一夏「・・・。」
一夏は心の中がいつも通りではないながらも、食堂で朝食を食べていた。
箒「一夏、ネロの事が気がかりか?」
一夏「まあ、それもそうなんだが。」
一夏はどこか考えすぎているような表情だ。
エクトル「この間の襲撃以来から少し経ったけど。」
シャルロット「あれから何も起きてないから逆に気になるよね。」
アルゴス「確かに、俺たちが知らない所で動いてる可能性もあるな。」
アスタロトやネロから襲撃を受けて約1ヶ月、何も起きてないからといって安心できるわけではない。
専用機持ち一同に至っては、油断できない状況だ。
セシリア「こちらも次の事態に備えておく必要がありますわね。」
鈴「でも、あいつらがいつどこに現れるかわかんないし。」
弾「探しに行くわけにもいかねえしな。」
皆深刻な表情で深く悩む。
ビリー「アスタロトについて調べることってできねえかな?」
レオ「調べるっつってもどうすんだ?」
ふと、簪が閃く。
簪「確か、アスタロトってルシフェルの仲間だよね。グリモヴァールにルシフェルの記録が残っていれば、そこから調べられるんじゃない?」
ラウラ「なるほど、その手があったな。ルシフェルはあそこでは表向きは町の支配者だったからな。」
レベッカ「過去の記録くらいは残ってる可能性があるって事ね。」
グリモヴァールに調査をしに行くため、千冬に事情を話す。
千冬「なるほど、敵を詳しく知るに越したことはないな。よし、出国を許可する。調査の報告を待っているぞ。」
一同「はいっ!!」
こうして、一同は久方ぶりにグリモヴァールに行くことになった。金曜日の放課後に学園を出発し、空港からスペインへと向かった。
そして、グリモヴァールに到着する。
一夏と冥王ルシフェウスの戦いからしばらくの間復興が進み、それなりに住みやすくなっている。
以前は常に夜だったが、今は普通と変わらない。
一夏「今じゃここも、すっかり入りやすくなったな。」
箒「復興がだいぶ進んだようだな。」
セシリア「ええ、以前のように暗く荒んだ雰囲気は消えていますわ。」
アルゴス「・・・・。」
アルゴスはかつて自分が冥王ルシフェウスとしてここにいた事を思い出した。
セラフィエルとなったエクトルと対立した時、一夏はセラフィエルにもルシフェウスにも従わない選択をした事で今の自分がある。
町の中心であるパブに一行は入る。
シャルロット「昼間からここに入るのは初めてだね。」
マスター「おう、あんたらか。いらっしゃい。」
簪「こんにちは。」
エクトル「なんか、店の雰囲気も変わっていますね。」
マスター「ああ、この街にも太陽が戻ってきたからな、昼間はカフェ、夜はパブってなってるぜ!」
マスターも以前あった時より話しやすい雰囲気になった。
ラウラ「・・・・そういえば、空腹だな。」グーッ
ラウラはカフェのメニューを見た途端にお腹がすく。
一夏「せっかく来たんだし、何か食っていくか。」
鈴「そうね、ここで情報収集もできるし。」
ビリー「さーて、何にすっかなー。」
一同はこのカフェで食事をしながら情報収集をする。
弾「そういや、ルシフェルがいたあのレクトラートって建物はどうなってんだ?」
マスター「今はもう誰も管理していないぜ。ルシフェウスが倒されて以降手付かずだ。」
鈴「ほったらかしなら、中にまだ何かあるんじゃない?」
エクトル「その可能性はあると思う。」
一夏「よし、行ってみるか。」
食事後、店を後にし、レクトラートへと向かった。
途中、レクトラートの敷地の入り口手前に、かつてチンピラだった男たちがいた。呑んだくれていた時よりは落ち着いている。
元チンピラ「おう、あんたら、また会ったな。」
ビリー「よう、つーか何だそのカッコ?」
元チンピラは警官服の様なものを着ていた。
元チンピラ「いや、せっかく町が元に戻ったからな。俺たちも頑張らねえと。今はこいつらと街を巡回して安全確認を行ってるぜ。」
