連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
だからこそ、話題にしたかった男がいる。
アスクレピオスを無言で見送ったマスターとマシュ。二人で目線を交差させた後、マスターの合図でマシュは通信機を操作し始めた。
「イアソンさん、こちらマシュ・キリエライトです。極秘作戦コードA、第二段階完了を報告いたします」
この時の彼女の気迫はレイシフト時以上だ。
『......ズザザ、こちらイアソン。了解した。引き続き、対象の監視と助言に注力する』
間を置くことなくイアソンから返事があった。恐らく、医師の行動パターンを考え連絡が来る時間を予め計算しておいたのだろう。
「よろしくお願いいたします。今回の作戦、イアソンさん達がどのようにフォローするかにかかっておりますので」
『分かっている。ただ、結果はどう転んでも文句は言うなよ。最終的に誰を選ぶかはあいつ次第なんだからな』
「百も承知です。大事なのは、誰がよりも結婚という事実なので。では」
通信越しではあるが、マシュはペコリと一礼して通信を切った。
「マシュ、お疲れ」
労いの言葉を投げるマスター。その言葉で、張り詰められたオーラが解除される。
「さて、これで俺たちが出来ることはなくなった。暫くは君が良く読む恋愛小説を眺めている気分で過ごしな」
「......はい、出来る限り邪魔しない様にします」
マシュの胸の内は完全にバレている。人の恋路に何とやら、珍しくマスターの方がマシュにブレーキをかけている瞬間だった。
それで良い、マシュも一人の少女なのだから。マスターの隠れた笑みにマシュはまだ気が付いていない。
「......何もしたくない。まあ、レイシフトの予定もなくなっただろうし少しはゆっくりしても文句は言われないだろう」
医務室に戻ったアスクレピオスは、まるで戦闘でエネミーから呪いをかけられたような体の重さだ。
急遽迫られた「サーヴァントとしての結婚」は医学にしか興味のない彼には重圧だった。
「まあ、候補があの二人なら悪くわないのだろうけどな。どちらかを選べっていうのがなんとも申し訳ないというか、二人との丁度良い関係性が崩れるのが好ましくないんだよな」
口では色々言いながらも、彼にとっては景虎もブーディカも大事な同僚だ。ただ、それ以上の関係性を急に求められては脳内キャパーオーバーだ。
「第一、結婚するならどちらが良いのだ? 別に、個室が同じになるくらいだろ? まあ、あいつらに至っては別居婚なのか離婚済みなのか知らんのだが」
脳内に浮かんだ船長とその妻。オルフェウス(アルゴノーツの一員。愛妻家で知られる琴座の英雄。一説によるとアスクレピオスの異母兄弟)なら的確な良いアドバイスをしてくれるかもしれない。しかし、彼は座に登録されているか不明な為いつ再会きるか分からない。
「まあ、オルフェウスに関しては仲が良すぎるからな。ある意味参考にならないかもな」
自分と同じ境遇の人物に関しては、カルデアにも生前もいなかった。こんな時は。
「明日、行くか。今日は寝よう」
目当てはあった。だから電気を落とした。まだ時間はある。それが彼の考えだ。
しかし、彼は忘れていた。このカルデアの人間関係は思った以上に複雑で面倒なことを。
オルフェウス、実装してくれませんかねえ。あと、テセウスも。来たら課金しますね、間違いなく。
ではああ。
里見レイ
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