連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
あれから、アスクレピオスはマスターの部屋へと直行する。一通りの交渉が済んだのでその報告と、イアソンが借りパクしていたステルスマント及び通信機の返却の為だ。
「マスター、アスクレピオスだ。色々と報告があるのだが、入ってもいいかい?」
「うん。もう対応してくれたんだね」
中からは、淡々としたマスターの声がする。流石の適応力、既にこの騒動の全貌と今後については理解している。
「......まずは、僕の周りで人事を揺るがすレベルの事件が起こってしまった事を謝らせてくれ」
さっとドアを開けたアスクレピオスは、マスターを視認する前に頭を下げた。
「あ、アスクレピオス! そんなむやみに謝らないで! 俺はまずは君からの対処した結果を聞きたいわけだから」
若干慌てた声色のマスター。彼自身がこの医師を大変信用しており頼っている証拠だ。
「あ、確かにそうだな。じゃあ、まずはブーディカについてだが......」
ドアを閉め、アスクレピオスはこれまでの会話その他について報告をした。その時間、わずか三分。長く語れば伝わる訳ではない。
「ってことだ。まあ、エミヤとマルタに関しては負担が大きくなってしまうのが若干の負担になりかねないのが一番の心配事だな。あとは、むしろ職場としては問題ないかもしれない。ブーディカも、久々の休暇となるからな」
マスターに対しては、常に平常心で接するように心がけている。彼が背負っているものを考えれば、余計な負担を一切かけてはいけないからだ。
「なるほどね。こうなると、あとは噂がこれ以上下手な事態に発展しない様にいつも通り過ごすだけって事か」
顎に手を当てて、何かを思案するマスター。いつもは頼りなさげなことが多いが、誰かの緊急事態にはこのような切れ者の表情をする。
「アスクレピオス」
そして、マスターは医師の目を鋭い視線で見つめる。
「な、何だい?」
本能的に狼狽えてしまうアスクレピオス。嫌な予感がした。
「一つ、君に頼みたいことがあるんだよ」
「......」
「一か月だ」
その表情からは、何を考えているかアスクレピオスは理解できない。しかし、とんでもない面倒な内容であることは感じた。
「何の期間、だ?」
「君は、この一か月以内にお嫁さんを一人決めてもらいたいんだよ。勿論、今回の騒ぎの渦中にある景虎とブーディカでなくても構わない。けど、君には先例を作って欲しいんだよ。サーヴァント同士でも、それが例え生前に関わりがない者同士でも愛し合えるという事をね」
その言葉は、無茶苦茶という領域を遥かに超えていた。戦国大名の政略結婚を告げられた感覚とはこういうものなのかと以前図書館で読んだ本で考えたことが目の前で起きている。
アスクレピオスにとっては、どう転んでも今までの生活には戻れない。それは、恐怖以外の何物でもなかった。
うちのマスター、思った以上に自我がありました。最初、サーヴァント同士の恋愛だとどうしても邪魔者扱いのモブになるのかなあと思っていました。ただ、アスクレピオスに大きな決断を迫る役としては適役だったのでその方針になりました。
恐らくですけど、マスターは色々知っているので何か伏線めいたこともすると思います。回収できるように頑張りたいですが。
ではまた。評価、お待ちしております。
里見レイ
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