たいへんご機嫌な気分だった。
本日の成果は上々。鼻歌でも歌いだしたくなってくる。昨日の午後から今日に掛けて、ヴェルトールが眠っていたあの先史遺跡にソロで潜り、端末からデータを吸い出しながらの解析作業に当たってきた。
予定していたよかずっと進捗が良かったのも喜ばしい。ただそれよりも何より、今朝方のとある発見のおかげで、今後の作業ストレス大幅減が確約されたのがまったくもって素晴らしい。
El.レグルスのコックピット内部。スクリーン化した正面モニター上のウィンドウ画面には、この惑星の文明には本来縁もゆかりもない、しかし俺個人には大いに見覚えのある言語がずらずらと表示されている。
何を隠そう『日本語』文書だ。
漢字カタ平仮名混じり文。当然、目で見たまんまで文字通り読み進めていくことができる。
今画面に映りっぱなしになっているのは、元エルドリッジの一ブロック《ここ》の中枢コンピュータが自動取得したデータの要約である。なんで内容を理解するにはある程度専門的な裏付けが必要であり、加えて日本語記述に用いられている単語や文法なんかにも、おそらく経年からくる多少の違和感があるにはある。
それでも何より母語は強しだ。この惑星では俺という唯一人に限り、これを上回るボーナス問題はそうそうない。
エルドリッジ艦長のシゲヨシ・イノウエ氏以下、往時の日本語話者の皆々様に大感謝だな。一万年越しに有り難く活用させていただくとしよう。
ちなみに、これまでは先史文明情報を解析する場合、暗号化されたデータを引っこ抜いて力技でソラリス語――どうもこの世界の書き言葉全般、既存言語をシャッフルして作った人工言語めいたところがあるよーに思う――に機械変換し、生成された怪文書を矯めつ眇めつ読解するという苦行を毎回強いられていた。
単に斜め読みするだけでもやたらめったら時間を食う上、ヒューマンエラーも雨後の筍状態で、検証作業が一手間どころの話でない。
一方、今回の日本語化設定は、マシーン所与の仕様がそのまま使える。おかげで項目をちょちょいと弄れば一瞬で表示が切り替わってくれる。
読み取りそのものに費やす労力と、あと、データを変換するあいだの手持ち無沙汰の待ち時間。そのあたりをゴッソリと省けるわけで、ストレスフリーに足すことの作業効率爆上がりだった。
目見当だがトータルで見ると、十人力を余裕で上回るくらいのスピードアップを果たせているんじゃないかと思う。
今の俺なら、ラジエルの樹からのデータサルベージだって、余裕綽々でこなしてみせるぜ。
ヒュウガ・リクドウ何するものぞ。技術者としてヤツを上回れる分野なんぞどこ探してもなさそーだが、この方面に限ればそこそこ上へ行けたんじゃなかろうか?
まーやってるこたぁほぼほぼズルとはいえ、勝てばいいんだ何を使おうが。わっはっは。
◆
と、解析完了を示すビープ音がコクピット内に鳴った。
パイロットシートにしばらく這わせていた背中を浮かせ、サイドモニター下部に設置されたコンソールのショートカットを叩く。
正面モニターがすぐさまメルカトル図法の世界地図へと切り替わり。その地図の北の果てと南の果てに、それぞれマーカーが赤い点滅とともに浮かび上がってきた。
遺跡の処理端末とレグルスとを併用し、さっきから未回収アニマの器の座標割り出しを進めていたのだった。
ゲーム中でレンマーツォとシューティアの二機が同調した『ヨセフ』と『ガド』。高出力型スレイブ・ジェネレータによる一万年継続した事象変移、つまりエルドリッジの各種船体ブロックを維持するコア・ジェネレータのポイントさえ割り出せれば、目当ての『器』本体もまたその近くに保管されている可能性が高い。
地図上の二つのマーカーは、シェバトから譲り受けたゲート《障壁》分割前の地形データと、遺跡から取得した位置情報とを照らし合わせた答えとなる。
もう一度コンソールを弄り、結果報告とバックアップを兼ねて、二つぶんの座標を第二アジトのメーン・バンクに送っておく。
