ツェツィーリエ・ベッセル   作:風呂

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Aとついてはいるけど、ただ単に話的にまだ書きたい事はあるけど、作者の限界が来て区切っただけです。深い意味はないです……。


チャプター2A

■■■

 

 

 ツェツィーリエが目覚めると、見慣れない木目の天井が目に映る。

「……ここ、どこ?」

 窓から指す日で今が昼間の時間帯というのが分かるが、起き抜けの所為が記憶が繋がらない。

 どうやら簡素なベッドで寝てたらしい。床で寝るよりはマシな程度で、あまり上等ではないみたいだった。

 少し身体を起こすと痛みが走る。見下ろすとそこかしこに治療の跡があった。

 そこまで確認して、

「ああ……」

 と、ツェツィーリエの口から溜息が零れた。

 彼女は思い出す。ネウロイの襲撃に遭い、家族を失い、そして逃げてきた事を。

 その事実に、思わず自身の身体を抱きしめる。

 夢だと思いたい。しかし巻かれた包帯が紛れもない現実だと彼女に突きつけた。

 そこでハタと気づく。そういえばこの治療は誰がしてくれたのかと。

 辺りを見渡すと、やはり見慣れない大きめの部屋に六つのベッドが二列に並んでいる。

 しかしそのどれもが自分が使っているのを除き空き状態で、ツェツィーリエ以外の姿は見えない。

 部屋の隅に設置された棚には、詳細は分からないが医療品が覗いているので、病院かとあたりをつける。

 少し離れた所からは喧騒が聞こえる為、この場所が無人ではないことは分かるが、一体ここはどこでどうしてここいるのか。やはりそれが分からなかった。

 と、

「あら、目が覚めたのね」

 声をかけられた。

 部屋の入り口から姿を現したのは白衣を着た女性だ。

 眼鏡を掛けた茶色い三つ編みの女性がカルテ片手に、ツェツィーリエを見ていた。

「あの……」

「色々聞きたいことはあるのは分かるけど、取り敢えず診察させてもらえるかな?」

「……はい」

 出鼻を挫かれ何も言えず、大人しく診察されるがままになるツェツィーリエ。

 それから暫く。

「うん、大丈夫そうね。まあ、擦り傷とかは暫く痛むだろうけど、それくらいは必要経費ってことで」

 その言葉を最後に聴診器を首に掛け、女医は自身の仕事を終えるのだった。

「それで、あの」

「ん? ああ、今のあなたの状況ね。まあ、話してもいいけど後で今後も含めて上司に纏めて説明してもらうから、我慢してね」

「はあ……」

「それじゃ早速で悪いけど、その上司があなたが目を覚ましたらすぐに連れてきなさいって命令してるから来てもらうわ。歩ける?」

「な、なんとか」

「じゃ、ついてきて」

 そう言ってさっさと歩き出す女医。

 その白衣の下は、軍服であった。

 

 

■■■

 

 

 女医に付いて歩くと、確かにここは軍事施設であるというのが分かる。

 見かける姿、すれ違う男女、そのどれもが軍服やそれに類する姿なのだ。

「軍人は珍しい?」

「はい。遠目で見たことはありますが」

「そう、そのうち慣れるわ。……嫌でもね」

「……?」

 女医の言い方に違和感を得つつも後を追う。

 途中、階段を上り少し歩く。

「今からあなたが会うのはここで一番偉い人よ」

「えっ」

「いつまで保つか分からないけど、ここでやっていくんだから当たり前でしょ? ああ、緊張しなくてもいいわ。するだけ損だから」

「……それは、どういう?」

「すぐに分かるわ。アレは本当の魔女――いや、この世で一番俗っぽい人間か。どちらにせよ、まともに相手しないほうがいいわ。ま、呑まれないように気を付けなさいな」

 脅しのような、忠告のような、そんな言葉をかけられつつ辿り着いたのは、これまで見たどれよりも細かで洗練された意匠が施された扉の前だった。

 埋め込まれたプレートには『司令官室』と書かれていた。

 わざと見たものに威圧感を与えるような佇まいだったが、そんなことはお構いなしに女医は扉をノックする。

「起きたから連れてきたわよ」

 部屋の主の許可もなく勝手に扉を開けて中に入る女医。

 それに続いてツェツィーリエも中に入っていく。

「失礼しま……」

 室内は執務室と応接室を兼ねているのだろう。手前に背の低いテーブルとそれを挟むように左右にあるソファがある。

 奥には仕事用に天板の広い机と座り心地の良さそうな椅子が設置してあった。

 それらを含め、部屋にある棚や姿見、調度品などは素人目からしても高価だというのが見て取れる。

 そして、この部屋の主が奥の椅子に座ってツェツィーリエを見ていた。

 長く鴉のように黒い髪で、鋭い目つき。同性のツェツィーリエから見ても息を飲むほどの美貌だ。

 含みのある笑みでこちらを値踏みするかのようなその雰囲気は成る程、魔女や物の怪の類と言われるのも納得のできるものだった。

「あら、もう起きたのね」

 その声に、ツェツィーリエは警戒心を持った。

 この人物に気を許してはならないと、確信めいた感覚が胸の内を占める。初対面の相手に思うことではないと理解してはいても、だ。

 理屈や感情ではなく、本能からの反応にツェツィーリエは戸惑った。

「ふぅん、勘は悪くなさそうね」

 そんなツェツィーリエの様子に、女は笑みを深くする。

「そんなに怯えられると、話を進められないんだけど?」

「え、あ……、すみません」

「まあ良いわ。取り敢えず、自己紹介はしておこうかしら。カールスラント帝国陸軍第901特殊陸戦部隊『ヴェアヴォルフ』隊長、ヴィクトリア・ワーグナー中佐よ」

「ツェツィーリエ・ベッセル、です」

「ところであなた、どこまで現状を把握しているのかしら?」

「……えっと、住んでた街がネウロイに襲われて、逃げてどこかの道で力疲れて倒れて、気付けばここに」

「大方の予想通りね。家族は?」

「襲われたときに両親は……。親戚とかは、分かりません」

「天涯孤独、という訳ね。やっぱり都合がいいわね」

「?」

「あなた、ここでウイッチとして働きなさい。いやなら出て行ってもいいけど、アテなんかないわよね?」

「…………」

「ま、それ以前にうちって特殊部隊だから、知ったからには逃がさないんだけど。それでも嫌だと言うなら、ねえ?」

 子供でも分かる脅しである。

 だから、ツェツィーリエは苦虫を噛み潰したような顔で頷くしかなかった。




女医に名前つけようかどうしようか。
あと部隊名は超が三つ付くくらいテキトーです。ちょっと南瓜剥き鋏のイメージありますけど。
映画で言えば始まってから十五分くらい?
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