連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
「いやあ、この肉は中々上質な焼き加減だな! 第一、調味料がいつもの奴より濃厚なものを使用している時点でキッチンの気合が伺えるな」
ネクタイを緩め、もきゅもきゅとステーキを頬張る仲人担当イアソン。既に自分の仕事は終わったも同然なので完全にオフモードである。
「イアソン様ー、こちらのオムレツもかなり美味ですよ」
メディア・リリィもせっせと彼に食事を提供している。これはもう、いつものカルデアの昼下がりである。しかし、今回の主役が話かけると場面は結婚式に戻る。
「イアソン、お前は本当に英雄っぽくないよな......」
アスクレピオスがジュースを片手にやって来た。若干呆れたような表情は、もはやいつも通りだ。
「まあ、それが彼なんでしょ? この抜け具合がマスターの懐刀として活躍している訳だし、私としては貴方が嬉しそうなのも私としては微笑ましいんだけど」
彼の横には妻となったブーディカの姿もある。花.嫁の笑顔というのは光属性の権化と言っても過言ではない。
「ったく、ある意味言いたい放題だよなこのお医者様は。俺は適当に仕事して適当に食っていりゃいいんだよ。面と向かって礼を言われるのは気分が落ち着かない」
イアソンは目線を合わせようとしない。照れくさいと言うよりは若干場違いだとも考えているのかもしれない。
「イアソン、僕が言うのも違うかもしれないが卑屈になり過ぎだ。お前の立場や実績はこのカルデア指折りなんだ、もっと誇れ」
近くにあるからのグラスにジュースを注ぎイアソンに渡すアスクレピオス。
「......サンキュー。とりあえず、これから仲良くしろよ。俺はまた、色々と仕事なり遊びなりあるからよ」
グラスを受け取り、目線を反らしたまま礼を返すイアソン。ある意味信頼の取れた会話だ。
「んじゃ、僕はまた他の人と雑談して来る。とりあえず、一ついいか?」
「ん?」
「お前、そろそろ横にいる細君と同居したらどうだ? 部屋のスペースも更にゆとりが出来てカルデアの回転も良くなるんじゃないのか?」
意地悪そうな笑みを残してイアソンに背中を向けるアスクレピオス。
「ふふ、メディア・リリィもそっちの方がいいんじゃない? 一緒の部屋にすれば寂しさを紛らわす為にもう私に通信しなくて済む訳だしさ」
イアソンの隣でサラダをよそっているメディア・リリィにウインクを投げるブーディカ。
「ちょ、ちょっと! 何でこの場面でこんな事言うの!!?」
サラダをよそっているメディア・リリィは一気に顔を真っ赤にする。若干だが、声が裏返っている。
「ふふふ、ちょっとした仕返し。幸せになる権利、そして幸せを追求する権利は誰にだってあるんだからね」
重みの違う彼女の言葉は、また別の闇を抱える少女に強く響いた。
「イアソン様、また一緒に暮らしませんか? ここにはもう、私たちを狂わせるような理不尽も不運も神の力もございません。今なら、本当に思い浮かべていた生活を出来るはずですから」
サラダを持った皿を横に置き、メディア・リリィはイアソンにそっとすり寄る。
「大掛かりな式はなしだぞ。ひっそりと俺の部屋に越してこい」
彼女の後頭部をゆっくりと撫でたコルキスの王子。さて、間もなく式もフィナーレだ。
もうすぐ、第一部が、終わります。
第二部に入ったら、タグも増やすつもりです。
評価、感想、お待ちしております。
里見レイ
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