正面モニターを通常モードに切り替える。世界地図と、他三つばかしのポップアップが一瞬で掻き消え、代わりに外部映像が高解像度で表示された。
先史遺跡、というか。まんまエルドリッジ船内由来の、淡い藍色の構造材で設えられた空間が、目の前には広がっている。
点灯された半円形ギア・パドックの片隅。グラーフを相手に立ち回ったフロアの逆サイドにあたる。
ちょうど一月ほど前、ヤツを不意打ちするためにアンドヴァリとエーンガスを伏せてあったこちら側にも、向こうのモニタールーム(あっち側はチェーンウィップを突きこまれたせいで完全に倒壊家屋と化している)と同様の設備があり。外付けのコネクター経由で、跪かせたレグルスを直接内部コンピュータに繋げてあるのだ。
今のところ、ほとんどフリーパスでデータを抜き取ることが出来ていた。ソフィアが一切乗らなかったおかげで、レグルスの状態がアニマ同調時、即ち純正のデウス防衛用端末として残されていたのが功を奏した形だった。
完全に同システムとして認識されているから、エルドリッジ側のセキュリティに一切引っかからない。何度か改装を繰り返した形跡のあるアンドヴァリや、俺がコックピットまわりを一回グチャグチャにしてしまったヴェルトールでは、ここまでスムーズにはいかなかったろう。
……さて、どうしたもんか。
遺跡内部の探索はまだざっとしかやっていないが、正直ここ、得られる『モノ』についてはイマイチ期待が持てない気がしていた。
というのも、内部にギア・ハンガーが有ったりと一応軍用施設だった形跡はあるものの、どうもエルドリッジ全体の搭載量が積載可能量を下回っていたからか、この区画全体が、典型的な空きブロックと化していたっぽいのよな。
施設としてのハコそのものはでかくても、中身も設備もスッカスカ。少なくともエクスカリバー級戦力が眠っているとはとうてい思えない。なんで、この遺跡から何か有益なものが得られるとすれば、やっぱりそれは情報関係ってことになるだろう。
残念ながら星間文明時代のお役立ち情報は見つからなかった。たぶんその手のコアなデータは、エルドリッジ中枢、すなわちラジエルの樹を擁するマハノン側で管理統括されていたんだと思われる。
ここに残っているのは、ブロック内部の活動履歴と、惑星落着後の観測データがほとんどすべてだ。
事実上、食い散らかされた後の残りカス状態で貧相な中身だと言っていい。
だが、それだけに過ぎなかったとしても。やり方次第で使いみちはいくらでも生えてくる。
例えば、さっき『器』探索に用いた事象変移の発生履歴だ。こいつを詳しく分析すれば、一定サイズ以上のスレイブ・ジェネレータの移動経路や分布を、全世界規模で把握することだってできるのだ。
実際、昨日の仕事で、現時点におけるこの惑星上での稼働ジェネレータの集積ポイントをまとめてある。ようするにそれって大半が都市圏なわけだが、中には本来そこには目立った集落がないはずなのに、妙に反応が集中しているポイントがかなりの数見つかる。
その大半がおそらくソラリスの秘匿施設。イコール、ソイレント・システムの地上出先機関の可能性が高い。
詳しい配置さえ割れればもうこっちのもんだ。そのうち根こそぎにしてくれる。ソラリスのマッドどもめ、首を洗って待っていやがれ。
もっとも、さっきの『器』近似座標の解析完了をもって、今日の予定はもう一通り済んだことになる。
当初は夕方過ぎまで余裕で掛かると思っていた。ところが、終わってみればまだまだ日は高く登ったまま。急いで戻ってこなさないといけないタスクも今のところなかった、はずだ。
緊急性のレベルを下げればいくらでも仕事の上積みはできる。とはいえ、根を詰めてばかりだとガタが来て危ないのは、こないだシェバトで我が身を持って学んだところだ。
適度に息抜きも挟むべきだった。まぁ、これからやろうとすることが息抜きに該当するかはちょっと怪しいところがあるけれど、自分への言い訳と言いますか。
……このブロックのメーン・コンピュータは、エルドリッジ墜落のさなかに船体中枢からブロックが脱落して以来、緊急事態モードで常時稼働を続けてきた。