アルゴス「ガラじゃねーのによくやるな。」
鈴「本当よね。」
元チンピラ「何だよ、いいだろ!(笑)それより、あんたらここに入るつもりなんだろ?やめといたほうがいいぜ。」
一夏「忠告はありがたいけど、どうしても俺たちはあの中で調べることがあるんだ。」
セシリア「私達の身の安全なら、自分たちで行いますわ。」
元チンピラ「ま、そうだよな。本当は立ち入り禁止だが、特別に通してやるよ。」
エクトル「ありがとうございます。」
レクトラートに入ると、内部は当時のままである。悪魔の血痕が至る所に飛び散ったまま残っていたり、
戦闘時の衝撃でできた傷が壁じゅうにあった。
簪「うわ・・・・。」
簪は思わず顔をしかめる。
一夏「みんな、何があるかわからないから気をつけろ。」
中に入り、奥深くへと進む。
レオ「ここ、久しぶりに来たが、本当にあの時のまんまだな。」
箒「電気も通っていないところを見ると、誰もいない様だが。」
1階の廊下をしばらく歩いていると、上下に分かれた階段と、奥へと続く通路があった。
鈴「分かれ道が3つあるわね。」
アルゴス「ここは3手に別れて調べるべきだな。」
ここからはグループに分かれて調査をする。
一夏「よし、俺たちは上を調べる。」
一夏グループは箒、セシリア、シャルロット、ラウラとなる。
エクトル「僕らは中央の奥通路に進もう。」
エクトルグループはレオ、簪、弾の4人。
アルゴス「下は任せろ。お互い何かあったら連絡しようぜ。」
アルゴスグループはビリー、鈴、レベッカとなる。
Sideアルゴスグループ
アルゴス達は、地下の資料室に入った。
そこはIS学園の生徒会室よりはるかに広大で、見渡す限り書物やデータ資料が無数にある。
ビリー「これ全部調べんのかよ。」ハァ
ビリーは本が退屈で苦手なためか、うんざりする。
レベッカ「文句言ってないで、さっさとやるわよ。」
手当たり次第に資料を閲覧する。
鈴「にしても、変な本が多いわね。」
本やデータ資料に記載されているのは、かつて様々な国で行われた異常な人体実験のデータばかりである。
アルゴス「妙な文章にグロテスクな画像、人間がやったとは思えない程のものだな。」
調べていくと、奥に資料保管庫と書かれた扉が。
アルゴス「ここが一番怪しいな。」
アルゴスはドアの鍵をキックで強引にぶち壊して扉を開けた。
レベッカ「相変わらずすごいキック力ね。」
ビリー「この中もすげーオカルト的な本があるな。」
中には、先程とは打って変わり、神や悪魔の辞典や魔導書の様な書物がたくさんあった。
ワルプルギスの夜を彷彿とさせる儀式のようなものが行われた記録がいくつも記載されている。
鈴「ちょっと、この写真見て!」
ビリー「何だ?」
見てみると、その中にはルシフェル、バラキエル、ベリアルの3体の中央に立つ女性の姿が。
中央には血まみれで横たわる1人の女性の姿が。
レベッカ「何々、悪魔に捧げられし生贄となった人の子の肉体により、堕天使の後継者誕生する、その名は・・・?」
文章の終わりの単語を見て一瞬一同は絶句する。
アルゴス・鈴・ビリー・レベッカ「アスタロト!?」
Sideエクトルグループ
エクトル「みんな、周囲への警戒を怠らない様に。」
弾「あ、ああ。」
弾は若干震えながらも何とか進む。
奥に進んでいくと、何やら古びた病院の病室の様な場所に出くわす。
簪「こんなところに病室って・・・。」
簪は寒気を感じていた。
部屋に入ると、あるものが目に付く。
レオ「おい、これって・・・!?」
レオはいくつもあるベッドの上にあるものを見て驚愕する。
エクトル「ああ、間違いない。人間の・・・死体だ。」
簪・弾「うっ・・・・。」
簪と弾は思わず右手で口を抑える。原型こそ止めていないが、人体の一部と見られるものがいくつもベッドの上に転がっている。
エクトル「恐らく、ここに拉致した死刑囚や、自ら進んで悪魔になる者を収容していたんだろう。」
