ネロ「・・・・・ん、ここは?」
致命傷を負って意識を失ったネロは、どこかわからぬ世界にいた。
このとき、自身の姿はISスーツを着ただけの状態だった。
ネロの目の前にあるのは、ヨーロッパの一般家屋に近い一軒家だ。
草花の色めく庭では、見知らぬ人々がいる。
庭を走っているのは、幼き少年。父親らしき男と遊んでいるようだ。
その光景を、微笑みながら窓際から眺めているのは母親のようだが・・・・・・。
ネロ「・・・・あの母親は、はっ!!」
ネロは目を疑った。そこにいたのは、ネロの生みの親であるアスタロト、もといベアトリクス・グルーバーだった。
ネロ「これは、どういう事だ!?」
ベアトリクス「あなた、ネロ、そろそろお食事にしましょう。」
ダニエル「おお、そうだな。ネロ、ママが呼んでるぞ!」
※ネロと区別をつけるため、少年には「少年ネロ」と名付けておきます。
少年ネロ「はーい!」
少年ネロはトテトテと走る。
ダニエル「おいおい転ぶなよ。」
ネロ「・・・・・。」
ネロはその光景を、心ここにあらずという感じで只々見つめていた。
「ネロ。」
ネロ「!?」
目の前に何やら人影が出現する。その者はローブに身を包んでおり、フードを被った顔は口がやっと見える程度だ。体格からして男だろう。
ネロ「何者だ、貴様。何故俺や母様、いや、アスタロトを知っている?」
ネロが問いかけると、男はゆっくりとフードから顔を見せる。
その顔は先程見た幼子達の父親だ。
ネロ「!?」
「私はダニエル・グルーバー。お前の父親、いや、正確にはお前のオリジナルの父親だ。」
ダニエルは少しやつれた表情ながらもどこか穏やかな印象だ。
ネロ「あの少年が、本来のネロという人間として生まれるべきだったという事か。」
ネロは納得しながらも、どこか寂しい気持ちになり複雑だった。
ネロ「俺もリリスも、兵器ではなく人間として生まれていたならば、愛する家族になれた。だが俺は、この幸福の犠牲によって生まれた。」
「自分を責める必要などない。お前が生まれた事は決して無意味ではない。私にとっても、ベアトリクスにとっても。」
ネロ「・・・・俺は、生きるべきなのか?それとも今ここで死すべきなのか?」
ダニエル「それはお前次第だ。死を受け入れるもよし、死に抗うもよし。 最も、今から起こる事を目の当たりにした上で、だがな。」
ネロ「!!!!」
ネロはダニエルの指差す方を見る。そこにはネロ・インテグルムと瀕死のネロが、そして一夏達の姿が。
リリス「兄様!行かないで!!」
エキドナ「ネロ様!あの者達のもとへ行く必要はありません!」
ネロ「リリス!!」
ダニエルのそばにリリスの姿が、そして・・・・
アスタロト「ネロ、やっと私達家族が揃ったのよ!」
ネロ「・・・・・・。」
アスタロトもといベアトリクス・グルーバーの姿もそこにあった。だが、ネロはその名を口にはできず、母と暮せば良いと言う事もできないでいる。何せ自らの手で最期を遂げさせたのだから。
ダニエル「私達の魂はアスモデウスの力によって、冥府で共に暮らしている。」
リリス「兄様お願い、帰ってきて下さい!」
アスタロト「そうすればこの戦いともお別れできるわ。」
ネロ「・・・・・。」
ネロは深く考え込んだ。
この戦いに死をもって終止符を打ち、一夏を信じて後のことを託すか。
それとも死に抗い、一夏と共に生きていくのか。
ダニエル「答えは決まったか?」
ネロ「俺は、家族と共に生きたい。」
アスタロト「ネロ!!」
リリス「兄様!」
アスタロトとリリスは歓喜の表情を見せる。だが、
ネロ「但し、一夏と共に現世を生き抜いてからだ!!」
ダニエル「・・・・・なるほど。」
アスタロト「ネロ!あなた、まだ一夏を信じるの!?」
リリス「そんな、どうして!?」
ネロ「案ずるな。クローンといえど俺も人間だ。寿命は必ず来るだろう。それに、俺の完成型とのたまうネロ・インテグルムとの決着もある。アスモデウスもこの俺が必ず葬り去る!」
ダニエル「アスモデウスを倒せば冥府の私達も散り散りになってしまうぞ。」
ネロ「聞こえなかったか?俺は、家族と共に『生きたい』と言った。冥府は死者の世界だ。それに、アスモデウスが俺の求める温もりを与えられる筈がない。
そんな虚しい世界より、こんな俺を家族兄弟同然に受け入れた一夏とともに生き抜く事を、俺は選ぶ!!!!」
ダニエル「・・・・・それがお前にとって最善ならば、それもよかろう。」
アスタロト「あなた!!」
リリス「父様!!」
ダニエル「いいだろう、再びこの世で生きていくがいい。」
そう言うとダニエルは強い光を放ち、アスタロト、リリスと共に消え去る。
そして、ネロの意識が再び肉体に戻り・・・・・、
Side現世
ネロ「・・・・・ん。」
ネロは再び目を覚ました。
ネロ・インテグルム「馬鹿な!?この傷で意識を取り戻しただと!!」
一夏「・・・・ネロ、お前意識が!!」
ギャラリー一同「!!!!」
Side簪
簪「本音、起きて!!」
虚「本音!」
本音「う〜ん、あれ、ネ、ネロロン!?」
レオ「気がついたみたいだな!」
弾「本音!ネロは無事だぜ!」
本音「ほ、ホントだ!よかったーわぁーん!!!」
本音はあまりの嬉しさに号泣する。
Sideネロ
ネロ「待たせたな!そらっ!!」
ネロは壁キックと同時にイグニッションブーストでネロ・インテグルムに体当たりをする。
ネロ・インテグルム「ぐあっ、貴様!!」
ネロ・インテグルムはネロの体に刺さっていたヘル・ジュディシウムを引き抜く。
ネロ「ぐうっ、どうせならこれも抜け、気の利かない奴だ!」
ネロは痛みに顔を歪めながら体に刺さっていたヘル・グラディウムを抜いた。
ネロ「さて、本番といくか!!」
ネロは6枚の黒い翼を羽ばたかせ、肉体の治癒と力の供給を始める。
千冬「グルーバーの体が再生していくぞ!」
クラスト「これは、白騎士と同じ回復能力だ。」
アスモデウス「ネロ、貴様、我の力で家族に会わせたのだぞ!!」
ネロ「ああ、確かに見た。だが所詮は幻のようなものだ。俺が求めるのは確かな温もりだ。一夏達こそが、今の俺にとってかけがえのない家族だ!!」
ギャラリー一同「ネロ(さん)!!」
一同はネロの言葉に心打たれる。
ネロ・インテグルム「ただの下等な人間たちと共に生きるか。ならば永遠の眠りにつかせてやろう!貴様を殺し、俺こそがネロである事をわからせてやる!」
ネロ「上等、勝者が本物だと言うことで決着をつけてやるぜ!」
再び戦いが始まった。果たして勝者は・・・・・。