海の猫   作:Byaraku

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文章の行間などが前と少し違うと思われますが、良い書き方を模索中ですのでご了承ください。


海軍

 船首に犬の形を模した艦艇を先頭に五隻の軍艦が陣形をなし、件の島に舵を切っていた。

「ガープ中将、あと二時間ほどで目的の島に到着します。」

 太陽が船団を照らしている、この新世界の海では貴重な穏やかな天気。そんな中、甲板の前方犬を模した船首の前に陣取り、仁王立ちし士腕を組んでいる壮年の将校に向けて若き海兵が報告する。

「そうか!ご苦労。」

 将校は海兵の声に何やら思案しながら応える。

(それにしても、島に入った者を生きて帰さぬ怪物か・・退屈なこの仕事も何やら面白くなってきたの〜)

 壮年の将校、海軍の英雄ガープはここに来る前に街で聞いた噂話を思い出していた。以前立ち寄った小さな島のこれまた小さな町、こんな島で新世界の海を生きていけているのが不思議なほど普通の海の港町のような所だった。その町でこれから目的の島に出港しようとしていた海賊団を鎮圧、ひっ捕えて船の牢屋に詰め込んで目的の島に出港しようとした時に町の人々が言っていた噂話。

 なんでも、20年ほど前から言い伝えられているらしく。島に入った人間を決して帰さないらしい。なぜ20年前なのかと言うと、20年前に島に向かった海賊が帰らなかったらしい。この辺りの海は激しい海流が入り組んでいて、その島から出るには必ず前に通った島を経由しないと絶対に外に出られないらしい。しかし、海賊は帰らなかった。その海賊どももバカでは無い、事前にその情報は入手していたしエターナルホースもログホースも持っていた。それからというもの、その島に財宝や海楼石目当てで向かう海賊たちが増加し全て帰らなかった。

 町でも住人がそのことを恐れ、誰も例の島に近づかなかった。ガープ達がひっ捕らえた海賊の前に島に向かった別の海賊がいたらしいが、忠告を無視し出港してしまったらしい。ガープ達は今まさに、その海賊団を追っている真っ最中であった。歴戦の英雄が付いているからなのか、海兵達に怯えの色は見えない。

(さーて、鬼が出るか蛇が出るか、楽しみじゃの〜)

 歴戦の英雄はというと、流石というべきか呆れるべきか、そんなことを呑気に考えていた。

 

 その島は、ガープ達の予想を超えていた。島の周辺には老朽化や潮に揉まれ、バラバラに崩れたのだろうと思われる船の残骸が無数に浮いていた。海岸や崖なども同様に、もはや使い物にならなくなった船が塊を形成している。

「よし!到着だ!付いて来い!」

 その様子をにたガープは、待ちきれんとばかりに上陸する。

「船を見張るものは残れ!それ以外の者はガープ中将に続け!」

 ガープの副官は声を上げる。船員達も命令通りに行動していく、その様子を見ている瞳に気づかずに。

 

 上陸した砂浜はかつてそこが凄惨な現場だったということを、見るものに如実に伝えている。あたりに散らばる大量の人骨、およそ激しい戦闘に巻き込まれたと思しき酷く傷ついた木々。ガープの副官ボガートを、生暖かい不安が襲う。海軍が誇る英雄が付いているという安心感に混ざり、何かとんでもない猛獣の巣へ足を踏み入れてしまったような、巨大な怪物が口を開けて待ち受けているような。自分はそれに知らず知らずのうちに入り込んでしまったのでは無いのかと、壊れた船の残骸や辺りに散らばっている人骨などを抜きにすれば普通の島である。それが逆に不安を煽る、新世界の海という都合上何か無いなどあり得ないのでは無いかと、危機感を煽ってくるのだ。

 

 ガープを先頭に、砂浜を抜け森に入り葉や蔓などを掻き分け邪魔な枝葉を切り払いながら進んでいく。足場の悪い山道とも言えないような凸凹した地面を歩いていると、前方に木々の隙間から僅かに建物のようなものが見えた。

「お!何か見えたぞ!よし!あそこの建物に向かうぞ!」

 意気揚々と進んでいくガープ、その時白いものが目の前に降り立った。

 

