一夏「…。」
クラス代表決定戦での戦いのダメージを医務室で回復し、自室で一夏はベッドに寝ながら色々考えていた。
セシリアは代表候補生に違わぬ力を持っており、本来なら負けていた試合で勝てたのだから、多少の疑問は抱かざるを得ない。
一夏「まあ、言ってみりゃコイツのおかげだよな。」
待機状態の白式を見つめながら呟く。ちなみに白式の待機状態は、白い金属のリストバンドに二枚の翼が付いたものである。
ふと、部屋のインターフォンが鳴る。
一夏「誰だろ、姉さんか箒かな。」
ドアを開けると、そこにはセシリアが立っていた。
一夏「…オルコットさん?」
セシリア「一夏さん、具合はいかがですか?」
一夏「ああ、もう大丈夫。」
セシリア「よかったです。一夏さん、私のことはセシリアで構いませんわ。あなたは私に勝利したのですから。」
セシリア、彼女からは険が取れており、あの時の高圧的なものはなくなっている。
セシリア「今日は、一夏さんにお詫びを申しに来ましたの。」
一夏「…とりあえず中に入ろうか。」
セシリアを部屋に招き入れる。
セシリア「その、初めてお会いした頃は、本当に申し訳ございませんでした。」
一夏「いいよ。でもあれには何か訳があったんじゃないのか?」
セシリア「えっ?」
一夏「人間、歪んでるときは大抵心に傷を負ってるもんだ。あの時興奮こそしていたが、お前の目を見ればそれが何となくわかったんだ。」
セシリア「…一夏さん。」
それから、セシリアは自分の過去について話し出した。両親はイギリス貴族の中でも有数のオルコット家であり、両親共に立派だったが、ISの出現を機に両親の関係が歪み、父親は母親の顔色を伺うばかりになったことから、男に対して少しずつ不信感を抱いてきた。
そして、彼女の男性不信にさらに拍車をかける事件が起きた。両親が列車の事故により亡くなってしまい、残された財産の所有権をめぐって多くの親戚の男性が争ったのだ。審議の結果、最終的にはセシリア直属のメイドに渡され、事態は解決したが、セシリアの心には、世の男性は皆弱く醜いという偏見が生まれてしまったのだ。
一夏「やっぱり、悲しい訳があったんだな。」
セシリア「一夏さん、私は、その、ただ寂しくて。」
一夏「大丈夫。この学園にいれば、その寂しさもきっと乗り越えられる。」
一夏は強い気持ちでセシリアを諭した。
セシリア「(この輝いた瞳、女尊男卑のこの時代でも、これ程の男性がいたなんて、このお方はまさに私の理想の男性そのものですわ。)」
一夏「ん?セシリア?」
セシリア「あっ、その、えっと、そ、そうですわ。これから食堂で、一夏さんのクラス代表就任パーティーが開かれる事になりましたの。」
パーティーか、何だか大袈裟な気もするが、悪くないな。
一夏「そっか、そりゃ楽しみだぜ。じゃあ行こうか。」
セシリア「はい。」
セシリアと一夏は部屋から出る。すると、そこにはタイミングが悪い事に箒がいた。
箒「なっ、オ、オルコット⁉︎一夏の部屋で何をしていた⁉︎」
セシリア「あら、御機嫌よう篠ノ之さん。私、一夏さんのお見舞いに来ていましたの。」
そう言うなりセシリアは俺の腕に手を回す。
やべえ、こりゃ修羅場になる。
箒「くっ、まさか一夏を馬鹿にしていた尻軽が抜け抜けと見舞いに来るとは。」
セシリア「なんですってー⁉︎」
箒「一夏から離れないか!」
箒は一夏のもう片方の腕を引っ張る。
一夏「な、なあ2人共、今は食堂に行かないか?皆が待ってるし。」
箒「…そうだったな。」
セシリア「そうですわね。」
とりあえず食堂に向かうが、移動中も2人は睨み合いを続ける。
一夏「2人共、できれば笑顔でいて欲しいんだが、その、せっかくの美貌なんだし。」
