連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
「......どうして、錬金術師様は彼女を受け入れられるの!? 私の方が貴方に尽くせるし束縛もしないのに」
勿論、パラケルススの無言の行動に最も動揺した人物はナーサリーライムだ。軽く見た限りでは、愛しの人物が恋敵と共にカルデアへ反乱を起こしたと思ってしまう。
「落ち着きなされ、童話はん。恐らく、あの錬金術師はんの意識は今ないと思います。薬か何かで彼をあの娘が操っていると考えるのが妥当やで」
「え、ええ。とにかく、あのくノ一を倒さないと!」
「ま、待てナーサリーライム! こんな狭い場所で固有結界はまずい!」
ナーサリーは速攻で宝具を展開させようとするが、そこはジークに止められる。第一、大抵のサーヴァントが全力で宝具を開放した場合はカルデアが壊れるわけだが。だからこその、剣術などで周りへの被害の少ないランスロットなどが武装部隊になっている訳だが。
「......私は、後方支援をするわ。早く、あの方の洗脳を開放して」
「分かった。ジャンヌ! 俺も参戦する。恐らくパライソを止めれば片が付くはずだ」
「オッケー、二人で一気にケリをつけるわよ!」
ナーサリーの後方からの魔弾援護を受けつつ、ジークとジャンヌはホムンクルスの間を狙って突撃を開始。共に出陣する機会が少なく、連携自体はぎこちないが妙な安心感がある。
「錬金術師様、あれをお頼みできますか?」
「......」
直後、ホムンクルス達が何かの意図に引っ張られるかのように隊列を組み始める。腕を組み、完全に壁となったホムンクルスに対し、二人は易々と弾かれてしまう。
「!」
「厳しいな......」
「何をやろうと無駄です! 拙者は錬金術師様を生涯の伴侶として迎えてこのカルデアで幸せなひと時を過ごします! 例えそれが、裏切り者と言われようと! それこそが拙者の人生だったから!」
「愛の重さが別方面に振り切っているわ。これじゃあ、仮にあいつを止めたとしても後遺症が残ってしまう」
「......」
既に、アサシン・パライソは正気を失っていた。「恋は盲目」という言葉をまざまざと見せつけられるジークは言葉が出なかった。明日は我が身なのかもしれない、そう彼は心にのしかかった。
「はてさて、あの娘も頑固やからなあ。うちの呪いも多少罪はあるかもやが、その本質は『裏切りを行う事で得られる愛』やと思うで。まあ、理解したとしても同情できるかは別問題やけどな......」
「......その話、詳しく聞かせてくれないか? この状況は力任せで解決出来る物ではない」
酒吞童子の一言に食いつくジーク。彼の学習意欲は、問題解決に対する食いつき具合にも反映される。加えて、下手すれば自分の大切な人にも危険が及ぶ為必死具合が一段階上だ。
「ほな、ここでは場所が悪いから離れましょか。ここの守りは剣士はんらだけで十分やろ。マスターや医師殿も含め、しっかり聞いて貰わへんとなあ......」
酒吞童子はヒョイと懐にあった煙球をホムンクルスへ投げ、そそくさと管制室に歩いて行った。ジークとジャンヌダルク・オルタ(水着)もこれに続き、ナーサリーライム、茨木童子、ランスロットら近接部隊は警戒の為現場に残留した。
「......逃げるか? 我が怨念の原初よ」
あっさりと撤退する酒吞に対し訝しげなパライソ。いつの間にか彼女の右手はパラケルススの左腕を掴む。
(この感覚、かつてのあの方の隣にいた時みたい。やはり、拙者はこのような場所で逢瀬を......)
彼女にとって、お館様は使えるべき相手であって私情はない。しかし、今隣にいる錬金術師とかつて心を開いた策謀士へは、愛も恋も踏みつぶすレベルの想いがある。それがアサシン・パライソの、いや「望月千代女」の恋愛観なのだから......
私の好きな歴史小説から、ようやくインスピレーション、というか渡し橋を得ることが出来ました。
最近、色んなものを描きたくてどぎまぎしてますね。
里見レイ
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