レオ「これが公にならなかったのは、ここがかつて表向きは病室だったからだろうな。」
周囲を探索し、診察室らしき部屋に入る。資料が保管された棚があり、机には大きめのデスクトップのパソコンが1台。
弾とエクトルはパソコンを、レオと簪は棚の資料を探る。
エクトル「見たところ、どこの病院でもある様な診察記録ばかりだ。」
弾「おい、これ怪しいんじゃねえか?」
弾はロックされたフォルダを見つける。しかし、パスワードがわからない。
簪「エクトル、それのパスワードってこれじゃない?」
簪は棚の資料で、記録カルテのファイルのポケットの隅に書かれた文字を見つけた。
入力すると、パスワードが一致した。
レオ「これは・・・、悪魔生産記録?」
その中にはこう書かれていた。
デモンズコア適性実験の記録:
9月11日、死刑囚Aにデモンズコアの適性実験を行った結果、上半身が破裂。
死刑囚Bに試したところ、意識障害となり、行動不能になったため、殺処分。
死刑囚Cは、適性がややあったものの、ISの操縦が肉体の限界の許容範囲を超えたために失敗、死亡。
死刑囚Dは・・・・
(省略)
結果:
死刑囚及び悪魔化志願者約10万名に施した結果、成功作約3万名、不完全作約2万名、失敗作約5万名となった。
実験担当:ウーゴ・アンデルソン
エクトル「このウーゴという者が、恐らくここで医者をしながらこの実験に協力していたんだろう。」
簪「何て事を・・・、こんなの人間がする事じゃないわよ!」
Side一夏グループ
一夏達は上の階に上って行った。
一夏「皆、足元に気をつけろよ。」
階段はやや錆びているところがあり、皆慎重に上った。
登りきったところには、部屋の扉が一つだけだった。
ラウラ「よし、入るぞ。」
ラウラがそっとドアを開ける。中に入ると、そこは何だか寂れた雰囲気の部屋だ。
椅子と机が一つずつあり、右には本棚が一つある。そこには文学、思想、科学、神話、そして、IS関連の書物がならんでいる。
セシリア「随分研究をなさっているお方の様ですわね。」
箒「これは、中々難しいものばかりだな。」
箒とセシリアは書物を手に取るも、首をかしげるばかり。
シャルロット「あ、こんな所に日記があるよ。」
シャルロットは机の引き出しから誰かの日記を見つけ出した。
ラウラ「日記か、これは、人の名前か?」
表紙の下側に、ベアトリクス・グルーバーと書かれている。
一夏「ベアトリクスっていうのか、まあとにかく読んでみよう。」
日記を最初から読み始める。時期的には6年前からだ。
日記:
6月11日
今日は、愛する夫ダニエルとの結婚記念日。
ダニエルは張り切っていろんな所に私を連れて行ってくれた。
プレゼントに貰ったペンダントは一生の宝物。
ダニエルはいつも私の心に寄り添ってくれるかけがえのない人。
一夏「・・・これは、ここにいた奴が書いたものにしては・・・。」
セシリア「何だか普通の日記ですわね。」
箒「ああ。」
シャルロット「読み進めていったらもっと色々わかるんじゃない?」
ラウラ「うむ、気にはなるな。」
日記:
6月20日
今日病院に行ったところ、妊娠していた事がわかった。
愛する夫との子供ができた事に私は嬉し涙が止まらなかった。
出産は来年の4月になる予定。愛しの子が生まれるのが待ち遠しい。
一夏「子供ができたのか。」
箒「幸せな限りだな。」
セシリア「ええ、そうですわね。」
しかし、読み進めていくに連れ、だんだんその幸せに翳りが。
そして、一夏達が驚くべきキーワードが登場知る事になる。
日記を読み進め、今年書かれたページに入る。
日記:
3月11日
最近夫の様子がおかしい様に思える。
いつも通りに話している様でも、どこか違和感が。
夜、夫が電話をしているのをこっそり聞いたところ、
夫が勤めていた技術開発社が、IS関連企業でも有数のデュノア社に買収される事になり、全ての権限を奪われてしまったのだという。
一夏「!?」
