連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病   作:里見レイ

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鎮静後のひと時

「......さて、このホムンクルス達はどうして暴走したんだ? まさか、君の作った転移防止システムのエラーによるものではないだろ?」

 

 若干溶けながら蒸気を発している個体も出ているカルデアの廊下。それなりに疲れの出ている一同を見渡し、アスクレピオスは事件の根幹へと話題を進めた。

 

「あの皇帝が仕込んだ暴走かしら? ダ・ヴィンチが転移装置に関して対策をしたと知っていれば、こっそり研究室に入ってホムンクルスを解き放っても可笑しくないわ」

 

「......あり得るねえ。何せ私のように中途半端にカルデアのポジションを得ているサーヴァントはあの功労者様からすれば格好のカモだろうし。裏をかく事も出来そうだ」

 

 ブーティカとダ・ヴィンチは、完全にネロの仕業だと考えているようだ。実質前科持ちという事もあり、一連の騒動に関わっている人物なら当然の考えだ。

 

「間違いない! あの女は酷いことをいっぱいする女!」

 

 そして、ジャック・ザ・リッパーは猛烈にネロを犯人と主張。まあ、恋敵が裏で色々と暗躍していては腹が立つのは当たり前と言えば当たり前だが。

 

「......」

 

 そして、本騒動の渦中に巻き込まれているロビンフットは静かに頭を捻っていた。正直、誰がどのような行動をしているかは彼自身は全く把握出来ていない。しかし、一つ確信を持てる部分があった。

 

「このホムンクルスに関しては、ネロは直接手を下していない」

 

「!?」

 

「!!」

 

「おや、ロビン君。そう断言する理由はあるのかね?」

 

「あいつは、どんなに陰で動いても自分の匂いを残すんだ。昔、っていうか別時空で縁がないと分からない上にこのカルデアでもある程度接していないと分からない話ですけどねえ」

 

 このカルデアは、メルトリリスは選抜組に入っている。加えてBBやパッションリップ、アンデルセンにエミヤもいるがネロとの関わりは薄い。彼らのカルデアに来た時期が比較的遅めであることに加えて、既にネロ自身が新たなコミュニティを形成していたことが理由に挙げられる。

 

「ま、カルデアの大昔からあの皇帝サマとはレイシフトしていましたからね。色んな要素を含めて、オレが皇帝サマの匂いを一番理解出来るって訳ですよ。最も、そのせいで現在酷い目に会っているんですけどねえ」

 

「その話は、参考になるかもしれないな。ネロは未だに協力者について明かしていない。その協力者が今回の研究室へ侵入した。そう考えると、意外と犯人は絞りやすいのかもしれないな」

 

 ソロリソロリとホムンクルスの残骸を跨ぎつつ、アスクレピオスは廊下へと足を運ぶ。このまま研究室へ向かって犯人捜しの仕事に取り掛かるのだ。

 

「待って、私も行く」

 

 ブーディカ、夫の後を追う。流石に、深夜の戦闘後に単独行動をするのは色々キツイと考えての精一杯の補佐である。

 

「......操作は、あちらの夫婦に任せて私たちは寝るとしよう。昼間にマスターに事件の説明をする必要があるから早く寝ないとね」

 

 一方のダ・ヴィンチ達は翌日の報告任務を選んでさっさと解散した。そして、ロビンの近くにはジャックが残るだけとなった。

 

「義賊さん、貴方にとってあの皇帝さんはどんな存在なの? わたしたちでは、補えない部分はあるの?」

 

 彼の右手をそっと握るジャック・ザ・リッパー。包帯の撒かれたガサツいた左手は、戦闘後という事を差し引いても酷く震えていた。

 

「互いに良い所はあるんで、比べる事なんて出来ませんよ。だからこそ、こうして他の皆さんにも迷惑かけちゃっている訳ですけどねえ......」

 

 握られた手に目線を向けず、かと言って彼女にも視線を合わせずにロビンは答えた。ジャックの伸長と角度からでは、彼の表情は把握しきれない。

 

「わたしたちは、義賊さんを愛している。ずっとお世話してくれたし、私達が他のアサシンと仲良く出来なくても傍にいてくれた。これからも、夫婦として私達と一緒にいて欲しいの。マスター(おかあさん)の命令でわたしたちも他の人と同じように優しくしていたのは知ってる。だけど、それでもわたしたちにとって義賊さんはかけがえのない存在! 絶対に譲れないの......」

 

 ロビンも、ジャックの表情は見ることが出来ない。しかし、彼には彼女の顔が手に取るように分かった。

 

「泣くな。オレはお前の涙なんて見たくない」

 

「......ごめんなさい」

 

「謝らないでくれ。こっちが罪悪感に潰される......」

 

「......」

 

「......」

 

「......」

 

「......一つだけ、教えてくれ」

 

 暫くの沈黙の後、ロビンは視線を落としてジャックの前に屈み込んだ。

 

「今回のホムンクルスの騒ぎも含めて何か人様に迷惑をかけるような作戦を練ったり実行したりしたか?」

 

 その目は獲物を狩る時と同じ、ロビンの真剣(マジ)モードである。

 

「全く、何もしていないわ。わたしたちは、ただ義賊さんの為にいつも通り過ごすだけだもん。卑怯な真似は、例えアサシンでも絶対に出来ないわ」

 

 ジャックの眼は、暗殺の時の眼ではない。むしろその逆、愛に満ちた平和な眼だ。

 

「......分かった。とりあえず、助けに来てくれてサンキューな。また明日、ジャック」

 

 彼女の頭を軽く撫で、ロビンはそのまま自室の戸を閉める。

 

「////お、おやすみなさい! わたしたちの大好きな義賊さん!」

 

 ジャックもそう言い残すと、戦闘時顔負けの速さで立ち去った。皇帝の眼が、何処にあったかも理解できずに。




 書きたい描きたい、その思いと裏腹に未知は作りにくいものですね。

里見レイ

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