連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病 作:里見レイ
「とりあえず、あの娘も生前は呪いを受けつつ忍びとしてとある戦国大名の家に仕えていたんですわ」
こちら管制室、酒呑童子は己が亡くなって随分後の過去の話を淡々と語り始める。
「しかし、その大名の家は信長はんに滅ぼされてしまいまして。あの娘はそのお館様の家臣のうち知略に優れた武将の下で働き始めた。以前より、お館様を始めとして多くの男から寵愛を受けていたあの娘やったが、次の男は違った。その武将は彼女の愛し方が歪んでいたんや」
「愛し方が歪んでるって、広くて長い人類史の中じゃよくある事でしょ? それに、その人物とあのパラケルススの共通点とかある訳?」
「......」
酒吞の話に疑問符を投げかけるジャンヌダルク・オルタ(水着)と静かに聞くジーク。そして、三人の周りにはマスター、マシュ、イアソンの三名がおり、そのうちアスクレピオスとブーディカも来るはずだ。
「その武将は、己の家を存続させる為には手段を選ばなかった。暗殺なども当たり前の時代な上に、弱小勢力やったからな。そして、彼はあの娘への最大の愛情表現として様々な暗躍を行わせ、殺させたんや」
「......既視感に近いがそれとも違う寒気がするぞ」
この言葉はイアソンから発せられた。もし自分にそのような愛し方が出来れば、と言わんばかりに。
「自分の家を守るための裏切りの負担を共に背負わすよう命じられたあの娘は、快くそれを受け入れた。機械同然に戦っていた己に対し、苦しみを耐えられない事を求めている。己を一人の人間として見ていてくれることに喜びを隠せなかったんや。その後、世は太平を迎えた。彼との間には絶世の美女が生まれたという噂もあるが真実かどうかはうちも知りまへん。とにかく、望月千代女は『裏切り』を通してしか愛を実感出来なくなった。こっから先は、マスターはんに話してもらいましょか?」
「ハイハイ。千代女が歪んだ愛し方をするという事自体は問題ない。けど、一番の問題はその愛し方を受け入れてしまう男がこのカルデアにいるという事だ」
呆れ気味にバトンを受け取るマスター。次に語られるのは、パラケルススの過去のようなお話。
「彼は、正直な話別時空の聖杯戦争で裏切りを行った。あくまで己の、人類の為を想っての行為ではあったが彼はそれを深く悔いている。その後も、パラケルススの行いは悪気はなかったとはいえ迷惑にしかならなかった事は言うまでもないだろう。このような行動は結果として千代女の暴走の引き金になってしまったんだ。パラケルススはこのような負い目から彼女に反対は出来ない。ひと悶着終わったら、全ての責任を自分が背負うくらいの覚悟は出来ていると思うよ」
「......よく分かんないけど、要するにあの錬金術師はあの女と心中するって事? しかも、どちらかと言えば罪悪感のせいで」
「そうなるね、ジャンヌ。最も、彼が誰を愛しているかは俺にも分からない。だから、下手にパラケルススを説得してはいけないんだ。彼の地雷を踏みかねないから」
「残念な事に、あいつと個人で通信できそうなサーヴァントもいないからな。本心は、あいつのみぞ知るってこった。で、どうすんだ?」
「......」
マスター、ジャンヌ、イアソンと話が続く中、ジークは静かにしていた。
「ジーク、私たちならあいつを止められないかしら? 私の抱えている闇とあんたの言葉なら少しは響くと思うんだけど?」
「......出来るとは思うけど、かなり代償が大きいと思うぞ。俺たちの関係について痛い部分はかなり突いて来ると思うし、何より攻撃を受け続ける必要があるから」
「けど、これを沈めないと私たちの結婚の話が出来ないじゃないの! 他の連中に先を越されたら色んな感覚が混じり合って納得いかないわ」
そして、ジャンヌと本格的な相談をする。その雰囲気は、二人っきりのようだ。
「ジャンヌ、良かった。ようやくジークと結婚する気になったのか。オルレアンへのレイシフト事件で薄々察してはいたけど、いざ二人がこの様に話していると実感が湧いて来るなあ......」
そして、マスターが嫁入りを決めた娘を見る父親のような顔をした。無論、こいつは未成年で年齢としては圧倒的に年少組だというのに......
「!!! いや、違っくはないけど。その、そういうつもりで言った訳では......」
「そうだな。アサシン・パライソの暴走を食い止めて、俺はジャンヌと結婚式を挙げる。ちゃんとカルデアに貢献して、皆に祝福された状態で身を固めたいからな」
「!!? ......もう!」
この二人は、夫婦になってもワンオクターブズレて噛み合う会話が繰り広げられるのだろう。
「......援軍を呼ぶよ。恐らく、彼らが来れば事態は前に進むはずだ。きっと、二人の結婚式も実現が目の前に現れるはずだからね」
マスターがタブレットを操作しながら話をまとめた。情報はある、人材もある、熱意もある。そして、情報も共有が完了した。あとは、適切な人員を配置して任務に挑むだけ。さあ、交渉の時間だ。
ようやく、コツコツ書いた一話が溜まりました。
では、また。
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