 直後、ガープのすぐ後ろにいる海兵がざわめき、臨戦体制を取る。その白いものの黄金の双眸は、興味津々と言った様子でガープを貫いていた。

「ねえ、そこ僕の家なんだけど。なんか用。」

 白いものは、感情の読めないニヒルな笑みを薄く浮かべ訪ねてきた。

「おお!そうじゃったのか!突然押しかけて悪かったのう!」

 笑みを浮かべながら、ガープは普通に町の娘などに応えるかのように言った。そしてこちらも興味津々といった視線を送る。

「それはそうと、こいつらを見なかったか。」

 ガープはそう言って、部下に用意させた海賊の手配書を手渡した。

「なになに、ああ!こいつらだったら、少し前に見たよ。」

 受け取った白いものは、これまたニヒルな笑みで返した。

「おお!そうか!で、どこに行った。」

「こいつら、自分達のこと奥越えとか言ってたけど。そこまで強く無かったよ。僕が会った時にそんなこと言いながら襲ってきたから、返り討ちにした。全員バラバラにして猛獣が出る所に捨てたから、もう骨しか残ってないと思うけど。」

 ガープの問いに、淡々と答える白いもの。海賊達の末路を語るとに、どこか落胆している様子だった。

「ぶわっはははっははは!!そうか!そうか!じゃあもうこんなものはいらんな!ははは!」

 思わず笑い出すガープ。

「ところでさー」

 ガープの笑いが治ったと同時に白いものが声をあげる。

「お願いなんだけど・・、君、僕と戦ってくれない?」

 先に仕掛けたのは、欲求が抑えられなくなった化け猫の方であった。

 

 ピトーが捕らえた海賊にする質問は、多岐に及ぶ。外の世界はどんなものなど、単純な質問から。数学、道徳、地理、社会など複雑なものまで。ピトーが初めて、人間を見てから数年間。ありとあらゆる方法で、情報を得てきた。

「一体何なんだ・・お前・・ぜってえゆるさぎぃやあああああ!!!」

 呪詛を吐き出す海賊の右手の小指の爪の間に、『人形修理者』の指の先から伸びている針を突き刺す。ぐりぐりと、かなり奥まで。これをすると、大体の人間は大人しくなる。逆に激しく暴れる時もあるが方法が簡単なため、ピトーがよく使っているやり方だ。

「おーい、聞こえてる?」

「君には海軍?て言うのに付いて聞きたいんだけど。質問に答えてくれたら、やめてあげるよ。」

「こ、こた・・えるか・・ら、や、やめ・・」

 海賊は息も絶え絶えに、体のあちこちを痙攣させながら必死に答える。

「ほんとー、ありがとう!嬉しいよ。」

「ギャア!!」

 そういうと、ピトーは勢い良く針を引き抜いた。

 

 もともと『人形修理者』修復、回復系の能力であったが数年間の修行により。治すだけではなく、拷問や改造などと行ったこともできる様になっていた。能力が開花した最初は無意識的に完全に使いこなしていたが、これが意図的となると途端に難しくなった。始めは、千切れた四肢をくっ付けることから破裂した内臓の修復。今ではインク無しで海賊の背中に刺青を入れるに至っている。

(それにしても、海軍結構良さそうだにゃ。)

 ピトーは計画を立てていた。この島を抜け出し、外の世界で生きる為の計画を。いい加減、この島にも飽きが来ていた。無論、この島が面白く無いわけではない。孤島とはいえ、曲がりなりにも新世界。普通の海では見られない様な危険な原生生物に海王類、そして海の向こうからやって来る海賊達。しかし、生まれてからそこしか知らず毎日毎日海賊から聞いた外の事に憧れ続けはや20年。飽きるな、という方が無理があった。勿論、ピトーも何も考えずに生きて来た訳では無い。日々、どうやって外に出るかとか、外に出たら何をするだとか、何に成田とかを考えていた。海賊の船を使う?無理だ使い方を知らない。海賊に船の使い方を聞けばいい!だめだ、さっきまで浮かんでいた船は巨大な魚に食べられてしまった。それに来る船来る船大きいものばかりで一人では動かせない。そんなことを考えながら生活していて海軍というのはいいと思った。

 世界中に蔓延る犯罪集団、海賊を世界政府加盟国だけではあるが取り締まっている正義の軍隊らしい。正義の軍隊というところはあまり関心がなかったが、世界中の海を取り締まる公認の軍隊と言うのはピトーの外の世界での計画でメリットがかなりある様に思えた。人間と戦う、痛めつけ話させるのは楽しい、がそれ以外の方法でも関わりたいと考えていた。海兵という認められた立場で人と生活できる、公的な仕事ということで世界を回れる、多くの猛者達と戦える、それがピトーにはとても魅力的であった。

 そして待っていたのだ、彼らが来るのを。

 

 

 

 

 

 

 




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