連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
オルレアンの街で何気ない買い物をこなすネロ・クラウディウス。右手でテキパキと商品を買い、左手はロビンの手をガッチリと握ったままだった。
「皇帝サマ、一体そのお金はどこから調達したんですかい? 以前からここに遠征していたとか?」
「いや、先ほど軽く金を賭けた決闘を行っただけだ。負ければ体の提供だったが、まあ負けるような賭けはせんからほぼノーリスクで少し儲けたもんよ!」
「......オタク、少しは己の立場と言うか。乙女の体裁というかねえ......」
余りにもサラッと自分の体を賭けると言われ若干呆れるロビンフット。彼のレディーファースト精神は無論昔馴染みのネロにも適応される。
「良いのだ、余は奏者とお主くらいにしか気を許さん。さあ、唐突に訪れた購買の遊戯を楽しもうではないか!」
「はいはい、とことん付き合いますよ。こうなった皇帝サマは誰にも止められない愛らしさなんですから」
キラキラ輝く彼女の笑顔に押されロビンフットは一度トラブル状態かだという事を忘れるようにした。それこそ、彼女に対する一番のエスコートだからである。しかし、
「なーにイチャイチャしてんのよこのお間抜けバカップル! 今カルデアとの通信が断絶しているでしょうが!」
冷やかしどころか本気でバカップルと叱るジャンヌダルク・オルタ(水着)。まあ、本来彼女はホムンクルスと実質デートの予定だった訳だからしょうがないと言えばしょうがない。
「何を言うとるか! 楽しめる時に楽しんでこそ真の乙女と言うもの、お主もあのホムンクルスとイチャイチャベタベタすれば良いではないか?」
煽っているのか天然なのか分からないが、ネロは完全にジャンヌの怒りのツボを刺激している。
「あんたねえ、私が今日なんでレイシフトしたのか知ってて言ってるんじゃないでしょうねえ!? このトラブルのせいで私の一世一代の決意は台無しよ!」
既に彼女は手元に暗炎を構えている。最近、彼女の気が休まる時間がないせいか沸点が非常に低くなっている。
「ふむ、お主は思った以上に余裕がないと見える。これは、プランにはなかったが願いを叶えてやるか」
ある程度増えた買い物の戦利品をチョンと突くネロ。すると、その産物の累々が一瞬にして消えた。
「え!?」
「おいおい、皇帝サマ?」
これにはジャンヌだけでなくネロの奇行に慣れているロビンも言葉が上手く出なかった。
「......余だ。ああ、頼む。うむ、抜かりはない......」
そして、彼女は右耳に右手を当てて誰かと通信している。そこから一分も経たずに......
「ジャンヌ、このチップを渡しておく。まあ、いざとなったらここからデータを読み取って行動をしてくれ」
そんまま自然な流れでジャンヌに渡されたのは片手サイズのディスプレイ。一体、このカルデアはどんな方向に魔力リソースを割いているのか心配になる。
「......これ、どうすりゃいいのよ?」
「まあ、成り行きに任せれば自然と幸せが舞い降りるだろう。何、脳を軽くして本能のままに気持ちを吐露すればよい。自ずとここにいる全ての者の幸せに繋がるだろう。ではな、照れ隠しに炎をまき散らすではないぞ」
ネロが軽く指パッチンをする。すると、ジャンヌの周りは青い光に包まれ始めた。
「ちょ、ちょっとあんた!?」
ジャンヌの動揺はますます大きくなる。しかし、この感覚は慣れた感じがした。
「怖くはない。一種の調整レイシフトのようなものだ。気が付けば、見知った土地で愛しのあいつと一緒の景色を見ているだろうからな」
そうネロがほほ笑むと、ジャンヌの姿は先ほどの買い物の産物と同じく消えていた。
「じゃ、ジャンヌさん? これはまた......」
動揺するロビンフット。まあ、彼は完全に置いてけぼりだからしょうがないが。そこに、彼女が彼を当事者へと押し上げる。
「弓兵、お主はこのカルデアの『功労者の夫』として生活を送る気はないか?」
彼女の背は低い。しかし、その威厳は皇帝モード以上だ。彼の手を握る左手と、彼の左腕を掴んで話そうとしない右手。ヒシヒシと重苦しい愛がその繋がりを経由してなだれ込んでいるようだ。
「......皇帝サマ、それは一体どういう事ですかい?」
いつもは軽い態度で受け流すようなロビンだったが、今回ばかりは押されている。そして、彼は本能的に勘づいていた。この誰も自分たちを見ていない出先で己の第二の生の先行きが定められようとしている事を。
「もっと簡単に言ってやろう。余と結婚しろ、ロビンフット」
この人通りの中で、二人だけの時間が止まったように見えた。そして、街中は彼の得意とする場ではない。
