ、そういうことか。全ての謎が解けた。恐らくもう、手遅れになりかけている。
ねこは必死に、解決策を探します。どうする?自分で動画を消せば止まるか?いや、そんな生易しいものでは無いはずだ。
10。
この動画の本数は、いわば終わりへのカウントダウン。迂闊だった。ユイレさんに説明しておけばよかった。あのページは、あの報告書は、「ねこの力を使って開いた『無力化された』ページだった」と。
9。
考えるのです、解決策を出さないと、ねこもユイレさんも消えてしまう。
ねこもユイレさんも、この膨大なネットワークの中でしか存在できない。故に、今起きているこの事態はねことユイレさんにとって致命的な事態である。
8。
どうすればいい。一体どうしたら……。
「わ、私のアカウントも消えているわ…!なんで!?消してないのに!」
「ユイレさん、まだ気付きませんか…?今日の動画を思い出してみてください。古い動画から消えていくのですから、先程アップされた動画の記憶はまだあるでしょう?」
「え、えぇ…確か今日の動画は、「動画やネットに関するSCP特集」だったわね…。昨今のおうち時間で、ネットを使うことが増えた視聴者の皆さんに向けて作った動画で…。」
7。
「出てきたSCPを思い出してみてください。」
「まず、カメラ・ディスラクション…カメラに異常を与えるSCP…。そして、認識災害クソ投稿……。紙魚いる………、ビデオゲーム・バイオレンス………最後に…………!?」
ユイレさんも気付いたようだ。自分がしてしまったことに。
6。
「ユイレさん、あなたが動画を作る上で、認識災害クソ投稿やカメラ・ディスラクションの影響を受けなかったのは、ねこがねこの力を使って表示したページだったからです。もちろん、あのページも。仮にねこの力を使えば、『みつけたよ』などのページも、無影響のまま見ることができますから。」
「あぁ…私…なんてことを………。」
「起こってしまった事は仕方ありません…が、ねこもこのまま終わるほど、従順ではありません。ユイレさんも考えてください、この状況を打開する案を。」
5。
ついに最初の動画の記憶が、ねこのチャンネルの解説動画になってしまいました。…まるで本当に、チャンネルの動画の初投稿のように。
「いや…嫌よねこちゃん…!私達のチャンネルが…!私達の努力が作り替えられて…消えちゃうなんて…!」
………初投稿?作り替え………。
「それです!ユイレさん!」
4。
ねこは大急ぎでパソコンを立ち上げ、Y○uTubeを開きました。…但し、開いたのはねこのチャンネルではありません。
「間に合ってください…!」
「な、何をするつもりなの!?」
「このチャンネルの動画が全て消えたら、次は何が消えると思いますか!?」
「何って…もう消えるものなんて…」
「思い出してみてください。あの報告書の結末を…」
「……っ…もしかして…!」
「えぇ…そういうことです…」
3。
「だから、これが最初で最後の対抗手段です。悪あがきですが、もうなりふり構ってなどいられませんから…!」
「間に合って…!お願い………!!!」
2。
ボタンを押します。短い動画だから、間に合うはず…!
あぁ、まるでこれは、SCP2000のよう。
いつか解説してみたいものですね。
1。
あぁ…だからどうか…お願いです…。
ねこ達を、忘れないで…………。
0。
…以上です。
さて、ここからは謎解きの、答え合わせの時間です。
皆さんは分かりましたか?かなり遠回しに話しましたが、勘の良い皆様であればもうお解りのはずです。
その前に、ねこがどうやってこの危機的状況を回避したのかお話しましょう。
答えは簡単です。
新しいチャンネルを作り直したんです。
そして新しく、「ようこそ、SCPレストランへ。」の動画を上げ直したんです。そしてそこに認識災害の力を与え、あたかも新しいチャンネルこそが、本来のねこのSCPレストランであると、視聴者に認識させたのです。
これによって、ねことユイレさんを擬似的に複製したのです。
ねことユイレさん…ネットに紐づけられたねこ達だからこそ出来た芸当でしょう。
ねことユイレさんが複製された直後、元々のチャンネルは完全に削除されました。しかし、再生数とチャンネル登録者を犠牲に、ねことユイレさんは助かったのです。
…さて、最後に全ての答え合わせと行きましょう。
…ユイレさんがページを消してしまったと言っていましたが、これ自体があのSCPの罠だったとしたら。
そう、その存在を知ってしまった全ての存在を消してしまうSCP。
ねこにとって最大の天敵。
SCP-404-JP
Not Found。
ふう、語りすぎて疲れましたね。
あぁご安心を、ねこの能力を使ってますので、ここで存在を知っても消えることはありません。
但し、報告書を見に行くかどうかは自己責任で…。
ねこはユイレさんにコップに注いだ泉の水を渡します。
もちろん、効果抜群です。若さを保つ為には能力を惜しみません。
それはユイレさんも同じです。さすがに自分だけ、などということはしません。普段頑張ってくれているユイレさんにも、泉の水をプレゼント………。
パチンっ!!!
「キャッ!また服のボタンが取れちゃった………そろそろ新調しないとダメかしら…」
…ねこの天敵は意外と身近にいたようです。
ねこも泉の水を沢山飲めば、ユイレさんに並ぶことが出来るのでしょうか。
…そこのあなた、泉の水を飲んでいるのに変わらないなら、それが限界でしょ、と思いましたね?
そんなあなたにおすすめのSCPを、ねこが紹介して差し上げます。
どうぞ、下のリンクをコピーして、絶対に本家様記事に進んでください。
http://scp-jp.wikidot.com/scp-404-jp
この小説はSCP財団のSCP-040-JP(http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp)を中心としたSCP二次創作SSになります。
この作品は、SCP-040-JP「ねこですよろしくおねがいします」に対して独自の解釈が有ります。
このコンテンツは、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス(http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja)の元で利用可能です。
またこの小説は、YouTubeチャンネル「ねこのSCPレストラン」の応援小説です。
「ねこのSCPレストラン」に対しての独自の解釈が多く含まれています。
「ねこのSCPレストラン」チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCsUE9GXFRsb1ISA2PE0q96A
「ねこのSCPレストラン」Twitter
@040_jp_resto
登場SCP一覧(登場順)
SCP-544-JP「孤独な放送室」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-544-jp
SCP-682「不死身の爬虫類」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
SCP-001 S.D.ロックの提言 「夜明けの刻」
http://scp-jp.wikidot.com/shaggydredlocks-proposal
SCP-3333 「塔」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3333
SCP-524「雑食うさぎのウォルター」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-524
SCP-1689「じゃがいも入れの袋」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1689
SCP-647-JP「子憂う母に芳醇なる忘憂を」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-647-jp
SCP-757「果物のなる樹」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-757
SCP161-JP「伊れない病」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-161-jp
SCP-1982-JP「"素顔"を見せます」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1982-jp
SCP-2503「推定距離:9216年」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2503
SCP-8900-EX「青い、青い空」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-8900-ex
SCP-5000「どうして?」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-5000
SCP-895「カメラ・ディスラクション」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-895
SCP-3078「認識災害クソ投稿」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3078
SCP-132-JP「紙魚入る」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-132-jp
SCP-2639「ビデオゲーム・バイオレンス」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2639
SCP-CN-994「みつけたよ」
http://scp-jp.wikidot.com/deleted:scp-cn-994
SCP-2000「機械仕掛けの神」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2000
SCP-006「若さの泉」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-006
SCP-404-JP「Not Found」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-404-jp
SCP-040-JP「ねこですよろしくおねがいします」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp