連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病   作:里見レイ

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長い夢

 戦闘用の武具を外すのも面倒だったので、ロビンは扉を閉めるや否やそのままベッドに倒れた。右腕をアイマスク代わりとして、そのまま夢の世界へと進んだ。

 

「マスター、また子供サーヴァントの世話係ですかい? 俺は保育士でも小学校の先生でもないんですよ」

 

 このセリフを彼が言ったのは、今から一年以上昔の話となる。ロビンは今まで、古参サーヴァントの一角として茨木童子やフランなどの子供サーヴァントの世話係を頼まれてきた。ただ、ここ数か月は特に子供鯖の加入がなかった為久々の仕事である。

 

「本当にごめん。これは新人研修の一貫でここ一年はイアソンに任せてたんだけど、彼は最近新章へのレイシフトばっかりで内部に手が回らなくて。丁度今回の鯖が幼い容姿だからさ、イアソンよりも適役なんだよ」

 

「はいはい。まあ確かに俺は最近レイシフト関連の仕事もありませんからね。暇って訳ではありませんが他ならぬマスターの頼みだ、全力を尽くしましょう」

 

 管制室の横で二人はこのようなやり取りをした。そして、召喚地点へとロビンは向かう。

 

「どーも、これから自分がカルデアの案内をするんではぐれないで下さいね」

 

 新入りサーヴァントに挨拶をしようと顔を出したロビンは驚いた。

 

「おかあさんは、どこ?」

 

「おかあさん? あ、マスターの事ですかい? マスターは今はレイシフトしている......」

 

「ヤダ! 違う!」

 

 蹲って目を合わせてくれない黒いマントの少女。ここまで人間不信な態度だ。

 

「......サーヴァントは誰だって来たばかりの頃は想い悩むから無理もないですよ。暫く近くにいるから、自分の部屋へ行きたい時は言って下さい」

 

 少女から数メートル離れた所に座り、ロビンはタバコを吸い始めた。

 正直、彼には他にやる事がない。単体宝具のアーチャーなら同じ最古参組のアシュヴァッターマンがいる上にエウリュアレの方が出番が多い。かといって、ブーディカやメディアのように特定の役職を与えられている訳でもない。要するに、実績と経歴の割に処遇は他のサーヴァントと同じという事だ。

 

(ま、ここのマスターは何やかんや全サーヴァントに福利厚生を分け与えている。だからこそ、名誉職や特別待遇メンバーを作ってお気に入りの方を傍に置いているんでしょうね)

 

 ホワイト企業に勤めるリストラ前の社員とは、こうして罪悪感と嫌悪感を同時に抱くものだと理解した。

 

「......ねえ、緑のお兄さん。お名前は?」

 

「......ロビンフット。義賊を名乗っているサーヴァントで、このカルデアは古参メンバーの一人ですよ。最近はめっきり暇ですけどね」

 

「皆が忙しくしている訳ではないんだ。少し安心したわ」

 

「どうしてですかい? 確かに、仕事がほぼないサーヴァント達も各々の生活を楽しんでおりますけどねえ」

 

「少し、ゆっくり過ごしたいの。おかあさんのいない世界なんて、居ても意味がないし」

 

「......? 事前にマスターから渡された資料とは、随分と違う性格をしているようですな。これは、この子を良く知っている人に話を聞かないといけませんかね」

 

 ロビンは手元にある数枚のプリント用紙を眺めながら、頭を悩ませる。

 

「......私たちは、変なの? 他の私たちとも違う私たちとも違うの?」

 

「一般的には、カルデアに来ている貴女とは違うらしいですね。ただ、そういう連中もこのカルデアには結構いますよ。イアソンとメディア・リリィって言う離婚済の夫婦がいるんですが、このカルデアではかなり良好な関係っていう例もありますし」

 

 世間一般のカルデアにいるイアソン夫婦は「離婚したけど罪悪感などで互いを気にている」という若干雪解けしたレベルだ。しかし、ここの二人は目立った行動こそないが毎日一緒に昼ご飯を食べているくらい仲が良い。

 

「......」

 

「ま、何でも聞いて下さいな。あと数日は、余裕でお相手出来ると思いますからねえ」

 

 そう言って、ロビンは会話を終えた。一人で静かにしている時間が、彼女には必要だったからだ。

 

 暫くの時間が流れたと思われる。彼の持ち合わせていたタバコの約半数が煙となったくらいだ。

 

「義賊さん、一つ聞いていい?」

 

 その幼き少女の微かな声は、煙が薄く広がった空間を震撼させる。

 

「......何ですかい?」

 

「私たちは、このカルデアで新しいお母さんを見つけられるのかな? あのおかあさんを忘れられるくらいの」

 

「......分からない。うちのマスターは基本的にセクハラもしないしクエストに行かないメンバーにも相応の待遇を与えてくれる。ただ、俺たちの人間関係には深く入り込みませんからねえ」

 

「そう、案外ここの人たちは冷たいかもしれないね。義賊さん以外は」

 

「......どうですかね。マスターも他の方たちもちゃーんと貴方を迎え入れてくれると思いますよ」

 

「そうなの、かな?」

 

「まあ、ゆっくりでいいと思いますよ。貴方みたいな人は色々これから大変でしょうし」

 

「......一回、私たちの部屋を見せてちょうだい。そこで考えるわ」

 

 ジャックは、ようやく立ち上がった。しかし、魔力が足りていないのだろう足元がおぼつかない。

 

「了解いたしました。ほら、支えが必要だったら手貸しますよ」

 

 ロビンはタバコをしまって右手を彼女の元へ差し出す。仮にも英国紳士、その辺の気遣いはお手の物だ。

 

「ありがとう。義賊さんとはこれからいっぱいお話すると思うわ」

 

 ジャック・ザ・リッパーは、ほんの一瞬だけ顔をほころばせた。

 

「そん時は、どうぞよろしくお願いしますよ。楽しくいきましょうや」

 

 ロビンもそれに釣られて微笑んだ。夢の中でも、その時の感覚は忘れていない。

 

(確かに、あんたと話して楽しかったですよ。しかし、それが長い時間が経っても影響を及ぼすとは思っても居ませんでしたけどね......)

 

 まどろみの中で、ロビンはこの思いが宿った。しかし、己の婚儀に関する結論は未だに出ていない。

 




 結構忙しい中、何とか書けました。ではまた。

里見レイ

遠坂凛(EXTRAのリンも含む)の概念礼装の中で一番好きな物は?

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