ライスシャワーが精神で肉体を凌駕するまで   作:さっちゅん

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感想くれた人ありがとうございます本当に。書いたものに反応あるってかなり嬉しいですね。


想い描く未来

「うんしょ……うんしょ……」 

 

「……」

 

トラックで俺は遠くから巨大なリュックサックを背負い込みこちらへ向かってくるライスシャワーを、何やってんだあいつ。と目を細める。

 

今日は俺がライスシャワーのトレーナーとなってからの初のトレーニングの日であるから、ライスがどんな顔して現れるか気になってはいたが、現れたのはパンパンな荷物を背負った登山家であった。

 

「ま、待たせてごめんなさい……!トレーニングよろしくお願いします……!」

 

そう言いながら地面に降ろされたリュックはドスンと大きな音を立てる。こんなに細くてちっこいのに……やっぱウマ娘って凄いったらなんのである。

 

「……おいライス。なんだ?そのでかいリュックは???」

 

スルーしようとしたが、やはり気になったので俺はリュックを指差しそう問いかけた。するとライスシャワーはもじもじと手を前で組み

 

「あっ、えっと……あのリュックは良くない事が起こった時のための準備で……」

 

とゴニョゴニョと話し始めた。

 

「良くないこと?……怪我とかか?」

 

「そ、そう……!ほらこれは転んでお膝する剥いちゃった時の絆創膏で……こっちは捻挫しちゃった時用のテーピング……」

 

「へ、へぇ……用意周到で偉いな」

 

「……!えへへ……そ、それでねそれでね!こっちがーー」

 

余りにも多い荷物に多少引いたが、今日に向けていっぱい考えてくれたんだろうと俺は褒めたのだが、ライスシャワーはちょっと嬉しくなったのかわざわざリュックの中から中身を一つずつ取り出しながら俺に見せてくる。

 

急な雨にそなえた紺色でワンポイントで青い花の刺繍の入った傘に、なんと遭難した時様のマヨネーズといろんなものがでてくるでてくる……

 

「ーーこれが、靴紐が切れちゃった時のための予備のシューズで……」

 

まあ、ナヨナヨしてばっかじゃなくて可愛いとこあるじゃん。とライスの持ち物ショーを眺める。

 

「あ、ありがとうライスシャワー、じゃあまた続きは練習終わってから見せてくれよ」

 

しかし、これじゃキリがないと俺は一旦ライスを止めた

 

「あぅ……ごめんなさい……初トレーニングで迷惑かけないようにって思って……」

 

するとライスは少ししょんぼりとした顔で次にリュックから出そうとしていたものから手を離した。

 

「気遣いは嬉しかったよ、ありがと。ただ、次からはもっと身軽で大丈夫だ!」

 

「ほ、ほんと……?ライス実は昔っから不幸な事ばかり起こしちゃってて……それで……」

 

「不幸?」

 

「うん……一緒にいる子が転んだり、靴紐切っちゃったり……それこそ、トレーナーさんといた時だって鳥のフンが……」

 

「……うっ」

 

い、嫌なことを思いだしたが俺は顔が引き攣るのを必死に抑える。まあ確かにライスと出会った日は運が悪かった気もするが、まあ悪運なんてのは単なる偶然であるはずだし、気にする必要は無いとは思う。だがこの子はちょっと優し過ぎるのかも知れないな……

 

「……だ、だからっ……!」

 

そんな俺を見かけてか、ライスシャワーが再びリュックを漁り何か布の様なものを取り出した。そしてライスはそれを広げて、不安げではあるが俺に見せてきた。

 

「なんだ……?ハンカチ……?」

 

「う、うん……!もしトレーナーさんの頭が汚れちゃってもいいようにって……」

 

……まぁ、優し過ぎるのはこの子の長所でもあるってわけだろう。ちょっと嬉しかった。だから、なら帽子とかの方が良くね。とは言わないでおいた。

 

「ライスは優しいんだな。わざわざ俺のためにありがとう」

 

「あわわ……そんな事……だってトレーナーさんは初めて出会った時、ライスにやる気をくれたから」

 

「ライス……」

 

「あの日、ライスの所為で頭が汚れちゃったのにトレーナーさんは悩んでるライスとずっとお話してくれて……嬉しかったから……」

 

「ははは……」

 

ライスは、照れ臭そうにそう言ったが今思うと俺は頭にウンコ乗っけながらあんな事言ってたかと思うと顔から火が出そうであった。

 

「それにね……!友達のウララちゃんにも話したらカッコいいねって言ってくれたし」

 

「はっ!?おいライスお前その事誰かに話したのかっ!?」

 

「ひゃ、ひゃい!ごめんなさいっ!?」

 

「あっ……いやぁ、全然いいんだけど……な?アハハ!」

 

なんだ?じゃあそのことも顔も知らんウララちゃんとやらに俺がウンコ乗っけながらライスに『速さには凄い力があるーー』だとか『他人にも運命にも世界にもーー』とか言っちゃってたことが広まってんのか。恥ずかしっ……でも、まぁ、ライスシャワーがやる気をくれたなんて思ってくれてるのならとても良かった。と言うかまぁ、それ以前に……

 

(ライスシャワー、ちゃんと友達いたんだな……良かった、なんか安心したよ俺は)

 

練習もずっと一人でしていたらしいし、下手したら一人ぼっちなのかなとも心配になったがどうやら大丈夫であるようだ。

 

「うぅ……な、なんかトレーナーさんに失礼なこと考えられてるような気が……」

 

「……まぁ!荷物をしまえって!」

 

 

❇︎

 

 

「じゃあ今日はトレーニング初日で今の実力も把握したいし、ライスと今後の事を話し合いながら軽くやっていこうか」

 

