一九四〇年、七月某日。
南リベリオン大陸、ノイエ・カールスラント帝国領内、軍法会議所。
その一室には重苦しい雰囲気が漂っていた。
入り口と対面になる壁にはカールスラントの大きな国旗が掲げられている。
その国旗を背にするように4人の男が、並んで設置された長机に等間隔で座っていた。
軍服姿男達はいずれも佐官、将官クラスの者達であった。
彼らの両脇、扉や左右の壁には幾人か憲兵が武装状態で配置されており、物々しい雰囲気を放っている。
軍法会議の場であった。
これからやってくる軍人の是非を問う場である。
男達が資料を確認していると、ノックの音が響いた。
「入れ」
一人がそう告げると扉が開かれた。
外にいた憲兵に連れられて入室してきたのは、松葉杖を突き、幾重にも包帯を巻いた一人の少女。
歳は十四、五くらいの、ウィッチとしては適齢期の少女だ。
くすんだ金の短い髪、茶色い瞳は何も映ってはいないのではないかと疑ってしまいそうなくらいだ。傷だらけでなければ静かで大人しいといった印象を持たれる雰囲気を纏っていた。
軍服着た少女の姿には傷だらけなのとは別に一つ、大きな特徴があった。
右脚が欠けているのだ。膝下から先が丸ごとなくなっており、一番念入りに包帯が巻かれている。
戦傷兵。その言葉が似合う姿だ。
そんな彼女は所定の位置に立ち松葉杖で身体を支えながらも、出来るだけ綺麗に敬礼する。
「ツェツィーリエ・ベッセル中尉、召喚に応じ参上いたしました」
その声はマイクを通して発せられた。
喉元には戦車隊が使う咽喉マイクが装着されている。負傷により大きな声が出せなくなっているのだ。
「これより、ツェツィーリエ・ベッセル中尉に対する軍法会議を始める。異論はないか?」
「……
「この会議において、いかなる虚偽の発言も行わないと皇帝に誓うか?」
「……
少女、ツェツィーリエは酷く発音しにくそうに、喉元の咽喉マイクを通して返事をした。
「ではまず、かけられた嫌疑について述べる。意義のある場合はその後に言うように」
「…………」
軍規違反、命令無視、器物損壊、部隊内の上司を含む複数人に対しての殺人、その他諸々が列挙される。
「これらについて、異論はあるかね?」
「いえ、全て事実であります」
そう答える彼女の瞳には光はなく、しかし年頃の少女が発するには余りある凄味があった。
その雰囲気に、部屋の中にいる憲兵の幾人かが秘かに息を飲む。
「……そうか。では知っていることについて話してもらおうか?」
「知っている事、とは?」
「全て、だよ。君が入軍してからの三年間、人狼部隊で見聞きしたことを全て白状してもらおうか」
男達の言葉、視線、雰囲気が僅かに鋭くなる。
噓や言い逃れは許さない。言外にそう言われていることを彼女は察した。
それらが認められた場合は最悪、命すらないという事も。
「……了解しました」
そして彼女は語り始める。苛烈で凄惨で、泥と血と硝煙の匂いが漂う、この世界ではよくある話を。
ハイここでタイトルがドーン。
ぶっちゃけ、本編キャラは出す予定ないです。全く出さないという予定もないですけどね。