連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
「それでは、会食タイムも間もなく終わりを迎えます。最後に、新郎新婦のお二人にお言葉を頂きたいと思うます」
マシュは締めくくりに入るべくマイクをアスクレピオスに渡した。彼は息を整え、辺りを見渡した。
「えーと、今回は僕たちの結婚を祝ってくれてありがとう。マスターをはじめとして色々と協力してくれたから、こんな盛大な式になった。このカルデアでのとても良い思い出になった」
そんな至極まっとうなお話をする医師。しかし、彼の本領発揮はこれからだった。
「恐らく、ブーディカのウエディングドレスを見てこう思った人もいるだろう。『いつか自分も』『彼女の姿を隣で見たい』と。僕たちのこの成果が、皆の励みになれば良いと思う。これからのカルデアの未来の為に、僕は彼女を絶対に幸せにしてみせる」
彼は隣のブーティカを静かに真横に抱き寄せ、彼女にもマイクを向けた。
「私は結婚したとしても私。そして、私は誰もが憧れるようなお嫁さんになるわ。これからも、皆を笑顔に出来るよう料理とか頑張るから宜しくね。そして、次のカルデアでの結婚式では私も料理に関わるから期待しててね!」
そして、彼女は左手に持っているブーケを大振りに投げた。
ゆったりと弧を描いたブーケ。その行き先は......
「え.....私!?」
ジャンヌダルク・オルタ(水着)だ。このカルデアでは長尾景虎に次ぐ古参配布鯖だ。
「おめでとう、バーサーカーのルーラー。いい縁に恵まれるといいな」
素直に彼女を祝う同席のジーク。そんな彼を彼女はキッとにらみつける。
「いるわけないでしょ! 誰が結婚なんてするもんですか! 私の心を掴む男なんていないんだからさ!」
かなり場を壊す言葉の数々。しかし、一同大して気にしていない様子だった。
「......たく」
「また出た」
「いつものかー」
ジャンヌの表情を確認してむしろ呆れ顔の面々。
「バーサーカーのルーラー。すまない、また気を悪くしてしまったようだ」
気にしているのは何も知らないこのホムンクルスのみである。なお、この関係が変化するのも今となっては時間の問題だろうが。
こうして、結婚式は一通りの成功を見せ終わりを告げた。
そして、その夜。
「アスクレピオス」
シャワーや夕飯を終え、普段の就寝時刻までまだ少し時間のある医師神。そんな彼女に妻から誘いがあった。
「何?」
「まだ寝るまで時間あるからさ、一つ頼みを聞いてくれないかな?」
「構わない。どうすればいい?」
「それはね......」
夫の左腕に自身の腕を絡ませるブーティカ。
「聞かせて欲しいんだ。貴方が船長達とどんな冒険をしてきたのか。どんな医療で人を助けて来たのか。私の知らなかった貴方を知りたくてさ」
「分かった。他ならぬお前が言うんだ、全部言うよ。ただ、一晩では話し切れないからな。これから毎晩、少しずつ話していこうと思う」
若干天井を仰いで、アスクレピオスは答えた。色々と振り返って感傷もあるのだろう。
「ふふ、楽しみね」
ブーティカの安心と癒しに満ちた笑顔が彼の横へと咲き誇る。
こうして、二人の夜は更けていく。
「......医師殿は、これから彼女と二人三脚で生きて行く訳ですが。私はこれからどうしましょうかねえ」
一方こちらは景虎の個室。今日は、昼に多少飲んでいたので夜の酒は控えめだ。なお、彼女にしてはなので傍から見れば十分飲んでいる。
「私は、暫く武術に勤しむとしますかねえ。これから他人の修羅場を拝見する事になる訳ですが、果たしてどうなるやらやら。逆に、医師殿は後ろ盾として色々どちらかに味方することになるのでしょうか。大変ですねえ」
涙はとうに枯れ果てた。残るのは寂しさのみ。しかし、彼女は暫く伴侶探しをする事はないだろう。生前も一生独身だった訳だ。問題はない。
「義を持って生きていれば、今度こそ運命は巡って来る。待つという事も、時には大事ですからね」
軍神の夜はまだまだ続く。
「......さて、また仕事頑張らないとな」
次の日、アスクレピオスはいつもより少し早く目を覚ました。ただ、隣のベッドは既に空である。
「ったく、マスターめ。思い出したかのように寝る直前で一気に仕事要件メールで送って来たな。ってか、日付超えてからメールってマスターの奴いつ寝ているのやら」
パソコンを見てメールを確認。以前の素材透過液の改良版や新人事の案などがいくつも書かれていた。
「まあ、忙しい分には大歓迎だ。やりがいもある訳だからな。さてと、朝食朝食」
パパっと着替えて食堂へと向かう医師。到着すると見慣れた背中が視界へと入る。
「おはよう。今日は若干だけど早いかな?」
「ああ、マスターが夜中の内に大量の仕事案件をメールで送って来たらしくてな。基本的にデスクワークだし早めに片付けようと考えたから急いだ」
「そう、無理はしないでね。医者が過労で倒れたら元も子もないんだからさ」
いつもの席に座るアスクレピオスに妻のブーティカはシリアルとオレンジを置く。
「愛しているからね、私の大事なお医者様」
「僕だって愛しているぞ、料理長」
微笑ましく温かい会話が、早朝のカルデアの空気に流れた。
これにて、第一部、完!
解説文回(またはメタ回)を挟んで次の部を書きたいと思います。本当は別作品として書くつもりだったんですが、こっちの方が面倒さがないのでまとめて続きを書いていきたいと思います。(完結って概念が愚かな埋葬されました)
ひとまず、ここまでお読みくださりありがとうございました。引き続き頑張ります。
里見レイ
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