「こ、今後のこと……?」

 

「まだ俺はハッキリ言って君のことあんまり知らないからな……まあこれから長い付き合いになるだろうし前置きは要らないだろう。単刀直入に問うよ」

 

「……?」

 

「お前は何者になりたい?」

 

まあ、急に聞いても困ってしまうか。と思った次の瞬間だった。

 

「ライスはしあわせの青い薔薇に……!」

 

ライスシャワーは意外にも即答した。俺は少し驚いた。と、言うのもこの質問は返答内容を見るものではない。夢や目標はそれぞれ違うからだ。では何を見るものか?それは、返答の早さだ。早ければ早いほどそれが、その子の信念の強さや明確さ、または憧れや希望を汲み取れる。なるほどな……だからこの子は一人でも、レースに出れなくてもずっと練習を続けてこれたのだろう。

 

「しあわせの青い薔薇?」

 

俺は少したってそう返した。

 

「あわわ……実はライスの好きな絵本の話でーー」

 

ライスシャワーは、目を輝かせながらその絵本の話を俺にしてくれた。

 

色鮮やかな花を咲かせる薔薇のなかで皆と違う容姿をした蕾の"青い薔薇"は人間達から不気味がられ、自己嫌悪に陥り萎れていってしまうが、たった一人そんな不幸な自分を「素敵だ」と言って買取り、育てた"お兄さま"のおかげで無事綺麗な花を咲かせ道ゆく人を笑顔にした。とまあ、言った内容だ。

 

「ライスがちっちゃい頃に、しあわせの青い薔薇を読んでライスも皆を不幸にするダメな子じゃなく皆を幸せにする青い薔薇に憧れちゃったんだ」

 

「小さい頃に読んだ絵本に憧れてなんて、なんか良い話だな」

 

「えへへ……でもまだ終わりじゃないの。ライスちっちゃい頃青い薔薇に憧れていたそんな時、お母さまが初めてレースに連れて行ってくれたの」

 

「レース……!」

 

「うん。レースを見に来ている皆んなは笑顔でレースを見守ってて、応援してる子が勝った時は皆んなとってもしあわせそうなお顔をしてたんだ」

 

ライスシャワーは少し上を向きながら昔の自分の滾りと向い合う。そして、彼女は話を続ける。

 

「……そして、何の運命かは知らないけどライスはウマ娘だった。だからライスも頑張って速くなって、皆んなを幸せするレースをしたいなって。そう思ったの」

 

「なるほど、その日が君と言うウマ娘の、ライスシャワーの全てが始まったわけか」

 

小さい頃は追いつけなかった憧れの存在も、今ではそれを目標に出来るくらいのスピードを手に入れトレセン学園にまで入学した。

 

「うん……それがもう憧れじゃない、ライスの目標にする成りたいライス……」

 

正直、この前までヘコんで、『走るのがあまり好きじゃない』とまで言っていた子とは思えないほどの壮大な想いに俺は感心した。

 

「ライスならきっとなれるよ。でもーー」

 

そう感心した。なんなら絶対にこの子の夢を叶えてやろうと思った。だからこそ俺は厳しいことを言うようだが次の様に続けた。

 

「これは夢を否定するとかそんなんじゃないんだけど、ライスが目指していることは、ハッキリ言ってめちゃくちゃ難しいことだ。この世界は驚く程に相対的で、誰かが笑顔になるということは、どこかで誰かが泣いている」

 

「……そんな」

 

「皆を笑顔にすると言うのは、それはそれは至難の業で、それを叶えるには君はこれからこの世界で圧倒的にならなければならない。絶対にいきなり皆が一気に笑顔にはならないし、当然これから何度も挫けることになると思う。しかもこれはほぼ確実と言って良い」

 

「……」

 

「そしてライスシャワー、君はとても神経質で優しい子だ。だからどうか、どうか……これからは"自分なんか"と落ち込まないで欲しい」

 

「っ……」

 

「最初は難しいかも知れないけど、さっき言った様に絶対に君は叶えたい夢の道の途中でこの先壁にぶち当たる。そして俺はライスなら壁を乗り越えられると信じるし、サポートをしていく。だからライスも自分のペースで少しずつ頑張ってくれれば良い」

 

「トレーナーさん……」

 

「段々と笑顔を増やしていけば良いんだ。必ず誰かが君の頑張りを見ている。俺がトレーナーになったのがその証明だ。ちょっと照れるけど、ライスシャワーのファン一号さ。だからこれからは不幸にしてしまった人じゃなくて、笑ってくれた人を大事に一人ずつ数えていって欲しい」

 

「うん……ありがとう。ライス、がんばるね……!」

 

長くつらつらと話したが、ライスから笑顔でそんな言葉が聞けて、俺はほっとした。これで良い。まずは自分が笑顔でいなくちゃならない。人を幸せにしたいなら絶対にまずは自分が幸せにならないとダメなんだ。

 

「じゃあ、早速軽くアップして今日は一本2000のタイム計ってみようか。いつか来るデビュー戦に向けて色々試さないとな」

 

「……は、はい!」

 

ライスは返事をしてアップを始めにコースへ入っていく。俺はそれを静かに見つめていた。おそらく最初のレースがライスシャワーにとって良くも悪くも今後の彼女を左右する決定的なものとなるだろう。

 

『皆んなを幸せにーー』

 

彼女はそう言ったが、彼女はまだ知らない。

 

敗北の悔しさと、勝利の味を。

 

速度に翻弄され、たかが陸上で人生を良くか悪くか狂わされるやつもいる。

 

ーーライスには少なくとも俺みたいな思いは絶対に……

 




なんか、コイツら話してばっかだなと思った人ごめんね!あと1話か2話くらいでライス走らせるんで許してください
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