(参ったねえ、こりゃあ)
右ポケットの中に入っている小さなナイフが、彼の心に重くのしかかる。色男ロビンフットの試練は、ここからが始まりだった。
「......ここは、セプテム?」
ジャンヌダルク・オルタ(水着)の目の前から閃光が消えた後に映ったのは、周回でもほとんど立ち寄らない古の古代王国だった。
「!? バーサーカーのルーラーか? 何故ここに?」
「......ジーク。あんたこそ、心配したんだから」
駆け寄り方がもはや純朴乙女と化しているジャンヌ。今までのプライドを置き去りにいしている。
「あ、あの。その、ジーク。実は......」
彼の手を真っ先に握ったジャンヌ。普段の言動とは余りにもかけ離れている為ジークも動揺している。
「ルーラー!?」
「ジャンヌ! 私の名前はジャンヌダルク!」
遂に、ジャンヌの眼から涙が出始める。
「あ、その、えっと......」
ジークも、やはり急展開について行けない様子だ。しかし、ジャンヌのかかり出したエンジンは止まらない。
「私は所詮あいつの派生形。だから、ずっと遠慮してた。そして知った、あんた自身も端末だという事を! だからこそ、私の胸の中にあった呪縛が消え失せた。だから言わせて、私は!」
「ねえ」
「!!?」
「!!!?」
ジャンヌが肝心の言葉を言おうとした矢先、幼げな、しかし秘められた力のある声が二人の間に入った。
「......黒のアサシン?」
「わたしたちの事をそう呼ぶのってあなたくらいよ。造られた竜殺しさん」
ジャック・ザ・リッパーだ。普段は穏やかな顔なのだが、今回の表情はかなり険しい。
「常夏の聖女さん、貴方はさっきまで誰と一緒にいた? 義賊さんは、どこにいた?」
「......確かに、私はさっきまでロビンと一緒だったわよ。この訳分らん端末でここに飛ばされるまではね」
良いところを邪魔されてかーなり不機嫌なジャンヌ。しかし、彼女にも事情がある事は察している為答えた。
「義賊さん、誰といた?」
「ネロよ。あの感じ、今にもあいつを我が物にしようって勢いだったわよ」
「その端末貸して!!!」
ジャックは風のように彼女からディスプレイを奪うと大急ぎで操作を始めた。見るからに、慣れた手つきだ。
「絶対に、渡さない!!!」
そう言ったジャックは軽く指パッチン。その影はレイシフトのように消えていった。
「......ルーラー、じゃなくてジャンヌ。これは一体?」
「......はあ、これじゃ雰囲気も台無しね。色々疲れたから少し休むわ」
「ああ、見張りは俺がするから」
一世一代の瞬間を同僚の危機の為に投げ捨てたジャンヌは町外れの草原の大木の下で横になった。隣には、ジークもいる。
(まあ、私たちは今じゃなくてもいいでしょ。問題はあいつらよね、どっちも長尾景虎以上に強引なんだから。あのチャラアシスタントは苦労するでしょうね......)
目を瞑りながら彼女はこのように思った。そう、このカルデアの恋愛物語。その激戦区は己ではなく皇帝と暗殺者、そして忍びと文学化身の間にあったのだ。
はあ、疲れました。書きたい時にキリが良くなるまでやった結果こうなりました。
リアルも忙しいというのに全く......
まあ、楽しいので良いのですが。
ではまた。
里見レイ
第50話で再びメタ回をやります。アシスタントに指名はございますか?
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アタランテ続投!
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アタランテ・オルタ希望!
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メルトリリス、カモン!
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ラムダさん、どうぞこちらへ!
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マルタ姉さーん
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水着マルタ? ああ、来なかったよ。
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牛若殿!
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真夏の牛若殿!
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あべんじゃあ牛若殿!