一万年近い昔から。毎日毎日延々と、一秒足りとも休まずに。
何千年も保つ電子機器なんてたいがいファンタジーだが、ここに限らず、事象変移による状態保全能力とは、それだけのことを成しうるらしい。
であれば。惑星落下時点から今に至るまで収集され続けたデータの蓄積が、まるまるデータベースに残ってるってわけだ。
その蓄積は、過去の世界を覗き込むための格好の窓口となるだろう。保存されているスレイブ・ジェネレータ座標の変遷を遡って追っていくことで、歴史の移ろいが、目の前のモニターごしに、おぼろげな輪郭とともに浮かび上がってくるはずだった。
アベルや、キムや、ラカンが生きたような。この星で興り、栄え、そして滅びていった文明の数々。その焼きつけ。
それどころか。エーテル能力者として『ヒト』が事象変移を手ずから扱うようになったここ数百年に限れば、『ヒト』個人ですら、同じように扱える可能性がある。
流石にそんじょそこらの一般人を追うのは反応が弱すぎて無理くさいが、グラーフに超指弾を向けられたときの圧力感から察するに、覚醒した接触者や対存在のエーテル行使は、軍用の大基軸スレイブ・ジェネレータの出力を大きく凌駕していたように思う。
彼ら彼女らが、「何かを派手にやらかした」瞬間は逐一記録されている見込みがあり。それを追っていけば、ジェネレータ同様に連中の動きを細かく追っていくことができる、かもしんない。
なんというか、野次馬めいた興味がじわじわ盛り上がってくる話だった。
まー、良く考えなくてもやってることモロ覗き見なんで、いい趣味とは言えなさそーな気もするが。それでももう何百年も経ってるわけだから、ある種の学問だとして、正当化してもよかろうさ。
土地柄を考えるに、聖母ソフィアの足跡なんかはウケが良さそうだなあ。アギーへのお土産にももってこいだ。ここはちょっくらお時間使わせて頂きまして……
そんな、そこそこ不純な考えを実行に移そうとした途端。レグルスのコックピット内に通信アラートが鳴り響いた。
お、おう。俺はまだ何もやっとらんぞ。なんだコラ文句でもあんのかオイ。
……はい、こちらラムサス。
『……、……! ……!』
すまん、電波が悪いようだ。ていうかユグドラでもアジトでもなさそうだが何処からの通信だ? 遠いんだかそっちの出力が弱いんだか……今レグルス側で増幅補正掛けるから、ちょっと待ってくれ。
……よし。オーケー、こちらラムサス。再度状況を通達せよ。オーバー。
……ハァ!?
◆
……ちょっと理解が追いつかんな。色々言いたいことも無いではない。
が、今はまとめて脇におこう。それで? ユイ・ガスパール殿。貴女の現状を打破し、最善の結果に持っていくために。必要な支援とはどのようなものかを伺いたい。
『あなたを筆頭に、アヴェ王党派の戦力を率いたブレイダブリク王城への直接介入を求めます』
案の定な要請が飛んでくる。おうおうおう、お気軽に言ってくれおるわ。
『今なら取れるわ、ここ。内部からいくらでも掻き回せる。それに……それくらいやらなきゃもう、あの子のパパは救えない』
……そんなにラヴァーン卿の状態は悪いのか?
『ひどいものよ! 暴行を受けて全身傷だらけ、過度の栄養失調。ついさっき監禁室から救い出しはしたけど……このまま放っておかれたら、あと数日だって保たないのが見えてる』
通信に対応する裏で発信源の精査を終えた。エルドリッジの施設をそのまま解析に流用できたのは幸いだった。モニターの縮尺を全速力で拡大していくと、出てきた座標は完全にブレイダブリク王城ド真ん中だ。
ここ数分の移動履歴を見ても、いかにも追撃を潰しつつ撹乱中といった忙しない動きを残している。欺瞞情報のセンは相当薄いのが間違いない。
『あの人は自力じゃもう、ほとんど動けない。基礎体力を消耗しすぎてエーテル治療も難しいわ。ただちにシェバト《うち》の医療チームに連絡してちょうだい、大至急!』
オーケー、レグルス経由で直接ゼファー陛下に話をつけよう。その際には貴女の名前を最大限使わせてもらうぞ?
