連載休止 僕たちのカルデア アスクレピオスと女の病   作:里見レイ

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皇帝の決意

 魔力は、どちらかと言えば純粋だ。しかし、如何せん量が多い。例のレイシフトシャッフル事件の時よりとは明らかに比べ物にならないのだ。

 

「......佐々木小次郎は、確かに対応出来ないだろうな。あまりにも専門外だ」

 

 入り口でぐったりしているトレーニングルーム監督官を見てアスクレピオスは納得する。

 

「さてと、この問題児さんは何処までやらかしてくれるのやら......」

 

 魔力のカーテンをくぐる医師神。微かに漂う熱気と胃もたれするくらい重たい愛のオーラが彼を襲う。

 

「よく来たな、余と弓兵の仲人よ」

 

 そして、ネロ・クラウディウスが覇気全開で立っていた。後ろに置いてある砲台を見て彼は確信した。

 

「お前、どこから水着霊衣を? このカルデアに水着のお前は召喚されていないはずじゃ......」

 

 そう、彼女は水着(キャスター)になって小次郎を倒したのだ。全体宝具の相性不利宝具相手では、流石の剣聖も分が悪い。加えて、彼女の事だから「功労者」の力を行使してトレーニングルームの権限も奪った上で襲撃したのだろう。

 

「マスターのフレンドから、今後の協力関係を保証して借りた。まあ、厳密にはフレンドの主力サーヴァントの一人ってだけだがな。如何せん、あちらでも内部で戦争が起きているようでな。思うように己の立場を確保できなかったが故にこちらでも戦うつもりらしいぞ」

 

 堂々とネロは答えた。また、己の味方を増やすべくあの手この手と暗躍していたようだ。

 

「しかし、今のお前は孤軍奮闘状態だぞ。先程、アサシン・パライソの反乱が抑えられたところだからな」

 

「......構わぬ。余の目的はほぼ既に完了しているのだからな」

 

 そういう彼女の手元には花嫁衣装(嫁ネロ霊衣)があった。

 

「!!......まさか、このクーデターの勢いそのままに結婚式を執り行うつもりか? まだロビンフットから正式な求婚の承諾も受けていないというのに?」

 

「そんなこと、後から愛して貰えばそれで良い。今はただ、騒ぎが大きくて照れているだけであろうからな」

 

「そんなものなのか? 僕には、ロビンフットがただ困っているだけにしか見えないぞ」

 

「奴の事は余が一番知っておる。問題ない」

 

 平行線、いや捻じれの会話を繰り広げる二人。特にアスクレピオスが、ネロを信じていないのだ。

 

「自分一人で自分の都合が良いように振舞うから孤立するんだ。マスターは皆のマスターであるし、ロビンフットもカルデア全体をサポートしているアーチャーなんだぞ」

 

「だから、それを余だけのものにしたいと申しておるのだ!」

 

 そして、ネロは叫んだ。乱雑に花嫁衣装を放り投げ、魔力を注ぎ強引な霊基を変える。

 

「......本来あるはずのない霊基で立っているのも楽ではない。このトレーニングルームを開放して欲しければ要求は一つだ。余と弓兵の祝言を行え。仲人はお主ら夫婦がしろ。奏者に代表挨拶をして貰い、エジプトの王や船長にも祝辞を言って貰うぞ!」

 

 遂に、強硬手段の要求が出た。内容は、予想通り。本来はアサシン・パライソを焚きつけて有利な状態で要求するつもりだったのだろうが、もはや時は残っていないようだった。

 魔力の量はもはや聖杯を起動させた時に匹敵し、その裏には別カルデアからの魔力サポートもあるようだ。つまり、今のネロは特異点を上回るレベルの力がある。とてもじゃないが、アスクレピオス一人では太刀打ち出来る相手ではないのだ。

 

「......援軍を呼ぶべきか? いや、そもそもこの問題に直接メスを入れるべきではないだろうか?」

 

 そう呟くアスクレピオス。戦闘に関しては指揮を執れるほど頭が回らないが、それでも知恵は絞れる。

 

「こちら、アスクレピオスだ。トレーニングルームにジャック・ザ・リッパーとロビンフットとジークジャンヌを連れてきてくれ。ネロが手の付けられない程に暴走している!」

 

『......ズザザ了解した! 少し時間がかかるから、それまで持ちこたえてくれ!』

 

 通信機から、ダ・ヴィンチの返事が来る。恐らく、ネロに繋がっている魔力リソースの無力化なども行ってくれるのだろう。

 

「......さて、少しの間だったら愚痴とか聞くぞ。患者の話を聞いてやる事も、医者の務めだからな」

 

 アスクレピオスは軽く腕まくりをして息を整える。愚痴を聞くと言っても、景虎の時のようにただ話を聞くだけで済まない事は重々承知だ。

 

「余は間違ってなどいない。多くの者から支援を受けているのがその証拠! 患者などと抜かす愚か者には、余が直々に鉄槌を下してやろうぞ!」

 

 その目は、全てを滅ぼす暴君の目をしていた。もし医師が彼女の前で跪く事になれば、その時は彼女は生前の暗さを取り戻してしまうだろう。

 




 第二部も、間もなく佳境ですね。とりあえず、ネロの心情については余すところなく書き綴っていきたいです。

 アンケートもお願い致します。

里見レイ

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