連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
昔の日常
彼の父、アポロンは様々な人間と愛の物語を残した。しかし、大抵の話はハッピーエンドに終わっていない。そして、アスクレピオスの母コロニスもアポロンの手によりこの世を去った。
では、アスクレピオス本人はどんな恋愛談を残したのか。「一人の女神との間に複数の子を成した」これが事実であり、大した逸話も残っていない。
「僕にとって、彼女は生活を支えてくれた恩人だよ。ただ、これといった思い出がある訳でもない。医学の研究に勤しむ僕とそれを補佐してくれた彼女、それが全てなんだからな」
薬を調合しながらマスターにそう語る彼の背中はいつもと何の変わりもなかった。
「ふーん。けどさあ、今ここにその奥さんはいないじゃん? 支えてくれる人とか欲しくならないの?」
座っている椅子の背もたれに胸板を預け、マスターは素朴に疑問をぶつけた。
「いや、あの頃より医療設備は整っているし君と言うパトロンはよくサポートしてくれる。研究の時間さえくれれば何の文句もないな」
「そんなもんなのかなあ。イアソン様と若い若奥様のやり取りを見てたら『サーヴァントだってカルデアで恋に悩む』ってことがあると思って彼らに身近な君に聞いてみたんだけどね」
退屈そうに反り返るマスター。愛だの恋だの知らずに任務に専念している手前、この少年は話を聞けずに残念がっているようだ。
「じゃ、また来るよ。お医者様もたまには息抜きに遊んでもいいんだからね」
軽やかなステップで医務室を後にするマスター(男)。彼にとっては恋愛だろうが戦闘だろうが英霊たちの話は何でも興味があるジャンルである。
「.....まあ、彼が聞きたいのは僕が『経験した』事だ。今しがた『巻き込まれている』ことは逆に不安にさせる事しかしないだろうな」
重い溜息が誰もいない医務室に響き渡る。
そして、近づいて来る鎧の響きを付随した足音。
「やれやれ。今日も来るのかね、彼女は」
多少騒がれても支障がないように薬品の整理をするアスクレピオス。
彼は、恋というものに興味がない。しかし、向こうから自然と持ち込んでくることはこの男女多きカルデアではまあまあの確率で発生するのだ。その矛先が、マスターでなくとも。
「やあ! ご機嫌いかがかな医師殿。今日も酒のつまみがてら訳の分からない健康の説教でも聞こうじゃあありませんか!」
そして、扉が開いて一人の女が喧しさ全開で入ってきた。
右手に槍、ではなく焼酎瓶。左手におちょこを持つこちらの大酒のみ、越後の軍神、長尾景虎である。
初めまして、里見レイと申します。
二次創作に関しては、五年以上前から自前のノートに書き記すほど好きでした。
で、今回ようやく筆を執った次第であります。
アスクレピオスは、私が実際のFGOでよく使う鯖でありつつも複雑なポジションを通って来ました。なら、そこに私のカルデアの鯖との繋がりを色々想像しやすく。
「こんな関わりがあったらいいなあ」を中心に描こうと思います。
長々と失礼しました、では。
里見レイ
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