セシリア「デュノア社!?」
箒「何だと!」
ラウラ「シャルロット、これは本当なのか!?」
シャルロット「わからない・・・、僕もこれは知らなかった。」
日記:
4月2日
夫は精神的に疲れ果てていた。やっとの事で話を聞いたところ、夫はデュノア社によって配属された部署で、女尊男卑に固執する女性社員から嫌がらせを受けていたのだ。
もうすぐ愛しの子が生まれるというのに、何故夫がこんな目に・・・。
女尊男卑は、かの有名な篠ノ之束博士がISを創始した事がきっかけとなり、ISが女性にしか扱えない故に男性の存在が取るに足らないものとされる様になっていたのだ。ちなみに生まれる子は男の子であり、この子の将来も心配である。
シャルロット「・・・何だか、いたたまれないよ。」
シャルロットはどこか罪悪感を覚えた。
箒「・・・私もそう思う。」
箒もシャルロットと同じ様な心境だ。
ラウラ「何だか、読み進めるのが怖くなってきたぞ。」
セシリア「お二人とも、大丈夫ですか?」
一夏「読むのやめようか?」
箒「いや、続けてくれ。」
シャルロット「きっと、向き合うべき事実なんだと思う。」
一夏「・・・わかった。」
その後もひたすら読み進める。
日記:
4月10日
いつもの様に夕食を用意して待っていたのだが、夫は帰ってこない。
残業があるのかと思ったが、最近の夫を見て考えると、何だか嫌な予感がしてならなかった。
デュノア社に電話をしてみるも、夫はすでに退社していると言っていた。
いよいよ不安になり、只々帰るのを待っていた。
しばらくして、自宅に電話がかかってきた。夫からだと思ったが、かけてきたのは警察だった。
電話がかかってきて数十分後、私の元に夫が帰ってきた。自殺により帰らぬ人となって・・・・。
一夏「まさか、女尊男卑がここまでの事態を引き起こすとは・・・。」
セシリア「・・・・。」
セシリアは気持ちが滅入る。かつては自分も女尊男卑に固執していたのだから無理もない。
ラウラ「セシリア、自分を責めないでくれ。」
セシリア「で、ですが・・・。」
シャルロット「大丈夫だよセシリア。」
箒「私達はセシリアを信じるぞ。」
落ち込むセシリアを何とか励ます一同。
いよいよ最後のページに入る。
日記:
4月20日、夫がこの世を去ってから数日して、私は産気づいた。
この子と一緒にダニエルの分まで生き抜こうと、私は必死になって出産に耐えた。
しかし、この出産が、私の心を大きく変える事になろうとは・・・。
出産を終えても、一向に産声が聞こえない。先生によれば、死産とのこと。
これで私は夫も子供も失った。何故こんな事に!?どうして私が!?
私は世の中を憎んだ。特に、夫の自殺の要因となったデュノア社、何よりISをもたらした篠ノ之束は許せない。
しかし、産後で動けない間はどうすることもできず、只々憎むのみだった。
産後から回復するも、私の憎しみは消えることはなかった。そんな中、私に声をかけてくれたのが、スコール様だった。
スコール様は私の憎しみを受け止めてくださり、とても尊敬できるお方だった。
そんなある日、スコール様は私のデュノア社と篠ノ之束への復讐を手伝うとおっしゃられた。
スコール様はご自分が堕天使ルシフェルである事を私に明かし私に力を授けてくださった。
そう、私は人間を超え、復讐を果たす悪魔としてこの世に生まれ変わったのだ。
そして私は、ルシフェル様から悪魔としての自身の名を頂いた。名は・・・・『アスタロト』
シャルロット「アスタロト!!!じゃあこのベアトリクスって人は・・・。」
ラウラ「アスタロトの事なのか!?」
箒「何ということだ!!」
セシリア「元々人間だったなんて!!」
一夏「いや、それより早くみんなと合流してデュノア社に向かった方がいい、もしこの日記の通りなら、
デュノア社が襲撃されるのはほぼ間違いないぞ!!」
一夏達は急いで部屋を出て、他のグループと合流し、デュノア社へ直行した。