それで今の具体的な状況としては――
フランシス・ラヴァーン司教。ニサン正教においては大教母のひとつ下に位置する実質最高位の聖職者。大侯位を持つニサン有数の貴族でもあり、ついでに言うとマルグレーテ・ファティマ嬢の親父さんでもある。
客観的に見て、マルー以上バルト以下くらいのほぼほぼ最重要人物と言える。
設定上、シャーカーンのクーデター後に然程日を開けず獄死となっていて、ゲーム中には名前すら出ていなかったはずだが。俺が介入したからか、それとも別の理由があってのことか、ともかく今の今まで何とか生き延びていたらしい。
もっとも拷問くらって死にかけているそうなので、介入自体は実質的に手遅れで、死ぬのが何ヶ月か延びただけだったようだ。
……今回、ガスパール嬢が彼を発見できていなければ、おそらくそうなっていただろう。その意味で彼女はラヴァーン卿にとっていわば救いの女神だったと言える。ニサンにとっても救世主だ。
まさしく僥倖。たいへん結構。
とーはーいーえー。
確かに本日、正午前後より、ガスパール嬢が王城に潜入するとは聞いている。ポジションとしてはシグルドの代打だ。諜報部のトップ代理からちゃんと事前連絡は受けているし、俺が口出しするような不備もなかった。メイソン卿からのゴーサインだってしっかり出ている。
だから、彼女が今王城に居ること自体は問題ないというか当然のことだ。
でも、それはあくまで救出作戦実施に向けての情報収集のためなんであって。今みたいに人質の命を守るために単騎で大立ち廻りをやれ、なんて指示はビタ一文出てねえはずだぞ。
そりゃ、もちろん、世の中不測の事態というのは付き物だし、いざヤバいとなれば実力行使もやむ無しではあろう。
しかし今彼女が置かれている状況は、どーみても緊急避難の枠組みに収まるようなもんじゃない。
ガスパール嬢が肩口に下げているはずの通信機は、さっきから兵士の怒号と悲鳴と連発銃の撃発音を散々っぱら拾っている。不審人物出没ってレベルじゃねえ。おそらく王城全体がバケツひっくり返したみたいな騒ぎで、ほとんど逆クーデターの様相じゃねえか。何がどうなったらこんなことになるんだ、マジで。
ていうかこれ。もしかせんでも俺、諜報部からサボタージュ食らってねえか?
シェバトとの連携を視野に入れ、また現時点でバルトを前面に出すことの危険性も鑑み。王城奪還に向けてのアクションについては全体的にブレーキを掛けていた自覚はある。そこにシグルドの行方不明ときて、俺に対して溜まっていた諸々の不満が爆発した結果がこのザマになっている可能性が?
うーん、それってちょっとシャレにならんのですが……。
しかし、そこらへんの事情をいちいち考慮しているヒマはない。今まさに燃え上がっている目の前の現実を何とかしなくてはならなかった。せめてガスパール嬢とラヴァーン卿だけでも穏当に脱出させられればと思わんでもないが……それが出来るなら彼女もこんな提案はせんだろうし、そもそも大立ち廻りもやってないだろうなあ。
だいたい、監禁している中から特定の要人だけ土足で引っこ抜かれなんかした日には、いくら交渉材料とはいえ、信頼度が無さ過ぎて残りの人質がどうなるかなんて知れたもんじゃない。
ただでさえバルト&マルーで一回痛い目見ているわけで。二連発食らってなお大人しくしているというのは、幾らなんでも希望的観測が過ぎるだろう。今やるなら残った全員まとめてぶっこ抜かなきゃマズい。
そのためには王城全域を、制圧とまではいかないまでも一時機能不全ぐらいまでには陥らせる必要がどうしても出てくる。そういう結論になる。
つまり、ガスパール嬢の要請は現段階では尽く正しかった。これまで積み上げてきた諸々の算段を放り捨てた上で、王党派として形振り構わず城攻めに臨み。シャーカーン勢力を打倒し、ひいては裏で糸を引いているソラリスと、なし崩し的に真正面からぶつかっていくことになるわけだ?
