連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
彼は根っからの医療人で研究バカだから人間関係にも興味を示さない。
しかし、彼が設立初期のカルデアにいたらどうなっていたのか。
これは、経歴二年であるFGOマスターのカルデアの記録から読みほどく古参医神の物語。
医務室とは、本来患者が来るところだ。だが、稀に「医者と話をする」ことを目当てに訪れる場合もある。
しかしながら、その『稀』が『日常』と化しているのがこのカルデアだ。
「でね、今回新しくいらした綱殿なんですが。マスター殿から強化して貰っていない上に対人は専門ではないにも関わらず相当な腕だったんですよ。恐らく剣技で言ったらかなり高い領域でしょうなあ!」
「ランスロット卿と比べるとどうなんだ?」
今日の研究結果を記録しながら、アスクレピオスは流し気味に質問を投げかける。
「汎用性から考えれば間違いなくランスロット卿でしょう。ただしかし、綱殿は将来的に活躍することもあるでしょう。何せ、彼はまだ本気を出していないにも関わらず多くの人から注目されていますからね」
もう焼酎瓶の酒はなくなったのか、医務室の訪問者である長尾景虎の喋りのペースが上がりつつある。
「ったく。僕は医者ではあるが剣士でもないし戦士でもない。この様な戦闘に特化した話はもっと専門的な英霊にするべきではないのかね? 正直、僕はマスター以上の受け答えは出来ないよ」
この言葉は謙遜や忌避という訳ではなく、あくまで効率や生産性が悪いのではないかと感じてしまうからだ。
「いえいえ、私は求めているのは討論相手ではなく聞き手なので。私たちの仲じゃあありませんか、もうしばらく話に付き合ってくださいまし」
そのまま酒のおかわりをナチュラルに要求する景虎と除菌用アルコールならあると返すアスクレピオス。
「何てったって、私にはあまり身近な英霊がいませんからねえ。ぐだぐだ関係者なんてジェットさんとカッツ君くらいですし。最近はページ周回にも呼ばれなくなりましたからねえ」
「僕も昔と比べれば大分出番が減ったね。ま、今でも厄介なクエストには聖杯組と一緒に駆り出されることが多いけども」
このカルデアの創成期と比べれば、二人の出番は他の鯖の活躍により減った。しかし、それでも彼らはまだマスターに目をかけられている。実際、景虎はトレーニングルームの副監督官であり、アスクレピオスは医療長兼研究部化学主任だ。
「全く、貴殿に治療して貰っていた頃が懐かしいですな。あの頃の医師殿はそれはまあ頑固で警戒心が強くて毒舌で強引で捻くれていて......」
「やめろ、僕はこのカルデアでの昔話に関してあまりいい思い出がない」
飲んだくれの懐古話は時に素面の人の傷を抉る。アスクレピオスは咄嗟に無駄なストレスを排除したのだ。
「ま、私にとってはいい思い出も多いんですけどね。貴殿に出会えたからこそ、今こうして裏方としての充実した生活を送ることが出来ているのですから」
そして、そのまま軽い千鳥足で医務室の外へと移動し始める。
「こう見えて、私は感謝しているのですよ。貴殿は二年近く私の荒んだ心を治療してくださっているのですから」
振り向きざまに見せた景虎の笑顔。これは酔い故の柔らかさなのか、はたまた稀に見る本心なのか。
「ふう、困った女性だ」
もうすぐカルデアの就寝時刻。彼は酒を飲むことはないが今夜は変な気分で眠りにつきそうであった。
「クエストに出ない鯖にも仕事ってあるよなあ」
幕間の物語などを見て私が独自に思った一言です。これを各カルデアの独自設定として組み込めば様々な物語を描けるという結論に至り、この「僕たちのカルデア」を執筆し始めました。
古参マスターならあり得ないアスクレピオスと長尾景虎が最初期からいるカルデア。想像と空想と予想が入り混じり、非常に楽しく描けてます。
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それでは。
里見レイ
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