箒・セシリア「一夏(さん)❤︎」
何とか収まったな。しかし2人は顔を見合わせるなり、
箒・セシリア「ふんっ‼︎」
この有様である。この先どうなるかな。
食堂に着くと、皆が拍手で迎え入れてくれた。奥のテーブル席の中央に座り、両サイドにはそれぞれ箒とセシリアが座った。
谷本「それでは、織斑君のクラス代表就任を祝って、乾杯!」
「かんぱーい‼︎」
クラッカーが鳴らされる。めちゃめちゃ祝福されてるな。
それにしてもさっきから箒とセシリアは俺の腕を強く抱き締めてる。まるで俺を取られたくないと言わんばかりに。それに、2人とも胸が大き目だからその柔らかい感触がもろに伝わってくる。
胸の感触に顔が緩むのを何とか堪える一夏であった。
「はいはーい、新聞部でーす。今話題の男性IS操縦者の織斑君にインタビューさせていただきまーす。私は黛薫子、名刺をどうぞ。」
一夏「ど、どうも。(この学園にも部活があるのか。)」
名刺を受け取る。ちなみにこの黛薫子は3年生だ。学年は制服のリボンの色で区別されており、1年生は青、2年生は黄色、3年生は赤色である。
黛「さてさて、織斑君。今回のクラス代表決定戦の感想を一言!」
一夏「今回勝てたのは、白式のおかげと言った方がいいな。事実セシリアは代表候補生に違わぬ力を持っていたし、正直勝てる気はしなかった。でもそんな中でセシリアといい勝負ができた事を誇らしく思う。」
箒「(一夏…。)」
セシリア「(一夏さん…。)」
鷹月「(素敵。)」
のほほん「(おりむーカッコいいよぅ。)」
黛「うん、謙虚な答えだね。」
一夏「それに、セシリアはある事を証明してくれた。それは、人は変われるということ。彼女のおかげで俺はこの女尊男卑の世の中でも、希望を持って生きられると思えた。」
セシリア「一夏さん。」
谷本「なんか、感動したかも。」
黛「では最後に、今後の目標を聞かせてもらえるかな?」
一夏「俺はまだISを始めたばかり。レースで言えばまだ最下位だ。俺はもっと強くなり、いつか織斑先生を越えたい‼︎」
「おぉー!!」
千冬「大きく出たな織斑、その言葉を覚えておこう。今後も楽しみにしているからな。」
セシリア「一夏さんはもっと強くなれます!私もお手伝い致しますわ!」
箒「私にも何かできることがあるなら言ってくれ!」
のほほん「私も〜。」
黛「じゃあ最後に、インタビューの記念写真を撮らせてもらおうかな。織斑君、オルコットさんと握手して。」
セシリア「ままままぁ、一夏さんと2人で写真なんて。」
箒「むっ。」
黛「2人共注目の専用機持ちだからね。」
なんか照れるな。しかし、シャッターが押される瞬間、箒をはじめ、周りの皆が入ってきた。
セシリア「何故全員入っていますの⁉︎」
谷本「セシリア、抜け駆けはダメだよ〜。」
箒「私もそう思うな。」
セシリア「むうぅ〜。」
一夏「…ハハハ。」
こんな感じでパーティーを過ごした。
パーティーを過ごした後、一夏は帰り際に箒とセシリアと3人になったタイミングに、2人に声をかけた。
一夏「…確かめたい事があるんだけど…。」
箒「うん?」
セシリア「どうしましたの?」
一夏「2人とも、俺に好意を抱いてるんだろう?」
箒・セシリア「!!」
一夏「箒は知ってるけど、俺は最近記憶喪失になってから、初めての事だらけでまだ落ち着けてないんだ。その、今すぐには答えが出せないけど。」
セシリア「今すぐでなくても大丈夫です、一夏さん。」
箒「ああ、想いに気づいてもらえただけでも嬉しい。だから安心してISに励んでくれ。」
一夏「2人共、俺を好きでいてくれてありがとう。これからもよろしくな。」
箒・セシリア「ああ(はい)‼︎」
修羅場からほのかに甘い雰囲気になり、そのまま部屋に戻った。