うわーい、勘弁。もしくは見捨てる? それはそれで、シェバトも諜報部もついでにニサンもマジギレ不可避で詰んでるみたいなもんだな……。
もはや状況はイチかゼロかに収束してしまった。やるしかねえだろこんなもん。
いったいどうしてこうなった。つーかどうみても根っこにあるのは人選ミスくさいんだが、どこのどいつだよこんな人事やらかしたバカはよ。何考えてんだかな。責任者出てこーい。
……責任者俺だわ。ガッデム。
――よし、現況は凡そ把握した。支援要請を許可する、だが、どれだけ急いでも一時間は掛かる。
それまで城内を現状維持しておくことは可能か?
今聞いた限りでは、現地人員の支援はしばらくアテになりそうにないようだが。
『行けると思う。ラヴァーンさんの座標はさっき送ったとおり。不規則に騒ぎを起こして兵士たちの目を釘付けにしながら、彼が見つからないよう全体を引きずり回してく。侍女の変装がバレたらちょっと面倒になるけど……幸い、ここの練度は言うほど高くないみたい』
オーケー、踏ん張ってくれ。そうはならんことを心から願うが、最悪の場合は、貴女自身の生還を何より最優先するように。
お借りした手駒を早々と失くしちまったら、ゼファー陛下と君のお祖父様に、一切顔向けできんからな。
『了解。……ごめんなさい』
ま、こうなっちまったもんは仕方ない。ラヴァーン卿を生きて救い出せるならそれはそれで目っけもんだ。こっちでも、出来る限りのことをやらせて貰うとするさ。
ああそれと、最後にひとつだけ聞いときたいんだが。
『……?』
今のこれ、諜報部の連中に許可取ってやったのか?
『……取ってません! そんなの取る余裕なんか、在ったわけないじゃない!』
……あ、さいですか。切羽詰まった状況とは裏腹に、思わずほっとしたため息が出る。さしもの諜報部もそこまで冒険主義的じゃあなかったか。
のっぴきならないシチュエーションと、諸々の不運と、そして彼女と仲の良いマルー嬢への忖度に触発された、ある意味ガスパール嬢の単独主演ってわけだ。良かった良かった。
いやまぁ、全体通してみると全然良くはないけれど、ちょっとした慰めくらいにはなる話ではあった。
『原則論は後にしてちょうだい! お説教も、処罰も、終わってからならいくらだって伺います。今は一分一秒を争うはずよ、はやく!!』
ごもっとも。こちらも直ちに行動を開始する。通信終わる。
◆
……バンス! バンス! こちらラムサスだ、聞こえるか!
「……はぁ~い。巡航中のレグルスより入電、聞こえてますよお。なんですぅ?」
バカ野郎、弛んどる場合じゃない! 基地内全域に緊急警報発令! 騎士団員並びに準団員、稼働可能な者はすべて三種支援装備で至急戦闘態勢! 整備班もまとめて叩き起こせ!
「え、えええ!?」
エマージェンシーだ、動かせるギアは全部引っ張り出す!
ユグドラⅡ《セカンド》にも今すぐ火を入れろ! フライト・ブースター込みで全力稼働!
「ま、マジっすかあ!? なんで、いやそのアレ、メ、メイソン卿の許可は!?」
許可はすぐ取る! っていうかもう、この通信そのまんま両アジトに音量マックスぶち流せ!
……メイソン卿! フランシス・ラヴァーン司教に関する重大なインシデントが発生! 火急につき失礼ですが直ちにギア・パドックまでご足労を! 続いて第二アジト全域に告ぐ! バトコンレベル1を発令、整備班及び搭乗予定者は直ちにアンドヴァリを第一種、除く他全機を第三種装備にて稼働させよ!
繰り返す、メイソン卿! フランシス・ラヴァーン司教に関する――